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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド15

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:29:34 ID:rpMvhMFd
このスレはギャルゲ・ロワイアル2ndの本スレッドです 
ギャルゲ・ロワイアル2ndを一言で表すのならば、ギャルゲーの人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説企画です 
基本的に作品の投下・感想共に、このスレで行って下さい 

前スレ 
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド14
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1216477618/

ギャルゲ・ロワイアルしたらばBBS(1st・2nd兼用) 
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/ 

ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart2(上記したらば内) 
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1203171454
※議論はこちらでどうぞ 

ギャルゲ・ロワイアル2nd避難所スレ(同上) 
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205659483
※本スレが荒れている場合の感想・雑談はこちらでどうぞ。作品の投下だけは本スレで行って下さい 

ギャルゲ・ロワイアル2nd予約専用スレ(同上) 
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205656662/l50

ギャルゲ・ロワイアル2ndまとめwiki 
ttp://www7.atwiki.jp/galgerowa2

ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ(パロロワ毒吐き別館BBS) 
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1203695602
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように! 

テンプレは>>2以降に 

2 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:31:47 ID:rpMvhMFd
・参加者一覧 
2/3【THE IDOLM@STER】 
   ○高槻やよい/○菊地真/●如月千早 
3/5【アカイイト】 
   ○羽籐桂/○千羽烏月/●浅間サクヤ/●若杉葛/○ユメイ 
4/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】 
   ○如月双七/●一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /●加藤虎太郎 
3/5【機神咆哮デモンベイン】 
   ○大十字九郎/○アル・アジフ/●ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/●ティトゥス 
0/4【CLANNAD】 
   ●岡崎朋也/●古河渚/●藤林杏/●古河秋生 
1/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】 
   ●黒須太一/●支倉曜子/○山辺美希/●佐倉霧 
2/2【極上生徒会】 
   ○蘭堂りの/○神宮司奏 
3/4【シンフォニック=レイン】 
   ○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/●リセルシア・チェザリーニ 


3 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:33:02 ID:rpMvhMFd
1/4【School Days L×H】 
   ●伊藤誠/●桂言葉/○西園寺世界/●清浦刹那 
1/2【Strawberry Panic!】 
   ●蒼井渚砂/○源千華留 
0/6【つよきす -Mighty Heart-】 
   ●対馬レオ/●鉄乙女/●椰子なごみ/●鮫氷新一/●伊達スバル/●橘平蔵 
1/3【To Heart2】 
   ○柚原このみ/●小牧愛佳/●向坂雄二  
2/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】 
   ●アイン/○ドライ/○吾妻玲二  
1/4【Fate/stay night[Realta Nua]】 
   ○衛宮士郎/●間桐桜/●葛木宗一郎/●真アサシン  
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】 
   ○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留 
3/6【リトルバスターズ!】 
   ●直枝理樹/●棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/●宮沢謙吾/○井ノ原真人 

【残り29/64名】 



4 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:33:34 ID:rpMvhMFd
【基本ルール】 
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。 
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。 
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。 
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。 
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。 

【スタート時の持ち物】 
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。 
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。 
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。 
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。 
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」 
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。 
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。 
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。 
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。 
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。 
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。 
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。 
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。 
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。 

5 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:34:06 ID:rpMvhMFd
【禁止エリアについて】 
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。 
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。 

【放送について】 
0:00、6:00、12:00、18:00 
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。 
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。 

【舞台】 
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png

【作中での時間表記】(0時スタート) 
 深夜:0〜2 
 黎明:2〜4 
 早朝:4〜6 
 朝:6〜8 
 午前:8〜10 
 昼:10〜12 
 日中:12〜14 
 午後:14〜16 
 夕方:16〜18 
 夜:18〜20 
 夜中:20〜22 
 真夜中:22〜24 


6 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:35:07 ID:rpMvhMFd
【NGについて】 
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。 
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。 
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。 

NG協議の対象となる基準 
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等) 
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。 
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等) 
4.イベントルールに違反してしまっている場合。 
5.荒し目的の投稿。 
6.時間の進み方が異常。 
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等) 
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。 



7 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:35:42 ID:rpMvhMFd
【首輪】 
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。 
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、 
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。 
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。 
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。 
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。 
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。 
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。 
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。 

【デイパック】 
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。 
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。 
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。 

【支給品】 
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。 
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。 
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。 

8 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:36:12 ID:rpMvhMFd
【能力制限】 
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止 
ユメイの回復能力→効果減 
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○ 
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い 
     ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう 
     NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める 
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ 
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増 
士郎の投影→魔力消費増 
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。 
            または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い 
            またはアル自身、ページを欠落させて参戦 
            または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる 
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし 
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする 
ハサンの気配遮断→効果減 
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ 

その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります 


9 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:36:52 ID:rpMvhMFd
【予約について】 
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。 
予約無しの投下は不可。 
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。 
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。 
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。 
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可) 
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為) 
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。 
投下の際には予約スレで投下宣言すること。 

10 :9の修正:2008/08/11(月) 12:04:38 ID:AOUdOJ2x
【予約について】  
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。  
予約無しの投下は不可。  
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。  
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。  
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。  
この場合、申請すれば更に2日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)  
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)  
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。  
投下の際には予約スレで投下宣言すること。  

自己リレーは、放送を挟んだ場合は1週間。そうでない場合は2週間。

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 13:16:03 ID:OGPHzkOy
スレ立て乙であります!

12 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:36:37 ID:FlG3nIjc
 

13 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:37:57 ID:ev9BT8hV
トルタの事は大事だ。
多分、理樹や鈴とは違う感情で、同じくらい好きなんだと思う。

でもだ、もし。

もし、トルタがいなければ?

考える必要なんてない。
意味のない仮定なんてどうでもいい。

でも思う。

トルタという『足かせ』がなければ、俺はもしかしたら鈴に、理樹に出会えたのかもしれない。 守れたのかもしれない。
トルタと共に居て、トルタを守った。
それはもしかしたら、理樹と鈴を諦めたことなのかもしれない。

トルタさえいなければ、

トルタがいなければ、


俺は、こんな憎しみを抱かずに済んだのではないか?



14 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:38:14 ID:/z0dCrRP
 

15 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:38:22 ID:AOUdOJ2x



16 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:38:23 ID:FlG3nIjc
 

17 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:39:28 ID:r3FikQvl



18 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:39:35 ID:ev9BT8hV
間違っている。
俺の思考は正しくなんて無い。
そんな事は判っている。
けれど、ソレを考えてしまうと、俺はもう何も出来無くなってしまいそうで。
憎む事しか、憎む事だけを考えていれば、楽になれそうな気がして。
ああ、俺は憎いんだ。
この憎しみに、身をゆだねてしまいたい。
そうすれば、そうすれば楽になれる。
楽になんかなりたく無い?
ではこの俺と言う存在そのものをなくしてしまいそうな喪失感はどうすればいい?

なあ、教えてくれ

「……トルタ、俺はどうすればいいと思う?」

いつの間にか俺の手を握っていたトルタに問う。
なあ、俺は俺も君も憎いんだ。
憎いとしか思えないんだ。
そう思わなければ、自分を支えられないくらいに、どうしようもないんだ。

「……恭介、自分を失っちゃだめ」

ああ、流石だよトルタ。
今の俺の気持ちを良く判っている。
俺と同じように自分よりも大事なものを持っていて、それを騙し続けたのだから。
俺たちは全てを偽ってきたのだから、今更自分自身を偽る事なんて容易い。
そうだ、俺と君は、まるで鏡映しの存在であるかのようなのだから。

「……辛い、気持ちは私もよく判る。
 でも、ここで投げ出したら何もかもが終わりになっちゃう」


19 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:39:53 ID:OGPHzkOy


20 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:12 ID:biRbsN8E


21 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:12 ID:AOUdOJ2x



22 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:13 ID:/z0dCrRP
 

23 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:18 ID:r3FikQvl




24 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:40:19 ID:ev9BT8hV
ああ、そうだ、君ならわかるだろう。
今の俺の気持ちが良く。
だから、君が俺の事を励まそうとしている事もよくわかる。

ありがとう。

ああ、でもなトルタ。

「……何が、わかる?」
「…………え?」

わかる、だって?
なあトルタ、俺と君とでは、一つだけどうしようもない、埋める事の出来ない違いがあるんだ。
俺の大事なものはもう無い(違う)、君の大事なものは、クリスはまだ生きているじゃあないか。

「君に俺の何がわかるんだ!?」

ああ、そうだ、良く理解出来た。
俺は、何よりもトルティニタ・フィーネが憎くて仕方が無いんだ。(違う)
俺と同じ存在でありながら、俺は失い、彼女は失っていない。
鏡写しならば、俺だけが失うなんておかしいじゃないか。
そうだ、理不尽だ、だから俺は憎い。トルティニタ・フィーネが憎い(違う)、クリス・ヴェルティンが憎い。


25 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:42 ID:biRbsN8E


26 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:48 ID:r3FikQvl



27 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:40:51 ID:/z0dCrRP
 

28 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:41:02 ID:ev9BT8hV
「自分自身の心すらも欺き通した君に、一体他人の何がわかるんだ!?」

俺たちのような奇跡ではなくて、現実の中で。
その中で全てを欺くなんて事、それを行なう為に、トルタは一体どれだけのものを費やした?
その果てに、何一つ報われなくても、それでも再びクリスの為に生きるという。
その中に、トルタの心は何処にある? どうなる?
そんな、自分自身すらも欺くような人間に、他人の何がわかる?

いつの間にか掴んでいた、トルタの胸元に、力が篭る。
トルタの顔が苦痛と酸欠に歪むが、知ったことでは無い。
そんな事なんかどうでもいい。

どうでも……いい、


―――鬼、悪鬼、などと呼ばれる存在がいる。
それらは、所謂地獄の門番、とは異なる存在、歴とした生物である。
元より鬼として生まれ出でる生物は、確かに存在しているのだ。
……だが、その他に、人が、あまりの憎しみ故に、人でなくなった時、その時、それは人より外れ、鬼となる。
そう、己を、他者を、全てを憎む事が出来た時、人より外れた鬼が生まれるのだ。
彼、棗恭介は、己が憎しみに耐えかね、そして、今この時より鬼へと転じ

…………訳……無い!!

得なかった。
棗恭介の理性は、意志は、自らが鬼に転じる事を許さなかった。
憎しみという逃げ道に逃げ込む事を、彼自身が許容できなかったのだ。
そして、何より、
彼にはまだ、憎しみよりも大事なものが、あったのだから。


29 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:41:19 ID:r3FikQvl


30 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:41:41 ID:ev9BT8hV
「ケホッ、ケホッ」

手を急に離した事で、トルタの身体が崩れ落ちる。
苦しそうにしてはいたけど、身体に別状は無いみたいだ。
ああ、だが、どうして俺はここでトルタを傷つけているんだ?

憎む事でしか、己の心を維持出来そうに無い。
けれど、憎むことでも俺を制御出来そうに無い。
俺自身の心が制御できない。

「…………トルタ」

俺自身が、トルタを傷つけてしまいそうで怖い。

「元の世界に、帰る、んだ……」

今なら、帰れる。
言峰を信じる気なんてカケラも無いが、それでも約束は果すだろう。

今度は、俺自身が守りたいものを壊してしまいそうで怖いんだ。

だから、トルタを返そう。

そうしなければ、俺は……




31 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:41:50 ID:/z0dCrRP
 

32 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:41:53 ID:biRbsN8E


33 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:41:58 ID:AOUdOJ2x



34 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:42:34 ID:biRbsN8E


35 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:43:11 ID:ev9BT8hV
(また……泣いている)

恭介は気付いていないだろうけど、彼はいま泣いている。
自分自身を、自分でもどうしようもなのだろう。
息苦しさに支配されながら、考える。

何が…わかるのだろう?

私には、恭介の気持ちなんてわからない。
大事なものを、守りたいと思うものを、無くしてしまった。
痛いほど伝わってくるのに、いや、だからこそ、私にはどうする事も出来ない。

「私では」どうする事も出来ない。

―――私は、「他人」なのだから。

さっきとても近くに感じた恭介が、また遠い。
恭介は、今、理樹の事しか考えられない。

―――私の事を見てくれない。

離される手、思わず咳き込んだけど、息苦しさなんかよりも、その事のほうが、苦しい。
恭介が、私の事を理解してくれない事が、悲しい。

……なんて、醜い心。

「元の世界に、帰る、んだ……」


36 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:43:56 ID:ev9BT8hV
恭介の言葉。

言葉の意図が、見えない。
とても嬉しい言葉の筈なのに、少しも嬉しく無い。

「ダメ、まだクリスがいる」

嘘だ。

クリスの事は確かに心配。
だけど、何よりも、今の恭介の方が遥かに心配だから。
再び、恭介の心に触れたいから。
でも、……その事を口に出せない。

……恭介も、クリスも侮辱する、醜い嘘

「クリスの事は俺にまかせろ」

恭介の言葉。

さっきまで何よりも頼もしかった言葉が、今はとても遠い。

「…………」

だから、返事を返せなかった。
恭介のその言葉が、私には何処か遠い、見知らぬ誰かの物にすら思えて。

遠い。


37 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:43:57 ID:/z0dCrRP
 

38 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:44:10 ID:FlG3nIjc
 

39 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:44:18 ID:biRbsN8E


40 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:44:32 ID:ev9BT8hV
それで、私は動けなかった。
彼も、その同じように動けなかった。
しばらくの間、そのままでいた。
静かな空間、私たちしか居ない世界。
今思うと、私たちは、油断していたのだと思う。
気がついた時には、死の影はすぐ近くにまで迫っていた。
言峰綺礼という、主催者との戦い。
その戦いを潜り抜けた事に安堵して、別の脅威が存在している事に頭が周らなかった。

纏めて、背中に流された金の長い髪。
碧の瞳。
まだどこか幼さの残る顔。
そしてそれを否定する眼光。
聞いていた内容とは若干の差異を覚えるけど…
それでも、間違い無い。

「キャル……ディヴェンス?」

恭介の、半信半疑といった声が響く。
カジノの入り口より堂々と中に侵入した人影は、紛れもなく、ファントムの、恭介の探し人。
キャル・ディヴェンス(実は年下)がそこにいた。




41 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:44:35 ID:AOUdOJ2x



42 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:45:10 ID:biRbsN8E


43 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:45:11 ID:AOUdOJ2x



44 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:45:17 ID:ev9BT8hV
そう、そこに、いてしまったのだ。
棗恭介にとって、取りうる二つの道。
トルティニタ・フィーネと共に歩む、人としての道と、自らの復讐のみに生きる、修羅としての道。
天秤が、人としての道へとゆり戻ろうとするその刹那、棗恭介は、復讐と言う、出口を見つけてしまった。
次へと繋がる道。
先に進む道。
そして、破滅への道がそこに存在した。


キャル・ディヴェンス。

金髪の少女、ファントム『ドライ』の本当の名前。
アイン、ツヴァイと異なる方法で作り上げられた『ファントム』であるドライには、無論その名に覚えがあった。

恭介の口から発せられたその言葉に、少女…ドライは僅かに表情を変える。
その顔に僅かに浮かぶのは、『困惑』という感情。
ドライには、目の前の二人の顔に覚えなどない。 おそらく、片方は日本人、もう一人は…アメリカかイタリアがイギリスか…ドライと同じ人種ではあるまい。
もっとも、仮に人種が同じであったとしても、格別同郷意識など持つはずもない。
俊敏な豹のように研ぎ澄まされたドライと、温和なレッサーパンダあたりを彷彿させるトルタ。
同じサバンナの動物であれ、捕食者と被捕食者が同郷意識など持つはずも無い。

そう、ここにいるのは捕食者と被捕食者。 無意識の内に、トルタはそのような感覚を覚えた。
かつて出会ったティトゥスなどと同じ、人を殺して生きている存在であるような。
それが、トルタが彼女を『キャル』であると認識しきれなかった理由でもある。
『ファントム』の告げたというキャル・ディヴェンス像は、目の前の少女とは、外見の酷似を除き、明らかに異なるものとしか思えなかったのだから。

「…なんで、あたしの事知ってんだ?」


45 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:45:53 ID:r3FikQvl


46 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:45:53 ID:AOUdOJ2x



47 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:46:31 ID:/z0dCrRP
 

48 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:46:40 ID:OGPHzkOy
 

49 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:47:49 ID:AkJeASgJ
 

50 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:48:26 ID:AkJeASgJ
 

51 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:48:37 ID:ev9BT8hV
不機嫌、から困惑、へと変化した表情は、その質問を告げたときには、困惑と興味を半々にブレンドしたものへと変わっていた。
元より殺すのみ。 ではあるが、それでも彼女の性格上、相手への興味は尽きない。
彼女は『キャル』とは、この島で一度も名乗っていない。 名乗るつもりも無い。
感情を排除した純粋な機械ではなく、感情の赴くままに才能を振るう彼女は、だがそれゆえに誰よりも奔放だ。
その好奇心が『少なくとも、話だけは聞く』という方向に、彼女の感情の針を傾かせた。

「あんたの…君のことは、『ファントム』と名乗る男から聞いた」

そのドライの変化を受けて、恭介が口を開く。
その内に、確かな手ごたえを感じながら。
ピクリ、とドライの顔に僅かな変化が生じるが、表面上は動きが無い。

「細かい事は省くが、俺たちは彼と……協力化にある。 お互いの知り合いの安全の確保、情報の交換、その他諸々の協力を約束している。
 ……そして、彼から君の特徴と名前を聞いたわけだ」

幾つかの嘘を取り混ぜながら、恭介はキャルに告げる。
自分達は敵では無いと。 キャルの事を守ると、そう…………偽る。
目的が、復讐を遂げるための道具が、今目の前にあるのだ。
逃がして、なるものか。 
彼女の事を告げれば、あの男はホイホイやってくるだろう。
その目の前で、どんな風に彼女の死体をさらしてやろうか。
恭介は続ける。


52 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:49:04 ID:AOUdOJ2x



53 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:49:11 ID:ev9BT8hV
ふと、トルタはその対話の中で、僅かな悪寒を覚えた。
恭介が、これほど滑らかにドライと話しているという事は、それだけ復讐が大事という事だ。
恭介の事は無論大事だ、彼の憎しみも理解は出来る。
復讐をやめろ、何て言う権利は無い。 恭介が復讐へと身を任すなら、その道を共に歩もう。
たとえ、その先に己の望む未来が無いとしても。
僅かな、おそらくは刹那の差で、恭介とトルタの道は分かたれてしまった。
その嘆きも、全て隠し通そう。
……けれども、何て言うのかそうじゃなくて、何かが違う。
恭介は、巧みに、それでいてさり気なく、トルタの側という不利な位置から、キャルに対して有利な位置に移動している。
その計算された言動の中に、トルタは恭介の確かな怒りと、そして『恭介らしさ』を見出した。
そしてそれは、トルタの中に、恭介が自分よりもドライを、鈴と理樹への復讐を選んだという、小さな嫉妬を、小さな悪寒を生じさせる。

だが、この場合のトルタの懸念は異なる。
そう、今気にするべきは恭介がどうとか言う事では無く、

「……ファントム……って、言ったんだな」
「ああ、そう名乗った」
「…………玲二……」

玲二、名簿の中に存在した名前。
おそらくは、ファントムと名乗った男の本当の名前。
恭介は、多分心の中でその名前を厳重に記憶した筈。

「そう……か」

そして、連絡は今すぐは付かないと述べ、そこで一度は話を切った。
感極まっているのか、キャルに動きは無い。
恭介にとっては、好機ではある。
少なくとも、キャルは表面上は警戒を解いている。


54 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:49:13 ID:AkJeASgJ
 

55 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:49:21 ID:OGPHzkOy
 

56 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:49:49 ID:/z0dCrRP
 

57 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:49:57 ID:ev9BT8hV
「玲二が、そんなことを」

男と女の違いもあり、体格の上では、恭介が有利。
加えて、トルタがいるのだから二対一。
(だが、焦る必要は無い、後で幾らでもチャンスはある)
それでも、恭介は待つ事を選択した。
それは、理性の無い鬼のものでは無く、棗恭介の常のあり方である。
恭介は、鬼としての道を歩みながら、人としての方法を用いてしまったのだ。

「そんな、ふざけた事を言いやがったのか」

だから、その時に彼は出遅れた。
怒りに曇る瞳で、相手を見ていた為、その真実を見落としたが為に。

放たれた炎は、カジノの中を赤く染め上げた。



咄嗟に、トルタは恭介に飛びついて、身体を伏せさせた。
間に合ったのは、本当に偶然。
弾道は微妙に逸れていたようだが、それでもあのままなら、恭介は深い傷を負っていただろう。
最も、それで救われたわけではない。
最初の一撃を、かろうじて避けただけである。


58 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:50:01 ID:biRbsN8E


59 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:50:22 ID:AOUdOJ2x



60 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:51:04 ID:AOUdOJ2x



61 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:51:15 ID:OGPHzkOy
 

62 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:51:21 ID:AkJeASgJ
 

63 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:51:34 ID:/z0dCrRP
 

64 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:51:51 ID:ev9BT8hV
咄嗟に自体を察した恭介が動くが、ソレよりも早くドライは動き、トルタの腹部に、容赦の無い一撃が突き刺さる。
見よう見まね、だが、数時間前に菊池真がドライに放ったものと同じ正拳突き。
何箇所かの違いゆえに、オリジナルには劣るものの、空手において最も強く、早いと称される一撃。
トルタの口内に酸い味が広がり、吐捨物が撒き散らされる。

ドライはそのまま地に伏したトルタには構わず、恭介に襲いかかり、右手のクトゥグアを向ける。
その威力を知る恭介は、咄嗟に横に飛び、
「…………!」
そこまでの行動を予期して『フェイント』を行なったドライの蹴りを受ける。
両の腕でしっかり防いだにも関わらず、身体に響く衝撃に耐えかね、苦痛の呻きを上げる恭介。

その間、十秒にも満たない僅かな時間で、既に勝敗は決した。
トルタは地に伏し、恭介は即時の戦闘不能、対してドライは僅かな傷すら負っていない。

だが、それでも、彼らには諦め、という思考は無い。
トルタは息も絶え絶えになりながらも、何とかデイパックに手を伸ばし、
恭介も、迫るドライに咄嗟に椅子を転がし、その進路を遮りながら、そこから飛びのく。
椅子に邪魔され、僅かに前進が遅れたドライの目に、トルタの構える銃が目に映り、
彼女はソコから飛びのく。

これで、状況は『詰み』から、一歩だけ遠のいた。
とは言え、たったの一歩、それだけの距離。
トルタは腹部のダメージでその場から動けず、恭介はようやく起き上がったところであり、
そして何よりも、今の彼らには、決定的に『あるもの』が足りない。

そんな状況になど構わず、いや、そんな状況だからこそ、ドライは恭介に迫る。
トルタは素早く動けない以上、恭介に隣接すれば流れ弾を恐れ、事実上トルタは無力化する。
そうして、トルタが二発目を撃てない間に、ドライの二度目の蹴りが、恭介の右手に突き刺さり、SIGSAUERP226を弾き飛ばす。
だが、恭介も怯まずに、左手のトンプソンコンテンダーをドライに向ける。


65 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:52:01 ID:AkJeASgJ
 

66 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:52:32 ID:biRbsN8E


67 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:52:32 ID:RrKj59RY
 

68 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:52:56 ID:/z0dCrRP
 

69 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:53:15 ID:AkJeASgJ
 

70 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:53:29 ID:ev9BT8hV
ソレを見て、咄嗟に、左に転がったドライの目に、突如現れる新たな人影。
棗恭介の背後に現れた、第三の予期せぬ敵。
「くっ!」
その人影に対して、咄嗟にクトゥグアの引き金を引き、ドライが放った銃撃は、そこにある人影に突き刺さった。
そう、人影。
恭介が、『偶然』センサーの範囲に入ったことにより、機動したその人影。
カジノに設置されていた、『メカコトミ』の身体を容易く吹き飛ばし、

そして、轟音

「ぐっ、あああああああ!!」

銃撃を受けて、メカコトミは大破し、爆発した。
その強大な光と音は、カジノのフロアー全体に、あたかも閃光音響手榴弾の様に荒れ狂い、その場に居る全員を叩きのめす。


一番早く、その状況から回復できたのは、地に伏せていたトルタであった。
音楽学校に通うが故に普通よりも良い耳を持つトルタであったが、それでも運よく機械の影で、光を直視しなかった事が幸いした。
予期せぬ自体の為に、ドライは戦闘本能に従い、恭介から少し離れた場所まで移動していた。
その隙に、這う様に恭介の側に移動するトルタ。
そして、そこでトルタの目に、メカコトミの破片を全身に受けた恭介の姿が映る。
どう、考えても戦闘など不可能だ。この場から、逃げるしかない。

そして、ここで、トルタの予期せぬ、第二の幸運が起こった。

「冷っ!?」

トルタには知る由も無いが、それは大型の建物に備え付けられているスプリンクラー。
メカコトミの爆発により生じた熱に反応し、室内に降り注ぐ。
爆発音と閃光、そして強い勢いを持つ人工雨が、部屋そのものを満たし、それにより、いくらファントムといえど、標的の捕捉は不可能となる。


71 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:53:56 ID:OGPHzkOy
 

72 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:53:58 ID:/z0dCrRP
 

73 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:54:09 ID:ev9BT8hV
「クソがっ!!」

放たれる業火。
だがこの場合は、炎という特性が禍した。
室内に降り注ぐ雨粒を蒸発させながらも放たれたそれは、だが明らかに威力を弱めていた。

そして、第三の幸運は、
開け放たれた裏口より響く怒声。
勢い良く破られたドアから、飛び込んでくる黒い影、スターブライトの毛並みが、そこにはあった。
若駒とはいえ、スターブライトの重量の衝突は、バイクなどを軽く越える。
少なくとも、視覚と聴覚を奪われた形になったドライには、どうしようもない。

「ガッ!?」

椅子を撒き散らし、吹き飛ばされるドライ。
その隙を逃さず、トルタは恭介の身体をスターブライトの上に乗せ、自らも共に、カジノから脱出した。




74 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:55:04 ID:RrKj59RY
 

75 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:55:04 ID:AkJeASgJ
 

76 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:55:26 ID:/z0dCrRP
 

77 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:55:27 ID:AOUdOJ2x



78 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:55:46 ID:AkJeASgJ
 

79 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:56:13 ID:ev9BT8hV
スターブライトの背にまたがりながら、考える。
恭介の怪我は、命には関わらないけど、それでも治療しないわけにはいかない。
特に、右のふとももに大きな破片が刺さっているのから、多分歩くのは辛いはず。
私の耳もおかしいし、どこかで休まないといけない。
けど、多分、キャルは私たちを追って来る。
スターブライトに追いつけるとは思わないけど、兎に角しばらくは安全な場所にいかないと……
あの目。
あれは、今の恭介と同じ、憎しみを持った目だから。
かなり距離を取らないといけない。

そう、同じ。

―――私じゃ駄目なの?

頭に浮かんだ言葉は、信じられないくらいに醜い感情だった。
今は、もっと他に考える事はいくらでもあるのに。
恭介に見られているキャルにすら、羨望に近い感情を感じている。

「北…だ……禁止エリアなら、アイツは追ってこれない」

恭介の言葉で、私は禁止エリア侵入アプリの存在を思い出す。
そんな簡単な事柄まで、私は忘れていたのだ。

――恭介の、大事なものになりたい。

「ごめんな、…トルタ。
 俺が、」

その先を、聞きたくない。
聞いてしまえば、私は、こんどこそ全てを失ってしまう気がして。



80 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:56:26 ID:OGPHzkOy
 

81 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:56:44 ID:biRbsN8E


82 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:57:05 ID:AkJeASgJ
 

83 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:57:07 ID:ev9BT8hV
「仇を、取るんでしょ!」

思わず、叫んだ。
解ってる、私では、変わりになれない事なんか。
私だって、恭介の事をクリスの変わりだなんて思っていない。
でも、願ってしまう。
恭介に、ここまで思われたい。
それがどんなに醜い感情なのかわかっているのに、願わずにいられない。

「あの子を……にしてファントム、いえ玲二って奴に見せ付けてやるんでしょ」

言ってしまったら、何もかもが壊れてしまいそうだから。
今の恭介の信頼も、私がクリスに奉げた時間も。
私は、クリスの事が好きだった。
彼の為に、そう想い暮らしていた。
そうして、彼は真実を見つけた。
王子様は記憶を取り戻し、目をさました眠り姫と手をとってめでたしめでたし。
そう、その結末を、望んでいたはずなのに。

「だったら、その為に出来る事をしようよ」

王子様に邪な思いを抱いてしまった悪いお姫様は、舞台に取り残されてしまいましたとさ。

めでたしめでたし

「私も、手伝うから」

そう、すでに一度、理解したはずなのに。
邪な想いでは、決してどうにもならないのに。


84 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:57:17 ID:AOUdOJ2x



85 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:57:21 ID:RrKj59RY
 

86 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:57:30 ID:/z0dCrRP
 

87 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:57:45 ID:ev9BT8hV
「恭介の、パートナーとして」

パートナーなら、共に居られるから。
私は、恭介を好きになりたい。
でも、この気持ちは本当の気持ちなのか、それすらも解らない。
嘘を付きすぎて、わからなくなってしまった。
私は、恭介が心配だからかれの側にいたいのか?
彼の事を独占したいから彼の側にいたいのか?
私を見て
私を見ないで
私の嘘に気付いて。
私の醜い嘘に気付かないで。
私の思いに気付いて
私の醜い嫉妬を見ないで。

何て醜い嘘。

クリスの為?

違う、私の為。

私が、恭介といたいから。

恭介の心が怖い。

私の心が怖い。


88 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:58:11 ID:/z0dCrRP
 

89 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:58:30 ID:AkJeASgJ
 

90 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:58:31 ID:ev9BT8hV
彼を、好きになるのが怖い。

その先に、またあの痛みが待っているのかと思うと。

この想いが怖い。

想いを告げてしまうのが怖い。

「また」拒絶されてしまうのが怖い。

告げてしまえば、また同じ苦しみを味わうことになってしまう。

恭介の側に、居られなくなってしまう。

そして、そうだとわかっているのに、好きになる事をやめられない。





91 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:58:53 ID:OGPHzkOy
 

92 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:59:01 ID:RrKj59RY
 

93 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:59:09 ID:ev9BT8hV
気が付いて、いないんだろうけど、トルタの頬を涙が伝う。
ああ、そういえば、そうだったんだな。
ごめんな、トルタ。

「もう、いいんだ」

そう、もういい。

「復讐を、捨てる気は無い」

これは、おれがやらないといけないことだ。

「けど、それよりも大事なものを、見つけたから」

だけど、一番じゃない。

「今、守らなきゃいけないものを、見つけたから」

本当に、一番守りたいものが、ここにあるから。
だから、俺はもう、迷わない。



かくして、ようやく、男女はあるべき形へと収まった。
もう、彼らが迷う事は無い。
今のこの苦難も、今までのように思い出へと映り行く。

その筈だった。



94 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:59:23 ID:AOUdOJ2x



95 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:59:35 ID:biRbsN8E


96 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:59:39 ID:ev9BT8hV
恭介達の不運は2つ。
繁華街である以上、少し探せばバイクの一台や二台があること。
そして、スプリンクラーによって生じた水滴が、道しるべとして機能したこと。

放たれた業火が、スターブライトの前足を、消し飛ばした。
悲鳴を上げる暇も無く、二人は路上へと放り出されそうになるが、すんでのところでスターブライトは踏ん張る。
だが、無論その速度は見る影も無く落ちている。
慌てて後方を振り返った二人の目に映るのは、バイクを駆る金髪の少女の姿。

そうして、その後は、トルタには嵐のようにしか思えなかった。
どうやって、ドライを一時でも引かせたのかすら、わからない。
気が付けば、辺りは薄暗く、そして、

二人は、地面へと落ちた。



スターブライト……

倒れた巨体、
既に先の無い右の前脚。
すでにうつろになりつつある瞳

「ごめんなさい」


97 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:59:50 ID:AkJeASgJ
 

98 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:00:08 ID:biRbsN8E


99 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:00:22 ID:ev9BT8hV
この子に何をしてあげたのか
ただ、一緒にいただけなのに、それでも、守ってくれた。
そして、もう、ここまでなのかもしれない。
禁止エリア
何とかたどりついたその場所は、周囲が、開けていた。
丁度、線路の側にある所為で、とても見通しの良い地形。
建物があれば、ソノ中に隠れる事だって出来たのに。
禁止エリア内の建物は、近いものでも100メートルは離れている。
脚の怪我を追っている私では、とても恭介を連れて逃げられるとは思えない。

……それでも、やるしかない。

キャルが追ってくるまで、もうそれほど時間があるとは思えない。
…その時、響きだす電子音。
それで、私は携帯電話の範囲から出ている事に気が付いた。
寄り添って移動しない限り、簡単に効果範囲とやらから出てしまうらしい。

なので、恭介の近くに移動して、それで電子音が止まり、
そして、
そして、私の目の前に、恭介の銃口があった。

「……どうして」

わからない。
何故、恭介が私に銃を向けるのか。
そんな私に構わず、恭介はデイパックに手を入れ、ソレを取り出す。

「もう、行くんだ」



100 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:00:27 ID:AOUdOJ2x



101 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:00:35 ID:/z0dCrRP
 

102 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:01:03 ID:biRbsN8E


103 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:01:23 ID:AkJeASgJ
 

104 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:02:05 ID:ev9BT8hV
ポン、と放り投げられる首輪。
それは線路の横の窪みに落ちる。
そして、その首輪からまた電子音が鳴る。

「これで、一つ。
 もう一つ爆発すれば、アイツは俺たちが……君が死んだと思う筈だ」

それは、別れの言葉。



「俺は、まだ動けない」

千羽烏月との接触。
ティトゥスとの二度の戦い。
言峰との賭け。

「君には、まだするべきことがあるだろう?」

何時の時にも、おれの側にはトルタがいた。
トルタがいたから、おれはここまで生き残ってこれた。
そうだ、俺は、何時だって一人じゃなかった。

「いいや、俺は、やるべき事をやった。
 ファントムは憎い、でもそれ以上に、今ここで君を守る事のほうが、遥かに大事だ」

リトルバスターズの皆がいたから、あの奇跡が起きた。
トルタがいたから、ここまでこれた。

簡単な話だったんだ……


105 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:02:05 ID:biRbsN8E


106 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:02:07 ID:AOUdOJ2x



107 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:02:20 ID:AkJeASgJ
 

108 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:02:40 ID:biRbsN8E


109 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:02:41 ID:/z0dCrRP
 

110 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:03:07 ID:AkJeASgJ
 

111 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:03:14 ID:ev9BT8hV
俺が一人、勝手にキャルと戦おうとしたから、俺はこうして負けたんだ。

「理樹も鈴も、きっとわかってくれる。 まあ鈴には殴られる、かもだけどな」

ああ、でも、もう間違えない。

トルタなら、きっと間違えない。

「最期に言うと未練がましく思われるかもしれないけど……俺、トルタの事が好きだった。
 どうして、とか言われても、気が付いたら、としか言えないけど、兎に角好きだ。
 ……ああ、それだけは、どうしても言っておきたかったんだ」
トルタが、僅かに驚いたような表情を浮かべる。
「…………ごめん、やっぱ忘れてくれ。
 こんな事言っても、マイナスにしかならないよな」

正直、もう少し器用な男だと思っていたんだけどな…

「……もう、どうしようも無いのかな、……恭介?」
トルタの、責めるような声。
「………………」
「うん、ごめん、……わかってるよ、恭介の所為なんかじゃない」


その時、響く轟音。
先ほどの首輪が、爆発したのだ。
そうして、トルタは、俺から背を向けた。


112 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:03:31 ID:/z0dCrRP
 

113 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:03:54 ID:epTRcN6v
クリス……一度ぶん殴ってやりたかったけど、それでもお前に任せる、幼馴染を、守ってやれ。

真人、来ヶ谷、今になって思うなんてリーダー失格だけど、どうか、無事でいてくれよ。

アル、羽藤、双七、トルタを守ってくれると嬉しいな。

すまない理樹、リーダー失格だったな俺は。

鈴の敵はとってやれなかった。

ああ、それでも、俺は、最期に守れたんだ。
大事な人を。

さよなら、トルタ。

どうか、最期まで無事で……





114 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:03:57 ID:RrKj59RY
 

115 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:03:57 ID:AkJeASgJ
 

116 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:04:04 ID:mXidQor3



117 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:04:22 ID:hC/pJJUv


118 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:04:53 ID:ulcEHFgN
 

119 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:05:36 ID:ulcEHFgN
 

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:05:45 ID:QoPrKsPK
 

121 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:06:04 ID:epTRcN6v
一歩、一歩、歩く。
少しずつ、少しずつ私と恭介の間の距離が離れていく。
そして、いつかはその距離が永遠となる。

丁寧に、高い音が残り時間を告げてくる。
別れの時までは、もう時間が無い。

そうして、最期に振り返る。
目から零れそうになる涙を、隠しながら。

「恭介……私は、……私も、恭介の事が好きだったよ。
 何時からか、何て私にもわからないけど、でも、大好きだった」

好きだと、いう気持ちを素直に伝えられる事が、こんなにも嬉しいなんて、思わなかった。

好きな人が、私の事を見てくれる事が、

エゴだって判っていても、恭介が、私だけを見てくれた事が、たまらなく、嬉しい。

うん、胸を張って言おう。

大好きよ、恭介。

出来るなら、もっと貴方と、同じ時を過ごしていたかったけど。

さよなら、恭介。

私が、好きになった人。

私、トルティニタ・フィーネは、棗恭介の事が大好きです。



122 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:06:14 ID:ulcEHFgN
 

123 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:06:33 ID:QoPrKsPK
 

124 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:06:37 ID:ev9BT8hV


「…………」

道の先より響く轟音。
確かな、爆発音。
確かに2つ、爆発の音がした。
記憶の中にある爆発音と、同じもの。

とはいえ、間違い無い。

「……訳、わかんねぇな」

逃げるだけ逃げて、禁止エリアに入ってしまいそれで終わり。
正直言って、間抜けとしか言うようが無い。
……だが、死んだ事を疑うだけの材料も無い。
折角のヒントも、これで一から探し直しとなる。

「玲二」
かつて最も大事であった人の名前が口を着く。

いや、今でも、多分最も大事な人。
どうして、切り捨てる事など出来ようか。
姉の敵討ちに協力してくれた事も、初めて着たサラサラの服の感触も、満腹に食べたハンバーガーの味も。
全て、キャルの中で捨てえぬ思い出として存在している。

そう…


125 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:06:51 ID:biRbsN8E


126 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:07:06 ID:OGPHzkOy


127 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:07:07 ID:epTRcN6v
誰が、許容できるか。

玲二は、キャルを捨てたのだ。
ファントムの名を捨て、アインと共に。
再び、玲二として現れるなら、キャルを守るというなら、ぶん殴りつつもあるいは許容出来たかもしれない。
ファントム『ツヴァイ』として、追っ手であるファントム『ドライ』を殺すというなら、それもまた理解は出来た。

だが、再び、ファントムの名を名乗り、それでいてドライたるキャルを保護すると。
あの男は、そう言ったのだ。

キャルの苦悩も、ドライはしての誇りも、全て気にせずに。
ただ、守るべきものとして、下に見たのだ。
『ファントム』を名乗りながら。

キャルを置き去りにしながら、ドライを守るなど、そんな事、許せるはずが無い。
それは、ファントム・ドライの全てを否定しているのだから。

(…………玲二。
 もうあたしはキャル・ディヴェンスじゃない。
 ファントム、ドライ。 ……あんたの、敵だ)


【G-6 北/1日目 夜】


128 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:07:16 ID:mXidQor3



129 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:07:18 ID:/z0dCrRP
 

130 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:07:59 ID:ulcEHFgN
 

131 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:08:10 ID:epTRcN6v
【ドライ@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-】
【装備】 クトゥグア(0/10)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】 支給品一式×2、マガジン(クトゥグア)×1、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom、噴射型離着陸単機クドリャフカ(耐熱服付き)@あやかしびと、包帯、業務日誌
【状態】 左足首捻挫(治療済み、患部に包帯を巻いている)
【思考・行動】
 基本:玲二(ツヴァイ)を殺す。玲二を取り巻く全てのものを壊す。
 1:もう深くは考えない。殺す。
 2:人間を見つけたら玲二を知っているか尋ね、返答に関わらず殺害する。
 3:謎の追跡者(曜子)を徹底的に利用する。付け入る隙を探し、殺せる、あるいは逃げられる体勢を整える。
 4:後々謎の飛行物体の発射地点に向かう?
【備考】
 ※トルタと恭介は死んだと思っています。 
 ※クドリャフカの操縦を覚えました。(なんとか操縦できる程度です)
 ※クドリャフカの移動速度は1エリアを約5分で通り抜ける程度。
 ※業務日誌の最初のページには「麻婆豆腐の作り方」、最後のページには「怪しげな画」が書かれています。
 ※ただ最後のページは酷い殴り書きなので、辛うじて「ヨグ・ソトース」「聖杯」「媛星」ぐらいが読める程度です。
 ※発電所から伸びる地下通路の存在に気付きました。
 ※支倉曜子の能力のみを信頼、危険性を警戒しつつ、その意図を汲むつもりです。


……けれど、キャル・ディヴェンスは……キャル・ディヴェンスならば、吾妻玲二を許容出来るのだろうか?


132 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:08:14 ID:hC/pJJUv


133 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:08:22 ID:QoPrKsPK
 

134 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:08:32 ID:pvjMAoS2


135 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:08:51 ID:hC/pJJUv


136 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:09:30 ID:ulcEHFgN
 

137 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:09:35 ID:mXidQor3



138 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:09:52 ID:QoPrKsPK
 

139 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:10:13 ID:ulcEHFgN
 

140 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:10:35 ID:epTRcN6v


衝撃は、感じなかった。
最期の瞬間は、覚悟していたそれよりも、あっさりとしたものだった。

2つ首輪が爆発して、二人が死んだように見せかける。
その計画に、落とし穴は存在しなかった。
事実、恭介が知るよしもないが、ドライは追撃が無駄と悟り、引き返したのだから。
そう、計画に落とし穴は無い。

あるとすれば、唯一つ。

棗恭介は、最期まで、トルティニタ・フィーネの嘘を見抜けなかったのだ。



おれは、 何 を 失ってしまったのだろう?

目の前にある光景が、どこか遠くのものに思える。


教えてくれ、誰か。
俺は、どうすればいい?
どうしたい?


141 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:10:37 ID:pvjMAoS2


142 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:10:51 ID:mXidQor3



143 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:11:07 ID:ulcEHFgN
 

144 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:11:20 ID:epTRcN6v
鈴を失った時、俺の側にはトルタが居た。

理樹を失った時、おれの側にはトルタが居た。

トルタを失い、俺の側にはトルタは居ない。

誰も居ない、
誰も、
誰も、

誰か、教えてくれ。

おれは、どうすればいい?



なあ、トルタ

教えてくれよ、
俺はどうすればいい?
君の笑顔が見たい。
まるで歌うかのような声が聞きたい。

たのむ、答えてくれ。

何故君が側にいないのか、答えてくれよ。

憎いという感情すら浮かんでこない。
憎む、という行為すら、俺には分不相応としか感じられなかった。


145 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:11:32 ID:QoPrKsPK
 

146 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:11:38 ID:TLSGC3eU
 

147 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:11:42 ID:pvjMAoS2


148 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:11:49 ID:hC/pJJUv


149 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:12:03 ID:ulcEHFgN
 

150 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:12:05 ID:mXidQor3



151 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:12:53 ID:ulcEHFgN
 

152 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:13:39 ID:ulcEHFgN
 

153 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:13:53 ID:pvjMAoS2


154 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:14:21 ID:epTRcN6v
何も、感じない。

何も。

何も。


【F-6 南(禁止エリア内)/1日目 夜】
【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】トンプソンコンテンダー(弾数1/1)
【所持品】:支給品一式×3、SIGSAUERP226の予備弾3@現実、コンテンダーの弾44発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!、アサシンの腕、USBメモリ
【状態】:ツヴァイへの強い憎しみ、脇腹に深い切り傷(処置済み)、胸部に軽い打撲、肉体的疲労(中)、やや精神不安定(トルタの存在により緩和中)
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し、理樹と共に脱出する。トルタの生存に力を尽くす。ただし慎重に慎重を期す。
 0:思考停止
 備考】
 ※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
  故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※この殺し合いは、『神々のゲーム』であり、自分達はその駒であると考えました。
  ゲームの終了は、『優勝』『優勝以外の何か』を満たした時だと推測しています。
  ただしゲーム終了後の駒の扱いについては疑念を持っています。
 ※デジタルカメラに収められた画像データのうちの一つは、『首輪の設計図−A』です。
  外見から分かる範囲での首輪の解説が記されていますが、内部構造については一切言及はありません。
  また、デジタルカメラで閲覧した場合画像が縮小され、文字の殆どが潰れて見えます。拡大はできません。
  記されたデータの信憑性は不明です。
  他に首輪の設計図があるかどうかは不明です。
 ※神埼は『優勝以外の条件』に関与していると考えました。
 ※トルタの過去の話を聞きました。
 ※トルタに依存しつつある事を自覚しました。
 ※言峰の誘いに乗るつもりは今の所はありません。
 ※トルタにより称号(イタリア語なので恭介は意味を知らない)を付けられました。

155 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:14:34 ID:ulcEHFgN
 

156 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:14:56 ID:mXidQor3



157 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:15:01 ID:QoPrKsPK
 

158 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:15:56 ID:ulcEHFgN
 

159 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:16:32 ID:mXidQor3



160 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:16:49 ID:epTRcN6v
【刹那の携帯電話@School Days L×H】

清浦刹那の持つ携帯電話。何人かの人間の電話番号が登録されている他、禁止エリア進入アプリがインストールされている。
このアプリを作動させた場合、このアプリがインストールされた携帯電話から
半径2mまでに存在する首輪は禁止エリアに反応しなくなる。
ただし、効果の持続時間は1時間、3時間、6時間の3種類あるが、それぞれ1回ずつしか使用できない。
現在、三時間を使用中。
【メカコトミ@ギャルゲ・ロワイアル2ndオリジナル(ToHeart2):大破】
【トルティニタ・フィーネ@シンフォニック=レイン:死亡】
【スターブライト@Strawberry Panic!:死亡】



161 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 00:18:12 ID:epTRcN6v
以上です。
沢山の御支援、ありがとうございました。

誤字、脱字、展開におかしな点等ございましたら指摘お願いします。
今回は特にご迷惑をおかけしてもうしわけありませんでした。

162 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:26:09 ID:QoPrKsPK
投下乙です!
ああ・・・トルタ・・・恭介が無理矢理にも強制送還しておけばこんなことに・・・
最後の最後で策に裏目が出てしまったぜ
全てを失った恭介はもう廃人コースしか残ってないのか・・・

163 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:28:26 ID:UIFTc+K9
投下乙です

トルタ…俺も騙されたよ…orz
最後の最後で嘘偽りなき本心を晒して散っていった彼女に黙祷を捧げます。
そして残されてしまった恭介はどこへ向かってしまうのか?

164 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 00:53:22 ID:TLSGC3eU
投下乙です!!!

全員が全員とても輝いていてとても面白かったです!
恭介、ドライは今後がすごく楽しみなつなぎ方だし、
特にトルタの最期には本当にやられました
どっちかが死ぬかなとは思っていたけどまさかこんな
超ド級の破壊力を持った感動話で攻めてくるとは…

165 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 05:51:45 ID:Q+cWbwK8
投下乙です!!

トルタはレッサーパンダっぽいのか…ではなくて、最後まで類まれな
嘘つきだった彼女に涙しました。ハッピーエンドに恵まれなさすぎる…。
恭介の記憶のトルタがいくら微笑んでいても、もう本人はどこにもいない
んですよね、タイトルがトルタから恭介への遺言だとすれば、残酷なことを
言うと思いました。次回の恭介が楽しみな反面、少々怖いです。


166 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 18:51:03 ID:yl0uQh19
投下乙です
トルタ……彼女らし過ぎる、そして哀し過ぎる最期だ
例に漏れず騙された
葛木Pの時といい、うっかり氏は泣かせる展開が上手いなあ
恭介、何とか立ち上がってほしい所だが……さてどうなるか

167 : ◆UcWYhusQhw :2008/08/12(火) 19:05:04 ID:6dX1Maba
少し報告を。

wikiのデザインを試験的に変えてみました。
横幅が広くなってるはずです。
前のがいい、もしくは今の方がいいなど意見をお待ちし通ります。

168 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 19:13:31 ID:yl0uQh19
>>167
デザイン変更お疲れ様です
断然今の方が良いですね
前のだと、一行が長いと途中で強制改行食らってたので……w

169 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 19:15:32 ID:g+S3JE/8
>>167
変更お疲れ様です。
この方がよいですね、やはり横幅が長い方が見やすいですし

170 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:53:59 ID:Y2jJn3cO
大空に赤々しく光る太陽。
東の方角から昇っていたそれは、今となっては既に西へ沈んでいた。
時間の経過は何があろうと不変であり、至極当然な事と言えるだろう。
この殺し合いが始まりを告げた時から、もう18時間程も過ぎてしまったのだから。
太陽の差し込む光が無くなっていき、周囲に広がっていた光が失われていく。
大きくそびえたつ山も、どこまでも広がっていそうな海にも。
そしてそれはエリアF-7南部に存在し、様々な建物が群をなす街中にも言えた。

「んー……そろそろ放送かな」

街中の一角、特に変哲のない一軒家で一人の女性が、もとい一人の『美少女』が口を開く。
何故、わざわざ美少女と形容するのかはあまり気にしないでほしい。
燃えるような赤い髪をポニーテルで纏め、活動的な印象を与えさせる。
丸々と大きな両の瞳は、何処か彼女を実年齢よりも若々しく見立てる事に成功している。
まあ、彼女の実年齢は誰にもわからない事であるが。
そう。ほんの少しだけ、何か不安そうな表情をした彼女――杉浦碧は正義のヒーローよろしく年齢不詳の美少女であったから。

「そろそろ、移動したいから早いとこやって欲しいんだけどなぁ碧ちゃん的には。
ちょっと、あたしの方が早く準備しすぎたかもね。あっははははは……って集中、集中〜〜〜」

窓ガラス越しに夜空を見上げる碧。
どんな時でも特に変わりようのない、漆黒の空を盃として、碧は思いに耽る。
碧がこの一軒家に陣取っている理由。
それは時計を見る限りはもうすぐ放送されるであろう、第三回放送とやらの内容をしっかりと聞き届ける事。
今までの放送、仲間達と交わした情報から既にこの場では何十人ものの参加者が死んでしまっていて、殺し合いに乗った参加者にいつ襲われるかわからない。
もちろん、ある程度の相手は撃退する自信はあるが流石に不意をついた奇襲を受ければ、話は違ってくる。
そのため、街中で自分の姿を晒しながら放送を聴くよりも、どこか建物の中に一時的に潜みながら危険は少ないだろう。
碧はそう考え、既に名簿とペンを取り出し、計画的に準備を完了していた。

171 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:54:10 ID:hC/pJJUv


172 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:55:03 ID:zFXf6ya4



173 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:55:04 ID:Y2jJn3cO
駄洒落を外しがちな同僚と女難の相が出ているとしか思えない同僚に自分の破天荒な行動をいつも呆れられている碧にとっては、とても珍しい事。
その理由にはいつも、必要以上にリラックスしすぎた風華学園の環境とこの殺し合いの環境が違いすぎるという違いもあるのだろう。
流石の碧でも、この場でよゆーよゆーと言っていられる程、緩い状況ではないのだから。
だが、それよりも碧にはもうすぐ放送される内容に固執する理由があった。

「皆、一人も欠けたら許さないんだからね」

キッと顔をしかめ、碧は真剣な表情を浮かべる。
碧の脳裏に浮かぶのは六人の男女の顔。
それらは橘平蔵、直枝理樹、ユメイ、蘭堂りの、大十字九郎、源千華留の六人。
勿論、この殺し合いに呼ばれる前の知り合い、この殺し合いで知り合った人達にも一人も死んで欲しくはない。
だが、今の碧はどうにもそれら六人が――危険な状況で離散せざるを得なかった六人が気になり、放送の内容について気が気ではなかった。
千華留はきっと大丈夫だろう。
彼女は先に出発したお陰で運よく、確認するだけでは二人の襲撃者である鉄乙女と、トレンチコートの女――支倉曜子の襲撃から逃れる事は出来ただろう。
恐らく、九朗と理樹の方もそうだ。
戦闘不能に陥らせる事は出来なかったが、自分が足止めをし、別の方向へ行った二人に追いつけるような距離ではなかったから。
しかし、問題なのは三人。
碧は彼ら三人の安否がどうしようもなく気になっていた。

174 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:55:09 ID:hC/pJJUv


175 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:55:22 ID:aLg/wxze
支援

176 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:55:37 ID:zFXf6ya4



177 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:56:23 ID:Y2jJn3cO
「橘さん、りのちゃん、ユメイさん……絶対に無事だって、あたしは信じてるよ」

自分達を逃がすために乙女との闘いに挑んだ平蔵。
トレンチコートの女の投石により重傷を負ってしまったりの、そして彼女と共に自分が逃したユメイ。
千華留、九朗、理樹の三人より更に危うい状況下に置かれた三人を思うと急に心苦しくなってくる。
もし、彼らの内誰か一人でも死んでしまっていたら。
嫌な考えが碧の頭の中で浮かんでくるが、彼女は頭を左右に振って必死にそれらを振り払う。
そんなことがあってたまるもんか。
柄にもなく後ろ向きの考えを忘却の彼方へ押しやる碧。
その姿は気丈なものであり、どこか強がりをみせているようにも見えるのは気のせいであろうか。
やがて、碧の表情が一瞬で険しいものとなり、彼女はクルクルと廻していたペンの動きを止めた。

『やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』

三回目の放送を告げる声が、どこからともなく聞こえてきたから。
今までのものとは違って聞き馴染んだ声。
己の唯一無二の武器であるエレメントを使い、大切な者――想い人への想いの強さによって生み出す異形の子であるチャイルドを操る存在。
Highly-advanced Materializing Equipment――通称“HiME”。
碧を含むHiME達にとって聞き知った声の持ち主、炎凪が放送の司会役を新たに担っている事に彼女は驚きを見せる。
やがて流れ始めた放送は碧に受け止めがたい事実を突きつけていく事になった。

◇  ◆  ◇

178 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:56:35 ID:hC/pJJUv


179 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:56:50 ID:mXidQor3



180 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:57:28 ID:Y2jJn3cO
『じゃ、また今度、バイバイ』

相変わらずどこか人を馬鹿にしたような凪の陽気な声が放送の終わりを告げる。
自分の教え子、神崎黎斗だけでなく炎凪すらもこの殺し合いに加担している事実が碧に圧し掛かる。
前々から自分達HiMEの前に現れ、意味深な台詞を残して、自分達の反応を面白がっていた凪。
凪が何を思ってこんな殺し合いに関与しているのかは知らないが、このまま放っておくわけにもいかない。
必ず、神崎や凪を表舞台に引きずり出し、彼らの野望を徹底的に叩く。
強き思いを伴い碧は決意を固める。
しかし、碧は直ぐに行動を起こそうとはしない。
何故なら碧を酷く動揺させる事があったから。

「そんな……こんなコトって…………」

言うまでもない。
放送で知ってしまった計7人の参加者が死亡したという事実。
特に自分の仲間、そして嘗て仲間だった者達の死の事が碧に大きな悲しみを与えていた。
勿論、りのとユメイが無事であった事は嬉しい。
千華留、九朗、自分の知り合いが生きている事と以前共に行動していたクリス・ヴェルティン、来ヶ谷唯湖の二人の生存もそうだ。
しかし、それでもあの別れの後に、死んだ仲間が出てしまった事実を受け、直ぐに立ち直る事は碧には出来なかった。

「けど、なんだって理樹くんが……もしかしてあの後、理樹くん達の方を追っていったとでもいうの?
あのコートの子は!?」

別れた仲間の中で、死んでしまう可能性は低いと思っていた理樹。
だが、予想は非常にも外れ、理樹は死んでしまった。
コート姿の襲撃者が自分と闘った後、彼らを追ってどういうわけか九朗は生かし、理樹だけを殺したのだろうか。
有り得ない話ではないかもしれない。
あの襲撃者はとてつもない脚力で走った、もしくはなんらかの方法で彼らの位置を知っても不思議ではない。
なんせこの場ではHiMEのように常識を超える人間、代物がゴロゴロと散在しているのだから。
思わず、自分が逃がした襲撃者、自分の不甲斐なさへの後悔に碧は拳を握った。

181 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:57:34 ID:hC/pJJUv


182 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:57:41 ID:yl0uQh19
 

183 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:58:16 ID:mXidQor3



184 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:58:17 ID:Y2jJn3cO
しかし、そこまで考えて碧はやがて握り拳を解き、やはり自分が闘った襲撃者が理樹に手を下してはいないと考える。
理樹、九朗とは反対の方向へ別れ、襲撃者は自分達が走っていた方向からやってきた。
襲撃者が二人を襲うのは時間的に、位置的に無理があるように思えるからだ。
仮に先程、考えたようにレーダーのようなものを持ち、彼らの位置が特定出来ても何故わざわざ遠い位置に居る彼らを狙う必要があるか。
あまりこんな事は思いたくないが、どうせ狙うのであれば負傷したりのと彼女を引き連れているため、普段通りの対応が出来ないユメイを狙った方が効率的。
若干の不利を感じ取り、自分との闘いを中断し、見事逃走を果たしたあの襲撃者がそこまで頭が回らないわけがない。
ならば、理樹は何故死んでしまったのか。誰に殺されてしまったのだろうか。

あの時の状況を考えるならば一人、疑念を抱く人物が居る。
理樹と共に居た事は確定的であり、いつでも彼を殺す機会はあったもの。
そして、その人物自身は何故か生きている事実が彼への疑惑をいっそう増長させる。
そう。現時点で最も怪しい人物。
それは――大十字九朗。
碧達と充分に離れ、理樹と二人きりになった所で彼を殺し、自分は何処かへ行ったため彼は生き残る事が出来た。
そう考えても可笑しくはない。

「あ、あはははは……あたしも相当参っちゃったのかなぁ。ありえないっての」

途端に碧はほんの一瞬、何故か思いついてしまった馬鹿げた考えを笑って跳ね除ける。
いつも前向き一直線な思考回路を持つ碧には珍しい、後ろ向きな考え。
そんな考えを思いついたコトにより、碧は改めて自分がいかに疲れているかを実感し、改めて九朗の無実を確信する。
共に行動したのは殆どないが、どうやらお人よしの典型的な熱血馬鹿のように見えた九朗。
準備室でお菓子を漁ったり、近所のお店でアイスを買い占めたりなどしている碧だが、伊達に教師という職業に就いているわけではない。
短い時間ながらの観察の結果、わかった九朗の人柄、そして彼が周囲の仲間と築いていた信頼関係から考えても、彼が自分達を騙していたとは考えにくい。

185 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:58:31 ID:aLg/wxze
支援

186 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:58:47 ID:hC/pJJUv


187 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 20:59:07 ID:Y2jJn3cO
「だいたいさぁ仲間を信じられないと終わりだと思うんだよね。あたしはさー」

そもそも、考えにくいのではない。
考えるコト自体が自分らしい行動じゃない。
そう。共にこの殺し合いを潰そうと眼を、意思を合わせた仲間を信じることが出来ずに、どうやって信頼関係を結べるのだろうか。
一抹とはいえ、自分らしくない考えを恥じて、改めて碧は理樹の死を考え、ある結論を下した。

「……仲間ね。きっと仲間が居たんだ」

最も有り得そうな理由。
それは自分が闘った襲撃者の他にも別の襲撃者が居たというケース。
勿論、理樹と九朗が行った方向で鉢合わせになり、襲撃を受けたという事。
九朗だけが生き残った理由は彼が理樹を逃がすために一人で襲撃者と闘い、襲撃者は彼に止めを刺したつもりだったが運よく生き残り、そして理樹を追撃した事で説明がいく。
少なくともこれが一番しっくりくる理由だと碧は思い、改めて理樹の死を悔やむ。
知り合ったばかりとはいえ、大事な仲間の一人を失った喪失感は何度経験しても辛いものだから。
やがて、碧は今回の放送で一番衝撃を覚えた二人の死について考え始めた。

「橘さん、てっちゃん……死んじゃったんだね…………」

この殺し合いで初めて出会い、修羅の道を歩んでしまった乙女。
自分以上に特徴的な口調で話し、いきなり自分の唇を奪った平蔵。
平蔵の事は勿論、何人もの参加者を殺したらしい乙女の死は碧にとって堪えるものがある。
碧がそれぞれ二人と共に行動した時間はほんの少しのもの。
しかし、二人は碧にとっては大きな影響を残していた。
ほんの少し、別行動を取った間に殺し合いに乗ってしまった乙女を止める事が出来なかった後悔。
自分が命を諦めた欠けた時、颯爽と自分を救って叱咤激励を行い、自分の意思を立ち直らせてくれた平蔵への感謝の念。
忘れることは出来ない、あの時の感情。彼ら二人と交わした会話は今も記憶に新しい。
だが、そんな二人は死んでしまった。
自分達があの場を離れた時、相打ちになったかもしくは介入者の登場により二人とも死ぬ事になったのだろうか。

188 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:59:22 ID:zFXf6ya4



189 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:59:26 ID:hC/pJJUv


190 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:59:41 ID:mXidQor3



191 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 20:59:47 ID:yl0uQh19
 

192 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:00:01 ID:zFXf6ya4



193 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:00:15 ID:Y2jJn3cO
「他人事じゃない、あたしも覚悟決めなきゃ……静留ちゃんもいつか必ず止めないといけないんだ……!」

師弟の関係を結び、教師と生徒の関係でもあるにも関わらず闘い、互いに命を落とした平蔵と乙女。
残酷すぎる運命だと思うが、それは碧にも関係がない事ではない。
碧も以前、自分の教え子の一人、藤乃静留と闘い合ったのだから。
静留がHiMEであった事を碧は知らず、その事実を知った時の衝撃は今でも記憶に新しい。
あの時自分のエレメントを静留に向けるだけでも、嫌な感覚を碧は感じた。
たとえ、碧と静留がいつか命を、大切なものを賭けて闘うHiMEの運命の下に居る存在だとしても。
だが、辛うじてどちらかの命が落ちる事はなかった碧達とは違い、彼ら二人は双方命を落とした。
二人が闘い合う姿を碧は思わず思い浮かべ、両目を閉じる。
その強靭な拳で、蹴りで自分の愛する弟子、乙女の身体を傷つける中で平蔵は何を想ったのだろうか。
人を殺める程の狂気に囚われた乙女は、自分の敬愛する師、平蔵に剣を向けた時、どんな感情を覚えながら叫び声を上げたのだろうか。
考えるまでもない。閉じた両目を見開き、碧は思う。
きっと、二人はとても大きな悲しみを抱いたに違いない。
平蔵は勿論の事、乙女の場合だってそうだ。きっとそうに決まってる。

「だって……てっちゃんは本当は優しい子だったもん。
赤の他人の命を救えなかったコトをあんなに悔やんでた、自分の身体がボロボロになるまで後悔してた。
そうそう出来るコトじゃない。
きっとてっちゃんは最後は橘さんの手の中で笑って逝けたはず……あたしはそう信じてる……たとえ皆が信じなくても、必ず!」

思わず握った右の拳。
程よく筋肉がつき、それでいて女性的でもある碧の腕に血液が流れ、彼女がいかに力を掛けたのかを象徴する。
この殺し合いが始まった時、神埼達によって殺された合計四人の男女。
彼らの名前は知らず、これっぽちの面識すらもなかった乙女。
しかし、乙女は悔やんだ。死ぬべきではなかった彼らの死を悔やみ、同時に呪った。
何も出来なかった自分自身の不甲斐なさに対して、自分の拳を傷つける程に。

194 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:00:50 ID:mXidQor3



195 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:01:48 ID:mXidQor3



196 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:01:52 ID:Y2jJn3cO
あの時、乙女が浮かべた表情、悲しみを碧は決して忘れない。
そしてそれらこそが乙女の本質を表すものであったのだろう。
固い信念を貫き、守るべきものを己の命を賭けて守り通す。
短い時間しか見る事が出来なかった本当の乙女の姿を碧は自分の胸に秘める。
きっとそうする事で乙女の、彼女を正気に戻すために最後まで闘ったと思える平蔵が少しでも浮かばれると思ったから。
嘗ての仲間、失われた仲間をいつまでも覚えていたかったから。

「……うし! そろそろ行ってみようか」

眠気を吹き飛ばすように、自分の両頬を叩き、碧は自らを引き締めて立ち上がる。
何か煌めく雫の様なものが頬から零れ落ちたような気がしたが、気にかける暇はない。
やがて碧は名簿を閉じ、デイバックに無造作に放り込んだ。
放送は終わった。これ以上此処で時間を無駄にするわけにもいかない。
取り敢えず、遊園地で散り散りになった時に交わした約束、駅での集合を行うために碧はその場を離れようとする。
窓からすっかり漆黒の闇に覆われた外の世界に顔を出し、周囲に危険な人物は居ないか目を配った。
特に人影が見られず、安全が確保されたことを確認し、碧はドアの方へ向かおうと足を運ぶ。
そんな時、碧はふと上空を見て、固まり、言葉を失った。開けた口を閉じる事も忘れて。
只、呆然とそれを見つめる碧。
驚きによって普段以上に大きく開かれた碧の両眼が天高く浮かぶものを見つめ続けていた。
月の直ぐ傍で赤い閃光を発し続けるそれは――

197 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:02:05 ID:aLg/wxze
支援

198 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:02:23 ID:yl0uQh19
 

199 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:02:51 ID:Y2jJn3cO
「媛……星…………?」

媛星。今はかなり小さいが真紅の光ははっきりと確認できる。
碧が調査していた媛伝説――HiME達による闘いが起こるたびに媛星は姿を現してきたらしい。
三百年の周期で現れる媛星はその度に地球へ災いを齎す凶星。
内容は単純、地球へ強大な質量を伴いながら衝突する事。
地球上の生物はおろか、地球自体に対する影響も想像を越え、全ての命を刈り取るだろう。
そんな媛星を止める手段、いや衝突の回避を避わし、また三百年後に後回しにする手段がある。
それが碧を含むHiME達の存在。
互いの愛する者――想い人の命を賭けて闘い、最後の一人となったHiME。
他のHiME達が抱く想いに負けない想いを持ち、闘い続けた結果そのHiMEは“舞姫”になれる。
そう。舞姫こそが媛星の接近を止める事は出来る唯一の存在。
舞姫失くして地球の滅亡は免れない。

「もしかして、ここってあたし達の世界なの? それよりも媛星だなんて……」

碧は此処が今までSFで出てくるようなどこか別の世界でも思っていた。
なんせ、HiMEやオーファンといった非常識な存在は既に知っており、他にも常識を超えるような代物があっても可笑しくはないと考えていたから。
それに今まで媛星が見えなかった事もそうだ。
媛星はHiME、もしくはHiMEの関係者しか見えず、太陽が昇っていても辛うじて見える。
今まで全く見られなかった媛星の突然の出現により碧は驚き、同時にあまりにも厄介な問題が出来たことにより、彼女の表情は曇り始めた。
媛星の重要性、危険性は以前凪から話を聞いただけだが、媛伝説にも似たような記述があり、彼の言っていた内容は先ず間違いない。
媛星をどうにかしなければ最早、こんな殺し合いどころではないのは明白。
直ぐにでも全ての参加者が団結して、媛星への対策を考える必要がある。
だが、自分と玖我なつき、藤乃静留、もしかすれば深優・グリーア以外の参加者には媛星は見えない。
仲間は自分達の媛星についての話を信じてくれるかもしれないが、殺し合いに乗った者は信じないかもしれない。

200 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:03:18 ID:mXidQor3



201 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:03:45 ID:hC/pJJUv


202 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:03:52 ID:yl0uQh19
 

203 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:03:55 ID:Y2jJn3cO
いや、そうそう信じないだろう。
この殺し合いに乗った者は各々相当な覚悟を持って、此処まで生き残った筈。
そんな彼らが大きな星が迫ってくると自分が叫んでも、彼らにとって媛星は見えないため信じるとはとても思えない。
特定の者にしか見えない星の存在も俄かには受け入れられる事でもないのだから。

「どうすっかなー……これから…………」

その場で力なく、座り込み、碧は仰向けに倒れる。
いつも快活な口調は明らかに元気を失くし、悩んでいるように見える。
只でさえ、この殺し合いを止めるという目的のため動いていたというのにそこに媛星の問題。
あまりにも問題は多く。出来るものならば誰かに押し付けてやりたいと思う気持ちにもなってしまう。
己の愛し子であるチャイルド、愕天王が何故か呼び出せない現状では満足に闘えないのも碧を弱気にさせていた。
暫し、そのまま横になりながら碧はこれから事を考えているうちに彼女は室内であるものを見つける。
数秒の間、それをじっとみつめる碧。
やがて碧はピョンと飛び起き、デイバックとそれを手に取ってドアに向かい、外へ出た。
足取りは軽い。一歩ずつ碧は何処かへ歩を進めていく。
顔を上げて進む碧の両の瞳は――燃えていた。
赤く、激しく、逞しく――何か大きな意思がうねりながら。
大きな決意が赤々しく燃えていた。

◇  ◆  ◇

204 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:04:47 ID:Y2jJn3cO
碧が身を潜めていたエリアF-7南部の市街地。
様々な建物が入り組み、鉄の領域がその場にはあった。
そんな建物群で一際高い建物の屋上で仁王立ちに構える者が一人。
言うまでもない、碧だ。
そして碧はデイバックを横へ放り投げ、腰に両手を――いや、左腕をつき、見下ろす。
落ちれば只ではすまない高さであるにも関わらず、碧の表情に碌な変化はない。
数秒の時間が過ぎ、徐に碧は右腕を上げ、大きく息を吸い込む。
とても長い間、空気を吸い続ける碧。
まるでこの世で行う最後の呼吸を充分に満悦しているような様子にすら見えてしまう。
やがて、碧は空気を吸うのを止めて、足を踏み出し――


「やっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 」


ありったけの大声で叫んだ。
至近距離で喰らえば鼓膜をやられてしまいそうな程大きく、能天気な碧の声。
心なしか普段の碧の声より大きく、詳細な範囲は知る由もないがそれは周囲へ響き渡る。

205 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:05:03 ID:mXidQor3



206 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:05:36 ID:yl0uQh19
 

207 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:05:58 ID:Y2jJn3cO
「うん、よろしいよろしい。マイクテスト終了〜」

軽口を叩き、満足げに頷く碧。
碧が浮かべる表情には最早気後れなどない。
媛星をどうするかという事に暫く悩まされたが、結局碧が出した結論は変わらなかった。
今は自分の出来る事に集中しよう。
そう。この殺し合いに呼ばれる前に媛星の存在を知った時に取った行動と同じ結論。
仲間と合流し、更に多くの仲間を募り、知恵と力を合わせ団結する事を碧は当面の行動として決定した。
自分のやるべき事を再び心で認識した今の碧は誰にも止められない。
そして先程碧が上げた大声が普段より大きなものであったのは気のせいではなかった。
碧が右腕に握り続けている代物が彼女の声を大きくさせている。
何か災害に巻き込まれた時のために家に備え付けていたのだろうか。
真相はわからず、何故其処にあったかはわからない。
先程、室内で碧が見つけた拡声器が彼女の右腕にしっかりと握られていた。
拡声器が正常に機能する事を確かめ、碧は続けて口を開く。

「や、いきなりでごめんね。この声がどこまで届いてるかわかんないけど……聞こえてたらちょっと聞いて欲しいな」

周囲に誰が居るのかは勿論、碧にもわからない。
よって別に特定の知り合い、人物に向けて碧は声を出したわけではなかった。
見通しが良く、周囲へ聞こえやすいと思われる建物の屋上で碧が拡声器を使った理由。
その理由は単純なものであり、様々な意味合いを含んでいた。

208 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:05:59 ID:hC/pJJUv


209 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:05:59 ID:aLg/wxze
支援

210 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:06:39 ID:yl0uQh19
 

211 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:06:55 ID:hC/pJJUv


212 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:07:14 ID:mXidQor3



213 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:07:49 ID:Y2jJn3cO
「何処かで隠れてる君。 怖いよね、誰だってこんな馬鹿げた殺し合いは怖いよね……でも、自分を見失ったら駄目よ!
たとえ対切なものためでも、好きな人のためでもこんな殺し合いなんかに乗ったら絶対駄目だからね!
そう。辛くなったら思い出して……あたしが、正義の味方が此処には居るってコトを!」

最後の一人まで生き残れば勝者となるこの殺し合い。
恐怖のあまり何処かの建物内でひっそりと息を潜め、絶えず怯えながら隠れている参加者も居るかもしれない。
参加者が篭城するのを防ぐために設けられてシステムと思える禁止エリアだが、実際は六時間で二つずつしか増える事はないため、運悪く隠れ場所に当たる可能性も高くはないだろうから。
ならば自分はどうするか。答えなど決まっている。彼らを保護しなければならない事だ。
それが一人の教師であり、正義の味方の為すべき事。
もしかすれば外へ出る事の危険性を考えて其処から一歩も動いてくれないかもしれない。
自分の位置を危険人物に知らせるだけに終わるかもしれない。
構う事か。それが一体どうしたというのだろう。
自分の言葉が少しでも彼らに聞こえてくれるならそれだけでいい。
きっと彼らを励ますくらいは出来るはずなのだから。
自分のような参加者が居る事で希望を持ってくれる事を――碧は願い、叫ぶ。

「あたしは止められなかった……救ってあげられなかった、対切な仲間達を!
でも、あたしは諦めない。いいえ諦めきれない……てっちゃんも葛ちゃんも橘さんも理樹くんの分も……生きてみせる!
あたしが皆より長生きした意味は決して無駄にはさせない! 証明してみせる……あたしの正義を、意思を貫くコトで証明してみせるわ!
逃げも隠れもしない……殺し合いに乗った人達も止める! もう、誰も死なせない! あたしの眼が黒いうちは絶対に!!
だから――」

表面上は他の参加者を安心させるために自分の決意を宣言するもの。
媛星の事は今の状況ではHiMEや関係者以外に言っても混乱させるだけのものであり、敢えて伏せる。
また、碧の言葉は他の参加者への言葉ではなかったのかもしれない。
確実に減っていく大事な仲間。
媛星というあまりにも大きすぎる問題。
そして思わず弱気になってしまった自分自身の弱さ。

214 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:08:32 ID:mXidQor3



215 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:08:47 ID:hC/pJJUv


216 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:09:17 ID:mXidQor3



217 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:09:32 ID:Y2jJn3cO
それら全てを受け入れて碧は自分自身に言い聞かせるように夜空へ咆哮を上げる。
乙女、葛、平蔵、理樹……忘れられない仲間の顔を思い浮かべた。
思わず拳に力が入り、何かに火が宿りそれはやがて炎へ変わる。
彼らと交わした言葉、通い合わせた感情が胸の中で広がっていく。
暖かくもあり力強い感覚が胸の奥底で渦巻き、自分の中で騒ぎたてる。
想いを力に換えて決意を打ち立てろ。これ以上悔いのないように、涙を流す人を出さないように。
只、ひとえに己の正義を信じて。
喉から搾り出される大声が碧の最早迷いなど一切ない鉄の意志の存在を浮き立たせた。
やがて碧は今一度叫ぶ。自分の記憶で今も色濃く残っているあの言葉を模した言葉を。


「刻めっ! あたしの名は――正義の味方、杉浦碧ッ!!
綺麗事だとか、甘い事だと思うのならばそれでもいい!
この杉浦碧……命が尽きるまで闘い続けるコトを今この場で誓ってみせるさ!
あたしは自分の意思を貫くだけ……それだけよ! だから、あたしが気に喰わない奴は、これ以上誰かを殺そうとする奴は――」


以前、自分が全てを諦めかけた時に天から降ってきた男が言った言葉。
平蔵の言葉を借りて未だ見ぬこの殺し合いに乗ってしまった者達へ宣言する碧。
どのくらいの人数が乗ってしまっているのだろうか。
わからない。
どのくらいの力を持っているのだろうか
わからない。
たとえHiMEである自分の力を持ってしてでも勝てる相手なのだろうか。
――わからない。
わからない事は多い。多すぎる。だが、じっと待つなんて出来るだろうか。
Noだ。自信を持ってNoと言い飛ばす事が出来る。
そんな時間があれば守ろうよ。頑張ろう。与えられた力を使って。
今も泣いているかもしれない。対切な人を失って生きる気力を失くしているかもしれない人を。
そして修羅の道へ、人を殺める覚悟を持ってしまった人を――止めるために。
あの時自分が乙女を止められなかったために起きた悲劇はもうあってはならないのだから。
ふいに空間が歪み、碧の左腕に一振りのハルバードが握られる。

218 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:10:10 ID:yl0uQh19
 

219 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:10:11 ID:mXidQor3



220 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:10:31 ID:Y2jJn3cO
刻まれた名は青天霹靂。
今まで数多くのオーファンを死山血河に叩き落とし、正義を貫くために碧が使用してきたエレメント。
左腕に握ったエレメントを逆手に持ち替え、思いっきり屋上に突き刺して――只、ありったけの声で叫ぶ。


「かかってきませええええええええええええいッ!!」


拡声器で拡大された碧の声の中でも一際大きな声が響く。
同時に拡声器を後ろへ放り投げ、青天霹靂を両手で引っこ抜き、頭上でブンブンと廻し、天高く掲げた。
大胆不敵にも声高らかに宣言する碧の表情は、何かをやり遂げた達成感のようなもので満ち溢れている。
正義、真実、愛、努力、友情――様々な言葉で織り成された『誓い』をつき立て碧は立ち尽くす。
その表情に一片の後悔などあるはずもない。
正義の美少女兼正義の味方、そしてHiMEの一人、杉浦碧。
己の意思を貫く事を忘れずに、気高く、誇らしく――碧は覚悟を完了する。
正義を為すために、己の意思を貫くために。
命が燃え尽きるその刻が来るまで。

碧は闘い続ける。




221 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:11:19 ID:aLg/wxze
支援

222 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:11:20 ID:hC/pJJUv


223 : ◆40jGqg6Boc :2008/08/12(火) 21:11:27 ID:Y2jJn3cO
【F−7 街中 ビルの屋上/一日目 夜】
【杉浦碧@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:不明、FNブローニングM1910(弾数7+1)
【所持品】:黒いレインコート(だぶだぶ)支給品一式、FNブローニングM1910の予備マガジン×4、
 恭介の尺球(花火セット付き)@リトルバスターズ!ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、拡声器
【状態】:健康、十七歳、
【思考・行動】
 0:正義の味方として生きる。
 1:意志を貫く。
 2:美希のことが心配。合流したい。
 3:助けを必要とする者を助け、反主催として最後まで戦う。
 4:知り合いを探す。
 5:羽藤桂、玖我なつきを捜しだし、葛のことを伝える。
 6:仲間との合流。そのため、駅へ向かう
7:後々、媛星への対処を考える
【備考】
 ※葛の死体は温泉宿の付近に埋葬しました。
 ※理樹のミッションについて知りました。
 ※理樹と情報交換しました。
※拡声器は民家で調達しました
※拡声器のよる声が何処まで聞こえたかは不明です。
※遊園地で自分達を襲った襲撃者はトレンチコートの少女(支倉曜子)以外に少なくとも一人は居たと思っています。

224 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:12:24 ID:mXidQor3



225 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 21:21:54 ID:yl0uQh19
投下乙です
じゅうななさい……その意気は良い、格好良いし
けれど空気を脱出しそうな代わりに、拡声器使用っていう大きな死亡フラグがw
じゅうななさいらしさが出てて、後々に活きてきそうな疑心暗鬼フラグの切っ掛けも出来た、良繋ぎでした

226 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 22:21:58 ID:XmDlfM8L
投下乙です

駄目だよみどりちゃん、ただでさえHiME勢はまだ一人も減ってなくて
それだけで全員に等しく死亡フラグが立ってもおかしくないのに
一人で張り切って死亡フラグ立てなくても…
しかしそうでもしないと目立てないというジレンマ、まさに死中に活…
これからの活躍に期待しつつ、良繋ぎGJでした

227 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/12(火) 23:28:09 ID:rmkiByiq
投下乙です。

碧ちゃんw
凄くらしい、のだけどなんて死亡フラグw
ただまあこれだけ前向きなキャラは少ないし頑張って欲しいところ。

業務連絡、仮投下スレに一部修正を投下しました。

228 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 23:58:15 ID:rmkiByiq
後、最近本スレに来ていなかったので、前スレの感想などをば。

◆UcW氏
投下乙です。
九郎……その意志は素晴らしいのだが…やはりどうしても……
しかしクリスはほんと無自覚にフラグを蒔くなあw

◆AZ氏
投下乙です。
太一に曜子ちゃん……悲しいのに何故か非常に納得のいく結末…
流れといい演出といい見事でした。

◆tu4氏
投下乙です。
な、なごみん……
美希の無自覚な言葉攻めが何よりもキツイ…

◆Lx氏
投下乙です。
まず…笑いましたwww それしか言えないくらいにw
そしてやよいに泣いた…ええ子や……。



229 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/12(火) 23:59:23 ID:rmkiByiq

◆Diy氏
投下乙です。
何か、…麗しくて(パヤパヤ的に)怪しいチームが出来たなw
そして誤解の塊でもあるチーム…

◆gu氏
投下乙です。
ポカーンとしました。 ホントに予想外だった。
そしてつよきす全滅…まあフカヒレだし……(オイ

◆UcW氏
二回目…投下乙です。
あ、姉御…折角感情を直視したのに……
やはりクロチャン勢の狂気は恐ろしい……


230 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/14(木) 00:48:03 ID:q/7dk92l
修正要望。
◆S71MbhUMlM氏の「いつでも微笑みを/トルティニタ・フィーネ」の
禁止エリア内で首輪を放り投げるシーンが設定上、矛盾している可能性がある。

首輪の設定は生存判定用のセンサーあり、禁止エリアに存在するだけで爆発するのはおかしいと思う。
仮に禁止エリアにあるだけで爆発するなら、禁止エリア内の死体に付いている首輪は何の意味の無く爆発する事になる。

話の内容を極力変えずに修正するなら、首輪に何らかの衝撃を与える、または首輪をいじるなどして爆発を誘発する様にすればいいと思う。



231 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/16(土) 22:15:46 ID:kFrh+SW+
週刊ギャルゲロワ2nd第19号(7/26)
先週の主な出来事
 

|  | |  | |  | |  | |  | |  | |  | .|  |   |  | |  | |  | |  | |  | |  | |  | |  |
|_| |_| |_| |_| |_| |_| |_|___ |_| |_| |_| |_| |_| |_| |_| |_|
─┐   ┌―――――、.      /,l、| ̄|</\      .┌―――――、   ┌―――.
  |――|   | ̄|    |―――/、/_,'.|  |/ヽ./\―――|    | ̄|    |――‐|    | ̄|
  |   |    |  |    |      |/_`‐ |  |/_`‐、|.    |    |  |    |.     |    |  |
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  |   |    |_|    |  ||  . |\/_/゙|│ 父なる神よ、今日貴方の元に兄弟が召されます…
―┘  () () ()――― ‐==||==‐| |―/^|│  彼らに永遠の安らぎとマーボーが与えられん事を…
      l、.l .,l     ‐==ニニ||ニニ==‐  ̄ .レ─────────────────
‐―――‐||~ー―――――.!!ー―‐|γ⌒`´ゝ、~~|――‐!!――――――‐||―――
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           .レ'|  / |.,!/            \!,|_ヽ .l`,l
                 ̄/            .\..!,|__



232 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/16(土) 22:16:26 ID:kFrh+SW+
・なんという大量死……

・太一と曜子、深すぎる縁しの果ての結末。 複雑に捻じ曲がった因縁は果たして断ち切れたのだろうか?
・愛に準じた少女、椰子なごみ散る…、数少ない一般人マーダーとして頑張ったのだが、相手が悪かったか。
・そしてつよきす勢全滅。 フカヒレも頑張ったのだが…元より流され続けた故の最期か。
・その余勢を駆って、静留遂にルビコンを渡る。 もう戻れはしないのだろうか…
・最早数少ない開始当初からのコンビ、トル恭の永遠の別れ。 恭介は再び立ち上がれるのか……?

・が……合併号だったという事で……すいません。

先週(7/26〜8/16)までの投下数:9作
死者:6名(椰子なごみ、黒須太一、支倉曜子、鮫氷新一、一乃谷刀子、トルティニタ・フィーネ)
現時点での人外になった者:羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(8/16)での予約:3件(◆UcW氏、◆Lx氏、◆AZ氏)


233 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:43:11 ID:EeHRykCc
 夢を、夢を見ていました。

 夢の中のあなたは、とても健気に私を見つめていて。

 夢の中のあなたは、泣きそうな顔で私を見つめていて。

 夢の中のあなたは、変わらぬ微笑で私を見つめていて。

 夢の中のあなたは、拒むように私を見つめていて。

 夢の中のみんなは、決して私を見つめることをやめない。

 ――どうして?

 そんな風に私を見つめないで。

 みんなには、もっと先を見据えて欲しいから。

 もっと、前を。

 ここにいるみんなに、前を向いて欲しいから。

 この想いを伝えるには、どうしたらいいの?

 届けたい。

 届いて。

 ――私の、声。

234 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:44:26 ID:T+Y0MWj0
 

235 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:45:23 ID:EeHRykCc
 

 ◇ ◇ ◇


「……ん」

 蕩けるような感覚が、脳髄をガンガンとノックする。
 警鐘にも似た現世への覚醒は、今の今まで眠りの中にあった少女を、奮い立たせた。

 ――そうして、蘭堂りのは起き上がる。

 自身にかけられた毛布と羽毛布団、メルヘンちっくなメイド服から様変わりを果たした和装の寝巻き、横に伏していた体。
 いぐさの匂いが香る和室は、畳の数が数え切れないほどの広さ。旅館の宴会部屋かなにかだろうか。

「私……どうしてたんだっけ」

 虚ろな意識をそのままに、りのは思考を再開する。
 眠りに落ちる直前の記憶……それを辿ってみれば、

「あ……」

 りのの小さな総身を、怖気が駆け巡った。
 極寒の地に立たされたような、心で感じる寒さが、身を蝕む。

 鬼――殺人鬼と相対した恐怖。
 襲撃され、殺されそうになったという恐怖。
 今こうしていることが、生き永らえた証明であるという安心。
 あの殺人鬼は、私の手を引いてくれていた人は、散り散りになってしまった仲間たちは――という不安。

236 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:46:34 ID:EeHRykCc
 綯い交ぜになった恐怖心は、再起したばかりのりのを容赦なく襲い、沈めた。
 全身を包み込むようにぎゅっと縮こまり、布団を被る。
 このままこうしていれば、もうあんな怖い思いをする心配もないのだろうか。
 少女らしい等身大の考えを胸に抱き、りのは再び眠りに落ちようとして、

「ん……りの、さん」

 零れた音に、ビクッと体を震わせる。
 飼い主に叱られた子犬のように、おそるおそる布団から顔を出すと、傍らには母のような寝顔があった。

「ユメイ、さん?」

 蝶々の柄が入った藍色の和装を纏う少女が、りのの寝ている布団の横で眠りこけていた。
 その寝顔はりのと比べても大差のない、あどけない少女のものであったが、どこか既視感を覚えてしまうのはなぜだろうか。
 この顔は、そう……まだりのが宮神島に訪れる以前の暮らしで、よく目にしていたような気がする。

「ユメイさん……私のことを、守ってくれてたんだ」

 眠りながらに西洋剣の鞘――治癒に用いていた道具――を抱くユメイを見て、りのは推察する。
 殺人鬼から逃げるとき、りのの手を引いてくれたのはユメイだった。
 その意識が闇に没する直前まで、彼女はりのを守り通してくれたのだ。
 そして今、闇に没した後も、りのの守護を貫いたのだ……痛感する。

「私は、結局……」

 守られてばかり、というフレーズを喉の奥に飲み込み、溢れ出そうになった涙を目尻で溜める。
 代わりに込み上げてきた、役立たずだ――という言葉も、ギッと噛み殺した。
 命の価値まで考え出してしまって、りのは自分の頭をぽかぽかと殴る。
 涙は、結局溢れてきた。

237 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:47:51 ID:EeHRykCc
「……っ」

 されど声は漏らさず、ユメイを起こさぬよう布団から這い上がり、そっと和室の襖を開ける。
 廊下に備えられていたスリッパを履くと、そのままなにも持ち出さず外へと飛び出していった。

 空は月光。空気は冷たく、音は静寂。
 夕暮れはいつしか夜へと転じ、あの忌まわしい事件から結構な時間が経過したのだということを知らせる。
 あそこで離れ離れになってしまったみんなは、いったいどうなってしまったのだろうか。
 源千華留は、大十字九郎は、直枝理樹は、橘平蔵は、杉浦碧は……決意を同じくした、リトルバスターズのみんなは、

「……もう、わかんないよ」

 いくら考えたところで、結末など知れない。
 時刻を鑑みれば、既に第三回放送は通り越し、第四回放送すら聴き逃したかもしれない。
 部屋に戻り、荷物を確認してみれば、きっとユメイが死者や禁止エリアをチェックしていることだろう。
 だが、知りたいとは思わなかった。
 誰が死に誰が生き残ったのかも、今の時刻も、ここがどこなのかさえも。

 ――知るのが、怖かっただけなんだと思う。

 守られ、逃がされ、背負われした挙句の結末など、りのにとっては重荷でしかない。
 疲労困憊で寝ていたユメイを思えば、ふらふらな足取りでまだ生を謳歌している自分自身を思えば、答えなど知る必要もなく、自責の念だけが駆り立てられる。
 子供は誰だって、叱られることを怖がる。
 いけないことをしたという罪悪感が、一生の後悔となって残る年頃なのだ。
 好き好んで良心の呵責を増やすなど、臆病者の子供にはできるはずもなかった。

238 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:50:00 ID:T+Y0MWj0
  

239 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:50:19 ID:EeHRykCc
 空虚な気持ちのまま、りのは夜の街をスリッパで闊歩する。
 時折見かける街灯が、りのの狼狽した顔を不気味に照らし、本人は気にも留めず歩を進めていく。
 今はなにも考えたくない。なにもしたくない。
 だけどただ蹲っているだけではいられない。どこかに行かなければいけない。
 いったいどうするべきなのか、いったいどうしたいのか、それすらもわからずに、徘徊を続ける。

「きゃっ!?」

 意志を伴わない歩みは、まっさらなアスファルトの上の空を引っかけ、りのの体を転倒させた。
 反射的に出た両手が固い地面に突き刺さり、じくじくとした痛みが込み上げてくる。
 ドジっ子のりのが満足な受け身を取れるはずもなく、膝も肘も擦り剥けてしまっていた。
 どうにか激突を避けた顔面が、間近にある大地と睨めっこし、数秒流れる。
 失笑も零れない、見るも無残な己の醜態に、りのは笑いではなく泣きたくなった。

「ねぇ、あなた。大丈夫?」

 自力で起き上がる気力もない。誰か起こしてくれないだろうか――そう願った矢先、りのに手が差し出される。
 赤色と土色、それに濁ったような黒色が肌色を支配する、一見しただけでもおぞましい手。
 りのはその手の先を目で辿っていき、ゾッとする。

「あ、あたし? あたしは神宮寺奏。別に怪しい人じゃないよ? って、見ればわかるよね〜」

 どこにでもいそうな女子高生が、体に蛆を飼っている――とでも言い表せばいいのだろうか。
 一言で言って異常。風貌が異常な上に、傍らに立つ見るからに『生を終えている少女』が、さらなる不安を齎した。
 なにより、絶対に本名ではありえないその名乗りが、りのの心を闇へと葬る。

 彼女の福音は、どこに消えてしまったのか。


 ◇ ◇ ◇



240 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:51:02 ID:jB4WscEZ
 

241 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:51:35 ID:T+Y0MWj0
   

242 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:52:20 ID:jB4WscEZ
 

243 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:52:49 ID:EeHRykCc
 二十四時間運行を掲げる完全無欠の交通機関を経て北へ。
 中心街と明記された北東の区域は、多くの参加者たちにとって馴染み深い、言うなれば普通の街。
 雑貨店や大型ビル、標識や自動販売機、電柱や路上駐車された車など、それこそ見慣れたものばかりが目に映る。
 まだ零時前のこの時刻、夜遊びに興じる好奇心旺盛な若者たちの姿が見当たらないというのは嘆かわしいが、状況を考えればそれも致し方ない。

「まー、人気のない夜の街をぶらぶらするってのも乙なもんよねぇ。ふぁ〜」

 そう、のんきに欠伸などしつつ街中を闊歩するのが、杉浦碧だった。
 物臭な態度の割になまめかしい姿態を晒し、歩みを進めるごとに一つ結びの髪が馬の尾のように揺れる。
 なにも考えていないように見えて、その実周囲への警戒は怠らず、ここが殺し合いをする場であるということをちゃんと認識していた。
 第三者が見る印象としては決してよくないだろうが、これが杉浦碧という女性の自然体であり、性分だった。

「……はぁ」

 う〜ん、と背伸びをする碧の後方、誰とも知らぬ溜め息の音が漏れ、三人が項垂れていた。
 碧に比べても小柄な、少女と呼ぶに相応しい顔ぶれが三つ。
 じゅうななさいを自称する碧からして見ても未熟な……未熟だからこそ際立つ外見年齢を備えた三者は、ほんの数時間前に出会った新たな同行者たちだった。

「ん〜? どしたん溜め息なんてついて。幼き少女ゆえの悩み事なら、碧ちゃんが相談に乗るよ?」
「おお、そうか。ならその緩い思考を今すぐ引き締めてもらいたいのだが、どうか」
「えー。ぶーぶー、誰がユルユルだって?」
「汝だ、杉浦碧だ!」

 アル・アジフ、羽藤桂、菊地真。
 碧がビルの屋上でありったけの魂を込めた主張を終えた後、彼女たちは駆けつけてきた。

244 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:53:14 ID:jB4WscEZ
 

245 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:54:02 ID:jB4WscEZ
 

246 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:54:51 ID:jB4WscEZ
 

247 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:55:22 ID:zE4WfMYs



248 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:55:40 ID:EeHRykCc
「まったく、出会いからして慎重派の人間ではないと見ていたが……それにしても、緊張感が足りなさすぎる」
「気張ってばっかじゃもたないよ? それに緊張感って言うんなら、桂ちゃんにあーんな恥ずかしい格好させてたアルちゃんのほうが……」
「あ、あれはマギウス・スタイルっていう正装で……正装? あ、あれ正装だよねアルちゃん!?」
「汝もなにを顔を赤らめているのだ。もっと堂々とせんか」

 自らの思いの丈を外に放出し、さあ行きますか、とビルの外に出た瞬間、黒いボディコンスーツの少女による来訪をくらった。
 碧は挨拶も疎かなままその少女に腕を掴まれ、半ば拉致されるような形で駅へ。待ち構えていた二人の少女と共に、電車へと乗り込む羽目になった。
 その後、三人の少女の中でリーダー的立場にいたアル・アジフから安易な拡声器の使用を叱られ、下車後は適当な喫茶店でそれぞれの身の上を語り合い、今に至る。

「結構時間取られちゃったし……ボクとしては、早く教会に行きたいんだけど」
「そう憂うな真。ここから教会へは西へ一直線。何事もなければ、放送までには辿り着けるだろう」
「そうそう。やよいちゃんって子を守りたいんでしょ? だったら、いつまでもうじうじしてちゃ駄目だって」
「遅れを齎した張本人である汝がそれを言うのか!?」

 杉浦碧――クリスが直に対面し、玖我なつきの元々の知り合いでもあった、風華学園非常勤講師の肩書きを持つ女性、いや美少女。
 情報どおりの茶目っ気の強い性格に、正義を心情とする人柄、加えて拡声器による熱血な放送内容を鑑みれば、アルたちとしても仲間に加えて然るべき人物だった。
 故に、放送を耳にしたアルたちは駅への道のりを一時逸れ、マギウス・スタイルとなった桂の手で放送の主を即座に回収、即時撤退、予定通り駅を経由して教会へのルートを辿る、という策を取った。
 先を急ぐとはいえ、なつきの知り合いであり味方とするにも有能な存在を放置しておくのは忍ばれる。拡声器で居場所をアピールしているともなれば、なおさらだ。
 そのような考えから、アルは咄嗟に『拉致』という選択を下し、詳しい話は電車で移動してから、ということになった。

249 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:56:34 ID:jB4WscEZ
 

250 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:57:09 ID:zE4WfMYs



251 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 01:58:10 ID:EeHRykCc
「それは悪かったってばー。でもさ、あたしとしてもアルちゃんたちと出会えたことは損じゃなかったよ? みんなもそうでしょ?」
「それは、まあ……杉浦先生がユメイさんや九郎さんに会ってた、っていうのは意外だったけど……」
「そっちも、なつきちゃんやクリスくんと知り合いなんでしょ? あー、もうちょい早く叫んどきゃ二人にも会えたのになー」
「山辺美希さん、大十字九郎さん、ユメイさん、蘭堂りのさん、源千華留さん……襲われて散り散りなったみんなは、無事なのかな?」
「それが心配なんだよねぇ。捜そうにもどこ行ったかわからないし……とはいえ、立ち止まってる碧ちゃんじゃあありませんよ」
「杉浦先生、やたらポジティブなんですね……」
「元気出さなきゃやってけないってーの。それから桂ちゃんに真ちゃん。あたしのことを呼ぶときは、以後碧ちゃんと呼ぶよう気をつけるように。おーけい?」

 杉浦碧と、アル・アジフら三人の持ちかけた情報を重ね合わせた結果、島内における人間関係の構図はさらに緻密なものとなった。
 情報を書き加えた紙を眺めながら、一同は西への進行を続けていく。

 真の願いに反して、情報を纏め上げるのに必要以上の時間を食ってしまったのが難だが、この結果は誰にとっても利益となりえた。
 主だった着眼点は人間関係について。
 碧が接触した理樹率いるリトルバスターズの面々が保有する細部の情報については、途中で横槍が入ったこともあり、人間関係ぐらいしか確固としたものがないとも言えた。
 理樹が「じゃあ皆……詳しい事だけど」と話し合いを進めようとした矢先の事態を、碧は苦々しく思い出す。

「本性を隠して集団の中に潜む危険人物ねぇ……あたしの印象じゃ、千華留ちゃんはそんな子には見えなかったけどなぁ」
「が、警戒を解く理由にはなるまい? これは汝の教え子、玖我なつきの言による忠告だぞ」
「なつきちゃんが、ってのがまた考えさせられるんだよねぇ。あの子、あれで結構早とちりが多いからさ」

252 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:59:06 ID:zE4WfMYs



253 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:59:53 ID:jB4WscEZ
 

254 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 01:59:55 ID:zE4WfMYs



255 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:00:27 ID:zE4WfMYs



256 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:00:29 ID:EeHRykCc
 同じHiMEとして、オーファンを相手にしていた頃のなつきの素行を思い出し……碧は僅かに苦笑した。
 この地でHiMEであることが判明し、クリスづてにゲームに賛同していることを知ったなつきは、彼女に対してどう振舞うだろうか。
 関係者として募らせるのは、心配。子供ぶった大人の気心が、教え子二人の行く末を按じていた。

「まあ、それはいざ再会してから考えればいっか。あと……そうだ、真ちゃんにこれを授けてしんぜよう」
「なんですかこれ? ……め、メリケンサック?」
「うむ。あたしの支給品なんだけどさ、今の今まで持ってたのはいいんだけど、一向に使う機会がなくて。
 真ちゃん空手やってるんでしょ? だったらそいつで大切な子を守ってあげな、っていう碧ちゃんのご好意でさぁ」

 碧の支給品は、美希のもとに残してきたノートパソコンだけではなかった。
 真に手渡したメリケンサックは碧のもう一つの支給品で、カテゴリとしては武器に分類される。
 だからこそ今までポケットに忍ばせておいたのだが、碧では活用の機会がなかなかなかったのだ。

「それから、桂ちゃん。葛ちゃんのこと、なんだけど……」
「あっ……はい。なつきちゃんから、大体聞きました。碧ちゃんは、葛ちゃんの最期を看取ってくれたんですよね?」
「うん……ごめんね、湿っぽくて。けど、これだけは伝えときたかったから。葛ちゃん、最期に桂ちゃんやなつきちゃんの名前を呼んでた」

 乙女と別れ、美希を放って、碧はその先で若杉葛の死に際に出会った。
 なつきの証言によれば、伊達スバルに殺されたというその少女。
 スバルは乙女の話によれば、こんな殺し合いに踊らされる人間ではなかった。
 だが、当の乙女ですらあのような顛末を迎えたのだ。なつきのために、と謳い修羅になった静留のケースもある。
 元々の交流関係、確固たる自己すらも崩し、この島の人間模様は複雑に交差しつつある。
 真の言う並行世界云々についても、天に紅く煌く媛星を思っても、答えは出てこない。

257 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:01:19 ID:zE4WfMYs



258 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:01:49 ID:EeHRykCc
(媛星については……なつきちゃんも気づいてないのか考えがあるのかわからないけど、なにも話してないみたいだし。
 なら、あたしも当分黙っておこう。いたずらに混乱させちゃうのもあれだし、まずはやよいちゃんたちを捜さなきゃだ)

 こんがらがってきた頭に窮屈感を覚え、碧は気合を入れるべく自分の頬をピシャンとはたく。
 悩み事は専門分野ではない。正義の味方はもっとシンプルに、目の前の仲間を危難から遠ざけてやればそれでいい。

「やよいちゃんと葛木先生って人に関しては、理樹くんも気にかけてた。あとは行方知らずのままの唯ちゃんが心配だけど……」
「別れた位置を考えれば、この辺りにいても不思議じゃないですよね。そういえば、この辺りやけに人気がないように思えるけど」
「ふむ。確かに真の言うとおりだな。中心街と銘打たれ、駅も配置されている。島内でも人が集まりやすい位置にはあるが……」
「もう夜だし、休憩してる人が多いんじゃないかなぁ? 一日中こんなところにいれば、怪我だってしちゃうだろうし」
「ユメイちゃんたちともあんな別れ方しちゃったし、どこかで逃げ隠れてくれてると安心できるんだけどねぇ」

 女四人が揃って憂うのは、やはり各々の大切な人に関してだ。
 遊園地での襲撃に遭い、分散されてしまった大十字九郎、ユメイ、蘭堂りの、源千華留。
 温泉にて碧と対峙し、今もなつきへの愛を原動力に活動を続けているだろう藤乃静留。
 些細なすれ違いから大きな距離を開けてしまい、真に後悔としての指針を与えた高槻やよい。
 クリスとの離別によって、今はどこにいるともわからない来ヶ谷唯湖。
 理由はわからないが、殺し合いに乗ってしまっただろう可能性の高い千羽烏月。
 その他にも、まだ見ぬ参加者たちの人間模様が着々と浮き彫りになってきた。
 次に対面するのは、信頼の置ける仲間か、相容れることは不可能な外敵か。

「捜査の基本は足だよね、やっぱ! なんなら、みんなでこれ使って呼びかけてみるとか!?」
「それはやめておけ」
「それはやめたほうがいいと思います」
「ボクもやめたほうがいいと思う」
「ありゃりゃ」

259 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:02:28 ID:jB4WscEZ
 

260 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:03:35 ID:EeHRykCc
 捜索の助力として碧が取り出した拡声器も、他三人に邪険にされ、渋々デイパックの中に仕舞い直す。
 安易な拡声器の使用についても、アルが出会いがしらに「このうつけが!」と咎めたとおり、色々とリスクがつきまとう手段だ。
 足での捜索が有効である以上、今はそれに専念したほうがいいだろう、と碧は妥協する。

「よーし、んじゃ張り切って…………って、どしたのアルちゃん。急に立ち止まっちゃったりして」

 と、息巻きながら先頭を歩く碧だったが、ふと後ろを振り返ってみれば、アルの足が止まっていることに気づいた。
 なにやら辛辣な表情で、明後日の方向を睨んでいる。碧、桂、真の三人も足を止めアルの視線の先を追うが、特になにかがあるわけではなかった。

「アルちゃん? なにか心配事でもあるの?」
「……いや、なんでもない。おそらく妾の気のせいだ。先を急ごう」

 桂の問いかけを受けて、アルは歩みを再開する。
 その顔に不穏な色を塗りたくって、ほんの些細な違和感を噛み潰す。

 ――アルにしか気づけなかったその街の違和感を、彼女以外の三人が気にかけるはずもなく。

 四人の少女たちは進路を西へ。渦中で起こっている惨事にも気づかぬまま、為すべき事項を消化してく。
 このとき、アルが覚えた違和感を他者にすぐ伝えていれば……結末は、幾らか変わったのだろうか。


 ◇ ◇ ◇



261 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:05:01 ID:jB4WscEZ
 

262 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:05:49 ID:EeHRykCc
 ――その惨状は、まるで野原の兎狩りだった。

 趣向の捻じ曲がった金持ち貴族が猟銃片手にサバンナにでも繰り出せばお目にかかれるだろう光景が、夜の市街地にある。
 全精力を傾けた抹殺ではなく、一撃のチャンスを狙いに狙っての必殺でもなく、じわじわと甚振る快感を重点に置いた虐殺。
 与える者を獅子、与えられる者を兎と例えるなら、獅子は少女で兎もまた少女だ。
 女児同士の殺し合い。この街は、そんな異常な行為が当然のように罷り通る。

「はははっ! だめだよもっと逃げなきゃ。そんなよちよち歩きじゃ、すぐに追いついちゃうんだから!」

 周辺住民の被害など考えず、夜の街で弾けるように呵呵大笑するのは、西園寺世界。
 衣服の調達のため街へ下りた彼女は、適当な量販店から目的のものをくすね、そして獲物を発見した。
 支倉曜子との待ち合わせ場所の下見、自身のスペックの測定、休息、以上を一旦棚に上げ、世界はその少女を『獲物』と断定したのだ。

「ぐっ、ひっ、うぅ……」

 泣きじゃくりながらも世界の前方数メートル先を歩くのは、寝巻き姿の蘭堂りのだ。
 優しい言葉を添えて手を差し伸べた世界に対し、『神宮寺奏』という偽名を即座に看破してしまったのが彼女の運のつき。
 本人脆弱にして重傷の身でありながら、恐怖を訴え、抗うこともできず、ただのろのろと逃走する道しか選び取れない。
 世界はそんなりのの姿が癪に触り、思い知らせてやろう、と思い立った。

「寝巻きのまま飛び出してきちゃって、恥ずかしくないの? 私だったら耐えられないな。
 ねえ、なんだったら私がコーディネートしてあげようか? あなたよりはセンスあると思うけど」

263 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:05:57 ID:jB4WscEZ
 

264 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:06:54 ID:jB4WscEZ
 

265 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:08:21 ID:EeHRykCc
 帯など逃げる途中で当に解け、りのは今、傷だらけの体に和装を羽織っているだけの形となっている。
 対して世界は温泉で得た浴衣など早々に破棄し、今はロングスリーブシャツにジーンズというさっぱりした出で立ちだ。
 年頃の女の子のセンスとしては納得のいかない点もあるが、仮にも妊婦である身の上を考えれば、欲望に任せて派手な衣服を纏う気にはなれなかった。
 こんなものでも、あの変な刺繍入りのパーカーよりはマシ、と母性で女性としての観点を捻じ伏せ、世界は行動する。
 この狩りとて、明らかな獲物を発見してしまったがための、胎児の栄養を思えばこその判断だ。

「――あっ!?」

 なにせ、りのは獲物と断定するのに一分もかからないほど、纏う気配が弱々しい。
 元々の怪我と疲労、運動神経の悪さ、怯えが先行して逃げるにも千鳥足、という駄目さ加減だ。
 世界は嗜虐心がそそられる傍ら、ほのかな同情すら覚えた。

「あー、転んじゃった。大丈夫? なんなら手を貸そうか?」
「う、うぅ……」

 なにもないところで躓き、せっかく開いていた世界との距離も縮まり、りのはしばし地面に這い蹲る。
 喰らってしまうのは簡単だ。だがそれだけではあまりにももったいない。
 りのは、世界にとってあらゆる意味で『獲物』なのだ。

 弱すぎるが故、攻めるにも心配ない。したい放題。
 小振りだが健康的な人肉は、思わず涎が出てくる。舌なめずり。
 柚原このみに与えられた屈辱や鬱憤を晴らすいい機会。うさ晴らし。

「ああ、本当にもう」

266 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:08:30 ID:jB4WscEZ
 

267 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:10:00 ID:EeHRykCc
 鉄乙女という悪鬼が食欲で我を失ってしまったように――悪鬼化という現象には、人肉への欲望がつきまとう。
 世界は乙女とは違い、『この世、全ての悪』や『妖蛆の秘密』の干渉も受けたイレギュラーケースではあったが、鬼としての根幹は変わらない。
 食欲に追随するほどの他者への恨みが、一時的にだが欲求を押さえつけ、嗜虐心へと転化させている。
 だからこそ世界はりのをすぐには喰らわず、甚振ることによって、自身がこれまでとは違う強者であるということを実感していた。
 それがたまらなく快感であり、彼女の笑みに恍惚を運ぶ。

「ほら、手、貸してあげるから……えいっ」
「……っ、ぎ、ぎにゃああああああ!?」
「あ、ごめーん。間違って刺しちゃった」

 世界は、倒れたりの目掛けて右手を――握ったエクスカリバーごと――差し出した。
 結果、刃はりのの背中を突き刺し、傷を作り上げる。幼い悲鳴は耳に触れ、世界の背筋をゾクゾクと震え上がらせた。

「さっさと手を出さないからこうなるんだよ。それにしてもさすがだなぁ。この剣すごい切れ味。
 やっぱり包丁なんかとは違うよね。今度あいつに会ったら、これでざくざくって、してあげよ。
 ふふふ……ふふ……ふ、ふはは、あれ、なんだか、はは、おかしいや。はは、はははははははははは」

 込み上げてくる謎の笑みに、世界は疑問符を浮かべながらも従った。
 狂気的な顔つきで笑い声を零しつつ、私ってこんなにサディスティックだっけ、と隣の異形に問う。
 いまや世界の付人である桂言葉――の死体は、無機質な瞳を浮かべたままなにも返しはしなかった。

「……ぐ、あ、あぁ……」
「あ、起き上がれそう? 助けてあげようか? はい」

 めげずに再起を試みるりのを視界の端で捉え、世界は再びエクスカリバーの剣先を差し向ける。
 子供がスコップで砂山をざくざくやるように、無邪気に、何度も、りのの後背部を串刺しにする。

268 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:10:05 ID:jB4WscEZ
 

269 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:10:51 ID:jB4WscEZ
 

270 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:11:44 ID:EeHRykCc
「にゃあああああああああああああ!?」
「ぷっ……くく……ごめんね〜。私、ちょっと不器用なのかも」

 笑みを堪えながらの謝罪には、罪悪感など欠片もなかった。
 心底楽しそうに、嗜虐こそが鬱憤を晴らす上で最上の方法なのだと知る。
 柚原このみやファルシータ・フォーセット、名も知らぬこのみの連れたちにも、同じ仕打ちをしてやりたいと願う。

「かっ、は……あ……う、うぅ……」

 もう何度目かもわからない吐血の後、りのは立ち上がるべく、再び全身に力を込めた。
 世界は今度はすぐには手を出さず、しばらくの間、りのの奮闘ぶりを眺めることにした。
 なんだか生まれたての子馬に似てるかも、と感想を漏らしつつ、ふぁいと、とりのを鼓舞する。
 りのは世界を正面から見ようとはせず、ただ立ち上がり、敵のいない方向へと歩を進めていった。
 再びりのと世界の距離が開き始める。世界はまだ追わず、りのの背中を眺め続けていた。

「ねー桂さん、どこかに石落ちてない? ……あった? うん、ありがと」

 言葉と能天気なやり取りを交わし、世界は言葉が拾った路上の石を受け取る。
 それを手中で二度ほどお手玉すると、前方のりの目掛けて投げ放った。

「ぎゃう!?」

 後頭部に命中。りのはずっこけ、また転ぶ。
 石をぶつけた世界は腹を抱えて爆笑、目尻には涙さえ浮かんだ。

「あーおかしい。あんなにダメダメで、よく今まで生き延びてこれたよねぇ」

271 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:11:52 ID:zE4WfMYs



272 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:12:00 ID:jB4WscEZ
 

273 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:12:41 ID:zE4WfMYs



274 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:13:41 ID:EeHRykCc
 目元を人差し指で拭うと、世界は再び進軍を開始した。
 後頭部を穿たれたりのは、倒れたまま起き上がれない。
 きっと頭蓋骨が陥没でもしてしまったのだろう。小石とはいえ、悪鬼のパワーで放ればそれくらいはあり得る。

「これも母は強し、ってやつかな? やっぱ私、すごく強くなってるよ。これならもう、二度とあんな目には遭わないんだから」

 不倶戴天の怨敵――柚原このみの姿を思い出し、世界は笑みから一転、表情に憤怒の色を灯す。
 既に四回、今度会ったら五回。奇妙な縁による巡り合わせは、きっとまだ続いている。
 次こそは、必ず殺す。
 りの以上に苦汁を与え、残虐に四肢をもぎ取り、これまでの所業に対する侘びを入れさせた後、喰らう。

「楽しみだなぁ……あ」

 いつか訪れると信じてやまない、至高の光景を夢想し、世界はりのを見やった。
 いつの間にか起き上がっているふらふらな足取りのまま、今にも倒れそうだったが、どうにか逃走を再開している。

「へー、頑張るね。だったら、私たちも一生懸命追ってあげなきゃ。いこ、桂さん!」

 一定の距離を保ちながら、追いかけっこ気分を味わいながら、世界はりのを追走する。
 後ろを振り返ろうともしないりのは、もはや逃げるという意志だけしか残されていないのだろう。
 あれだけの重傷の身でありながら歩を前に進める姿は、人間の懸命さ、生命の神秘を感じすらもする。

 りのが、路地の角を曲がり、世界の視界から逃れる。必死だ。
 世界もそれに応えようと、りのが曲がった路地角を折れる。遊び半分で。

275 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:14:19 ID:zE4WfMYs



276 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:15:05 ID:jB4WscEZ
 

277 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:15:23 ID:EeHRykCc
「えっ――」

 そんな世界に制裁が下されたのは、当然の報いだったのかもしれない。


 ◇ ◇ ◇


 暴漢をも一撃で沈める菊地真の左回し蹴りが――曲がり角の向こうから飛び出してきた西園寺世界の喉下へと、叩き込まれる。
 真としては、攻撃の機会を十分に窺っての。世界としては、予想だにしない不意打ちとしての。
 獅子と兎の構図を粉砕する一撃が、世界を派手に蹴り飛ばした。

「……!」

 地面に蹲る蘭堂りのを、守るように屹立する真。
 路上を滑り、むせながらもゆっくりと起き上がる世界を睨み、敵意を飛ばした。

「これ真! 勝手に先行するでない!」
「き、危機一髪だね……」

 佇まいに怒気すら含む真の傍ら、黒いボディコンスーツに身を包んだ羽藤桂が、
 ただでさえ小さい体躯をより小さくし、ちびちび化したアル・アジフが、
 両者互いに戦友として肩を並べ、呆然とする世界に相対した。

「な、なに……なんなのよ、あなたたち……?」

278 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:16:59 ID:EeHRykCc
 震えた声で、世界は目の前の三人を凝視する。
 精悍な顔つきを怒りで歪めた、ジャージ姿のボーイッシュな女の子。
 大きな子供向けとも思えるコスプレ少女と、マスコットのコンビ。
 三人の影に守られ、もう安易には手を伸ばせなくなってしまったりの。
 一変する状況に世界は混乱を覚え、震えた。

「ねぇ桂さん、これ、どういう状況なの? なんで、なんで私、蹴り飛ばされてるの?
 なんなの……あいつらなんなのよ。知らない、私は知らない、私にはわからない……っ!」

 無邪気な餓鬼は、一転して叱られた子供のように、動揺で身を竦ませる。
 絶対の立場からの転落は、自己を最優先する少女にとって、思考の崩壊にも近い痛手を与えた。
 喉下を抉る打撃の余韻が、なおのこと世界の危機感を刺激する。

「わからない……か。ならば教えてしんぜよう。とくとその身に刻むがいい――!」

 混乱の渦と化した現場へ、さらなる介入者の声が響き入る。
 凛として厳格、雄々しくも穏やかな女声は、真たちの後方から。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ」

 西洋風の矛、ハルバードをぶんぶんと振り回し、ウェイトレスのような赤いスカートを翻すその姿。

「化け物倒せと、あたしを呼ぶ!」

 衆目を浴びつつ、声の主は真ら四名と世界ら二名の間に割って入た。
 レストランの店員がフランス革命にでも躍り出た――ような格好の女性が、猛々しく名乗り向上を上げる。

279 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:17:34 ID:jB4WscEZ
 

280 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:19:31 ID:T+Y0MWj0
    

281 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:19:37 ID:jB4WscEZ
 

282 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:19:41 ID:zE4WfMYs



283 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:20:10 ID:EeHRykCc
「才色兼備にして獅子奮迅の実力を秘めたる美少女が、正義の味方を為さんといざ出陣!
 生業はオーファン退治だが、彼女らに正義ありと知れば、黙って見過ごすなどできようものか!
 なればこそ、正義の味方が悪に裁きを下す! さあさあ、臆さぬならば、かかってきませぇぇい!」

 ハルバート――否、彼女のエレメントたる『青天霹靂』を頭上で旋回させ、振り下ろし世界に構える。
 専用戦闘服――『リンデンバウム』の制服を身に纏い、使命に没頭する彼女はもはや、杉浦碧ではない。
 彼女こそ――数々の先人たちが目指した羨望の存在、『正義の味方』である。

「……み、碧ちゃん」
「ふふん、誰のことかなけ……可愛いお嬢さん。あたしは通りすがりの正義の味方だよ?」
「碧よ、一応訊いておくが、そのコスチュームはどこで入手したのだ?」
「ああ、これ。電車を降りてすぐ、アルちゃんたちと情報交換するために入ったファミレスあったじゃない?
 あれ、あたしの職場と内装まんまでさぁ。あ、職場っていっても副職ね。ウェイトレスやってたんだー。
 んで、正義の味方を実行するならいろいろと物入りだろうと思い拝借をば……ってぇ、だからあたしは正義の味方ぁー!」

 まるで緊張感の窺えぬ自称正義の味方こと杉浦碧に、真と桂は呆れ、ちびアルはげんなりした。
 HiMEとしての彼女の実力はまだ知らぬが、三人とも一応は碧を戦力として信用している。
 茶目っ気に見合った成果を発揮してくれれば文句はないが、不安になるなというのは無理があった。

「なによ……正義の味方? なにそれ……それじゃ、それじゃあまるで、私が悪者みたいじゃない……ッ!」

 一挙に現れた四人の外敵を前に、世界は焦燥感を募らせ、困惑した。
 狼狽した表情をそのままに一、二歩後退し、隣で立ち尽くす言葉に身を縋る。

284 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:20:17 ID:T+Y0MWj0
 

285 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:20:34 ID:zE4WfMYs



286 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:20:32 ID:Jvm51iUL
 

287 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:21:01 ID:EeHRykCc
「やはり戻ってみて正解だったな。不穏な魔力を感知してみれば、とんだ輩がいたものだ」
「アルちゃん、あの子何者なの? 鬼……じゃ、ないよね?」
「妾としてもなんとも言えん。異なる複数の術式を組み合わせ攪拌したような、異常としか言い表せんほどの禍々しさだ」
「魔術ってのはあたしもよくしんないけどさぁ……とりあえず人間やめちゃってる、ってことは確かなんだよね?」
「ああ。なにが原因であそこまで変質したのかは知らんが、あれはもはや異物だ。人間とは到底呼べまい」

 ――『悪鬼化』、『妖蛆の秘密』、『この世、全ての悪』。
 様々な事象と干渉を経て今日に至った世界は、魔術に理解の深いアルからしてみても、一言で称するには難しい存在へと変わり果てていた。
 存在に魔力の気配を纏い、その実態は掴めず、また形状はオーファンほどの異形でもなく、人間としての姿形を保っている。
 並行世界から齎された様々な術式が相乗した結果……いや、末路。それこそが、今の西園寺世界だった。

「まぁ……あの子がなんであれ、りのちゃんをこんな目に遭わせたってだけで戦う理由は十分よ。
 親交浅いけどさ、女の子がいじめられてるのを黙って見過ごせるほど、正義の味方こと碧ちゃんは優しくないんだよね」

 世界を明確な敵と定め、碧は青天霹靂を構え直す。

「桂よ、マギウス・スタイルでの初戦闘だ。妾はサポートに徹する。心してかかれよ」
「う、うん」

 世界を人間ならざる畏怖と定め、桂とちびアルが臨戦態勢に入る。

「ねぇ、ちょっと待ってよ」

 碧から託されたメリケンサックを手に嵌め、しかし真は、世界との対立を拒んだ。

「君、ひょっとして……西園寺世界さん、じゃない?」


 ◇ ◇ ◇



288 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:21:28 ID:zE4WfMYs



289 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:21:36 ID:Ro04JjoG
 

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:21:38 ID:jB4WscEZ
 

291 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:21:57 ID:Jvm51iUL
 

292 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:22:08 ID:EeHRykCc
 ――『でも……俺、世界とも付き合ってたんだ』

 真は思い出す。
 フカヒレとのいざこざを乗り越えた直後に聞いた、伊藤誠の色恋沙汰に関する告白を。

 彼は当初、桂言葉とつきあっていた。
 だが次第に彼女とつきあうのが疲れるようになって、西園寺世界ともつきあうようになってしまった。
 その上この島に来てからは菊地真という同じ『マコト』の名を持つ女の子に欲情し、しかしそれにすらも疲れを感じ、だが最後にはやっと、

 ――『もう、俺も真に……いや、恋人以外に手は出さない』

 言葉だけを愛すると、この島で世界に会っても謝ると、真を泣かせながら誓った誠は、もうこの世にはいない。
 数時間前に耳にした残酷な放送内容を思い出し、真はキュッと唇を噛み締める。

「さっき、そっちの子のことを……桂さん、って呼んでたよね? 桂って……桂言葉さんでしょ?」

 真はおそるおそる、世界の傍らで幽鬼のように立ちつくす、少女の死骸を指で示す。
 世界とおそろいのロングスリーブシャツに身を包む彼女もまた、見るからに人間ではなかった。

「桂言葉……そうか。思い出せ桂、携帯電話のメール内容だ!」
「ふぇ?」
「わからんか!? 昼頃、携帯電話に届いたメールを確認しただろう! 本文の内容には『桂言葉は死者の中から生き返った』とあった!」
「え、え、あ、うん。でもあの後、桂さんの名前は放送で呼ばれて……」
「ああ。妾もずっと腑に落ちなかった。真よ、伊藤誠の言によれば、桂言葉は電車に撥ねられ死亡したはず、とあったな?」
「あ、うん。けど、メールの内容って時間的にそのことを意味してたんじゃ……」
「そのときホームに落ちたのは、桂言葉一人ではない。西園寺世界も一緒だったのだろう? ならば、答えは見えた」

293 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:22:28 ID:T+Y0MWj0
  

294 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:22:39 ID:zE4WfMYs



295 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:22:59 ID:Jvm51iUL
 

296 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:23:20 ID:EeHRykCc
 なにかに気づいたらしいちびアルは、小さい身形に神妙な顔つきを交え、推論を立てる。

「妾の知識にも、魔術による死者蘇生の法など存在せぬ。だが、『死体を繰る術』ならば話は別だ。
 桂言葉も西園寺世界も、このゲームが始まった初期から、既に死体だった――つまりは、主催側の傀儡だった。
 先の放送で桂言葉の名が呼ばれたのは、肉体が極度に損壊し、傀儡とするにも不可能な状態に陥ったか。
 そして今は、西園寺世界の手によってより程度の低い……自我すら窺えぬ傀儡と化している。
 この二人から感じられる尋常ならぬ気配も、主催側の手回しと考えれば説明がつく。答えよ西園寺世界! 汝は何者だ!?」

 アルの推論から発展した、世界への難詰。
 即答など返ってくるはずもなく、それどころか世界はさらに困惑し、徐に頭を掻き毟り始めた。

「う……あああ、あああ、ああ、あああ、ああああ……!」

 混乱を主張するような仕草の後、甲高いうめき声を上げる。
 声質こそ普通の少女そのものだったが、もはや声だけの普遍性など、まるで意味をなさない。

 桂言葉と西園寺世界は、甦った死者としてではなく、動けるようになった死骸として参加させられていた。
 途中、桂言葉は破壊され、このゲームからは脱落の扱いを受けたが、なんらかの方法で世界が彼女を使役。
 その世界もまた別種の異能を取り込み、単なる傀儡としての死体を脱却、アルでも判別できない異常者へと変わり果てた。

「気をつけろ。真が味わった教会の一件といい、どうにもこのゲームは主催側の手回しを受けている部分が多い。
 この西園寺世界とて、どのような隠し玉を持っているかわかったものではないぞ!」

 アルの忠告を耳にし、普段は楽天家の桂、碧ともに身を引き締める。
 ガリガリと頭を掻く世界へ、淀みのない敵愾心を向けて。
 しかしただ一人、

297 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:23:45 ID:zE4WfMYs



298 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:23:52 ID:jB4WscEZ
 

299 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:24:33 ID:zE4WfMYs



300 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:24:49 ID:EeHRykCc
「そんなのって……ないよ」

 菊地真だけは――アルの推論を否定した。

「誠さんは、その、ちょっと流されやすいところもあって……ボクとも、いろいろあったけど、
 それでも最後には、桂さんだけを愛するって……世界さんにも謝るって、そう誓ってくれたんだ!
 それなのに……それなのに、どうして二人とも、こんな…………」

 同情とも憐れみとも違う感情が、真の身から力を削いでいく。
 伊藤誠が死の間際まで気にかけていた桂言葉と西園寺世界は、規格外の存在となって今、誠を失った真の前に現れた。

 あの人が望んだのは、また三人で手を取り合える、そんな日常だったはずだ。
 年上の色恋沙汰ゆえ、ややこしい部分も多々あっただろうが、決して叶えることが不可能な望みではなかったはずだ。
 やよいと同い年くらいの女の子を襲い、楽しみ、恋人も忘れて笑っていられるような――そんな人間に傾けられる願いでは、なかったはずだ。

「ボクは、誠さんを応援したかったんだ。なのに、どうして……」

 ――結局、伊藤誠の願望は儚い夢に過ぎなかったのか。
 懺悔の対象はこうして、誠の知らないところで殺戮に興じている。
 既に、人間ではない。
 彼が愛した、これからも愛していくと誓った対象もまた、終わっていた。
 今は亡きあの人の望みが、消えていく。
 一旦は蚊帳の外に置いた、しかしだからこそ蟠っていた残滓が、再燃しまた潰える。
 落胆が、真の胸を焼く。

「なによ、あんたたち! さっきからマコトマコトって……あなた、誠のなんなのよ!?」

 当の世界は真と誠の関係など知らず、ただこの緊迫した状況から逃れようと、激情に身を任せた。

301 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:25:23 ID:zE4WfMYs



302 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:25:31 ID:jB4WscEZ
 

303 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:26:03 ID:EeHRykCc
「会ったんです。ボク、ここで、誠さんと」
「……っ!」

 真の告白に、世界は表情の変化だけでの驚愕を示す。

「言葉さんと世界さんの話は、誠さんから聞いたんです。三人の関係も、誠さんの気持ちも、ボクは知ってます」

 伊藤誠、桂言葉、西園寺世界。
 高校生らしからぬ三者の不純な恋愛関係は、今を思えば真にとってのちょっとした憧れだったのかもしれない。
 ボーイッシュを売りとしたアイドルとして同年代の女の子たちから持て囃され、大人の男性たちに囲まれて日々を過ごしてきた。
 歳の近しい男の子とは縁もあまりなく、だからこそ誠のアプローチに流されてしまったという部分も、多々ある。

 だが、誠の告白を聞いたあの瞬間、真は夢から覚めたのだ。
 誠、言葉、世界。この三人の関係には、誰も踏み入ることができない。踏み入ってはいけない。
 そう悟ったからこそ、誠から距離を置き、彼の望むとおり友達として、三人の仲直りを応援しようとした。
 その誠も、もうこの世にはいない。彼が想いを傾けていた二人の女性も、この惨状だ。
 だからせめて、と真は世界に訴える。

「教えてください。世界さんは、誠さんのこと――」
「なぁ〜んだ」

 真面目な表情で世界に食い入る真に、しかし世界は、

「そっか。そっかそっかー。そういうことだったんだ。ホント救えないなー、こっちの誠は」

 あっけらかんとした態度で、混乱を拭い去った明朗たる反応を返す。

304 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:26:07 ID:Jvm51iUL
 

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:26:30 ID:jB4WscEZ
 

306 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:26:31 ID:zE4WfMYs



307 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:27:17 ID:zE4WfMYs



308 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:27:25 ID:EeHRykCc
「あ、ひょっとしてあなたがこのみの言ってたファルって女? カレーに毒を盛ったヤツ」

 年頃の女の子が普段友達とお喋りするのとなんら遜色ない、調子のいい声で語りかける。

「あ、違うか。どう見ても日本人だし、さっきマコトって呼ばれてたもんね。名簿にも載ってた。あなたが『真ちゃん』かー」

 言葉の投げ合いを楽しむのではなく、一方的な押し売りの形を成す、自分勝手な解釈を続けていった。

「それで? あなたは誠とどこまでいったの? エッチくらいはした? 私と桂さんは、赤ちゃん貰ったんだよ」

 ロングスリーブシャツの裾をペラッと捲り、自慢げに蛆の湧く腹部を見せ付ける。

「って言っても、たぶんあなたの会った誠じゃないけど。私たちの誠は、ここにはいないし。ここにいた誠は、私が食べちゃったし」

 不意の告白に、真の口が開く。毅然としていた眉根は弛緩し、動揺と衝撃に震えた。

「誠さんを、たべ……食べ、た……?」
「うん。お昼頃だったかなぁ。ちょうどランチの時間だったし」

 食人という行為自体に、さして驚きはない。目の前の異形を考えれば、それもまたあり得る。
 しかし真としては、誠が誰よりも救いを願った女の子に、食べられた……というのが、どうにも納得できなかった。

「お昼、頃って……ボクがちょうど、教会からアルたちのところに飛ばされた後だ……」
「教会? ああ、そういえば近くにあったかも。そこで、サラリーマンっぽいおじさんと、人形嵌めた女の子にも会ったっけ」

 真の脳裏に、忌まわしい後悔の記憶が蘇る。
 懺悔室での誘い。己の弱さゆえの逃げが、誠たちとの別離を齎し、死すらも招いた。
 誠だけではない。教会に置いてきてしまった……今も心の芯に据えている、かけがえのない友達の姿を思い出す。

309 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:28:16 ID:Jvm51iUL
 

310 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:28:51 ID:EeHRykCc
「やよいと、プッチャンと、葛木先生に……会ったんですか?」

 全身が、声が、視線が、ぶれた。
 どんな顔をすればいいのかも判然としないまま、真は海面を漂うように、ただ身を委ねる。
 困惑する真とは対照的に、世界は朗らかな表情を取り戻し、腹部を摩りながら母のように語った。

「私は、この子のためにたくさん栄養を取らなきゃいけないの。あなたの知ってる誠も、ここにいるよ。
 間桐さんだって応援してくれた。葛木先生っていうの? あの人とは言い争いになっちゃったけど。
 うん……そう。でも私、やっぱり間違ってなんかないよ。正しいの私。赤ちゃん守るのが、いけないわけないじゃない」

 狼狽していく真の様子を愉悦とでもするように、世界は狂気的に語る。

「あはっ、あははは、そうよ、みんなそう! 間桐さんも棗さんも私とこの子を祝福してくれてる!
 中にはその葛木って人や、揃って死んでた親子、ああ私のことが狂ってるなんて言ってた女もいたっけ。
 桂さんと一緒にいたみたいでさ、なんだか一人でおたおたしてたからドカーンってやっちゃったけど」

 この島での苦汁を思い出しながら、真たちに述懐を続けていく。

「でももう、桂さんは私と一緒。一緒にこの子を守っていくの。栄養取って、元気な子を産むんだぁ。
 その前に柚原このみをぶっ殺して、あいつと一緒にいた黒い髪の女も、なんかひょろ長い眼鏡も殺しつくして、
 それでこの島にいる奴ら全員、ぜんいん、殺して、はは、痛め、は、全部、思い知らせ、思い知らせてやる、だか」

 漏れ出す失笑は言葉の勢いを削ぎ、ついには、

「は、は、は、は……ははははははははははははははははははははは!!」

 箍が外れ、世界は天を仰ぎながら爆笑を唱えた。

311 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:28:52 ID:T+Y0MWj0
    

312 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:29:54 ID:jB4WscEZ
 

313 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:30:13 ID:zE4WfMYs



314 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:30:37 ID:EeHRykCc
「おかしいよ……」

 桂が零した当然の感想は、しかし大音量の笑い声によって掻き消される。
 規格外の異常者を前にして、誰もが対処を見送り、硬直が続いた。

「間桐桜、葛木宗一郎、伊藤誠……そしておそらくは、如月千早を手にかけたのもこやつか」

 先ほどの言動、そして言葉から送信されたメールの内容を思い出し、アルは断定する。
 あのとき、言葉は元々の知り合いである誠、世界、刹那の他に、千早も捜索対象の中に含んでいた。
 直後の棗鈴死亡の報と、言葉の携帯電話を所持していたことから、下手人はツヴァイであるかとも思ったが、真相は違う。

「西園寺世界よ。汝はいったいどれだけの人間を殺め、喰らってきたのだ?」
「あや、め? はは、な〜に言ってるのこのちびっこいの。私はただ、赤ちゃんのために栄養を……」
「その、ために……! 誠さんも……食べたって言うんですか!?」

 まるで悪ぶった様子もない世界に、真は糾弾の問いを放る。

「うん、そうだよ。だって、ここにいる誠は私に赤ちゃんをくれた誠とは違うもの。
 本人が、違うって言ってたもん。だから私は、赤ちゃんを守りつつ柚原このみたちに仕返しして、誠のところに帰るの。
 もちろん桂さんも一緒だよ。私と、赤ちゃんと、桂さんと、誠の四人で幸せに暮らすんだから。ねー」

 並行世界――誠ややよいとの離別を生んだ、切欠ともなった概念が、そのまま誠の死に直結してしまった。
 判明した事実に、真は膝を折り、地に手をつける。
 されど顔は沈めず、瞳だけは世界を睨み据えた。

315 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:31:08 ID:zE4WfMYs



316 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:31:17 ID:Jvm51iUL


317 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:31:54 ID:zE4WfMYs



318 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:31:56 ID:EeHRykCc
「ふーん。よく見たらあなた結構可愛いね。ひょっとしてモデルさんかなにか?
 桂さんの近くにいた胸のない女は救えなかったけど、まさかあなたは『世界が狂ってる』なんて言わないよね?
 あ、ひょっとして誠食べちゃったの怒ってる? 真ちゃんと、ここにいた誠って、もしかしてデキてた?
 だったらごめんね〜……あー、でもいい気味。あなたが柚原このみだったらもっと気分よかったんだろうなぁ」

 伊藤誠も、葛木宗一郎も、如月千早も、全てこの女が殺した。
 高槻やよいを一人きりにし、誠の想いを無碍に扱い、死んだ言葉すら身勝手に使役した。
 菊地真からありとあらゆるものを奪い、それが露呈しても、なお平然と自分勝手なことを述べ続けた。

 ――憎悪が込み上げ、しかし呆れて怒る気にもなれなかった。
 目の前の愚かすぎる少女に抱いた感情は、やはり憐れみだったのかもしれない。

 誠が幸せを願い、裏切られた、元恋人の友達。
 誠の想いを知りながら、それを応援仕切れなかった真。
 自分への責任を感じながら、今はやよいのために頑張ろうとした。

(ボクは……)

 西園寺世界を、西園寺世界だったモノを、どうしたいのか。
 どうしてやるのが、菊地真にとって、伊藤誠にとっての、最善なのか。

 すぐには答えの出ない難問を前に、挫折はしない。
 今やるべきことは、熟考でもない。
 強く、強く。
 恋に憧れる女の子としてではなく、今は女の子に憧れられる王子様として、立つ。

「ねぇ。真ちゃんは、私たちのこと祝福してくれるよね? だったら、そこ退いてよ。その子食べて、栄養にしなくちゃ」

319 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:33:02 ID:jB4WscEZ
 

320 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:33:32 ID:EeHRykCc
 蘭堂りのを救う。
 行うべきはそれだけであり、障害である世界は遠ざけなければならない。
 なればこそ、真は世界の眼前から立ち去ろうとはせず、君臨を続けた。
 桂も、アルも、碧もそれは変わらない。
 それぞれ戦闘体勢を取りながら、断固としてりのの守護につく。

「事情はまだよくのみ込めないけどさ。誰にでもわかるもんが、一つだけあるよね」

 真よりも一歩前に出て、碧は立ち尽くす世界に青天霹靂の矛先を向ける。

「この状況、見てわかんない? こっちは四人、そっちは二人。おなかの赤ちゃん思うなら、無理はやめといたほうがいいと思うけど?」

 それは、撤退の要求だった。
 かかってくるなら容赦はしない、だが退くならば追いもしない、という意志を言葉に込め、世界に悟らせる。
 不意に現れた敵に一度は混乱し、しかし真とのやり取りで自信を回復させた世界だったが、碧の言で改めて状況を見渡す。

 四対二。
 大げさにでかい武器を持った相手と、得体の知れないコスチュームに身を包む相手と、小さいが度胸のある相手と、先ほど回し蹴りをお見舞いされた相手。
 それに対し、世界は言葉とのタッグで挑まなければならない。不意の衝突であったため、罠などの備えもない。

 世界の脳裏に展開されるのは、数にものを言わせ強いられた苦汁の数々だ。
 葛木宗一郎との戦いに乱入してきた高槻やよい、柚原このみとの戦いに乱入してきた二人の男女、温泉で不意を打ってきた支倉曜子も。
 勝利の裏に蓄積されてきた敗北のほとんどは、負けて同然の不利な条件が祟っての結果だった。
 それを鑑みれば、世界が後ずさるのも自明の理を言えた。

「……な、なによ、それ! 卑怯じゃない。こっち二人なのに、そんなにぞろぞろ肩並べちゃってさ!」

 冷静に不利を受け入れはするが、状況そのものに対する不条理な憤りは、当然のごとく外へと発散する。

321 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:34:23 ID:jB4WscEZ
 

322 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:34:53 ID:EeHRykCc
「汝はなにを言っているのだ? これはゲームとは銘打たれてはいるが、遊び感覚で罷り通るものではないのだぞ」
「そういうこと。お母さんになるんだったら危ない真似しちゃ駄目だよ。栄養取るんなら家で大人しくしておいたほうがいいって」

 構えを解かぬまま、アルと碧が世界を威圧する。
 相手も決して退きはしない、という苦境を植えつけられ、世界の足はまた一歩後退した。

「か、桂さん……」

 傍らに立つ言葉は、碧たちの威圧にも、世界の助言を請う仕草にも反応を見せない。
 ただ世界と歩調を合わせ、命じられるのを待っている。
 受動的な態度に僅か苛立ち、しかし世界はそれを内に留める。
 碧の忠告を、受け入れたのだ。

「……今は逃げよう、桂さん。いつか、いつかこいつらにも、仕返ししてやるんだから……!」

 小声で鋭く言い放ち、世界は言葉を引きつれ遁走した。
 その背中が完全に見えなくなるまで、真たちは警戒を解かず、すぐにでも対処できるよう心がけた。
 ……そして、危難が去ったと判断するや、

「ふぅー」

 碧が溜め込んだ息を外に放出したことによって、各々が自然体に戻る。
 碧が青天霹靂を消し、桂がマギウス・スタイルを解き、アルがちび状態から戻り、真がメリケンサックをポケットに収納して、それぞれ息をついた。
 誰もが優れぬ顔をしながら、西園寺世界という異形を思う。

「放っておいて、よかったのかな……?」
「よいわけではない。できることなら、妾たちの手で葬ってやるのがせめてもの慈悲だ」
「けど、今は彼女に構ってやれる状況じゃない。真ちゃんもいろいろ大変だろうけど、そこんとこはわかってるよね?」
「……はい。今は」

323 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:35:29 ID:jB4WscEZ
 

324 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:36:32 ID:EeHRykCc
 四人の視線が、背後のりのへ向く。
 地面に横たわるその小さな体は、既に死に体だ。虫の息、とも形容できる。
 頭部と背中からの出血が特に酷く、止血しようにも傷口が多すぎて如何ともしがたい。
 意識はまだ辛うじてあるが、とても言葉を交わせる状態ではないだろう。

「治せる、アルちゃん?」
「望み薄だ。制限された治癒魔術では、とても……」
「だめだよ……! わたしもやれることはやるから、諦め、ない、で――」

 治癒魔術を行使するアルを中心とし、四人の少女が重傷のりのを囲む傍ら、桂が逸早く気づいた。
 どこか、懐かしい視線を感じる。
 世界の狂気的な視線でも、言葉の無機質な視線でもない、新たな第三者の視線が、桂たちに向けられていた。

「あっ……」

 その基点を辿ってみると、剣の鞘らしきものを携えた女性が立っていた。
 鮮やかな蝶の刺繍が入った、藍色の和装姿。
 外見は少女だが母のように温かみのある物腰。
 桂が既知していたイメージは、今では忌避しがたい現実に崩され、一変してしまっていた。

「りの、さん……?」

 ようやく巡り会えた羽藤桂ではなく、守り通すべきだった少女の無残な姿を見て、ユメイは蘭堂りのの名を口にした。


 ◇ ◇ ◇



325 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:36:46 ID:jB4WscEZ
 

326 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:37:52 ID:EeHRykCc
 腹の底にストレスを溜め込みながら、西園寺世界はのっしのっしと歩を進める。
 相手に主導権を握られ、余儀なくされた撤退。
 もう何度目かもわからない敗北の味が、今回はやけに頭に染み付いて離れない。

「もうちょっと、もうちょっとだったんだよ? 私、おなか空いてたのに。この子だって、泣いてるのに!
 ああ、もう! なんなの、なんなのよあいつら! 数にものを言わせて、私たちのこと馬鹿にしてさ!
 ねぇ、桂さんもそう思うでしょ!? 今度会ったら、許さないんだから……!」

 おぞましく形相を歪ませ、世界はキッと虚空を睨みつける。
 噛み締めた唇から、黒く濁った血が流れ落ちた。

 世界の掲げる正当性は、彼女自身をルールとした、彼女に都合の良い結果を齎してこそのものだ。
 四人がかりで彼女を虐げる……殺し合いの場においては正統な構図も、世界の中では不当な悪として裁かれた。
 処断しなくてはいけない。柚原このみの一派と同じく、内臓を引きずり出し、憎悪と共に啜ってやろう。
 思い描く殺戮劇に、世界はけたけたと笑い、不気味な声は反響することなく空へと消えた。

「そういえば、ここどこなんだろう?」

 真たちから逃走しやって来たのは――音を反射する遮蔽物がなにもない、だだっ広い敷地だった。
 足元には舗装されたアスファルトが延々と続き、近隣に建つ照明塔によって、刻まれた白線を浮かび上がらせる。
 広大な暗闇の敷地をさ迷い歩く内、世界はここがどんな意味を為す施設なのかを探り、そして答えを得た。

「これって……」

 人工的な光源を辿っていけば、そこには特徴的な形を成す鉄の塊が『一機』、無造作に置かれていた。
 月明かりと照明を頼りにその全形を眺め、鉄の塊の正体と同時に、この無駄に広い敷地の意味も知る。

327 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:38:17 ID:jB4WscEZ
 

328 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:38:59 ID:EeHRykCc
「桂さんも見える? この女、覚えてるよ。私のこと、間違ってるとか言ってくれたヤツ……!」

 蓄積された過去の憤怒を再燃させ、世界は憎悪の対象を刻む鉄の塊を破壊してやろうかとも思ったが、すぐに思いとどまる。

「……あっ、そうか。そうだ……そうだよ、ねぇ」

 悪鬼と化した母が求めるのは、胎児の成長を促す養分、ひいては人肉だ。
 欲求は行動を支配し、だが未だ母としての自我を保つ世界は、欲に溺れない。

「仕返し……そう、仕返し。これで、あいつらに仕返ししてやろうよ」

 恨みの消化。世界を虐げてきた全存在への逆襲。目に映る者への八つ当たり。
 世界の思い通りにならない世界を、歪ませ、壊す。
 そうすることで、西園寺世界という個は快感と満足感を得る。
 心の充溢は、なにをおいても優先させるべきであると、世界は思う。

「桂さんも手伝ってくれるよね? 私一人じゃどうにもできないだろうし。うん」

 同じ男性を愛した運命共同体を使い、世界は発見した鉄の塊を道具として、

「そうよ。これが動かせれば……思い知らせて、やるんだから……っ」

 人を喰らう、恨み鬼と化す。


 ◇ ◇ ◇



329 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:39:25 ID:T+Y0MWj0
      

330 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:39:26 ID:jB4WscEZ
 

331 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:40:08 ID:EeHRykCc
 ――たいせつなひとが、いなくなってしまった。

 なにが怖かったのだろう、と今さらながらに思う。
 人の体を捨て、従姉という立場をも放棄し、オハラシサマとしての使命に没頭した彼女は、それでも羽藤桂を慈しむ心を忘れなかった。
 桂が経観塚を訪れたときも、この殺し合いに参加させられていると知ったときも、ユメイが抱いた願いは淀みなく、守りたい――ただそれだけだった。

 昔日を思い出しても、ユメイにとっての大切な人はやはり変わらない。
 死を隣に置いた舞台で、ひたすらに祈り、無事を願ったのは、桂の身だ。
 一時は彼女だけのため、後の害意となる不審な男を手にかけようともした。
 失敗し、直後に後悔を覚えたのも、ユメイの心理だ。

 桂を守るため、ひいては己の空虚な心を満たすため、ユメイは臆病な自身に安定を与えようとした。
 しかしそれすらも、満足には行えない。大十字九郎に刃を振り落とせなかったのは、そういうことなのだ。
 大切なもののために修羅となる勇気も、大切なものはそれを望まないからと、切り捨ててきた。
 実際に再会した桂は、ユメイの知るとおりの桂として、多くの仲間に囲まれていた。
 たとえ鬼と変わり果てようと、左腕と不揃いになってしまった右腕を鑑みようと、彼女の本質は変わってはいなかった。

 だからこそ、比べてしまう。
 大樹の根のように強い芯を持つ桂に比べ、ユメイは薄暗い荒地を彷徨い続けてきた。
 仮面を被った橘平蔵との邂逅に始まり、本格的なスタートを切るまで、ずっと迷宮の中にいた。
 それはリトルバスターズという仲間を得て、脱出を果たしたのだと、そう思い込んでいた。

332 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:40:52 ID:jB4WscEZ
 

333 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:41:04 ID:EeHRykCc
 桂を、大切な人を守るために、けれど桂だけではない、みんなを守りたいと。
 一を守るために他を攻めるのではなく、一も他も含めた全に、守りの力を行使したいと、そう願うようになった。
 そのほうが、桂も喜ぶし、なにより己の安定に繋がると、ユメイはようやく光明を掴み取ったのだから。

 ……だがそれはやはり、調子のいい願望を多分に含む、理想にしかすぎなかったのだ。
 ユメイ一人にできることは、とても少ない。
 加藤虎太郎の生き様を見届け、別離した仲間の身を按じ、しかし蘭堂りの一人を保護するのがユメイの精一杯だった。

 思うのは、勘違いだったのでは、という絶望だった。
 悪夢のような迷宮からは未だ抜け出せず、桂と対面した今でも、喜悦より罪悪感に支配されている自分。
 桂を守りたいと豪語する身でありながら、りの一人守りきることができなかった愚かしい身の上を、呪う。

 ――たいせつなひとが、またいなくなってしまう。

 ユメイには、大切なものの正体が判然としない。
 桂という一人の人間か、全を守ると誓った自分か、守ることに羨望を抱いていた己か、都合のいい理想か。
 焦燥と後悔で綯い交ぜになった、悲痛でさらに潰れかけた、心が殺される。
 大切なもののために、なにをどうするのが最良だったのか。

「私は――」

 答えが出ないからこそ、体はシンプルに動いた。
 後悔を連ね、重圧によって束縛されるだけではもう、いられない。
 源千華留と知り合い、蘭堂りのと知り合い、過ちは十分に省みた。
 省みた結果が、今の自分自身、羽藤柚明なのだと、臆病な心に言い聞かせる。

334 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:42:10 ID:jB4WscEZ
 

335 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:42:17 ID:EeHRykCc
「絶対に、助けるから……!」

 蝶と、聖剣の鞘による癒しの力を行使しながら、ユメイは全身全霊をかけてりのの治癒に当たった。
 再会を果たした桂との会話も疎かに、ユメイは桂以外の大切なものも守ろうと、躍起になった。
 正しいか正しくないのかはわからない、負傷したりのを見て、心がそう願った、故の行動だった。

「人体の損傷もそうだが、失血の量が特に酷い。このまま妾とユメイで力を行使し続けても……」

 ユメイと共にりのへの治癒を試みるアルが、苦虫を噛み潰したような顔で弱音を吐く。
 アルを初め、りのを囲む桂、真、碧の顔色も優れず、瞳に不安の色を灯していた。
 世界を退けたままの街路に身を置き、肌寒い外気に晒されるがまま、時間が経過していく。
 死の克服には至らない、先延ばしの意味しかない延命処置が、終わることなく続いた。

「諦めないで、諦めちゃだめ……りのさん!」

 自身の力の損耗などお構いなしに、ユメイはりのへと想いを注ぐ。
 誰もが口にだけはしなかった絶望を、頑なに拒む。
 奇跡の到来を望み、しかし現実は無情で、いたずらに時だけが流れる。

「わたしのときと、サクヤさんのときと、同じ……」

 ふと、桂が呟いた。

「状況は桂のときよりも深刻だ。輸血だけではままならぬ」

 アルが、無情な通告をする。

336 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:43:05 ID:jB4WscEZ
 

337 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:43:17 ID:EeHRykCc
「なんとか……なんとかならないの!? お願いだから、頑張ってりのちゃん……!」

 碧が、りのの小さな手を握りながら激励する。

「ボクたちにできること、他にないんですか? この子を助ける方法は……」

 真が、悔しさを押し潰して耐える。

「……っ」

 ユメイは、ひたすらに精力を注いだ。

 ――たいせつなひとのてを、はなしてはいけない。

 無数の裂傷、内臓器官の損傷、頭部の陥没、脳への痛手、極大量の失血。
 生の可能性は途絶え、死の香り濃厚な窮地において、集った五人は諦めることなく、足を止め救命に尽力した。
 できることは少ない。死に逝くまでの時間を、いたずらに伸ばしているだけなのかもしれない。
 だが誰一人、幼い少女の命を手放す気にはなれなかった。
 消えゆく命を、懸命に繋ぎ止めようと、

「……ねぇ、これなんの音?」

 奮起する傍ら、碧の耳が逸早く異変を察知し、皆の意識を誘う。
 夜、人通り皆無の市街地で、なにやら音が響き渡っている。
 声ではなく、風でもなく、速度を体現するかのような、轟音。
 それは上空から発せられているのだと悟り、一同の視線は天へ。

338 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:43:56 ID:jB4WscEZ
 

339 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:44:46 ID:EeHRykCc
「……なっ!?」

 そこで、多くの者が驚きの声を上げることとなる。
 自分たちの上空を飛ぶ鉄の塊に、極大級の畏怖を覚える。
 人と人とが狂気を交える殺し合いの場で、なぜあのようなものが、と。

「なによあれ……たはー。アリ?」

 放心したような顔つきで、碧は月光に照らされる翼を眺めた。

「えっ……あれ、いや、まさか……うそ、千早……!?」

 暗い空に垣間見た、今は亡き友達の絵姿を機体に見て、真が瞠目する。

「あ、あれ! わたしが見た――」

 見覚えのある全形に、桂がしかし信じられないといった風に叫ぶ。

「このタイミング、気配を感じずともわかる……西園寺世界か!」

 それを駆る人物にあたりをつけ、アルが応答を望まぬ名を叫ぶ。

 ――たいせつなひとを、ひきはなそうとするものがあらわれた。

 三者三様の色を灯った視線は、全て天へ。
 夜空を飛行する大いなる翼の影に、成す術をなくして。
 手段をもがれた五人は、襲い来る畏怖の正体を知った。

340 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:45:44 ID:jB4WscEZ
 

341 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:46:15 ID:xNnREj5X
 

342 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:46:21 ID:T+Y0MWj0
 

343 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:46:46 ID:jB4WscEZ
 

344 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:47:22 ID:EeHRykCc
 それは、攻撃する鷲=B


 ストライクイーグルの愛称を持つ。


 21世紀初頭において未だ現役を続ける戦闘翼。


 鋭角的な機首、小さな操縦席、三角形の翼、二つの垂直尾翼。


 刻まれしは『如月千早』、『765』、『PROJECT iM@S』などの刻印。


 更なる高みを目指し、大空へと羽ばたけ――少女の想いを重ねた新機軸の設計。


 名称は、『F-15E Strike Eagle -THE IDOLMASTER CHIHAYA-』。


 歴戦のエースたちが搭乗したと言われる複座型の……戦闘爆撃機だった。


 ◇ ◇ ◇



345 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:47:42 ID:xNnREj5X
 

346 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:47:47 ID:jB4WscEZ
 

347 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:48:28 ID:EeHRykCc
「あはははは! すごい、すごいよ、さすが桂さん! なんでもできちゃうんだ!」

 F-15E戦闘機『如月千早』モデリングカラーに搭乗するのは、二人の少女だった。
 前席にパイロットを務める桂言葉、後席に兵装システム士官を務める西園寺世界。
 どちらも戦闘機などとは縁もゆかりもない人生を送り、しかし今は、逆襲の手段としてこれを活用している。

「戦闘機って、結構簡単に動かせるものなんだね! ははっ、私! 知らなかった、ははっ、知らなかったよ!」

 後席ではしゃぎ散らす世界が自分勝手な解釈を述べるが、彼女が此度吸収した知識には誤りがある。
 航空機、ましてや戦闘爆撃機など、訓練を積んでいない素人に乗りこなせるものでもない。
 悪鬼として変貌し、人体の強化を遂げたとしても、飛行中の戦闘機の中で装備なしに喚き散らすことも不可能。
 ましてや、前席に置かれていた説明書を言葉に『読ませ』、『学習させ』、『動かせ』と命じただけで運用が実現するなど、非常にもほどがある。

 しかしこのゲームでは、そんな非常が罷り通るよう、あらかじめ調整が成されているのだ。
 人間通しの殺し合いに活用できるよう、F-15Eとは名ばかりになるほどまでスペックを落とし、改造を施した。
 外観こそ変化はないが、言葉が動かしているF-15Eは厳密には戦闘機とは呼べない、実際の軍に配備しても即退役もののポンコツだった。

 だがそれも、対人戦において言えば余りある力を発揮する。
 地を這い、空を飛ぶこともできない者を相手に据えれば、スペックダウンしたこの機体でも最強の兵器と化すのだ。

「見て見てあいつら! 粟喰ったような顔してる! 小さくてよく見えないけど、たぶんきっとそうだよ!」

 電車の外でも眺めるような気分で、世界が後席から眼下の標的を見やる。
 喰い損ねと、真ちゃんと、正義の味方と、他に三人くらい。
 なにやら増えているような気もしたが、構わず言葉に攻撃を指示する。

348 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:48:58 ID:jB4WscEZ
 

349 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:49:28 ID:EeHRykCc
「桂さん、ちょっと脅かしてやろうよ!」

 言葉は動作だけで応え、F-15Eを巧みに旋回させた後、降下する。
 島北東の中心街を低空飛行し、辺り構わず機銃を発射させた。
 同じ戦闘機を射るための20mm機関砲弾が地上のビル群を襲い、次々と倒壊させていく。
 被害は地上の獲物たちの近くにも起こり、声は届かないが、阿鼻叫喚の悲鳴が木霊しているように見て取れた。
 世界には、それが愉快でたまらない。

「いい気味! あはは! 本当に、いい気味! 私たち、なんてラッキーなんだろう!
 これさえあればもう誰にも負けない! 柚原このみにも、あいつらにも、仕返しし放題だよ!」

 欲しかった玩具を手に入れた子供のように、童心を露にする世界。
 ただ座っているだけの後席が皇帝の玉座にも思え、全ての敵は今潰えたのだと、思い込んだ。

「どうしてやろうか? あいつらどうしてやろうか? 一人一人狙い撃ってあげようかなぁ。私、ガンシュー得意だし。
 でもせっかくミサイル積んでるんだから、一撃で木っ端微塵にしてあげるのも楽しそう! きっと綺麗な花火があがるよ!」

 低俗な愉悦を、世界は満面の笑みでもって望む。
 絶対の矛を手にした逆襲者は、蓄積された憎悪をどう発散させるか、それだけに考えを割いた。
 地上の標的たちはただ駆逐されるだけ、反撃の術などあるはずがない、そんな当たり前の優越感を抱きながら。

「ああ〜、もう、いいや! 一思いにやっちゃおう!!」

 地獄が、展開される。


 ◇ ◇ ◇



350 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:49:59 ID:jB4WscEZ
 

351 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:50:20 ID:T+Y0MWj0
   

352 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:51:01 ID:EeHRykCc
 気づいたら、私は夢の中にいました。
 いつからここにいたのか、ここにいる前はどこにいるのか、まるで思い出せなかったけど。
 私は、私がいるべき場所で、すやすやと眠っていたんです。

「……蘭堂。蘭堂りの。……書記の蘭堂りの! 起きんか!!」
「は、はにゃ!?」

 聞き覚えのある大きな声に驚いて、私は突っ伏していた机から顔を起こしました。
 口元の涎を拭いつつ、とろんとした瞳を周囲に向けてみれば、そこは極上生徒会生徒会室。
 私を合わせた十一人の生徒会役員のみんなが、会議中でした……って、私会議中に居眠りしちゃってたぁ〜!?

「まったく、りのってばドベでペケでダメダメだね」
「れいんほど卑下する気はないが、さすがに今回ばかりは擁護できないな」
「バッド……」
「今は予算にも関わる大事な話をしているんだけど……」
「ここは一つ、お灸を据える必要がありそうですわね」
「さんせーい。りのに書記は任せておけませーん」
「申し開きくらいは聞くぞ、蘭堂?」

 大事な役員会議の場で居眠りをしてしまった私に、みんな容赦ない視線を浴びせてきます。
 うう……確かに寝ちゃってた私が悪いけど、誰も味方がいないぃぃ……。

「仕方ないじゃなーい。なんたって、りのなんだから」
「そうね。りのちゃんなんだから仕方がないわよねぇ」

353 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:51:32 ID:jB4WscEZ
 

354 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:52:03 ID:T+Y0MWj0
      

355 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:52:14 ID:EeHRykCc
 ぐはっ! みなもちゃんに聖奈さんまで……し、四面楚歌ってやつだよ、だよー……。
 意気消沈して、落ち込んで、猛烈に反省する私を、みんなはニヤニヤした目つきで攻め立てます。
 あ、でも……たった一人だけ、私に暖かい視線を投げかけてくれる人がいました。

「りの? 疲れているのなら、ゆっくり休んだほうがいいわ」

 たった一人、神宮寺奏会長だけは、私の体のことを心配してくれます。
 そもそも私、どうしてこんなに眠いのかな……昨日は夜更かしした覚えもないのに。

「わからないのなら、なおのこと休みなさい。みんなも、そのほうが安心するから」

 そう、なのかな。……奏会長がそう言うんなら、そうなのかもしれない。
 みんなの……特に和泉さんの視線が痛いけど……ダメっ子なりのは、あとちょっと眠ることにします……。

 おやすみ、なさい…………。


 ………………あれ?


 ……なんだろう、声が、聞こえる…………?


 みんな…………じゃない。なんだか…………悲しそうな…………声…………。


 これも……ゆめ?

356 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:53:44 ID:jB4WscEZ
 

357 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:53:51 ID:EeHRykCc
 小学生くらいのすごい格好した女の子が、空を睨んでる。
 なんだかすごくいい匂いのする女の子が、おたおたしてる。
 ジャージを着た男の子っぽい女の子が、空と私を交互に見比べてる。
 強そうなウェイトレスさんが、すごく悔しそうな涙を浮かべてる。

 それと……着物姿の綺麗な女の人が、私の頬に涙を零してる。

 わからない……この光景はなんなんだろう?
 夢……それとも、現実? じゃあ、極上生徒会のみんなは……?
 奏会長……プッチャン……お母さん。
 私は…………あれ。

 泣いてる……もう一人、月から、悲しい声が聞こえる……。
 月……宇宙……空? なんだろう、とても悲しそうな、声……。

 ……誠クンって、誰だろう?

 どうして、どうしてあなたは……そんなに悲しそうに泣いているの?
 他のみんなも、どうして……?
 一人だけ、笑っている人がいるような気がする。
 他のみんなが、なにより側にいる人が一番、悲しそうにしているのに。

 どうして。
 どうして、こんなことをするんだろう。

 わからない、わからないよ。
 わからないけど……わかりたいけど、わかれないよ。

358 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:54:40 ID:fD+7M9oB
 

359 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:54:49 ID:EeHRykCc
 すごく眠たくて……声も全然出ないし……。

 けど、けど…………放っておけないよ。

 着物の女の人も、他のみんなも、空で泣いてるあの子も。

 こんなことしてちゃ、誰も幸せになんて、なれないから!

 どうしてみんな、それがわからないの!?

 伝えたい……伝えたいよ。

 届けたいの……!

 私の想いを、私の言葉を、みんなに――!


 ◇ ◇ ◇



360 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:55:12 ID:jB4WscEZ
 

361 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:55:58 ID:EeHRykCc
「あ、アルちゃん! マギウス・スタイル!」
「無駄だ。あれほどの質量、マギウス・スタイル程度ではどうにもならん」
「愕天王……出せたとしても、相手が空じゃ、なぁ……はは」
「世界さん……どうして、どうしてこんなこと……ッ!」

 翼を持たない地上人たちが、嘆きの声を上げる。
 遥か上空を飛ぶF-15E戦闘機に対し、彼女たちが取れる策はなに一つとして残されていない。
 交戦は不可。空手も、魔術も、HiMEとしての力も、人間が生み出した兵器の前で無力だった。
 唯一の策があるとすれば、動かすのも危険な重傷人を置いて逃げることだが……それは誰もが思いはしても、口には出さない。
 ユメイに至ってはF-15Eへの反応も疎かに、他の仲間たちに対処を任せ、りのの治療を続けている。

「――あ?」

 絶望的な均衡は、しかし突如として壊れた。
 ユメイが、桂が、アルが、碧が、真が、言葉なく口を閉ざす。
 ある者は周囲に目配りし、ある者は虚空をいぶかしんだ。
 いずれも正体を掴めず、誰ともなしに声を漏らす。

「今の、は……?」

 不思議な力によって齎された達意の言を、空耳ではないかと胸に反芻する。
 それは、誰もが抱えていた疑念であり、確信だった。

「あっ……れ? 見て、みんな。あの戦闘機、どんどん遠ざかっていく」

 真が空を指差し、一同は疑念を抱えたまま、飛行する戦闘機を目でやった。
 月夜の映える空を、F-15E戦闘機は飛んでいく。ユメイたちとは反対の、まるで明後日の方向に。
 目視が可能なまで視線で追っていくが、戻ってくる気配はなく、やがて夜空に消えた。
 目を凝らして見ても、やはり変わらない。機影は、完全に闇の中へと没した。

362 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:56:24 ID:jB4WscEZ
 

363 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:57:09 ID:EeHRykCc
「……危機は去った、のか?」

 アルでさえも、突然の事態がのみ込めず、疑問符を浮かべながら言葉を漏らした。
 一転して静けさを取り戻した空に、一抹の不安を覚えながら、一時の安寧に身を寄せる。
 誰もがしばらくの間呆然とし、ユメイのみが、即座にりのの治癒を再開した。

 りのの容態はやはり芳しくなく、どころか、先ほどよりも悪化しているように見えた。


 ◇ ◇ ◇


「桂さん!? ねえ、どうしたのよ桂さん! なんで、どうしてそっちに行くの!?」


 ――誠クン。


「あいつら、まだ生きてるじゃない! 殺さなきゃ、殺して、ギタギタにして、思い知らせてやるのよっ!」


 ――誠クン。誠クン。


「ほら、ミサイル! ミサイル撃って! 撃ちなさいよ! ああ、もう! そっちじゃないってば!!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。



364 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:57:10 ID:jB4WscEZ
 

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:57:10 ID:fD+7M9oB
 

366 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:57:16 ID:T+Y0MWj0
       

367 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:58:24 ID:EeHRykCc
「ちょっと桂さんってば! そっち海! いったいどこに――あ、あ〜、そっか!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「このまま島の外に出ちゃえばいいんだ! あったまいい〜。これで、この子と一緒に帰れるね!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「誠、どうしてるかな〜。桂さんも会いたいよね。桂さん? かつ……あ、あれ」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「なにこれ……ぴぴぴ、ぴぴぴぴぴ……って。ぴぴ、ぴ……ぴ……ぴ……なんか、鳴ってるんだけど」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。



368 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:58:44 ID:jB4WscEZ
 

369 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 02:59:15 ID:EeHRykCc
「こ、これ……! 首輪から鳴ってるじゃない! 戻って、戻ってよ桂さん! 首輪、爆発しちゃうよぉ!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「そうよ、そんな簡単に帰れるわけないじゃない! 桂さんのバカ! 戻れ! 戻れってば! 戻りなさいよぉぉぉ!!」


 ――誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。誠クン。


「いや……嫌だ! いやああ、お願いだから、戻ってぇえぇぇえええ――」


 いま会いに行きますからね、誠クン――!


 ◇ ◇ ◇



370 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 02:59:55 ID:jB4WscEZ
 

371 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:00:08 ID:fD+7M9oB
 

372 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:00:56 ID:EeHRykCc
 ゆらり、ゆられ、波は岸へと、一つの存在を打ち上げた。
 人と称すには歪で、残された自我さえ破綻済みの、人外なる怪異。
 鉄乙女のように、衝動に身を任せ、完全なるあやかしの者となれたらどんなに幸福か。

 ――許さない。

 少女の中で、なにかが呼応する。
 信頼していた友達にまで裏切られ、溜め込んでいた世界への恨みは増幅される。
 この世、全てが世界のためであるべきだと――燃える激情を、芽生えた感情に委ねた。
 慈愛の精神など持ち合わせていては、この先やっていけない。将来設計なぞクソくらえだ。

 ――桂さんまで、私を裏切った。許せない。

 黒光りする海面は、ある一部分だけ赤く照らされ、炎上している。
 親友だと思い続けていた、単なる恋敵ではないライバルは、裏切り者として海の藻屑になったのか。
 だが、己が立っているのは陸地だ。紛れもない島内、殺し合いを行う場である大地だ。
 間際のことはよく覚えていない。きっと緊急脱出装置かなにかを上手く作動させらたのだろう。

 ――こんな世界、間違ってる。許せない。

 この熱情の矛先は、もはや柚原このみだけでは納まらない。
 獲物を奪った四人の少女たちは元より、ここにいる人間全て、憎悪を持って食い千切ってやる。
 四肢をもぎ取り、内臓を引き摺りだし、脳を抉り――などという細かな悪趣味は、切って捨てる。
 殺す。とにかく殺す。会話の余地もない。全部殺す。黒須太一も、支倉曜子も、殺す。

373 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:02:23 ID:fD+7M9oB
 

374 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:02:44 ID:jB4WscEZ
 

375 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:03:07 ID:EeHRykCc
 ――あんたたち全員、私に殺されろ。私の世界の、生け贄になれ。

 そうやって、憎悪は終着点の一歩先へと進む。
 あと一押しで、彼女は人間の形すら失うだろう。
 最高に熟成された素材を、調理するのは果たして誰か。

 疲労から来る眠気で倒れた世界が、次に起き上がる舞台は――



【E-8 海沿い/1日目 真夜中(放送直前)】

【西園寺世界@SchoolDays】
【装備】:防刃チョッキ、ロングスリーブシャツとジーンズ
【所持品】:支給品一式×4、エクスカリバー@Fate/staynight[RealtaNua]、BLOCKDEMOLITIONM5A1COMPOSITIONC4(残り約0.60kg)@現実、
      時限信管@現実×2、89式小銃(28/30)、37mmスタンダード弾×5発、手榴弾1つ、妖蛆の秘密@機神咆哮デモンベイン、
      ICレコーダー、きんぴかパーカー@Fate/staynight[RealtaNua]、ゲーム用メダル400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、
      贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと-幻妖異聞録-、スペツナズナイフの柄、
      このみのリボン、アーチャーの騎士服@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:気絶、疲労(大)、『この世、全ての悪』受胎、精神崩壊、思考回路破綻、腹部損傷(蛆虫治療)、空腹、悪鬼侵食率95%、水浸し
【思考・行動】
基本:この世界ごと、みんな殺す。
1:今は眠る。起きたら――
2:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)、真、正義の味方(碧)、ちっこいの(ちびアル)、ボディコンスーツの女(桂)を見つけたら今度こそ喰い殺す
【備考】
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しています。

 ※島北東の中心街が、F-15E戦闘機の攻撃により一部崩壊しました。
 ※桂言葉の死体は、F-15E戦闘機と共に海面に叩きつけられ、海の藻屑と化しました。

376 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:03:24 ID:T+Y0MWj0
       

377 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:03:41 ID:jB4WscEZ
 

378 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:03:58 ID:fD+7M9oB
 

379 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:04:33 ID:EeHRykCc
 

 ◇ ◇ ◇


 ゆらり、ゆられ、私の体は海面を漂う。

 いつだったか、こんな約束をした覚えがある。

 夕暮れの夜の海を、お父さんのヨットで、誠くんと二人で……。

 あの約束は、どうなったんでしたっけ。

 西園寺さんの中には……誰かいたんでしたっけ。

 私は、二人の前に飛び降りて……。

 そういえば、如月さんと棗さんは、どこへ……。

 メールは、届いたのかな……。

 わからない。記憶が混乱している。

 ああ、けど。

 ……瑣末、ですね。

380 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:04:33 ID:xNnREj5X
 

381 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:04:53 ID:fD+7M9oB
 

382 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:05:24 ID:jB4WscEZ
 

383 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:06:36 ID:fD+7M9oB
 

384 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:06:37 ID:xNnREj5X
 

385 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:07:25 ID:EeHRykCc
 私は、誠くんと二人で、こうやって海に出て……。


 そう、それが……それが、私と誠くんの正しい形……。


 私は誠くんの――誠くんの残り香を抱きながら、波に揺られて。


 濛々と燃える海上で、二人きりに幸せを覚えて。


 聞いてください。ここには、西園寺さんいないんですよ。


 ああ、そう……これが、幸せですね。


 これがきっと、二人の幸せなんですね。


 誰にも、邪魔をされない――二人だけの。


 ずぅぅぅぅぅぅぅぅっと…………イッショ、デスヨ、誠、クン……………………。


 ◇ ◇ ◇



386 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:07:34 ID:fD+7M9oB
 

387 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:07:39 ID:jB4WscEZ
 

388 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:08:41 ID:fD+7M9oB
 

389 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:08:43 ID:EeHRykCc
 いくつもの時が費やされ、成果を得られぬ無為へと消えた。
 深淵の夜は刻々と、日付の変更線へと近づいて、盤上遊戯の節目を作る。
 それを頭の片隅に置きながら、誰もが忘却していた。
 労力の矛先は一人の少女を救いたいという気持ちに独占され、思うように動けない。

 菊地真は教会に向かいやよいを捜したかっただろう。
 アル・アジフは飛び去った戦闘機が気がかりだったろう。
 羽藤桂はようやく再会できたユメイと話したかっただろう。
 杉浦碧は自分にもできることを見つけたかっただろう。

 誰もが、想いを死に逝く蘭堂りのへと集約させた。
 しかしこの地では、人の想いが安易な奇跡を生むわけでもない。
 治癒の効果は衰えるばかり、希望は遠のくばかり、奈落だけが距離を近くした。

 諦めなければ――そんな夢物語を語っても、なにも始まらない。
 理解してはいた。全員が承知の上で、諦めることをしなかった。

 りのがこの世を去るその瞬間まで、懸命に、必死に、人として足掻き続ける。


 ◇ ◇ ◇



390 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:09:18 ID:jB4WscEZ
 

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:09:27 ID:xNnREj5X
 

392 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:09:30 ID:T+Y0MWj0
  

393 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:09:47 ID:fD+7M9oB
 

394 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:09:59 ID:EeHRykCc
 神宮寺の力、と呼ばれる異能がある。
 神宮司の血を引く者に代々授けられるという恩恵であり、その発揮は全世界に影響を及ぼす。
 種類も豊富で、全容も知れない謎の力ではあるが、一つだけ共通していることがある。
 それは、人の心に干渉できるということ。人心を操ったり、曝け出したり、導いたりすることが可能なのだ。

 例えば、亡くなった人間の魂を無機物に吹き込む――蘭堂ちえりの力。
 例えば、特定の人間と以心伝心を成す――神宮寺奏の力。
 例えば、奏以上に強力な高周波無差別伝心のようなことができてしまう――蘭堂りのの力。

 謎多き異能を与えられた者は、力を自覚することによって、本来の恩恵を得る。
 また、りのや奏の伝心には強制力と呼ばれる概念があり、この強弱によっては他者の心を誘導することも可能である。
 自我なき人形の人心に訴え、激情を動かせたのも……魂に干渉できたちえりの娘であるりのだからこそ、なのかもしれない。

「……と、ここまでの話、理解できたか?」

 全然わかりませーん……と、私、蘭堂りのは手を上げて宣言します。

「ええい、このダメっ子がー!」

 ひゃう! ううぅ……プッチャンがぶったぁ。
 一向に覚める気配のない夢の中、私はプッチャンに難しい話を聞かされて、もう頭が熱暴走しそうです。

「ったく、大事な話だってのによぉ……ちっとはそのダメさ加減を自覚しろよな」

 えーん、そうだよねー。私、ダメダメだよねぇ……ぐすん。
 こんなダメダメなりのは、ドリルのドッチャンで穴掘って埋まってるね。
 りーののりぃはー、「理解できません!」のりぃー……。

395 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:10:53 ID:EeHRykCc
「おーい、変な歌うたってんなって。大体りの、おまえ、いつまでもこんなとこにいていいのかよ」

 ふぇ?
 と、私は唐突に思い出すのです。

 私、蘭堂りのがいた……現実の世界。
 そこは宮神学園でも、極上生徒会でもない、紛れもない現実。
 人が人を傷つけて、たくさんの人が悲しんで、そんな、悲惨な現実。
 あの島に、私の体はまだ残っていて、今もみんなが周りにいてくれてる。

 でも、私はもう……。

「目を逸らすな」

 プッチャンに言われて、私は現世を注視する。
 そこには、たくさんの悲しむ人がいて。
 目の届かないところに、他にも一杯の悲しむ人がいて。
 悲しみの連鎖を止めようとしている人もいて。
 私はそこに取り残されるんだと知って、少し悲しくなりました。

 ……ユメイさんは、泣きながら私を助けようとしてくれている。
 ……千華留さんや理樹さん、九郎さんたちの姿はそこにはない。
 ……見知らぬ人も何人か、私のために涙をながしてくれている。

 どうして、こんな悲しいことになっちゃったんだろう。
 どうすれば、みんなが悲しまずに済むのかな。
 私、わからないよ。

396 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:10:54 ID:fD+7M9oB
 

397 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:11:35 ID:jB4WscEZ
 

398 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:12:11 ID:EeHRykCc
「そんなの、誰だって同じさ。みんな、悲しみと闘ってる」

 夢の中のプッチャンは、私が知ってる普段のプッチャンよりも、少しだけ勇ましい。
 お母さんの纏っていた雰囲気にちょっとだけ似ていて、私は懐かしさを覚える。

「俺はプッチャン。それ以上でもそれ以下でもない。これ、よく言うけどな」

 うん。

「そりゃおまえだって同じなんだぜ。おまえはりのだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 うん……わかってるよ。

「なら、りのにできること、したいと思うこと、やれるだけやってみろよ」

 そう、だね……うん。

「それが終わったら、ミスター・ポピットに手紙出そうぜ」

 うん。

「宮神学園に戻って、年頃の女の子に囲まれてウハウハだ!」

 うん……うん? それはちょっと。

「ちっ……ならあの教育実習生でもからかって遊ぶかー」

 先生からかっちゃダメだよ。

399 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:12:33 ID:fD+7M9oB
 

400 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:12:40 ID:jB4WscEZ
 

401 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:13:07 ID:EeHRykCc
「んじゃ、幼稚園だな。りの先生の暗黒授業を……」

 放り捨てるよ、プッチャン?

「そのとき! 青春砲が発射されたぁー!!」

 うわぁ!?

「と、冗談はここまでだ。ほら」

 あっ……うん。

「俺の妹だろ。シャキッとしろい」

 そうだよね。私、プッチャンの……えぇ〜!? 私、プッチャンの妹だったの〜!?

「はははっ、最終回にして驚愕の事実ってやつさ」

 じゃ、じゃあ、プッチャンは実は蘭堂プッチャン!?

「おーい、もうおとぼけはいいから、用事済ませろよ」

 はーい。じゃあ……こほん。


 私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――


 ◇ ◇ ◇



402 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:13:37 ID:fD+7M9oB
 

403 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:14:43 ID:jB4WscEZ
 

404 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:14:50 ID:fD+7M9oB
 

405 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:15:00 ID:EeHRykCc
 その声は風にのって――


「あっ……」

 最初に異変に気づいたのは、りのの側で治癒を続けていたユメイだった。


 ――私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――


「これ……りのちゃんの、声?」
「空耳……じゃないよね?」

 碧が、桂が、次いでその声を確認する。


 ――みなさんに、伝えたいことがあります――


「なんだろう……心に、直接響いてくる感じがする」
「テレパシー、か? 蘭堂りのは普通の人間と聞いていたが……」

 真が、アルが、この声は聴覚から伝達されたものではないと知る。


 ――えと、なんて言おうかな……あの、もう、やめません……か?――



406 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:15:50 ID:jB4WscEZ
 

407 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:16:00 ID:fD+7M9oB
 

408 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:16:25 ID:EeHRykCc
「りのさん。意識が、あるの?」

 遠慮がちに響く、幼い声。
 ユメイは顔色に喜色を浮かべ、りのの容態を見極める。
 外見の変化はない。りのは変わらず、死に逝く間際だった。


 ――こんなことを続けても、みんなが悲しむだけだと思うんです。仕方ない、っていうのもあるんだろうけど――


「意識はない……けどこれ、間違いなくりのちゃんの声だよ!」
「あ、ああ。どのような力かは知らぬが、妾の心にもしかと響いてくる」

 直にりのの声を聞いたのことのある碧が、異能に理解の深いアルが、認める。
 この心に直接響きかけてくる声は……蘭堂りのの、メッセージだと。


 ――だからって、それじゃあ悲しみが続くだけだから。連鎖は、誰かが断ち切らなきゃダメだと思うから――


「そんな……これ……いやだよ、だって、これ……!」
「りのちゃん。ねぇ、起きてよ、りのちゃん!」

 メッセージには違いない。が……本人の容態を見れば、それが末期の言葉であるというのは容易に察しがついた。
 桂と真が泣きじゃくりながらも激励を飛ばすが、彼女らの声はりのには届かない。


 ――子供っぽい、調子いいこと言ってるかもしれないけど、私は、みんなに笑って欲しいんです――



409 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:17:11 ID:jB4WscEZ
 

410 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:17:24 ID:fD+7M9oB
 

411 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:17:27 ID:EeHRykCc
「戻って……戻ってきて、りのさん!」

 ユメイの想いは、りのの救命には直結しない。
 希望を抱いた無情感が、眼前の命の灯火と共に、死んでしまう。


 ――みんなに、みんなにとっての、極上な日々を目指して欲しい。それだけが、私の望みです――


「りのちゃん……だめ、駄目だよ、戻ってきてよぉ……」
「みんな、ここにいるから。頑張って、りのちゃん……!」

 桂はサクヤとの死別を思い出しながら、真は残されたやよいを憂いながら、


 ――……あ、っと。それから……奏会長と、プッチャンと、千華留さんと、ユメイさんに――


「諦めるな。ユメイとて力の行使を続けている。妾だって……」
「……………………りのちゃん!」

 アルは援護としての治癒魔術を繰りながら、碧はりのの手をギュッと握り締めながら、



412 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:18:14 ID:jB4WscEZ
 

413 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:18:40 ID:EeHRykCc
 ――ありがとう、でした。極上生徒会書記、蘭堂りの。終わります――


「りのさん――――」

 りのの伝心を聞き終え、同時に。
 蘭堂りのの命の光も、消えた。


 ◇ ◇ ◇


 血の流れ、命の鼓動、生命の息吹、ありとあらゆる輝きが確認できなくなってしまった。
 これが極自然な、命の終わりなのだと……元から知っていた者も、初めて知った者も、愕然と悟る。
 真っ赤に染まり、徐々に温かささえ失われていくりのの体を抱きながら、ユメイは泣きじゃくった。

「……碧よ」
「なに、アルちゃん」
「妾を除けば、汝が最年長者だ。だからこそ、酷な頼みをしたい」
「なにさ、もったいぶっちゃって」
「もう、あと数秒で……一日目が終わる」

 ユメイに釣られるように、桂と真が涙を流している。
 アルと碧だけは、せめて外面だけは気丈でいようと努めた。
 碧はアルの促すとおり時計へと目をやり、現在の時刻を確認する。
 零時。りのの命を繋ぎ止めようとするあまり、大きく時間を奪われてしまっていた。
 ともあれ、放送である。

「聞いとかなきゃ、ってことだよね……」

414 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:19:15 ID:fD+7M9oB
 

415 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:19:48 ID:EeHRykCc
 若杉葛のときにもう二度と味わうまいと思っていた苦みを、また味わってしまった。
 だが今回ばかりは、後悔に溺れることはできない。
 それはユメイも、桂も、真も、アルとて同じはずだった。

 りのは、短い一生を終えるその瞬間まで……悲しみを否定し、他者にもそれを伝えようとしたのだから。



【B-6 中心街/一日目 真夜中(放送開始)】

【ユメイ@アカイイト】
【装備】:エクスカリバーの鞘@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:支給品一式×4、メガバズーカランチャー@リトルバスターズ!、光坂学園の制服@CLANNAD、
      木彫りのヒトデ4/64@CLANNAD、包丁@SchoolDaysL×H、ガイドブック(140ページのB4サイズ)、
      メルヘンメイド(やよいカラー)@THEIDOLM@STER、ドリルアーム@THEIDOLM@STER、
      ギルガメッシュ叙事詩、地方妖怪マグロのシーツ@つよきす-MightyHeart-、
      騎英の手綱@Fate/staynight[RealtaNua]、ドッジボール@つよきす-MightyHeart-、縄、
      木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD
【状態】:霊力消耗(大)、肉体的疲労(大)
【思考・行動】
 基本方針:桂を最優先で保護する。他の仲間達も守る。
 0:りのさん……。
 1:烏月を捜索する。
 2:怖くても、守る為に戦う。
【備考】
 ※理樹たち、深優と情報を交換しました。深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
 ※エクスカリバーの鞘の治癒力は極端に落ちています。宝石などで魔力を注げば復活する可能性がありますが、幾つ使えばいいのかなどは不明です。

416 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:19:57 ID:jB4WscEZ
 

417 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:20:13 ID:fD+7M9oB
 

418 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:20:41 ID:EeHRykCc
【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)、魔除けの呪符×6@アカイイト、
      古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、誠の携帯電話(電池二個)@SchoolDaysL×H、情報の書かれた紙
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、若干貧血気味、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
 0:真についていく。教会へ。
 0:ユメイと話したい。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:烏月が殺し合いに乗っているのなら、止める。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
【備考】
 ※桂はサクヤEDからの参戦です。
 ※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
 ※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところない。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

419 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:21:11 ID:jB4WscEZ
 

420 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:21:41 ID:fD+7M9oB
 

421 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:21:44 ID:EeHRykCc
【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1、情報の書かれた紙
【状態】:羽藤桂と契約、魔力消耗(小)
 0:真についていく。教会へ。
 0:放送を聞く。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 3:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 4:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 5:烏月が殺し合いに乗っているのなら、止める。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:九郎と再契約する。
 8:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護。
 9:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい。
10:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
【備考】
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところないです。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照
 ※恭介、トルタに対して疑心を抱いています。

422 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:22:18 ID:jB4WscEZ
 

423 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:23:24 ID:fD+7M9oB
 

424 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:24:15 ID:EeHRykCc
【菊地真@THEIDOLM@STER】
【装備】:電磁バリア@リトルバスターズ!、メリケンサック
【所持品】:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/staynight[RealtaNua]、
 レミントンM700(7.62mmNATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mmNATO弾)、情報の書かれた紙
【状態】:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、深い深い自責の念、精神疲労(極大)
【思考・行動】
 基本:何としてでもやよいを守る。
 1:やよいを守る。まずは駅を経由して教会へ。
 2:やよいや、他の女性を守る王子様になる。
 3:西園寺世界を――?
【備考】
 ※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
 ※『空白の二時間』の間に、懺悔室の主になにかをされた可能性があります。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

425 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:24:40 ID:jB4WscEZ
 

426 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:24:46 ID:fD+7M9oB
 

427 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:25:27 ID:EeHRykCc
【杉浦碧@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:FNブローニングM1910(弾数7+1)、リンデンバウムの制服@舞-HiME運命の系統樹
【所持品】:黒いレインコート(だぶだぶ)支給品一式、FNブローニングM1910の予備マガジン×4、
      恭介の尺球(花火セット付き)@リトルバスターズ!ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、
      拡声器、情報の書かれた
【状態】:健康、十七歳
【思考・行動】
 0:正義の味方として生きる。
 0:放送を聞く
 1:意志を貫く。
 2:美希のことが心配。合流したい。
 3:助けを必要とする者を助け、反主催として最後まで戦う。
 4:知り合いを探す。
 5:玖我なつきを捜しだし、葛のことを伝える。
 6:後々、媛星への対処を考える。仲間にも、媛星に関しては今は内緒にしておく。
【備考】
 ※葛の死体は温泉宿の付近に埋葬しました。
 ※理樹のミッションについて知りました。
 ※理樹と情報交換しました。
 ※遊園地で自分達を襲った襲撃者はトレンチコートの少女(支倉曜子)以外に少なくとも一人は居たと思っています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照


【蘭堂りの@極上生徒会 死亡】


 ※放送直前、会場全域にりのの声が響き渡りました。意思持ち支給品含む全ての参加者の心に、声が直接伝わります。


428 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:28:12 ID:EeHRykCc
 ※『情報の書かれた紙』の内容。以後、加筆修正がない場合は状態表に載せないでください。


 殺し合いに乗った人物(生存者のみ):腕に赤い外套を巻いた茶髪の男、椰子なごみ、支倉曜子、ドライ、ツヴァイ、鮫氷新一
 上下が白の学生服の剣士(死亡済みの一乃谷愁厳である可能性が高い)、黒い長髪に切れ長の目をした女剣士(千羽烏月である可能性が高い)、西園寺世界


 要警戒人物(生存者のみ):源千華留(限り無く黒に近い灰色)、黒須太一、深優グーリア、柚原このみ、巨漢の男


 安全だと思われる人物(生存者のみ):高槻やよい、ファルシータ・フォーセット、井ノ原真人、神宮司奏、
 アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ、九鬼耀鋼、来ヶ谷唯湖、トルティニタ・フィーネ、棗恭介、大十字九郎、
 如月双七、杉浦碧、蘭堂りの、ユメイ、菊地真、玖我なつき、クリス・ヴェルティン、羽藤桂、アル・アジフ、ドクター・ウェスト、山辺美希

429 :メモリーズオフ〜T-wave〜 ◆LxH6hCs9JU :2008/08/19(火) 03:28:59 ID:EeHRykCc
・劇場に、IDとパスワードが必要なパソコンがある。
・H−6のボート乗り場に、クルーザーが止めてある。
・『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在するかも知れない。
・教会の懺悔室には、得体の知れぬ何者かが潜んでいる。恐らくは、企画主催側の人間。
・教会の懺悔室の主によって、真は島の北西から南東にまでワープさせられた。
・真は『空白の二時間』の間に、懺悔室の主に何かをされた可能性がある。
・並行世界が存在する可能性は高い。死者蘇生が存在する可能性も一応ある。
・首輪には盗聴機能や監視カメラが付いている。
・主催者による監視は、『上空』『重要施設』『首輪』の3つから、カメラと盗聴器によって行なわれている。これは、棗恭介による推測である。
・棗恭介の所有しているデジタルカメラには、『首輪の設計図―A』というデータが入っている。このデータの信憑性はかなり高い。またAと銘打ってある以上、BやC、D。少なくともAを含めて2枚以上が存在する事はほぼ確実。
・カジノでコインを貯めれば、様々な景品を入手出来る。
・ドクター・ウェストは大馬鹿だが本物の天才。独力で首輪を解除出来る可能性が高い。
・アル・アジフは魔術に関して深い知識を持っている。
・西園寺世界は既に人ではない。主催側の息がかかっている可能性が高い。
・葛木宗一郎、伊藤誠、如月千早は西園寺世界によって殺された。
・桂言葉は動く死体として、世界に使役されている。



以上、投下終了です。支援ありがとうございました。
前中後編の区分はしたらばで。

430 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 03:45:22 ID:jB4WscEZ
投下乙です
言葉様アムロ化→綺麗な死亡、凄まじく自己中でしかもしぶといワールド
ド派手な戦闘機無双シーンに、誠の事を想い遣って世界と対峙する真
見所豊富過ぎる……w
そんな中でも、個人的に最も心に響いたのは、りのの死亡シーン
最後の力を振り絞って参加者全体に呼び掛けた姿は、強く心に焼きつきました

431 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 04:13:08 ID:xNnREj5X
投下乙です。
な、なんじゃこりゃーwww
戦闘機はさすがに一回で退場ですよねwずっと出ているには様々な意味で危なすぎる……。
りのの死亡シーンは大きいなぁ。この後死亡確定の放送が来る訳ですし。
ついに再会したアカイイト勢の対応も見逃せませんね……。


432 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 18:58:12 ID:S1jEEihq
t

433 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 22:11:43 ID:b+kiFEHc
投下乙です

会場全域にりのの声が響いたとか、今までの拡声器のレベルを大幅に超えやがった…
これがほかの参加者にどう響くのかとても期待大です
そしてワーフド、まさに外道…
これほどまでの勧善懲悪が楽しめそうな純悪初めてです
今までのマーダーはどこかしら同情すべきところがあったのにこの女にはそれがないw
あとワールドが首輪が鳴ってるって心配してたけど、
お前は首輪が爆発しても死なないだろうww寧ろ死ぬ方が驚きだ

434 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 23:11:10 ID:HYSwffab
投下乙です。

珍しく真が目立ってるし、活躍した真がカッコよかったのが意外!
世界! なんという恐ろしい子!
一時撤退でほっとさせたと思ったら・・・
今回はラスボスとしての因縁フラグ立てに専念だと思ったら・・・
・・・!?
何という2転3転!?
ヤバい。超ヤバい。見所が多すぎて何から語っていいのかわからない。
最後まで誰が生きて誰が消えるのかわからない、先が読めずに引き込まれる作品でした。
一番最初に、ユメイさんが危ないんじゃないかと思ったんだけどなー。
で、りののピンチは最初だけだろ?
・・・とか思っていたんですが、まさかこんな全体に影響しそうな放送技でその生を締めくくるとは!
碧ちゃんの拡声器が冒頭でさんざん怒られまくっていただけに、その対比が生きていると思いました。
もうプッチャンやよいの反応とか超楽しみでならないですよ。
人によっては不満のあった(俺は面白いと思ってましたが)言葉様の完全舞台撤退も、単にマーダー側の戦力を削ぐに留まらず、さらなる怒りゲージ溜めパワーアップを予感させていい感じです。
にしても世界はいろんなキャラに本性バレし始めましたねー。
そしてしぶとい! 凄まじいまでにしぶとい!

リトバス離散後としては考察・攻撃・魔術・回復とかなり粒ぞろいの対主催パーティーが結成されたわけですが・・・
ラスボス候補wからは完全に目をつけられてしまいましたね。
それにしても桂ちゃんはりのから見てもいいにおいなのか(*´Д`)ハァハァ

435 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/19(火) 23:27:10 ID:yhDxK0fm
投下乙です。

りの…………orz
最期までいつもの優しさを失わなかった強い子だったなあ。
まさか言葉さまにまで届くとは思わなかったけどw

そしてワールドが非常にうっとおしいwいたぶって逃げて戦闘機w
言葉様が消えたけども、全く弱くなった気がしないw

しかし…桂ちゃんはもてるなあw

436 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:07:52 ID:H5LHrt63
感じない。
感じるわけがない。

何が起きたか。
どうしてこんな事になったか。

あれからどれだけ時間が経ったか知らない。

考えない。
考えたくない。

ああ。

考えるべきじゃないんだと。
今この時に棗恭介の傍にいる人が居ない。
その事実は余りにも重過ぎて。

考えたくないんだ。
何も。
何も。

だって考えれば現実が襲ってくるんだ。

そう棗恭介が最も恐れていたものが。

考えない。


そう俺は何も考えない。

437 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:08:20 ID:R8sCt8hO
 

438 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:08:41 ID:w3pTZhmn


439 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:09:32 ID:H5LHrt63



























440 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:10:19 ID:VtMdHN2f


441 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:10:21 ID:R8sCt8hO
 

442 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:11:36 ID:H5LHrt63
考えるな!



なのに!
なのに!


どうしてあいつの笑顔ばっか浮かぶんだよ!
どうしてあいつの声が聞こえてくるんだよ!

どうして……

どうして……

なんでだ……


なんであいつの事ばっか考えるんだ。

もう居ないんだ。

理樹も鈴も居なくなって。

でもそれでもやっとやっと気付いたんだ。
ずっとずっと支えてくれてて。
どんな時でも励ましてくれて。

やっと大切な人と気付いたのに……


居ないんだよ……

443 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:12:34 ID:H5LHrt63
居ないんだよなぁ……


トルタ……


どうしてだ
どうしてお前が逝かなきゃならないんだ?
どうして俺はお前の嘘に気付けなかった?

トルタの事大好きなんだろう棗恭介!

……なのにどうして気付けなかったんだよ。

トルティニタ・フィーネが異常なまで献身心がある事ぐらいわかっていただろう。
自惚れじゃない。
鈴を失った時トルタが居て。
理樹を失った時トルタが居て。

ずっとずっと支えてくれた。
折れそうになる俺の傍にいた。

そして俺が命を懸けてお前を守りたかったようにお前は俺を守りたかった。


なのにどうして気付けないんだよ。

どうして……
どうして……


俺はもう空っぽだよ。

444 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:12:48 ID:YYqe3lM4

 


445 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:12:49 ID:R8sCt8hO
 

446 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:12:51 ID:VtMdHN2f


447 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:13:53 ID:H5LHrt63


いつも支えてくれたお前は居ないんだ。


空っぽのまま。

理樹も居ない鈴もいないトルタも居ない。


なぁ居てくれよ。

俺はもう弱いからさ。
トルタが居ないと駄目なんだ。

傍にいて「大丈夫?」と言ってくれよ。


棗恭介はトルティニタ・フィーネが必要なんだ。




なぁもういいよな?
もう護るものもないんだ。
生きる必要などないんだ。
理樹も死んだ鈴も死んだトルタも死んだ。
俺は空っぽのままこのまま朽ちればいいんだ。

このまま朽ちて。
お前達の傍にいきたい。


448 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:14:00 ID:xvqqu18z



449 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:14:19 ID:R8sCt8hO
 

450 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:14:29 ID:YYqe3lM4

 


451 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:14:48 ID:H5LHrt63

もう、憎しみとか復讐心とかどうでもいい。
そんな心のせいで最も大切なものに気付かなくて失った。
ただ心を曇らせただけなんだ。
だからいらない。
そしてそれすらも捨てた俺は何も残っていない。

もう俺には生きる必要もない。

ここは禁止エリアだ。
時間が経てばそのまま逝く。
握り締めている俺の命を繋ぐ携帯電話。
もう離してもいいかもしれない。

もういい。
もう俺には何も残されちゃ居ない。

空を見ると無数の耀く星。


ああ、このまま散れば。


それはそれで。


なあ? トルタ?


俺はお前を……



452 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:14:57 ID:VtMdHN2f


453 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:15:45 ID:R8sCt8hO
 

454 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:15:45 ID:H5LHrt63



『……えっとこれでいいのかな? んー使ったことがないから解らないよぉ……』




は……?
この声は……!?
は……ま、まさか


『聞こえてるかな? 恭介。トルタです』


トルタ!?
え!?
でも……?


『たぶん……これを聞く時私は死んでると思います……御免なさい』


聞こえてくるのは携帯から。
……まさか。
これは……


『だから生きている恭介に短いですがメッセージを』



455 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:16:08 ID:YYqe3lM4
 


456 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:16:20 ID:AWp6OXGS


457 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:16:29 ID:VtMdHN2f


458 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:16:32 ID:R8sCt8hO
 

459 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:16:49 ID:xvqqu18z



460 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:17:38 ID:H5LHrt63


遺言なの……か?


『まず……御免なさい。恭介に嘘をついちゃった……そして貴方を一人にしてしまった……』

あの穏やかなこえがきこえてくる。
俺の心にしみこんでくる。

『御免ね……御免……でも……それでも……』

トルタの謝りの声が響く。
謝らないでくれ。

謝っちゃ駄目だ。

でもその次の言葉に俺はガツンと頭を叩かれた気がした。

空が明けていくような

それは―――





『それでも恭介に生きて欲しかった!!』



あ……

461 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:17:38 ID:VtMdHN2f


462 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:18:07 ID:R8sCt8hO
 

463 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:18:23 ID:xvqqu18z




464 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:18:39 ID:H5LHrt63


そうだよな。
トルタは


俺の好きなトルタは……



『どんなに辛い事を押し付けると解っていても私のエゴでしかないけど……私は恭介に生きて欲しい。だから……だから』


どんな時でもパートナーを思っていたじゃないか。
どんな時でも献身的だったじゃないか。

……俺は……俺は!


『ごめんね、お別れが突然で……今はちょっとね寂しいけど……でも悲しみだけじゃないの』

え?

『きっといつかちゃんと想い出になる……恭介の想い出に……だから』


トルタがスゥーと息が吸い込む音が聞こえる。




465 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:19:01 ID:VtMdHN2f


466 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:20:02 ID:R8sCt8hO
 

467 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:20:07 ID:H5LHrt63
『約束! お願いは一つだけ! 生きて! 生きて! どんな時にもなげてはだめよ!』


強い。
強い。
言葉。
想い。

それが全て俺に突き刺さる。

ああ。

俺は……



……でも。
……でも辛いんだよ。

お前が居ない世界で。
どう生きればいいんだよ……


『……でも。どうしても一人で辛い時は大丈夫……私が傍に居るから』


え?
だってお前はもう居ないじゃんか。
なのにどうして。
どうして……?

『私は恭介の想い出、記憶に居るから。そんなときは思い出してそこで逢いましょう?』

468 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:20:17 ID:xvqqu18z



469 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:20:46 ID:VtMdHN2f


470 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:20:57 ID:R8sCt8hO
 

471 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:21:00 ID:YYqe3lM4
 


472 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:21:16 ID:H5LHrt63


ああ。
ああ。

トルタは居た。

俺の。
俺の。

大事な想い出に。

二人で過ごした大事な時間が今でも息づいてる。

そこに笑顔で。


ずっと。

ずっと。

『でも涙で終えては駄目よ、きっと笑っていて。恭介は笑顔が似合うから』


そう彼女はいつものように。


傍で。


『いつでも微笑みを……ね』


473 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:22:21 ID:xvqqu18z



474 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:22:32 ID:H5LHrt63


いつでも微笑んでくれるから。


『だから生きて。憎しみなんかに囚われては駄目。それは悲しいだけだから。そんなものは忘れて生きてください。以上です。生きてね……恭介』

はは……

そうだったんだよ。

……あのトルタがフォローをしないわけがない。

トルタは……
トルタは……最後まで想ってくれたんだ。


俺は……


俺は……生きなきゃ。


生きなきゃいけない。

だってトルタは願ってる。
自分の生も犠牲にして。

俺の生を。




475 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:22:40 ID:R8sCt8hO
 

476 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:23:08 ID:VtMdHN2f


477 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:23:28 ID:H5LHrt63
ああ。

生きよう。

まだよく分からないけど。

生きなきゃ。

憎しみを捨てて。

生きて生きていき続けよう。

なあ……トルタ。

大好きだ。
お前はどう思ってたのかな?


『……あ、追伸です。称号の意味今しか言えないからいうね。与えたのは『La mia importante persona adorata ed adorata』だけど』

ん……?

そういえば……?

そんなのあったな。
でもなんで?


『えっとその……ぁー恥ずかしいよぉ……もぅ……』


なんだ?

478 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:23:38 ID:R8sCt8hO
 

479 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:23:39 ID:xvqqu18z



480 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:23:54 ID:VtMdHN2f


481 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:24:27 ID:zu2hTmr8
 

482 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:25:06 ID:YYqe3lM4
 


483 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:25:07 ID:H5LHrt63
そんなに恥ずかしいのなのか?

おいおい
そんなの今伝えなくな……




『………………ぅーー……えいっ!『私の愛する愛する大切な人』よ!……あーもぅ……これで終わりよぉ……ぅー』


あ。

ああ。

そうか。

そうだったのか。

トルタも。
トルタも。

そうだったのか。

だからきっと。


俺は……
俺は……

……ぁー……


484 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:26:22 ID:R8sCt8hO
 

485 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:26:23 ID:xvqqu18z



486 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:26:26 ID:H5LHrt63
「ぁぁあああああああぁあああああああああぁぁああああああああああああぁああぁあぁあぁあぁあぁあぁあああああああ
 ああああああああぁぁぁああああああああぁあああああああぁぁぁああああああああぁあああああぁあああああああああ
 ああああああああああぁああああああぁぁぁあぁあああああああああああぁあぁああぁあ!!!!!!!!!!!!!!」

涙しか溢れなかった。

もうそれだけで。

よかった。

ただ泣こう。

泣こう。

今はこんなにも俺を愛してくれた人の為に。

そして

生きよう。

こんな俺を愛してくれた人の為に。

ありがとう。


トルタ。


そして。


「愛してる……」

487 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:27:12 ID:zu2hTmr8
 

488 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:27:12 ID:R8sCt8hO
 

489 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:27:42 ID:H5LHrt63













『……………………聞いてるかな? 聞いてなくてもいいや……聞いてない方がいいかも。やっぱりきちっと伝えるね。恭介……愛してる……えへへ』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







490 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:28:06 ID:zu2hTmr8
 

491 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:28:07 ID:R8sCt8hO
 

492 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:28:10 ID:VtMdHN2f


493 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:28:47 ID:xvqqu18z



494 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:28:58 ID:zu2hTmr8
 

495 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:29:00 ID:H5LHrt63
「さて……と」

あれからまた暫く時間が経った。
俺は生きることに決めた。
まだどうするかはきめては居ないけど。
でも生きるんだ。

俺はトルタの約束をかなえるんだ。


だから生きるよ、トルタ。


あの後トルタの遺体を見つけてしまった。
俺はまた泣いてしまった。
でも止まる事はしない。
それはトルタが望む事ではないから。
その後トルタの遺品も回収した。
手を組ませてそっと近くの家からシーツを拝借し被せた。
とても簡素な埋葬だが。

せめてトルタが鈴や理樹と共にやすらかに居れるように。

ただ。

ただそれだけを祈った。


そして今、俺は禁止エリアから出る寸前まできている。
いつまでもここに留まってはいけないから。



496 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:29:07 ID:VtMdHN2f


497 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:29:48 ID:H5LHrt63
俺は生きるんだ。

一歩ずつしっかり歩く。

生きる為に。
しっかりと足をつけて。


なあトルタ。

俺は頑張るよ。

生きて。

生きて。

俺は。

がんば……



―――パンとなにかか弾ける音がした。



「え……?」


ドンッと大きな衝撃が腹の辺りを襲う。

俺はそのまま崩れ落ちた。

498 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:29:54 ID:zu2hTmr8
 

499 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:30:05 ID:VtMdHN2f


500 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:30:52 ID:zu2hTmr8
 

501 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:30:53 ID:xvqqu18z



502 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:31:09 ID:H5LHrt63

腹の辺りを見ると防弾チョッキを突き破ってそこから紅い染みが。
そして耐えられない痛みが俺を襲う。
どう見ても致命傷だった。

……狙撃か。

ああ。

……俺は……死ぬ?

はは……まいったな。

折角トルタに生きろと約束と言われたのに。
折角生きようと想ったのに。

ここまでなのか。
ここで終わるのか。

……悔しいなぁトルタ。


抗おうと想ったのに。


ごめん

トルタ


空を見ると星がきらきらと耀いてる。


503 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:31:31 ID:R8sCt8hO
 

504 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:31:48 ID:zu2hTmr8
 

505 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:31:54 ID:VtMdHN2f


506 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:32:12 ID:xvqqu18z



507 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:32:12 ID:H5LHrt63

トルタ
理樹

謙吾

悪い、随分早く逝きそうだ。
御免……な

でもトルタ達に会えるのかな?
もしそうだったら

トルタは優しく迎えてくれるだろう。
理樹はちょっと困った笑みを浮かべて。
鈴はちょっと怒りながら。
謙吾はやれやれとかいいながら。

それも……よさそうだ。

生きれなかったけど。

抗えなかったけど

でもきっときっ……

「即死じゃなかったか……まあいい、悪いな苦しめて……」


……え?
……この声は?

まさか。

508 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:32:34 ID:zu2hTmr8
 

509 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:32:59 ID:R8sCt8hO
 

510 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:33:05 ID:VtMdHN2f


511 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:33:17 ID:H5LHrt63
まさかまさか。

「ファン……トム?」

ふっと顔を上げる。
そこには銃を構えた男。
まるで名の通り亡霊のような男。

ああ。

そのまさかなのか。

「お前は……棗恭介か」
「……ああ、そうだよ……お前がファントムなのか……!……鈴を殺した!」
「……そうだ」


そうか。

こいつが鈴を殺したのか。
そして俺はこいつに殺されるのか。
兄妹そろって。


はははは……

なんて皮肉。
なんて運命。


俺はこいつを!


512 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:33:27 ID:YYqe3lM4
 


513 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:33:58 ID:zu2hTmr8
 

514 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:34:15 ID:H5LHrt63

「許さない!……お前は鈴を殺した! 乱暴もした! 絶対に許さない!」
「……だろうな」


許すわけがいかなかった。
あの鈴を殺したのは変わらない。
変わらない事実なのだから。

絶対に許せるわけがない!




………………でも。


「俺はお前をもう憎まない」
「……何?」

ファントムがピクッと少し表情変えた。



もう俺は憎まなかった。
ファントムを。
憎もうと思わなかった。


俺は知った。
教えてもらった。


515 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:34:17 ID:R8sCt8hO
 

516 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:34:20 ID:VtMdHN2f


517 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:34:49 ID:zu2hTmr8
 

518 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:35:14 ID:R8sCt8hO
 

519 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:35:22 ID:VtMdHN2f


520 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:35:34 ID:xvqqu18z



521 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:35:43 ID:zu2hTmr8
 

522 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:35:50 ID:H5LHrt63

トルタに。

憎しみは何も生まないって。
ただ、ただ哀しいだけだって。

憎しみに囚われて生きる俺をトルタは望まない。
憎しみは本当の大切なものまで忘れさせようとするから。

なぁトルタ。


俺はトルタの想いまで忘れたくないから。

だから俺は憎まない。


……憎しみは哀しみしかうまない事を知ったから。
……教えてもらったから。

俺はトルタが好きだから。
俺はお前との約束を破りたくないから。

だから俺は憎まない。

「……お前の妹を殺したのは俺だぞ?」
「……そうだ。それは変わらない。俺はお前が鈴を殺した『罪』だけは絶対許さない!」

だから俺はこいつの罪だけは絶対許さなかった。
こいつの罪は絶対許せない。
罪だけを憎むんだ。
鈴を殺した罪だけ。

523 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:36:29 ID:VtMdHN2f


524 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:36:46 ID:zu2hTmr8
 

525 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:36:49 ID:H5LHrt63
だからこいつに罪滅ぼしをさせてやる。
こんなもので罪滅ぼしがすむとは絶対思っていない。
だがもう一人、こいつのせいで憎しみに囚われてる人間を知っている。

「お前が探している……キャルだったな? そいつとあったぞ」
「何!?」
「あいつは憎しみと復讐心に囚われて苦しんでるようだった……お前へのな」
「……まさか」


会ったという言葉に大きく反応するファントム。
やっとやっと情報をつかめたと言うな感じで。
俺たちを襲ったキャルという少女。
彼女との出会いを思い出す。
キャルがこいつの情報を知ったとき、憎しみに囚われた俺のようだった。
まるでそれしか心にないように。
ただそれだけに打ち込むように。
全てをその憎しみだけに委ねるように。

だからこそ想う。


「お前が救ってやれよ……護りたいんだろう?」


俺が憎しみに完全に囚われそうになった時、最も大事な人を憎もうとしたんだ。
ならこの男とキャルが大切な人同士なら。
救えるのはこの男しか居ないんだ。
癪だが。
凄く癪だが。

でも

526 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:37:05 ID:R8sCt8hO
 

527 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:37:11 ID:YYqe3lM4
 


528 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:37:18 ID:VtMdHN2f


529 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:37:36 ID:zu2hTmr8
 

530 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:38:05 ID:xvqqu18z



531 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:38:08 ID:SZXy5tkf
 

532 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:38:20 ID:H5LHrt63

「もう沢山なんだよ……大切な人のために憎しみ合うことなんか!……俺はもう沢山だ!」


こんな哀しい憎しみあいなんかもういらない。
大切な人の為に誰かの大切な人がなくなるなんて。

俺はもういい。

それを教えてもらったから。

だから

「救えよ!……必ず!……鈴を殺した分まで他の人を救ってやれよ!……できるか!」
「……言われなくてもそのつもりだ。今度こそ俺はキャルを護る……絶対だ」

ファントムの目に絶対の意志を感じる。

ああ癪だ。

何で鈴を殺した人間にこんな事を言わないといけない。


でも憎しみを望まないトルタがいるから。
俺はこうしていられる。
トルタはそれを望むから。

そうだろう? トルタ。

俺は約束を果たすぞ。

生きれないけど俺はそれでも憎しみに囚われやしない。

533 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:38:54 ID:R8sCt8hO
 

534 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:39:09 ID:xvqqu18z



535 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:39:13 ID:VtMdHN2f


536 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:39:28 ID:H5LHrt63

お前との約束なんだ。

だから絶対俺はそんな憎しみに囚われたりやしない。


約束だもんな。



トルタ。


俺は痛む体を必死に動かし立ち上がり歩いてきた道を見つめる。
デイバックも荷物も全て投げ捨て。
その先に見えるだろう最も愛しい人に逢う為に。

「なら……いい…………絶対救えよ……!」
「何処へ行く?……そんな致命傷の体で?」
「……妹殺した男に殺されたくないんでな……俺は大切な人の元で逝く」
「……」
「何もするな……俺は……向こうで逝った大切な人の元で逝きたいだけだ……なんなら俺が死ぬまで見てろよ」
「……そうか」


そのまま見据えた道を歩き始める。
再び禁止エリアにはいる。
もう俺の手にはあの携帯電話はない。
やがてなり始めるだろう。

でもいい。


537 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:40:08 ID:zu2hTmr8
 

538 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:40:10 ID:R8sCt8hO
 

539 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:40:20 ID:xvqqu18z



540 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:40:39 ID:H5LHrt63

それで。
それでいいんだ。


もう視界がおぼろげになっていく。

もう死ぬのだろう。

なら。

なら俺は。


トルタ、お前の元で逝きたい。

一歩一歩確かに歩いていく。

そのたびにあいつとの想い出を思い出してくように。

ただ歩いていく。


御免な。

生きれなくて。

約束破っちまった。

でも。



541 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:41:14 ID:xvqqu18z



542 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:41:29 ID:VtMdHN2f


543 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:41:29 ID:H5LHrt63
俺はお前のお陰で憎しみに囚われないで済んだよ。

だって。

こんなにもやすらかにいれる。


ありがとう。


今、逝くよ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






(……キャル)

ファントム、いや怜二は恭介が去っていく先を見つめていた。
怜二はただ佇んだまま。
遂につかんだキャルの足取り、そして自らが殺した棗鈴の兄棗恭介が語った事を整理する為に。
怜二はただ驚くばかりだった。
あれだけ電話の時復讐心を露わにした恭介が穏やかに、そしてキャルを救えと言った。
何が恭介を変えたか怜二は知らないし知る必要もない。
ただあのやけに澄んだ眼が頭から離れないのだ。

544 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:41:30 ID:R8sCt8hO
 

545 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:41:52 ID:SZXy5tkf
 

546 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:42:10 ID:zu2hTmr8
 

547 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:42:17 ID:H5LHrt63

(……罪をか)

罪を憎むと言った恭介。
とても綺麗なように思える。
だが

(……所詮綺麗事だ)


幾多の罪を重ね続け、そして今も重ね続けている怜二にとっては綺麗事。
憎まれ続けるのは慣れた、慣れてしまった。
憎み、復讐は余りにも日常的にありすぎて。
そんな恭介はとても特異に見えて。
だけどそれまでだった。
棗恭介は自分の射撃の末死んだ。
それで終わりだった。
(キャルが憎しみを……か。当然……だな)

それよりも怜二にとって重要なのはキャル。
あのキャルが殺し合いに乗りそして自分を憎んでいる。
最初聞いた時は信じられないとまで想った。
しかし考えてみれば当然かもしれない。
自分は護れなかった。
間に合わなかったのだ。

キャルを救えなかった。


ならばやる事は一つ。
怜二はそう想う。
恭介にも言われたように。

548 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:43:03 ID:H5LHrt63

(護る……護りきる……例え憎まれようとも俺は護る、キャルを。今度こそ……今度こそ絶対に)


護ればいい。
救えばいいのだ。
例えキャルが自分に憎しみを抱いてようと変わらない。
護る事には。
救う事には。
変わらないのだから。

あの時できなかった事をこの憎しみに満ちる島で遂行してみせる。
怜二は改めて誓う。

自分の唯一の拠り所であるキャル。

それを。

「……護る」


護ると。


それがキャルへの救いになると信じて。


怜二は進む。


ただキャルの為に。


549 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:43:17 ID:VtMdHN2f


550 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:43:57 ID:zu2hTmr8
 

551 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:44:12 ID:SmTyEaEq
支援

552 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:44:14 ID:R8sCt8hO
 

553 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:44:21 ID:VtMdHN2f


554 :I'm always close to you ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:44:26 ID:H5LHrt63

【G-6/北部/1日目 夜中】


【吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOMOFINFERNO】
【装備】:コルトM16A2(7/20)@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-、スナイパースコープ(M16に取り付けられている、夜間用電池残量30時間)@現実
【所持品】:『袋1』コンバットナイフ、レザーソー@SchoolDaysL×H、コルト・ローマンの予備弾(21/36)、ダイナマイト@現実×9、ハルバード@現実、小鳥丸@あやかしびと−幻妖異聞録−、コルトM1917(0/6) コルトM1917の予備弾21、ニューナンブM60(4/5)、ニ
      『袋2』支給品一式×9、おにぎりx30、野球道具一式(18人分、バット2本喪失)、コンポジットボウ(0/20)、ハンドブレーカー(電源残量5時間半)@現実、秋生のバット、桂の携帯(電池2つ)@アカイイト首輪(杏)
      トンプソンコンテンダー(弾数1/1)、防弾チョッキ、刹那の携帯電話 、SIGSAUERP226の予備弾3@現実、コンテンダーの弾44発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!、アサシンの腕、USBメモリ
SturmRugerGP100(6/6)@現実 、SturmRugerGP100の予備弾4@現実、医療品一式、恭介の機械操作指南メモ、カジノの見取り図、カジノの見取り図、ゲーム用のメダル(14000枚相当) ューナンブM60の予備弾10発
【状態】:、右腕の骨にヒビ、
【思考・行動】
基本:キャルを見つけ出して保護する。不要な交戦は避け、狙撃で安全かつ確実に敵を仕留める。
 0:キャルを護る。
 1:次の標的を捜す
 2:理樹とクリスに関しては、情報だけは伝える。殺すかは場合による
 3:烏月とこのみ、羽藤桂はなるべく襲わないようにする
 4:周囲に人がいなければ、狙撃した参加者の死体から武器を奪う
 5:弾薬の消費は最低限にし、出来る限り1発で確実に仕留める
 6:第四回放送の時点で、刑務所に居るようにする
【備考】
 ※身体に微妙な違和感を感じています。
 ※時間軸はキャルBADENDです。
 ※、眼帯の男(九鬼耀鋼)、静留を警戒しています。
 ※『この島に居るドライ=自分の知るキャル』だと、勘違いしています。
 

――吾妻怜二が哀しすぎる主催の悪戯に気付いた時……彼はどうするのだろうか?―――





555 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:44:34 ID:YYqe3lM4
 


556 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:44:48 ID:xvqqu18z



557 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:45:34 ID:R8sCt8hO
 

558 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:45:37 ID:zu2hTmr8
 

559 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:45:37 ID:VtMdHN2f


560 :棗恭介 ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:45:38 ID:H5LHrt63
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




色々あった。
そのなかでトルタに出会えた。
そして好きになれた。


俺の生涯で大事な人。

ああ。

こんなにもたまらなく嬉しい。

今でも傍に感じる。

トルタとの数え切れない想い出が。

その想い出たちが俺を嬉しくさせる。

ああ、ありがとう。



561 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:46:14 ID:xvqqu18z



562 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:46:23 ID:VtMdHN2f


563 :棗恭介 ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:46:37 ID:H5LHrt63
一歩、一歩、歩く。
少しずつ、少しずつ俺とトルタの間の距離が近づいていく。
そして、もうすぐ辿り着く、永遠へと。

丁寧に、高い音が残り時間を告げてくる。
再会の時までは、もうすぐ。

そうして、最期に想う。
耐え切れない笑みをこぼしながら。

「トルタ……俺も、……俺もやっぱりトルタの事が好きだった。
 何時からか、何て俺にもわからない、でも、大好きだ……そしてこれからも」

好きだと、いう気持ちを素直に伝えられる事が、こんなにも嬉しいなんて、思わなかった。

好きな人が、俺の事を見てくれる事が、

エゴだって判っていても、トルタが、俺だけを見てくれた事が、たまらなく、嬉しい。

ああ、胸を張って言おう。

大好きさ、トルタ。

もし死の先があるなら、これからあえるのかな、永遠の時を過ごしていけるのかな?

ただいまトルタ。

俺が、好きになった人。

俺、棗恭介は、トルティニタ・フィーネの事が大好きです。

【棗恭介@リトルバスターズ! 死亡】

564 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:46:59 ID:YYqe3lM4
 


565 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:47:41 ID:xvqqu18z



566 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:47:56 ID:R8sCt8hO
 

567 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:48:20 ID:YYqe3lM4
 


568 :棗恭介 ◆UcWYhusQhw :2008/08/20(水) 00:49:45 ID:H5LHrt63
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたら指摘をお願いします。
沢山の支援有難うございます


タイトルは
「I'm always close to you/棗恭介」です。
元ネタはシンフォニックレイン挿入歌から。



569 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:49:46 ID:xvqqu18z



570 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:55:40 ID:R8sCt8hO
投下乙です
恭介……序中盤に活躍した彼も、とうとう逝ったか……
トルタと安らかにとしか言いようがない
録音の、原作歌詞を絡めた励まし方が素晴らしい
そしてこれだけ綺麗に立ち直らせておいて、直後に突き落とすといった手法も、展開が読めなくて良かったです
ツヴァイは恭介の想い通り、ドライを救う事が出来るのか

571 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 00:57:38 ID:NGvmayYb
投下GJ!
恭介……ついに死んでしまったか。何だかんだ言ってお気に入りだったんだ。
だけど心中を選んだにしては格好良い最期だった。
なんだか少し切ない思いがするけど、それ以上に心を動かされた気がするよ。

ていうか、ようやくギャルゲらしさが出てきたw

572 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 11:05:31 ID:eAA9Ljik
お疲れ様です
いい作品でした 個人的には今までで一番いい。
ただ一言いうなら恭介には生きて欲しかった
個人的な想いもあるけど今後の活躍にも期待できたので。
今回のロワは、生きていれば今後活躍しそうな人物出たら
すぐ死ぬ事多いので途中で話が止まらないか少し心配・・
トル恭 お幸せに・・(二人とも生還してほしかったけど)


573 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 15:53:45 ID:z2IdPs1u
投下乙です。

恭介……
何とか立ち直ったかと思いきや、直後のツヴァイ…
だがその状況において、彼の強さ、がありありと表れていました。

最期の情景がトルタと重なり、二人の絆が良く見えたと思います。
とてもGJでした。

574 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/20(水) 19:30:46 ID:PvZZ9KQw
>XL氏

相変わらず斜め上な戦い方をするなワールドw
弱そうなのを狙うとか言葉様を利用するとか
思惑が思いっきり裏目に出てやられてしまうのにはいっそ清々しさすら感じた。
再生言葉様にとっては一番いい死に方だったかな…最後に意識がちょっとだけ戻ったみたいだし。
再び狂戦士に戻った彼女の明日はどっちだ?


>Uc氏

最も主人公に近かった男、棗恭介散る…。
彼は憎しみに捕らわれて生き続けるよりトルタが知っている恭介のまま死ぬ事を望んだのだろうか…。
そしてツヴァイも決着の時はもう間近。

575 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/21(木) 05:45:07 ID:YKSkFDKy
Uc氏投下乙です
直前のトルタといろいろ対比になる描写が心憎いな〜
トルタと恭介、初期から続いた名コンビの集大成であると同時にラスト、お見事でした
結成当初の頭脳派撹乱マーダーを期待していた頃が懐かしい……だいぶ横道逸れたけど、トル恭揃って人間らしく逝ってくれてよかった

そして次に残されたのは、ツヴァイ……
彼もキャルとの因縁があるゆえ、恭介の言葉がどう活きてくるか見物です

あとなんだこのトルタはw クリス相手でもこんなデレないぞおいwww

576 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 18:03:03 ID:rZqzkrIX
投下乙です

40氏
これは珍しい碧ちゃんメイン話
格好良くあり、可愛くあり、それでいて無謀w
彼女の魅力を堪能しました。死ななくて良かったねw

Lx氏
1stは機関車だったが、2ndは早々と空爆バトルかw
りのは最後の最後で輝きましたね
もう後がないワールド、ここからどう転がるか

Uc氏
GR2の主人公と幾度となく言われた彼もついに力尽きる
奉仕マーダー?にしては、かなり綺麗な結末になって何より
ツヴァイもキャルの敵意を知って展開が煮詰まってきた

577 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 20:59:12 ID:WJRQXKtz


578 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:00:58 ID:7h09zbBa
暗闇の中に作り物の星が浮かんでいる。
……いや、よく見ればそれはヒトデの風船だった。
そしてそれだけではなく、スイカやイルカなどの海や夏を連想させる風船や浮き輪が宙にひしめいている。

そこはリゾートエリア内にあるひとつのショッピングモールの中であった。

営業時間外だからなのかそれともずっとそうであったのか、奥へと深く続くその中はとても暗い。
入り口から差し込む月の蒼い光と、宙を泳ぐ魚の姿とを合わせて見れば深い海の底のような印象がある。

そんな中に、それぞれの想い人と再会するために歩き続けてきた3人がいた。
クリス・ヴェルティン。久我なつき。大文字九郎。
何故彼らが今ここにいるのか?
それは――……


 ◆ ◆ ◆


「立派な服が欲しいとは申しませんっ! でも、せめて靴ぐらいは履かせてください!」

再会し、それぞれにその間のことを伝え合い、では目的である島の中央――山の中へ向かおうかというところで、
大文字九郎は目の前の二人にそう訴えかけた。

彼の姿は、久我なつきの言葉を借りるなら「変態」の一言で済ませられる哀れなものだ。
裸の上に腰布を巻き、その上に女物のローブだけを羽織っている。
それだけならまだしも、ローブの中に見え隠れする肌には裂傷や打撲痕が所々に見受けられ、
元々上等なものであったろうローブも何箇所か破け、血を滲ませ埃と泥にまみれ薄汚れていた。
勿論、これは苦闘に立ち向かった彼の、いわば男の勲章と呼べるものなのだが、
まぁ……事情を知らぬ者から見れば、路端の乞食とそう変わらない姿でもあっただろう。

579 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:01:30 ID:jMSqLp1x
 

580 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:01:36 ID:vUk5xm2z


581 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:01:44 ID:7h09zbBa
ともかくとして、これから山の中に……しかも、夜の山へと入るのならば彼の訴えも至極真っ当なものである。
日頃、”怪物狩り”にて山中を駈けずりまわっているなつきもふむと頷いてそれを肯定した。

「それにお前らも随分な格好だし……、クリス。お前もそんな格好だといい加減動きづらいだろう?」

九郎の指摘に、クリスはきょとんとした表情で「そうかな?」とだけ呟き、自分の格好を見直してみる。
あの温泉旅館で唯湖に着付けてもらった着物は川を流れた時についたのだろうか、砂や泥にまみれて色褪せていた。
直し方のわからない帯も緩み、めくれた裾や襟から白い肌が見えていると気付くと……少し恥ずかしくなってくる。

「……うん。確かにそうかも。……でも、どうせすぐに雨で濡れちゃうんだし、あんまり…………」

気にしなくてもいいんじゃないかな? というクリスに、なつきと九郎の二人は眉根をよせて怪訝な顔をする。

「……この後、雨が降るのか? どこかで天気予報でも見たとか」
「ん? 雨はずっと降ってるよ。弱くなったり強くなったりだけど……今だって……」

言いながらクリスは空を見上げ、二人もつられてそうする。
だが、クリスに見えている”雨”は二人には見えない。ただ、満天の星空がそこにあるだけだ。

「でも、そうだね。強くなると山に入るには困るよね……ユイコは大丈夫かなぁ……」

582 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:02:00 ID:WJRQXKtz


583 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:02:30 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


空を通じて、遠い場所の彼女に想いを馳せるクリスよりやや引いて、九郎はなつきに疑問をぶつけていた。

「(……雨が降っているってどういうことだ?)」
「(わからん。私も初耳だ)」
「(アルは何か言ってなかったのか? こいつについて)」
「(……ふむ。そう言えば私やクリスを指して魔力がどうとか……)」

言って、なつきは九郎の前で手中にエレメントの銃を実体化させてみせる。

「(お前も魔道書を……?)」
「(違う。私のはエレメント――HiMEの物質化能力によるものだ)」
「(やってることは変わりないような気がするが、一応は別物なのか……)」

ふむと唸って、九郎は自分が今まで目にした神秘や異能について思い返す。
一番最初の場所で黒衣の男に言われたとおり、この場には様々な種類の力を持った者達が存在していた。
となると、クリスの雨もそうなのかもと思う。……自分に雨を降らせる力というのは、よく解らないものではあったが。

「(まぁ、アルが警戒しろと言ってこなかったのなら無害だと思う。とりあえずはクリスに合わせよう)」

九郎の言葉になつきは頷き、もう一度空を見上げた。
そこに見えるのはHiMEの目にしか映らない紅い妖星――媛星。己に課せられた宿命であり、業。
もしかしたらクリスの雨もそんなものなのかも知れないと、彼女はそう思う。
そして彼に科せられたものとは何かと……少しの共感と、背負う者であるが故の壁を感じた。

クリスは……彼は何を背負い何を秘めているのか――……

584 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:02:58 ID:WJRQXKtz


585 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:03:22 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


……――と、そういう事があって、彼らは目に付いたショッピングモールへと足を運んだのであった。

3人は入り口からすぐの所にある案内板を見てそれぞれに向かう先を決めていた。
主な目的は服と靴の調達だが、わざわざ足を運んだのなら今できる限りのことをしておくに越したことはない。

「……とじゃあ、虫除けスプレーも取ってくればいいんだな?」
「ああ、虫に刺されてはかなわないからな。……別に怖くはないが、困るからな……うん」

繰り返しうんうんと頷くなつきを見て、九郎は持ち前の観察眼により彼女は虫が苦手なのだと看過した。
いや、別に探偵ではなくとも一目瞭然ではあったが……気付かないのは朴訥とした表情のクリスぐらいだろう。
それはさておき、了解したと頷くと、九郎はランタンに火を点し奥へと進む準備を整え一つ質問をする。

「待ち合わせはどうする? ここへと戻ってくればいいのか?」
「いや……ここだと外から丸見えで危ない。……屋上にしよう。そこなら多分安全だ」

言って、なつきはエレメントを顕現させ、その銃で天井を指す。

「屋上の安全は私とクリスが先に向かって確保しておく、お前は確実に虫除けスプレーを確保するんだ」
「了解。それよかそっちも服を確保するのを忘れないでくれよ」

それにだ――と、九郎は言葉を繋げ……

「二人きりになったからってデートとかしてんなよ。そもそも遊園地に向かってったてのも――……」


……――撃たれた。

586 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:03:23 ID:jMSqLp1x
 

587 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:03:35 ID:ZTxVO43Y


588 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:03:46 ID:WJRQXKtz


589 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:04:07 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


「まったくアイツは! この非常時に……で、デートだと? ふざけた奴だ!」

剣幕に怯えるクリスを背に、顔を真っ赤に染めたなつきは足早に通路を進む。
ズンズンと足音を立てて……そしてそれは上階への階段へと差し掛かったところでガンと音を変えた。

「……どうしたのナツキ? 足を挫いたの……?」

階段は、正確に言えば静止したエスカレータであった。
そこをクリスは事も無げに上ってゆく、彼は動く階段なんてものを知らないからせいぜい金属の踏み板を珍しがるくらいだ。
しかし、普段それが動いていることに慣れきっているなつきは、いまいちギクシャクとした感じでそこを上っている。
頭では理解しているのに、不思議と足に力が入りガンガンと音を立ててしまう……。

「べ、別になんでもない! ちょっと、普段と違ってて……と、と……?」
「――危ない!」

不意になつきの身体が揺れ、クリスの目の前で傾いてゆく。
落下――あの時、彼女を見失った時を連想した脳が、眼前の光景をゆっくりと、スローモーションへと……
同じように、あの時と同じように手を伸ばす――今度はなつきへと、そして――……

手は届き――……

「ど、どど、……どこを触っている――っ!!!」


……――再びの銃声。

590 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:04:53 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


「(……どいつもこいつも!)」

怒り、そしてそれよりも強い羞恥に顔を染めながら、片方の手で胸を押さえ、もう片方の手で銃を振り回しなつきは進む。
辛うじて被害者となることを避けられたクリスは、ランタンを片手にさっきよりも数歩下がった位置でその後を追っていた。

誰かが潜んではいないかと、なつきは銃口を左右に振り周囲をくまなく警戒する。
いささか冷静さを失っている状態ではあるが、この手の事に関しては慣れていることもありミスは犯さない。

視線の先に現れるのは……
無数の時計を壁にかけた時計屋、派手な見出しが躍る雑誌を並べた書店、異文化を感じさせる雑貨店
……等々、特に何の変哲もないいつも通りの日常を思い起こさせるものばかり。

怪物狩りもプライベートもほとんど独りで、なつきのストレス解消と言えばもっぱらがバイクかショッピングであった。
例え家に帰っても誰も待っている人はいない……だから、空いた時間は寂しさを紛らわせるために賑やか場所にいることが多い。
ずっと独り。しかし、そんな中そこへと割り込んできたのが――……

「(何を考えているんだ、私は……今はそんな時ではないというのに)」

なつきは頭を振り、思い浮かんだ”先生”のことを頭の中から振り落とす。
日常に近い場所にいるためか、それとも何らかの要因があるのか、様々な思いが押し寄せ心の中に浮き上がる。
それは、縋りたい何かなのか、それとも漠然とした不安なのか、自覚できぬまま泡の様に――……

「……ナツキ」

不意に優しさが伝わってくる。
心地よく、柔らかい暖かさが手の中に。
気付けば、クリスがまたあの時のように手をとっていた。

591 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:05:09 ID:WJRQXKtz


592 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:05:38 ID:7h09zbBa
クリスは言葉を重ねない。故に意図は計れないかというと逆で、ひしと想いは伝わってくる。
彼の深い優しさ。寂しさや哀しみに敏感で、独りである者を見捨てはしないことを……。
それは、彼が自然と誰にでも分け隔てなく与える綺麗な優しさだ。

気恥ずかしさから振り払おうと……しかし、できずにそのまま、繋いだままなつきは歩を進める。
九郎の茶化す声が脳内に響いたがそれは無視し、思考の全てを自己弁護に費やし彼の手を離さないことを選択する。

ただ手を繋いでいるというだけなのに、不安は姿を消し、不思議な暖かさで心が包まれる。
それがクリスとだからなのか、それとも誰とでもなのかはそういう経験の浅いなつきにはまだ確かには解らない。
だだ、心の中にひとつだけ残った棘がある。
それが指し示していたのは、これはどこまでいってもクリスから誰にでも贈られる優しさでしかないということ。

自覚はなかったが、ただその痛みだけが暖かい胸中でチクリとなつきの心を密かに苛めていた。


 ◆ ◆ ◆


タン♪ タン♪ タン♪ ――と、聞く者にそれだけでも上機嫌だとうかがわせるような足音が階段に響いていた。

「神は! 俺を! 見放しては! いなかっ――――た!」

1階から2階への非常階段を3段飛ばして駆け上がっている浮かれた男は、先ほどまでは沈みっぱなしだった九郎だ。
最後に、タン♪ と力強くステップを踏むと踊り場に出て、大きな窓の前でビシリとひとつポーズを取る。

鏡代わりの窓に映る大文字九郎の姿は先程までの、哀れで情けなく惨めったらしいものではない。
清涼な青の地に金のラインが走る、シンプルながらもどこかの王様を連想させる格好いいジャージを着込んでいた。

593 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:05:43 ID:jMSqLp1x
 

594 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:06:05 ID:WJRQXKtz


595 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:06:24 ID:7h09zbBa
片手には依頼のあった虫除けスプレー。
これを探すついでに寄ったスポーツ用品店で、下着代わりに水着でも調達しようとし、そしてこのジャージを発見したのであった。
残念なことに水着に関しては……いや、何もかもが女性用のものしか揃えられてはいなかった故に下はまだ全裸であったが、
ジャージとなれば男女の区別も特にはなくサイズがやや寸足らずなことを除けば一切の問題はなかった。
足元に輝く新品の運動靴に関しても以下略であり、1日の終わりを目前にしてようやく九郎はここに人間の尊厳を取り戻したのである。

その場で1回ターン。2回ターン。3回ターン。
いまひとつ、ジャージの中で落ち着かない部分があるが、傍目には無問題。
歓喜に打ち震える心の中においては無視できる程度に些細なものだ。


――と、窓に映る自身に見蕩れていた九郎の目に何かが入り込んでくる。


窓から見える道路。アスファルトの上に何か、黒い……黒い、まるで人の形をした、まるで――のようなモノ。

九郎の心臓が跳ね上がり、ドクドクと身体の強く打ち始める。
脳がある可能性を浮かび上がらせようとし、逆に心がそれを否定し押さえつけようとする。
まるで、それがあの――の成れの果てではないかと、そう気付いてしまった時、感情よりも身体が先に動いた。

窓を開け放ち、躊躇なくそこより飛び降りる。一瞬の滞空の後、アスファルトを踏みつけた新品の運動靴がキュと音を鳴らした。

596 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:06:44 ID:vUk5xm2z


597 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:07:00 ID:WJRQXKtz


598 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:07:10 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


コツコツ、トントン……コツコツ、トントンと、
2種類の足音が正しく調子を合わせ即興のアンサンブルを演奏している。
目的の3階へと辿りついたなつきとクリスは相変わらず手を繋いだまま、通路を奥へ奥へと進んでいた。

発せられないのか、それとも不要なのか互いに無言で。
何時の間にかに、意識するでもしないでもなく、それが当たり前かのように。
通路の右には、財布や鞄等々高級そうな皮製品の店。左には、タイやハンカチ等々上品な雰囲気の布製品の店。
空いた手にはそれぞれ銃とランタン。それぞれに仕事をこなしながら先へと進む。
そしていくらか進んだところで、ランタンの光が一面の花畑を照らし出した。

「……おぉ」
「わ……」

その中へと、なつきは足早に入ってゆく。
赤、青、黄色。色の薄いもの、濃いもの。明るいもの暗いもの。シンプルなものもあれば、複雑な花弁を持つものも。
一言ですませれば百花繚乱。
そんな光景になつきは目を奪われ、花から花へと手を伸ばす。ひとつふたつと取っては――と、クリスを突き飛ばした。

「お、お、……おお、お前がどうしてここにいるんだ!」
「えぇ……そんな!」

なつきの両手の中にあふれている花は……可愛らしい女性用下着で、花畑とはつまりはそういうこと。
だとすればなつきの主張は正しくもあるのだが、手を引かれ無理矢理に連れて来られたクリスとしては災難だった。

599 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:07:13 ID:jMSqLp1x
 

600 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:07:55 ID:7h09zbBa
「と、ともかくだ。お前はここから……そうだ、服を探しにいってこい!」

なつきよりの指示に少しの理不尽を感じながら、クリスは降りかかっていた花弁を払い立ち上がる。
言われるまでもなく、この場所は彼にとってもいるだけで恥ずかしくてたまらないのだ。
真っ赤になった顔を影に隠し、なつきの溜息を背にクリスは花畑をかき分けてそこを逃げるように去っていった。

「…………う、うむ」

花畑の向こう側。フラフラとゆれるランタンの光を見送ると、なつきの胸にいくらかの申し訳なさが浮かんできた。
冷静になれば、いやそれ以前の問題として彼には全く非はないのだから。
ただ、気付かぬままに手を引き、連れてきたのは――……

「あ……、あぁ…………」

……自分だったと、気付いた瞬間、なつきの顔がまた真っ赤に染まる。
先ほどまではなんとなしにそれがいいと思っていた行動も、一度醒めると途端に恥ずかしくてたまらなくて仕方がない。

「そ、そうだ……代えの下着は必要だ。今のうちに確保しておかなくては、な」

聞く相手もいないのにそうひとりごちり、なつきはいそいそとバックから自分のランタンを取り出す。
新しい明かりに照らされた顔はやはり真っ赤なままだ。
もしクリスがいたままだったならば、熱でも出したのかと心配されたかもしれないぐらいに。


601 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:07:59 ID:WJRQXKtz


602 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:08:34 ID:vUk5xm2z


603 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:08:52 ID:jMSqLp1x
 

604 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:08:55 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


「(しかし、まぁ……悪くない品揃えだな……)」

実益と気晴らしを兼ねての下着選びであったが、いつの間にかなつきはそれに夢中になっていた。
場所柄ゆえか、そこにあるものは遠まわしに言えば”開放的”な印象を持つものが多いだろうか。
可愛いもの、可憐なもの、煽情的なもの……手にとっては、ポイポイとカートへと放り込んでゆく。
少し進んではポイポイ、また進んではポイポイ。そう時間が経つ間もなく、カートは山盛りになってゆく。
無類の下着コレクターということもあるが、金銭的な不自由を知らないが故にこれがいつもの彼女の調子である。

「(――これは!)」

銃を手繰る手際ではしと手を伸ばしたのは、黒を基調にワインレッドのリボンがあしらわれた一枚の下着。
一見すれば大人向けの、一言で下品と断じられそうな一品ではあったが、なつきの審美眼はそれがそうでないことを見抜いていた。
地の部分である深蒼に染められたシルクが極めて上等なものであることは指先から伝わる感触でわかる。
その上に重ねられたアイリッシュ・クロッシェレースも見事なもので、編み上げられた薔薇が強い印象を与えていた。
手に取っただけ――つまりは、平面状での印象だと装飾過多との印象は拭えないが、
実際に穿き身体をなぞった立体となった時、それが一個の完成された芸術となることをなつきはすでに想像し終えている。

――と、下着を手に没頭していたなつきの顔を明るいランタンの光が照らした。

605 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:09:18 ID:WJRQXKtz


606 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:09:42 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


「……――そうか。ここには女物しかなかったのか」

下着の山を背に、なつきは必要以上にうんうんと頷いてクリスの報告を聞き遂げる。
案内板で見た時にはそういう印象を受けなかったが、どうやらこのモール自体が女性物専用店らしい。
なんとも不可思議な話だが、九郎やクリスに聞かされたことも考え合わせるとこの島自体がそうなのかもと思える。
九郎はいくら探しても男物の服が見つからなかったらしいし、クリスにしても今着ている和服は明らかに女物だった。

「それで、お前がもってきた”ソレ”は一体なんだ……?」
「え? ナツキには似合うと思ったんだけどなぁ」

クリスが両手に掲げているのは純白のドレスだった。
基本的なデザインはバレエダンサーが着るチュチュの様な感じで、背中で蝶結びにされた大きな青いリボンが特徴的だ。
それをなつきが着れば確かに可愛いかも知れない。だが……

「なんのために服を探しに来たのか忘れたのか?」
「……銃を向けないでよ」

……さりげなく引っ手繰ったドレスを自分の鞄に突っ込み、なつきは代わりとなる物を取り出した。
次々と……何着、何十着と出てくるのは伊達スバルより譲り受けたアイドル候補生の為のステージ衣装の数々である。

607 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:10:17 ID:jMSqLp1x
 

608 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:10:28 ID:7h09zbBa
「もう時間もないし、これで済まそう。これだけあれば着られるのも一着や二着あるはずだ」

見る見る間にフロアの上に膨大な衣装が並べられてゆく。
やはりアイドル用とあってビビットで派手な物が多く、なつきの趣味には合わないものばかりだった。
中には宇宙服みたいなのや、ブルマの体操着そのままなものなど、どこがアイドル用なのかと頭を捻るものも多い。

「あの……僕の服もここから選ぶのかな?」

ランタンの明かりの中で困った表情を浮かべるクリスに、なつきは……

「今更だろう?」

……と、だけ答えた。


 ◆ ◆ ◆


不本意ながらもそれは嗅ぎ慣れた匂いだった。
往来の真ん中に放置されたソレから漂うのは、例えば火事場などで嗅ぐことができるもの。
それが人間が焼き殺されて残ったものであることは最早疑いようもなかった。

九郎は、一歩、一歩と……そこに歩み寄る。
それを確かにしたいという欲求と、決して真実にはしてはいけないという恐怖を鬩ぎ合わせ、ゆっくりと、引きずられるように。

609 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:10:49 ID:WJRQXKtz


610 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:11:11 ID:zrGNhXnX



611 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:11:13 ID:7h09zbBa
近づけば近づくほどに情報は増え、脳内に事実を組み上げてゆく。
焼け残った手足の先。
その白い手に九郎は見覚えがあった。
忘れるはずもない。忘れるわけがない。それは希望なのだから。希望を、掴むはずだった”手”だったのだから。

「……そ、…………そんな、…………」

また一歩近づく。しかし、貌は……彼がどんな表情をしているのかは解らない。
何故なら、もうそこは真黒に焼けてしまい、すでに貌ではないのだから。
彼が何を想い、何を思って死んだのか、それは遅れてきた九郎にもう知る術はない。

「こんな、ところで…………お前は……」

希望であった彼の魂が安らぎの園へと上ったのか、その場で砕けたか、それとも怪異に囚われたのか、それも解らない。
ただ、此処にはもう何も残ってはいないということだけが、どこまでも解るだけ。

「……死んでいた、のか」

九郎の足元には、半ば以上が炭化し、最早物としてすら存在の希薄な、ただの残骸。
その価値を全くの零にまで落とされ、残滓すらも残さない希望の成れの果てがあった。


直江理樹が其処で死んでいた。

612 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:11:30 ID:vUk5xm2z


613 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:11:53 ID:jMSqLp1x
 

614 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:11:57 ID:WJRQXKtz


615 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:11:59 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


コツコツ、トントン……と、再びのアンサンブル。
先ほどよりかは心持ち調子を上げて、短く刻むような音が協奏されている。
着替えを済ませたなつきとクリスは階を一つ上がり、今は足早に屋上を目指していた。

なつきが選んだ衣装は”春香”というタグの付いていた”パンキッシュゴシック”
真黒な細身の綿シャツに赤のネクタイ。腰のプリーツスカートは半分が赤のチェックで残り半分が黒。
そして脚には黒と赤の線が入ったハイニーソックスを通し、足元にはダークブラウンのショートブーツを履いている。
色はともかくとして、普段のスタイルに近いということで彼女はこの衣装を選んだ。

なつきの隣を歩くクリスが選んだのは”真”というタグの付いていた”ポーリータキシード”
至極スタンダートなデザインのタキシード。
ジャケットは付属してはいなかったが、カマーベストがあるので黒が足りないということはない。
首元の蝶ネクタイと手首のカフスボタンも黒。完全に白と黒だけの衣装だった。
一見したところでは女物とは解らない――そんな消極的な理由でクリスはこれを選んだ。

「おなかすいたね、ナツキ」
「また随分と唐突だな。…………同感だが」

屋上より一つ前となる4階は飲食店街だった。
右も左も、カフェやレストラン。ファーストフードショップ。ドーナツ屋。和食、中華、洋食と食べ物屋が軒を並べている。
その光景に、緊張感から久しく感じていなかった空腹を二人は思い出していた。

「食料ならすでに調達してある。九郎と合流したらそこで食事にするのも悪くないかも知れないな」
「さすがナツキだね。それで、一体どんな料理をつくってくれるんだろう?」
「――はぁ?」
「あれ? 何かまたおかしなことを言っちゃったのかな……」

616 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:12:45 ID:7h09zbBa
喰えればいいじゃないか、なんでも……と口の中だけで呟き、なつきはクリスより目線を逃がす。
一人暮らしで尚且つ年頃の乙女であるなつきであるが、現代っ子ゆえの悲しさなのか料理は得意でない。
食事は学食を除けばもっぱらコンビニか外食。
しかもランチに、ソフトクリームやケーキを選ぶなどと相当に子供っぽい幼稚な食生活を送っている。

警戒のために目線を走らせていたはずが、何時の間にかに異文化への興味へと摩り替わっているクリス。
それを横目に何度目かの溜息をつくと、なつきは気を取り直して警戒を強める。
もしどこかの暗闇の中に危険な人物が潜んでいたとしたら、明かりを持っている側が先制されるのは避けがたい。
故に、少なくとも即応できるようにとなつきは気を張り巡らせる。

と、彼女の視線の先にあるものが映った。

それは、誰が見たとしても決して害のあるものではない。
むしろ連想されるのは、穏やかさや、家族、平和、団欒などといったワードだろう。
勿論なつきも先日まではそれに対し同じような印象を持っていた。
だがしかし、今は……やや、違う。新しく、そこから連想するワードを彼女は今日のうちに増やしていた。

凍りつくなつきの視線の先。ウィンドウの中に――――オムライスがあった。


 ◆ ◆ ◆


偶然かまたは何かの導きか、九郎は理樹の遺体を発見した。
目の前に転がる理樹だったモノの存在は、彼の死を人伝で聞いた時よりも遥かに確固たるものとしてくれている。
そして、遺体に残った痕跡がもう一つの絶対的なものを彼に知らしめることとなった。

617 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:12:55 ID:WJRQXKtz


618 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:13:22 ID:vUk5xm2z


619 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:13:32 ID:7h09zbBa
「俺の…………」

理樹の身体に撃ち込まれ、彼を燃やした魔弾から発せられる魔力の残り香。
それを九郎はよく知っている。それは本来なら彼の所有物である暴君の魔銃から発せられるものなのだから。
そして、その魔銃を今誰が持っているかということも……あの金髪の女が持っているということを彼は知っている。

「全部、……俺のせいじゃ、ねぇか…………」

その事実が意味することは唯一つ。
九郎を痛めつけ、気絶させたあの女が理樹を殺したということ。
つまりは……九郎の身体を張った時間稼ぎたるものが、一切の意味をなしてなかったことを意味する。

「何が、絶対に……護る、だ……」

十分な時間を稼げていたと思ったが、真実そうではなかった。
あの女にどの様な手段があったかは不明だが、足りた……などと考えること自体が甘さでしかなかった。
千華留を疑ったことにしても結局はそう、自分が納得できるだけの理由が欲しかったにすぎない。
自分は最大限の努力をし、しかし相手が卑劣だった故にと罪を背負わない為の理由を探していたにすぎない。
そうやって、自分が理樹を見殺しにしたことから目を背けていただけにすぎないのだ。

「全然……これっぽちも、できてねぇ――――っ!」

憎むべき相手は、断罪すべき悪は金髪の女でも千華留でもない。
幾多の犠牲の果てに託された希望のバトンを次へと運べなかった自分自身に他ならなかったのだ。
真実に気付き――


「あああぁぁぁあああぁああああああああぁあぁぁぁあああぁぁぁあああああああああ――――!!」


――絶望に、希望を途絶えさせたという絶望に、九郎は慟哭した。

620 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:14:16 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


コツコツコツ……と、今度は独奏。
聞くものの、寂しさと不安を掻き立てるような、そんなソロ。
屋上へと達したなつきは、クリスを一人休憩所に残し、安全を確保するために周囲の店舗を探索していた。

一軒、二軒とこなし、三軒目に入ったのはむせ返る様な甘い香りが充満した生花店だった。
花とは温度に敏感なものであるから、本来ならば売り物の分は保冷庫により管理されているものだ。
だが、管理する人間がいないここでは日中の茹だる暑さに刺激された花達が自由気ままにその生を謳歌していた。
そんな即席の楽園の中をなつきはゆっくりと進む。

暗鬱な表情を浮かべるなつきの胸中を占めているのは、吹っ切ったはずのズバルのことだった。
彼にご馳走になったオムライスから連想が始まり、更に連鎖が続いて平らだった心が乱暴に掘り返されてゆく。

伊達スバルが今際に残した――いずれ……なっちゃんも俺みたいになるぜ――という言葉。
大切な者のためならば、罪を犯すことをも厭わない。大切な者を優先するなら他を蹴落としてでもそうする。
それは絶対だと、そう彼は言い残した。誰も彼もがそうなるに違いないと、大切な人がいるならば……。

重なるように別の声が思い浮かぶ――こんな場所で出来た集団の信頼に意味なんて無い――美希の言葉だ。
一見平穏に見えたとしても、真実の心を覗くことは決してできはしない。
仲間ができても、それはあくまで仮初。あくまで仮のものだと、アル=アジフもそれを肯定していた。

片手には銃、もう片手にはランタン。
どちらの手にも今はあの優しい温もりはなく、華やかな光景とは裏腹になつきの心は冷えつつあった。


621 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:14:35 ID:WJRQXKtz


622 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:14:39 ID:zrGNhXnX
 


623 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:15:02 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


ドシ――と、力強くも不吉さを思わせる様な独奏。
地面を拳で叩くことを繰り返し、己の悔恨を九郎は一人演じてみせる。
しかし、いくら地面に血を滲ませようともそれは決して聞かせたい相手には届かないと、そう知りながら。


九郎には理樹が今際に何を思い、何を言い残して死んだのか解らない。
彼がどれだけの無念を抱いてこの世から去ったのかを知らない。
残してゆく者たちにどんな願いを送って逝ったのか……。

そんな彼にどうすれば報いることができるのか。
何が彼の無念を晴らすことになるのか。
それが解らず、血の涙を溢れさせる。

嗚咽と一緒に絶望を吐き出し。
哀しみを慟哭であらわす。
無念の独奏。


しかし、やはり目の前の理樹からは何も返ってはこない。

624 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:15:21 ID:jMSqLp1x
 

625 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:15:33 ID:WJRQXKtz


626 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:15:48 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


コツ……コツと、途切れ途切れに……、唯の音。
表現に乏しく、聞く者に寂寥感しか与えぬような、そんな乾いた独奏。
使命感を力に、なつきは重い心を抱えながら歩を進め、次の店舗へと足を踏み入れていた。

目の前には、空の檻。

そこは無数の檻が並ぶペットショップだった。
しかし、檻の中は全てが空。どうしてそうなのかは解らないが、薄ら寒い空虚な空間であった。
犬、猫、それ以外のものも多種多様にいたであろうことは檻に掛けられたプレートから解る。
そしてそれを漫ろ見ていたなつきの目に一つの名前が留まった。

――『アラスカン・マラミュート』

ハスキー犬に近い一種で、知らない人が見ればそう間違えるほどに似ている犬種だ。
性質もよく似ており、集団で行動して人間からは狩猟やソリを引くものとして使役されている。
極寒の地で忍耐強く従順に生きるこの犬がなつきは大好きだった。

なつきのチャイルドであるデュランの由来もここにある――と、そのチャイルドの不在を彼女は改めて認識した。

呼べばどこにでも現れるはずのデュランは此処にはいない。
そのことを、なつきは当初、媛星がないせいだと考えていた。
何故ならHiMEの物質化能力の多くの部分は、媛星から溢れ出る力に頼っているからだ。
しかし、天上に媛星が浮かび出た今となってもデュランはその気配さえ窺わせない。

627 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:16:34 ID:zrGNhXnX
 


628 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:16:34 ID:7h09zbBa
空の檻を見て、なつきはまるでそれが自分の心のようだと思う。

硬い外殻の中には今は何者も存在しない。
ただでさえ寂しかった心の内。そこに存在した、唯一の家族であるデュランもおらず、ただただ空虚が広がるばかりだ。
この空ろな心を誰にも暴かれぬよう、何より自分がそう気付かないよう、彼女はただ目的だけをずっと追っていた。

この世界に落とされてより親友である静留を探していたが、その実彼女のことを考えていた時間は僅かしかない。
それは全部がそうではないにしろ自分が動き出すための口実に過ぎなかったからだ。
元の世界における復讐にしてもそう。生きる目的ではなく、復讐は孤独を生き抜くための手段でしかなかった。

勿論、静留や母を想う気持ちがないわけではない。
ただ何時の間にか、不器用に、生き方を歪にしてしまっているということだけ。
それは空の檻の様。空ろな部分を隠すため、そこを堅く覆い、誰かに触れられるのを避け続けている。


誰よりも、愛情を――遠い日に失ったそれを求めているというのに。


 ◆ ◆ ◆


おずおずと差し出した指がそこに乗ると、まるで魔法が解けたかのように指は踊りだした――

629 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:16:38 ID:WJRQXKtz


630 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:17:20 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


悔恨の独奏を終え、九郎は理樹の前で蹲りただ身体を震わせていた。
希望という名のバトンを取りこぼし、ただ独り残された自分がどこに向かえばいいのか、その道は不明で。


――そこに、一つの”音”が届く。


丸まった背より、その音霊は九郎の中へとするりと入り込み、
苦悶の鎖で雁字搦めとなった心の外殻をも透き通り、
心の一番の中心。眠っていたそこに辿りつくと、
それを静かに、優しく、目覚めさせた――


九郎は固く閉じていた目を見開き、ゆっくりと立ち上がる。
聞こえたかと感じた音はもう傍にはない。ただ風に乗った一音だけが届いたのか今は静寂だ。
同じく、九郎の心も清涼に静まっていた。自縛の鎖は全て解け、心は真水の様に透き通っている。

足元に転がるのは理樹ではあったが、もうそうではないということをはっきりと自覚する。
彼が今何処にいるのかは知る由もない。だから天を――白く輝く月を見上げ、そこに想いを馳せた。

「理樹。悪いけど、この先は俺が行かせてもらう。お前の希望――」


俺が達する――と、九郎は天に拳を突き出し、その中に新しい希望があると信じた。

631 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:17:33 ID:ZTxVO43Y


632 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:17:39 ID:vUk5xm2z


633 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:18:06 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


耳に届いた音に引かれ、表に出たなつきが見たものは静かにレクイエムを奏でるクリスの姿だった。
テーブルの上にフォルテールという鍵盤を置き、穏やかに緩やかにただただ音を紡いでいる。

月の光の下。そこを流れる音霊はなつきの身体に入り込み、優しく彼女を侵してゆく。
長く閉じられていた檻の表面をくすぐる様に巡ると鍵穴を見つけそこを開く。
流れ込む音は彼女が伏せていた想いを次々と立ち上げ――

惹かれるように……魅かれるように……なつきはクリスの傍へと寄ってゆく。
月光で照らされたステージの上を、奏者の下へと、心を癒す音を求め、あの優しさを求め歩く。
無垢な子犬のように、自身が気付く間もなく、彼への隣へと座り、彼を倣って夜の空を見上げていた。

想いを馳せる彼に、彼女も追従する。


「本当に……明日は希望に満ち溢れてるのかな?」


と、その明日を前にクリスは誰ともなく問う。


「お前が、そう願うなら――……」


と、なつき。
演奏を終えた彼に、この時、彼女ははじめてその手を、あの優しい手へと、自分から――重ねた。

634 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:18:09 ID:jMSqLp1x
 

635 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:18:23 ID:WJRQXKtz


636 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:18:35 ID:zrGNhXnX
 


637 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:18:52 ID:7h09zbBa
 ◆ ◆ ◆


明日を目前に、絶望と希望を知る3人は三者三様にそれぞれの月を見る。



クリス・ヴェルディンの見上げる月は、雨煙に遮られその道行きのように朧と霞んでいる。

久我なつきの見上げる月は、その傍に赤い狂星を置き立ち向かわならねばならない何かを予感させる。

そして大文字九郎の見上げる月は、すでに逝ってしまった者達の想いを映しているかのように力強く輝いていた。



――明日は希望に満ち溢れているのだろうか?





【F-7 北西・ショッピングモールの屋上/一日目/真夜中】

638 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:19:37 ID:7h09zbBa
【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:ポーリータキシード(真)@THEIDOLM@STER、防弾チョッキ、
【所持品】:
 支給品一式、ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
 フォルテール(リセ)@シンフォニック=レイン、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン
 刀子の巫女服@あやかしびと−幻妖異聞録−、和服、情報の書かれた紙
【状態】:空腹、Piovaゲージ:50%
【思考・行動】
 基本:哀しみの連鎖を止める
 0:九郎と合流。放送を聞いた後、食事をとる。
 1:以下の目的の為に島の中央部へと向かう。
  -ユイコを探し出し、彼女を護る。
  -シズルを探し出し、ナツキと協力して彼女を助ける。
  -首輪を解除できるであろうドクターウェストを探し出し、彼と仲間にする。
  -何かこのゲームのヒントが隠されていないか付近の施設を調べる。
 2:第六回放送(2日目の正午)までにツインタワーへと向かい、アル達と合流する。
 3:誰かと出会ったら仲間になるよう説得。即座に同行できないならば、ツインタワーで待ち合わせる。
【備考】
 ※原作よりの登場時期は、リセルート-12/12後からになります。
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※トルタとは暫く会う気がありません。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「MightyHeart、BrokenHeart」の本文参照。


639 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:19:39 ID:WJRQXKtz


640 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:20:03 ID:vUk5xm2z


641 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:20:23 ID:7h09zbBa
【玖我なつき@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:ELER(なつきのエレメントである二丁拳銃。弾数無制限)、パンキッシュゴシック(春香)@THEIDOLM@STER
【所持品】:
 支給品一式×2、ベレッタM92(9ミリパラベラム弾15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(15発入り)×3
 765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THEIDOLM@STER、白ドレス@Fate/staynight[RealtaNua]
 大量の下着、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)、七香の MTB@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜
 双眼鏡、クルーザーにあった食料、情報の書かれた紙、首輪(サクヤ)
【状態】:空腹、疲労(軽)
【思考・行動】
 基本:クリスと同行し、静留を助ける。
 0:九郎と合流。放送を聞いた後、食事をとる。
 1:以下の目的の為に島の中央部へと向かう。
  -静留を探し出し、クリスと協力して彼女を助ける。
  -唯湖を探し出し、彼女を護る。
  -首輪を解除できるであろうドクターウェストを探し出し、彼と仲間にする。
  -何かこのゲームのヒントが隠されていないか付近の施設を調べる。
 2:第六回放送(2日目の正午)までにツインタワーへと向かい、アル達と合流する。
 3:誰かと出会ったら仲間になるよう説得。即座に同行できないならば、ツインタワーで待ち合わせる。
【備考】
 ※媛星の事はアルやウェスト等、媛星への対策を思い付き得る者以外に話すつもりはありません。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「MightyHeart、BrokenHeart」の本文参照。
 ※クリスが雨の幻影を見ていることに気付きました。



【F-7 北西・ショッピングモール近くの路上/一日目/真夜中】


642 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:20:46 ID:WJRQXKtz


643 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:21:09 ID:7h09zbBa
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:私立穂群原学園指定体操服+運動靴@Fate/staynight[RealtaNua]
【所持品】:
 支給品一式、バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン、凛の宝石×7個@Fate/staynight[RealtaNua]
 物干し竿@Fate/staynight[RealtaNua]、キャスターのローブ@Fate/staynight[RealtaNua]
 木彫りのヒトデ×10@CLANNAD、アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン
 トランシーバー(故障)、加藤虎太郎の眼鏡、タバコ、虫除けスプレー
【状態】:決意、疲労(大)、背中に打撲(重)、全身に打撲、肩に銃創、脇腹・右足に浅い銃創
【思考・行動】
 基本:亡き者達の遺志を継ぎ、希望を実現させる。
 0:なつき達と合流し、彼女に虫除けスプレーを届ける。
 0:千華留への疑い(理樹殺害)が誤解であったことをなつきに伝える。
 1:クリスとなつきに同行し、彼らを助ける。その後、一緒にアル達と合流。
 2:虎太郎の生徒と出会えたら保護する。
 3:金髪の女(ドライ)とはいずれ決着をつける。
 4:ドクターウェストに出会ったら、問答無用で殴る。
【備考】
 ※千華留、深優と情報を交換しました。
   深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
 ※クリスが雨の幻影を見ていることに気付きました。
 ※理樹を殺したのはドライだと気付きました。

644 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:21:45 ID:jMSqLp1x
 

645 :PERFECT COMMUNICATION  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/23(土) 21:21:55 ID:7h09zbBa
投下終了しました。支援感謝します。

646 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:22:17 ID:WJRQXKtz


647 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 21:22:21 ID:zrGNhXnX
 


648 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/23(土) 23:25:26 ID:plGbJUYK
投下乙です

本当に九郎は慟哭、というか悲しみに明け暮れる姿が様になるなあ
原作通りだときっとこれまで以上の正義の味方っぷりを見せてくれるはず…!?
と、いう九郎のこれからの活躍っぷりを夢想しつつ、良繋ぎGJでした

649 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 00:19:52 ID:NI/veqJT
投下乙。
おお、九郎。ようやく道化から目が覚めたのか。
本当に慟哭する様子が様になる主人公だw これで千華留様との誤解もなくな……ってくれるのだろうか。
クリスとなつきも良いコンビらしくて良かったです。

650 : ◆I9IoWegESk :2008/08/24(日) 21:00:53 ID:CE4LmEiz
 ドライはカジノのセキュリティルームで休息をとった後、ホールへと足を運んだ。
床は所々に水溜りを作り、マスコットが無残な残骸を晒している。

 彼女は徐にクトゥグアを取り出し、灼熱の弾丸を撃ち込んだ。
会場は以前と同じようにスプリンクラーを起動させ、しばし白の空間を作り出す。

「まっ、そこまで甘ちゃんじゃないわな」
 彼女は熱で溶解したスロットマシーンを覗き込んで、舌打ちした。
スロットの中には一枚のメダルも見当たらない。メダルは例の転送技術でやり取りするのだろう。

 あらかじめ、自販機の方は壊しても無駄と予測がついている。
なぜなら、景品の中に、大型バスや打ち上げロケット(1人乗り)や果ては宇宙船といった規格外が存在していたからだ。
こんなものは施設の外に転送しない限り、景品を選んだ瞬間に大惨事になってしまう。

 それにしても、首輪をつけておきながら、宇宙のフロンティア精神を煽るのは悪趣味としか言いようがない。
もっとも、宇宙船に到っては購入不能なまでに桁が違うので、実在するかも怪しいのだが。

651 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:01:58 ID:CE4LmEiz
 最も安価な銃はルガー P08(装填済)のメダル500枚。
第一次世界大戦でドイツ軍が使用したもので、いけ好かないサイスも愛用していた。

 とはいえ、今のドライにとっては、この程度の拳銃でも価値はある。
彼女の現在の武器、クトゥグアは威力は高いものの扱いが厄介。カジノの戦いでも思わぬ手間を掛けてしまった。

 ただし、換金レートは支給品1つにつき250枚、首輪1つにつき500枚。
そして、現在所持する支給品は『噴射型離着陸単機クドリャフカ』、『クトゥグア(9/10)』、
『懐中時計(オルゴール機能付き)』の3つ。正直、割の良い取引とは思えない。

 ドライは不機嫌にブーツで床を打ち鳴らした。水しぶきが膝の高さまであがった時、何者かの視線を感じた。
彼女はすばやくクトゥグアを構え、周囲の気配を探る。単なる気のせいだったようだ。

 ドライは殺しの最中にスロットに遊びをする気にはなれなかった。ただし、彼女なりの賭けはしていた。
 カジノの二人は誰かと待ち合わせをしている様子だった。そこでドライは休憩中に来客があれば、殺して根こそぎ奪おうと考えていた。

(こんなことにグダグダ時間かけても仕方ねえな)

 彼女はひとつの決断をし、カジノを後にした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

652 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:02:24 ID:bw+J+0Aq
 

653 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:02:48 ID:CE4LmEiz
「そうじゃないだろ。ちゃんと死神の顔をしておけよ」
ドライはバイクのバックミラーを見つめて、自分の顔に檄を飛した。

 十分ではないが装備は整えた。二挺拳銃は自分の得意な戦闘スタイルだ。だが、心は未だにモヤモヤしている。


――カタギの少女を殺したせいか?

 自分は考えずに殺すこと決めていた。その筈が半裸の男を生かし、少女を殺した。あれは本当にただの遊び心、気まぐれだったのか。


――伊藤誠が死んだせいか?

 彼が菊池真を庇って死んだのか、彼女が彼を守り切れなかったのかはどうでも良い。
彼の甘ちゃんな理想は、生温い故郷か映画の中でしか通用しない。そう、当たり前のことが起きただけ、それだけなのだ。


――どんな形でも玲二が自分を探していたせいか?

 だが、いまさらキャルに戻ることはできない。あの男は彼女の苦しみを理解しようとしないのだから。

――玲二に捨てられ、己の存在に疑念を抱き、孤独に耐えてきたことも

――憎しみを愉悦し、それに駆り立てられて狂犬のように人を殺したことも

――果てた死体を見つめ、自分の中の獣に怯えて一人すすり泣いたことも

――そして、その虚無感を紛らわせるために……

 彼女は過去を振り返りながら、懐中時計を取り出した。

654 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:03:27 ID:xEIW67vE



655 : ◆I9IoWegESk :2008/08/24(日) 21:03:46 ID:CE4LmEiz
 懐中時計を売り払う気は初めからなかった。むしろ、自分を値踏みされているようで気分が悪い。

 諦めた支給品は『噴射型離着陸単機クドリャフカ』。夜間は着陸が難しくなるので当分利用できない。
多少、未練はあるが背に腹は代えられまい。足はこのバイクがあれば十分だ。

 これと『業務日誌』を換金してメダル500枚だ。どうやら、支給品以外にも換金可能な物はあるようだ。
メモ帳はセキュリティールームにあったコピー用紙で代替、戯れで日誌の最終ページをコピー機に掛けてみた。

 彼女は懐中時計をじっと見つめ、あの男への憎しみをかき集める。

 懐中時計は玲二が土産物屋で自分に買ってくれたもの。決して高価ではないが丁寧に作られた匠の品だ。
 キャルは鼓膜に刻まれるほどに、幾度となく時計のオルゴールを聴いていた。

 そして、ドライになった後もこれを決闘のギミックに利用していた。それは曲の終わった瞬間に互いに撃ち合うというものだ。


――この音色を聞かせてやる

――キャルにこれを買い与えた男に

――ドライの流儀で殺すべき男に

――最大の侮辱をした男に、最大の絶望を与えよう

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

656 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:03:55 ID:bw+J+0Aq
 

657 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:04:33 ID:4xJLxoI9
 

658 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:04:34 ID:CE4LmEiz
 ドライはバイクのスロットルを回し風を切る。本来は慎重に歩くべきなのだろうが、心がざわついてその気になれない。
背後のカジノの喧騒はだんだんと小さくなっていく。


彼女は未だ、オルゴールの奏でる曲の名を知らない。



【G-6/中央/1日目 夜中】 

【ドライ@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-】 
【装備】ルガー P08(9/8+1)@Phantom、クトゥグア(9/10)@機神咆哮デモンベイン、バイク 
【所持品】支給品一式×2、懐中時計(オルゴール機能付き)@Phantom、包帯、業務日誌最終ページのコピー 
【状態】 左足首捻挫(治療済み、患部に包帯を巻いている) 
【思考・行動】 
 基本:玲二(ツヴァイ)を殺す。玲二を取り巻く全てのものを壊す。 
 1:もう深くは考えない。殺す。 
 2:玲二を見つけたら、できれば懐中時計を使って決闘を挑む。
 3:人間を見つけたら玲二を知っているか尋ね、返答に関わらず殺害する。 
【備考】
 ※トルタと恭介は死んだと思っています。  
 ※クドリャフカの操縦を覚えました(なんとか操縦できる程度です) 。
 ※業務日誌の最終ページは殴り書きなので辛うじて「ヨグ・ソトース」「聖杯」「媛星」ぐらいが読める程度です。 
 ※発電所から伸びる地下通路の存在に気付きました。 
 ※カジノのメダルや景品は転送技術でやり取りされていると考えています。
 ※業務日誌とクドリャフカを換金しました。カジノの景品として並んでいます。

659 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:05:38 ID:xEIW67vE



660 : ◆I9IoWegESk :2008/08/24(日) 21:05:43 ID:CE4LmEiz
支援ありがとうございました。
タイトルは『Jesus Is Calling/我に来よと主は今』です。
矛盾や誤字の指摘、よろしくお願いします

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 21:12:12 ID:NI/veqJT
投下乙。
ドライも武装を強化してきましたね。
ついにツヴァイとも再会してしまうし、いったいどうなってしまうことやら。
ていうか宇宙船自重w そんなもんどうしろ、とw
そしてついにクドリャフカが使えなくなったか。確かに扱いづらい代物ではあったけどw

662 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 22:04:13 ID:bw+J+0Aq

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  ,'   iイ゙ :i ; i ;イ/;メ_、ハ  ;!リ,;ァト、リ;`:.!;:リ')
 '   .!! !:;i.: :! i;リ;r;⌒!' !. ' ' "!.,:;゙リ');} j;;ゞム._
      l! l, ト、j.:i:;(ヘい';!     'ゞ=ソ;リ;:|)ヽ  ~ ` ヽ
      ! {l゙'、iゞ; ハ ゙'´   _ .    /リリl! : ':ヽ. ; : ; '}
      ! ゙l! `"リ{ヾゝ、      . イソノ/l! :  ヽ.   { ))
        ゙i  i从、_`ン゙'>: :´ .j゙ヾメムl!,,.__': : ; ゞ、、レ'_. ._   _ .. __ィ')ハ、
            !| ゝこ,. 人  ノ゙,イ/}  /.  `゙ 'ー '"´´ , :'ゞ´ (゙ヽ,.ノ //ノ
          {! ., ; ッイ ゝく ,ノ リ   { :         ,:' (  ヽ) .!' ノノ゙
         _,, メ彡;r' :{ ノト八  .ノ   { :      . , . ゝ 。ゝッ-: ..イ"
       .,/,r'´,.:':;';l{ . ゙:ィノリ。jノゞ    ゙!  . ' .:  , _ . . : :ノ´
     .;r゙/.: ;:./':,ハ  ,|! |!oi      i,: '  ,'ィ'´ヽ,                /     \
     〃;' .:,/:'´;' ,l i゙ |! .|! i      ゙ヽ ノ!,..》;'´:)               //        ヽ
                                               | |       ヽ |
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                                              Y | |  |  |/リ   
                                .      rv^h        ∨ l  l  /

663 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 22:05:45 ID:bw+J+0Aq
                                     r.| | | |          ┌∨  |y'┐
                                    | | | | l_l^l      イー--W--┴..、
                                    |     |  ,.ィ:'´:::::::::::::::|::::::::::::::::::::`ヽ、
                                    ヽ     ノ/:::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ_
                                    | ̄ ̄∧::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::/:::|
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                                    |:::::::|::::::::::',::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::/:::::::::|

『――――私、トルティニタ・フィーネは、棗恭介の事が大好きです』
『――――俺、棗恭介は、トルティニタ・フィーネの事が大好きです』

・弱く、けれども強かった少女、蘭堂りの死す…。 その言葉は、確かに皆に届いた……。
・恭介、トルタの後を追うかの様な最期……、それでも告げられた言葉は後に残る。
・クリスはやたら強いなあ……w なつきも何やらフラグ立ったしw
・そして九郎は己の道を悔いる。 その相手であるドライもまた新たな道を行く。

先週(8/16〜8/24)までの投下数:4作
死者:2名(蘭堂りの、棗恭介)
現時点での人外になった者:羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(8/24)での予約:1件(◆UcW氏)


664 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/24(日) 22:49:45 ID:4Z46VuG/
>>I9氏
投下乙です
ドライは本当にかっこいいなあ
クドを手放したのは惜しい気がするけど、これでツヴァイから逃げられなくなった…
新しい武器も手に入れたし、決戦の時は近い――のか…!?

>>週刊ギャルゲロワ
こちらも投下&まとめ乙でした


665 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/25(月) 00:03:07 ID:rroGNRGF
投下乙です

AZ氏
クリスとなつき、凸凹してるけどなんかいいコンビ
九郎もとりあえず服を見つけられて……と思ったら、ついに目撃
仇敵は近くにいるが果たしてどうなる?

週刊
恭介の死はGR2の一区切りとも言えますね
AAの使い方が上手い


666 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/25(月) 03:04:43 ID:87SL0WL3
投下乙です!

>AZ氏
なんという九郎ちゃん……どういうことだ、アーカムシティのへっぽこ探偵が可愛く見えるぞ
靴を手に入れ大はしゃぎな九郎ちゃんに思わず心ときめいて理樹いいいいいな心境です。どうしてくれよう
なつきとクリスもいいなぁ。なつきから見たクリス、がとことんまで描写され、それが微妙に変わっていく流れがまた綺麗だ
二人と一人のグループの関係もこの先どうなるのかなぁ、好感度的な意味で
あとパンキッシュゴシックななつきだと……!? ついでにキュンキュンメガネも装備させてやってください

>I9氏
さらばクドリャフカ、おまえのことは忘れないわふー><
……いや、実際使い勝手悪かっただろうしw ドライとしても書く側としてもw
うむ、ルガーを手に入れてくれたドライに一喜一憂しているのも私だ
しかし宇宙船ってなんだ宇宙船ってw 媛星にでも突っ込む気かw

>週刊ギャルゲロワ
アスキーアートが珍しくシリアスしてる……
こういうのいいです……トル恭のセリフの掛け合いが妙

667 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:35:40 ID:OeZFH4jw
もう後は私は死ぬだけだった。
満足と言えるかと言うとどうだったのだろうか?

最も今はどうでも良かった。

何もなくなっていくの世界で突然響いた一つの声。


「やあ」

なんだ?と想う。
あまりに軽薄なそして陽気な声。
そんな声が私の脳内に響く。

「ちょっと君に用があってね」

可笑しな話だ。
私はこれから死ぬというのに。
なんなのであろうか?

「何……ちょっとゲームがあるんだ。愉しい愉しいね。君も参加しない?」

ふむ。
何をやらせる気かね?
このまま死んだほうが楽ならそのほうがいいのだが。

「勿体無いね、君の愉悦を満たすことが、もっともっとできるというのに。生きている以上にね」

ほう?
どんなものだ?

「殺し合いさ、沢山の人が独りになるまで殺しあう。君はその監督役だよ。生前と同じくね」

668 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:36:24 ID:t4v1O0m3


669 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:36:38 ID:biSLMfFI
 

670 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:37:12 ID:t4v1O0m3


671 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:37:18 ID:AHavs3Sm
 

672 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:37:39 ID:OeZFH4jw

ふむ。
それは実にいい。
面白そうだ。

「そして君には役割を与えようか。何事もゲームは順調にすすんじゃつまらないからね、だからそう―――――」


私はその言葉を聞き。

心の
心の底から。

大いに




嗤った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







673 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:38:12 ID:biSLMfFI
 

674 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:38:15 ID:t4v1O0m3


675 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:38:26 ID:OeZFH4jw
「ふう……」

ここは精巧な工具や機械が無数に、また乱雑に置いてある部屋。
その一角を占める机に頬杖を付きながら壮年の蒼い髪の女が溜め息をつく。
机の上には積み重なっている種類と彼女の私物であるだろうコーヒーが入ったマグカップが置いてある。

(何でこんな事になったのでしょうね……)

気が付いたらここにつれ攫われていた。
本当にいつの間にだった。
そして殺し合いのゲームをやる事、そして自分はその主催者の側に居る事を告げられた。
自分に与えられた役割は首輪の作成者、責任者と言うポジション。
本来ならばやりたくもなかった。
参加者には子供が沢山いたというのに。
しかも主催は自分が恨んでいる組織だと言うのに。

(まさか……あの子が……なんで……)

でも動けなかった。
参加者の中に自分の子がいたから。
そして脅された。
協力しないならゲームが始まる前に殺すと。

(きっと私を神様は許さないでしょうね……)

くすっとある意味諦観に似た苦笑いが出た。
一応建前であるがシスターを自称する彼女が神に背く様な事をしたのだ。
我が子が可愛いという一身で。
ゲームに参加するのは変わらない。
でもどんな可能性が低くても生き残る可能性があるなら。
自らのエゴを貫き通してしまった。
誰も自分を許さないだろう。

676 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:39:28 ID:t4v1O0m3


677 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:39:37 ID:AHavs3Sm
 

678 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:39:38 ID:biSLMfFI
 

679 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:39:55 ID:OeZFH4jw
でも娘の為ならそれでよかった。
彼女は娘が作ったというフェルトの犬を見つめる。
娘を抱きしめると言う母であるなら当たり前の行為が出来なくなってからどれ位たったのだろうか?
彼女はその長い年月を想う。
自分が恨む組織から脱却。
そしてシスターという身になり遠くから見る最愛の娘の姿。

(無事でいて……)

娘の無事を祈る彼女の名前は


「ちょーしはどうだい? シスター九条さん」
「炎凪……!」
「いやだなぁ……そんなに睨まないでよ、仲間なんだからさ」
「誰が……!……一番地の使い走りが……!」


九条むつみ。
シアーズ財団の末端であり一番地の裏切り者。
そしてある参加者の母である。

むつみは突然フラッと現れた凪を睨む。
むつみにとって凪は憎むべき存在。
詳しい正体は未だに分からない。
しかし最も明確な点は彼が一番地である事。
ただそれ故に明確の敵意を示していた。

「あ、娘さんは未だ元気だよ、相変わらずツンデレしてるけどね」
「……何か用でも? それくらい私でもわかっている。無駄話をする気は無いわ」
「んー何となく?」


680 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:40:15 ID:t4v1O0m3


681 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:40:51 ID:OeZFH4jw
あっけからんと凪は言う。
相変わらずの凪の様子にむつみは溜め息をつく。
この男は常にそうだ。
おちゃらけて論点を暈す。
そしていつの間にか現れそして消える。
故にむつみは想う。
人ではないのではないかと。
無論、想像でしかないが。

「……はぁ、私はしっかり役目を果たしている。参加者は首輪を調べているけどミスリードも大分多いわ。
 だから話す事も無い。一番地の人間と話すことも無いわ」
「へいへい。貴方が一番地を恨んでることぐらいよーくわかってますよーだ。でもね九条さん……」
「……?」
「僕はただ儀式を見守っていたかっただけなんだよ、星の行く末を。今回だってそうだ。
 なんでこんな大掛かり殺し合いまでをしないといけないんだ。マスターが何を考えてるのかまではしらないけど……さ。
 僕はただ見守りたい……今回もそうしなければならない……やっかいなものだね」

凪は物憂げに語る。
凪は見守りたいだけだった。
それなのにこんな大掛かりなものまで用意して。
だから凪にとっては、厄介なものだった、それだけだった。

「……神崎の命令には逆らえないの?」
「逆らえないよ……どんなことがあってもね。厄介なものだ……本当」
「そう……」
「さてと、無駄話もおしまいおしまい。九条さんも大変だけど頑張って……じゃあねー」


682 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:40:52 ID:biSLMfFI
 

683 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:41:01 ID:t4v1O0m3


684 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:41:41 ID:biSLMfFI
 

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:41:51 ID:t4v1O0m3


686 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:42:14 ID:OeZFH4jw

むつみがふっと目を離した先にはもう凪は居なかった。
あっという間に消えたのだ。
相変わらずだと苦笑いを浮かべむつみは考える。
ずっと今でも考えてる事。

(本当に……これでいいの?)

娘の為に協力した。
でも今でこれでいいのかと想う。
参加者は今でも苦しんでいる。
娘もそうだ。
なのに自分はこのままでいいのかと。
本来なら恨むべき一番地に強力までして。

(わからない……そういえば言峰神父は何故……?)

そこでふと想う。
ある参加者に過剰に接触して監禁された言峰を。
彼は何を思い接触したのだろうか?
唐突に気になり始めそれがとまらない。

(確かめてみましょうか?)

そしてむつみは立ち上がり言峰が居るであろう監獄へ向かう。
監獄は警備はされて入るものの非常に緩やかだ。
むつみは神崎からの伝言を承ってるとでも入れ罵倒してもらえるだろうと想っていた。
もしかしたらこの胸のつっかえが取れることを期待して。





687 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:42:43 ID:AHavs3Sm
 

688 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:42:56 ID:biSLMfFI
 

689 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:43:09 ID:OeZFH4jw
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「はぁ……もーなんだかなぁ……儀式がこんな事になるなんて」

凪は放送を行う場所に戻りただモニターに移る媛星を睨んでいた。
でもここは本来儀式が行われる風華じゃなくて場所も分からない島。
凪にとってはイレギュラーのイレギュラーで頭の中パンクしそうであった。
でも神崎の命令に背くことはできない。
だから凪は従うしかない。
悲しい定めだった。

「でも見守るしかないか……それが僕できるこ……ん!?……まさか!?」

凪はあるモニターを見て愕然とする。
そこに移るのは三名が今にも対峙しようとする所。
そして凪が見るはある機械の少女。
彼女に起ころうとする事にただ唖然とするだけだった。

(まさか彼女に……!?……はは……本当にイレギュラーだよ今回は……ねえ、姉さん)

凪はすくっと立ち上がるとモニタールームを出る。
凪の役目はここでも変わらないのだから。
何時もの様にするだけ。

「さてと、僕は儀式を最後まで見届ける。そして円滑に進める。彼女の覚醒。何時ものように手助けでもして見よっかな?」

そう言った凪は何時ものようにおちゃらけて笑っていた。

690 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:43:32 ID:t4v1O0m3


691 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:44:12 ID:biSLMfFI
 

692 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:44:30 ID:OeZFH4jw
ずっと笑っていた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





コツコツと歩く音が監獄に響く。
幾つかの牢がありむつみはある男の前にたつ。
その男はむつみの来訪に気付き、ニヤッと笑った。

「何かようかね? シスターむつみ」
「ええ、少し気になってね」

嗤う男は言峰綺札。
彼女の来訪をまるで予期してたかのように笑っていた。
むつみはそんな言峰の嫌な笑みを気にせず単刀直入に言う。

「貴方は何故特定の参加者に介入したの?」
「何、少しかき回したかっただけだよ」
「かき回したかった?」
「ああ、それが私のすべき事だからな」
「貴方のすべき事? 監督ではなくて?」
「それは君が知ることではないな」

くくっと言峰は嗤いむつみを睨む。
まるでむつみの真意を解ってるように。
そして彼はむつむに話しかける。

693 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:45:18 ID:biSLMfFI
 

694 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:45:23 ID:t4v1O0m3


695 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:46:12 ID:t4v1O0m3


696 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:46:20 ID:OeZFH4jw

「なあシスター、君は迷いがあるからここにきたのだろう?」
「……何が?」
「何、君はこのゲームを思わしく想ってないのだろう?」
「!?……どうして!?」

むつみは自分の心を見透かされてただ驚くばかり。
何せ思わしく想ってないからここを訪ねただから。
そんなむつみを見て楽しそうに言葉を継げる。

「君は娘も参加者としている。そして君は一番地を恨んでいるのだろう? 簡単な事だ」
「……っ」
「何、シスター。君の悩みは何もおかしくない。娘の恋しさの余り協力をする事はおかしくないのだよ。自分の欲望に素直になる事に間違いはない
 その結果、自分のエゴを突き通したその後に本当に正しい事かと迷うことにまちが……」
「黙って! 単刀直入に言って。あれこれ言われるのは趣味じゃないわ」

言峰の言葉に割ってはいるむつみ。
これ以上心の奥底を当てられるのは楽しくなかった。
それ故に彼が本当に言いたい事をせかす。
言峰は嗤いそして

「ふむ、なら言おうか。私の役目はまだ終わってない。そして君はゲームを好ましく想ってない。つまり――――」









697 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:47:09 ID:OeZFH4jw
「主催者達に反乱を起こさないか? ゲームをかきまわす為に……君と私で、だ」








彼が与えられた役目「ゲームをかき回し、毒として動く」と言う事。
役目はまだ終わっては居ない。

毒がきき始めるのはまだ……先の事。




698 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:47:11 ID:t4v1O0m3


699 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:47:15 ID:AHavs3Sm
 

700 :幕間〜吹き始める波乱の風〜 ◆UcWYhusQhw :2008/08/26(火) 02:49:14 ID:OeZFH4jw
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたら指摘をお願いします。
沢山の支援有難うございます


タイトルは
「幕間〜吹き始める波乱の風〜」です。


701 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:49:16 ID:t4v1O0m3


702 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:49:23 ID:AHavs3Sm
 

703 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:55:22 ID:AHavs3Sm
投下乙。
マーボーw お前さん、最初からそれが目的かw
そして首輪関連にまた主催者が。むつみ、鈴凛のときのような働きができるだろうか。
凪の思惑も絡めて、よい幕間だったと思います。改めて乙でした。

704 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 02:59:38 ID:DMT0uo95
投下乙です!
さすがマーボー、見事なトリックスターになりそうだ。なんとなくレクター博士思い出すw
むつみさん逃げてー!その人神父の皮を被った悪魔ですからー!
そして主な主催陣勢揃い……神崎?ダレソレ?

あと誤字らしき場所見つけました。
>>686
>むつみは神崎からの伝言を承ってるとでも入れ罵倒してもらえるだろうと想っていた。
>>692
>そして彼はむつむに話しかける。
以上です。
改めて、投下乙でした!

705 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/26(火) 19:17:12 ID:zY8lRBo/
投下乙です
マーボー……何という台風の目w
個人的に、コイツがどう場を引っかき回すかは凄く楽しみだなあ
そして九条さん、マーボーに協力は碌な事にならないようなw
母の愛は娘を救う事が出来るのか

706 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/02(火) 22:20:39 ID:NityTRU1
週刊ギャルゲロワ2nd第21号(9/02)
先週の主な出来事
              ,.rヘ
         _i ̄ 7´  ir ´^!
       r‐'´/  / / ヘヘ  ヽ、
       i  /   iVL__i  ヽヽ 〉
       l    / マぅ  r_レ゙
       ii  r‐v´      Y',          ,.,.,_r―‐‐- 、
       `} ト、j    - 一/      __,.---.イ_,. ――   \
      ノノ i ヽ,' .    ,i゙ミ     { r.,:.::_./ ゝ二 ―‐  ` `丶
      "イ iヽヽ.,< `'┬‐iリミ     ; ̄     ヽ.二__  `    \
      リ ハヽヽ==┐ ̄「V___              `' .,__    |
      ゙" 「´ ヾ゙   i;:;:;:;く   ̄ ̄ ̄',ヽ           i;ヽ.,__  iゝ、
      _,.ノ  ̄ ̄ `;  i |;:;:;:;ヽ,  ',   :  \         |ヽ; ; ; ; ̄ ト、
    /        ' , i:|;:;:;:;:;:;i , ' ,  :   Y        | `ー――‐1
  /      ;,     ヽ,'ヽ;:;:;:;:ヽ  `, :  _ _」__         | ;  ヽ    |
  i  `  ,    i  i    ヽ'ト、| ヽ',  ヽ!    ヽ._       | ',   ヽ.  !
  |     `' ,  i  !     i i;:;ヘ :;:ii   'i      \     | ;      |
  l        ヽ」/      ', ',-'T ;:i i  ',       `'‐-.,」  ,    ;! |
   !         '!       ヽ',:;:ヘ;:;i i  ヽ         ノ       ,.'
    i         |        i i;:;:;:;:;:i i   i‐- .,     ;     
   i        〈!        i i:;:;:;:;:;:i i   l丶,
    ヽ       ,' |丶、     ', i i;:;:;:;:;;:i i  kォ `
    イ      ;' i  丶    , i i;:;:;:;:,.ヾ 、



707 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/02(火) 22:22:58 ID:NityTRU1
・説明不要、このAAが全てを語る……

先週(8/24〜9/02)までの投下数:1作
死者:0名
現時点での人外になった者:羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(9/02)での予約:4件(◆UcW氏、◆gu氏、◆LxH氏、◆WAW氏)

708 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:45:40 ID:/V+7mN2N
 

709 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:46:17 ID:D19R2eWp
 

710 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:50:40 ID:f3DIx1N1
ボヤーとした靄の中に私はいた。
意識もおぼろげで何処か不思議な世界。
私はこれが夢なんだと想った。

靄に隠れた私の世界。

これが今の私を構成するモノなんだと想う。
記憶が無い私には振り返る過去が無い。

今の私は「ネム」。
仮初めであるこの名前。

この名前になってからの想いでと言えば一つ。
真人さん達のときだけ。

「ネム」として構成されるものはそれでしかない。

では本当の私はなんなのだろう?
「ネム」では無くもっと長い名前の私。
その私を構成していた思い出とはなんだったのだろうか?

パパとママの優しい思い出だろうか?
恋人との楽しい思い出だろうか?
今の私には分からない。

でもそれがきっと暖かなものだと信じている。

そう。

信じたいのだ。
私は。


711 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:51:04 ID:nvDOAR3H


712 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:51:50 ID:nvDOAR3H


713 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:51:58 ID:/V+7mN2N
 

714 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:52:21 ID:D19R2eWp
 

715 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:52:21 ID:f3DIx1N1
私は暖かく幸せなもの満ちていたと。
信じていたのだ。

本当のわた……


―――ふふっ。本当にそう思うのかい?


夢の中に女の人の声が響く。
本当に唐突に。
とても愉快そうに。

何が言いたいのかしら?


――幸せに満ちてるね……ふふっ、ちょっと見せてあげようか? 君の本当の『想い出』を、さ


え?


その言葉とともに世界が明ける。

そこはある一室。
そこには私と二人の男の人。


そこに居た私は何処か冷めた目で。

716 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:53:21 ID:/V+7mN2N
 

717 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:53:31 ID:nvDOAR3H


718 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:53:54 ID:f3DIx1N1
そしてその男を嘲笑するかのように告げた。


「ごめんなさい、私は貴方を利用してただけなの」



え?
私が?


え?
やっぱり……私は


そういう人間なの?


途端にまた言葉が聞こえなくなる。


これが……本当の私?

利用して。

やっぱり

そうなの?


――さあ? どうだろうね? でも君はこういってるよ?


719 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:54:17 ID:nvDOAR3H


720 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:54:41 ID:D19R2eWp
 

721 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:55:00 ID:f3DIx1N1


また言葉が続く


「さっき言ったじゃない。私は酷い人間だって」


酷い人間?
私が?

そうなの?

私は?

誰かを利用していった酷い人間なの?


解らない。
解らない。

私は?
私は?

何?


―――じゃあ君の本当の名前の『意味』を教えようか?


意味?


722 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:55:11 ID:/V+7mN2N
 

723 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:55:43 ID:D19R2eWp
 

724 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:55:51 ID:nvDOAR3H


725 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:55:58 ID:f3DIx1N1
それって何?


―――それはね、『嘘つき』『虚偽』さ。


え?

ああ。


私は

私は

そうなの?

私は


―――そう、本当の君は『嘘つき者』なのさ。


あ。

ああああああぁあぁあああああぁああああああああ。







726 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:56:36 ID:/V+7mN2N
 

727 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:56:47 ID:D19R2eWp
 

728 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:56:50 ID:f3DIx1N1
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「―――っああ!? ゆ、夢……」


そして悪夢から私は醒めた。
隣では変わらず奏さんが眠っている。
その様子を見ながら私の震えは止まらなかった。
汗もびっしょりとかいている。

所詮は夢。
そう夢でしかない。
なのに何故だろう。

あまりに現実的で。
あまりに体験した事のようで。

私は……

私は酷い人間で嘘つき者?

違う。
違うと言いたい。

でも私が一人のときやったことは何だろう。
参加者の首を切り首輪を取った。
そして利用してる事も自覚していた。
そう、裏付けるものがあったのだ。

729 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:57:00 ID:nvDOAR3H


730 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:57:32 ID:D19R2eWp
 

731 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:57:39 ID:f3DIx1N1

でも嫌だった。

震えている手を見つめ続ける。

どうしてなんだろう?
どうしてそう思うんだろう?

答えはきっと今ともに居る人達。
暖かくて。
優しくて。

私は彼女達と一緒ならいいとさえ想い始めてきた。

ねえ。

「私は……嘘……つき者?」

その疑問に答える者は居なくて。
私は手の振るえが止まらない、未だに。
目が完全にさえてしまった。

「私は……?」

私の居場所は?
もし嘘つきなら私はどうすればいいのだろう?
今はネムとしてやっていけるけど。
どうすればいいのだろう?

わからない、わからない。

不安が襲ってくる。

732 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:57:45 ID:nvDOAR3H


733 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:58:05 ID:/V+7mN2N
 

734 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:58:31 ID:nvDOAR3H


735 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:58:37 ID:f3DIx1N1
寝る前は安心感を味わっていたのに。

夢のせいで不安が止まらない。

「……私の居場所は何処だろう?……私の役割は何?」

ふと歌っていた曲の1フレーズを口にする。
私は居場所はここなんだろうかと先ほどまでそう想っていた。
でも夢を見て。
本当にここであるのかと怖くなってしまった。
私が嘘つき者かもしれないということに。

……え?

さっきから想っていた。
私が嘘つき者である事を嫌がっている。

なんで?

ああもしかして。
私は怖がっているのだ。
嘘つき者であるかもしれない私が奏さんたちに拒絶される事を。

とても。
とても。

簡単な事で驚きに溢れる事なんだろう。

私は。

奏さん達が必要?


736 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 03:59:17 ID:D19R2eWp
 

737 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 03:59:24 ID:f3DIx1N1
ふと。
そんな事を想った。

そして私は一旦ベットから起きる。
不安に襲われている頭を落ち着かせたくて。
私は椅子にかかっていたカーディガンを羽織り、部屋からでた。



……その時、慈しむような視線を向けられていた事に私はきづかなったのだけど。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






私はただ空を見上げていた。
星と月はきらきら耀いていて。
その星を私は廊下の出窓の所に腰掛けてボーと眺めているだけ。

考えても考えても。
ある言葉がリフレインする。

嘘つき者という言葉。


738 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:00:14 ID:f3DIx1N1

夢で言ってた本当の私の名前が意味するもの。
信じたくないけど妙に心に残る。

トーニャさんは言っていた。
私が嘘をついていると。
その時は皆私を庇ってくれた。

私は彼女達からどう思われてるのだろうか?
邪魔とか想ってないだろうか?


でも本当の私が嘘つき者だったら彼女達は信じてくれるのだろうか?
今のままでいてくれるのだろうか?


私はこの居場所を欲しているのだろうか?
失いたくないだろうか?

本当にこの場所は私の居場所なんだろうか?

疑問と不安がずっと沸いてくるだけ。
その答えは私には解らない。
解らなかった。


「あれ? ネムさん?」
「ネムじゃねえか。どうした?」

ふと声をかけられ振り返るとそこには一人の少女とパペット人形。
私の仲間であるやよいさんとプッチャンだった。
こんな所に座っている私に疑問を持ったらしい。

739 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:00:42 ID:nvDOAR3H


740 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:00:55 ID:D19R2eWp
 

741 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:00:55 ID:/V+7mN2N
 

742 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:01:27 ID:nvDOAR3H


743 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:01:31 ID:f3DIx1N1
「ちょっとね……眠れなくて。星を見ていたのよ。そっちは?」
「はい、同じく眠れなかったので真人さんのお手伝いをしてたんです。今は何か夜食にするのをプッチャンと探す所なんです」
「そう……」

朗らかに笑うやよいさんを見て羨ましく思う。
彼女はすぐに私たちの輪に入って皆を和ませてくれている。
それに比べて私は何かをやっていたのだろうか。
私の役割はなんなのだろうか?

「ネム、辛気臭い顔してるなーどうしたんだ?」
「……ねえ。私はみんなの役に立ってるのかな? 邪魔じゃないのかな? 仲間でいいのかな?」

ポツポツと疑問を話す。
私はただ何も分からない赤子のようで。
答えを唯、欲した。

「……えっと。上手く言えないんですけどそんな事じゃないと想います」
「……え?」
「ネムさんは私たちを仲間と想ってますよね?」
「え、ええ。勿論。大切な仲間よ」

私がそう答えると彼女はさらに笑いこういった。

「なら、それでいいんです。皆が皆、大切と想ってるんだったらそれでいいんです」
「……え?」
「私も奏さん、真人さん、プッチャン、ダンセイニさん、そしてネムさん皆が皆大切だと思ってます。だからたぶん、
 大切に想ってるんだったらそれでいいんです、きっとその時点で仲間ですから」
「難しく考えることなんか無いんだよ。要するに皆が大好きならその時点で仲間って事よ。だから邪魔とか役に立ってないとか考えるもんじゃないぜ」

私は皆を大切に想ってるんだろうか?
どうなのだろうか?


744 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:02:23 ID:f3DIx1N1
大切に決まっている。
ならそれでいいのかな?

……うん。

きっとそれでいいんだ。
私が皆をおもってれば。

その時点で私の暖かい仲間なんだ。
そうおもったらふっと少しだけ心が軽くなった。

「ありがとう……やよいさん、プッチャン」
「いいですよ、仲間ですから」
「おう、そうだぜ」

私はお礼をいい微笑んで立ち上がる。

「ちょっと真人さんの所にも言ってくるわね」
「はい、真人さんは相変わらずです」
「……そうね、彼は変わらないわね」

私はクスクスと笑い彼女達の元から離れる。

そして想う。

ああ、彼女達が仲間でよかったと。
少し心が晴れたような気がして彼のところに向かった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


745 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:02:31 ID:/V+7mN2N
 

746 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:02:37 ID:D19R2eWp
 

747 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:02:43 ID:nvDOAR3H


748 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:03:10 ID:f3DIx1N1



「おう、ネムじゃねえか。筋肉でも見たくなったか? このたくましい筋肉を!」
「……暑苦しいわ」
「ノオオオオオオ!!」

彼は相変わらずだった。
でもその相変わらずが私にとってとてもやすらぎになる。
とても不思議な気分だった。

私は彼の隣に座る。
見上げると窓からみた以上に星空が広がっている。
星空のカーテンが私を包み込むような。

私はあえて何もしゃべらなった。
彼も意図を踏んでくれたのか黙って空を見上げている。

とても緩やかで優しい時間が流れていた。
ふと隣の彼によっかかるようにする。

彼は真っ先に私を信じてくれた。
トーニャさんと別れることも厭わずに。
唯私を。

信じると。

私はその優しさに甘えていた。

でも今もそうなのだろうか?
もし私が嘘つき者でも信じてくれるのだろうか?


749 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:03:28 ID:nvDOAR3H


750 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:04:01 ID:D19R2eWp
 

751 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:04:06 ID:f3DIx1N1
聞きたいと想った。
信じてくれた彼に。

でも中々言い出せず。
唯星を見ていただけ。



どれくらいの時間が経ったのだろうか。
解らないけど私は決心して口を開く。

「ねえ……真人さん」

声が震えた。

「怖い夢を見たの。私は本当は嘘つき者だと言うの……でもそれを私は何故だか否定できない……それが怖くて」

正直に話す。
怖かったけど。
でも語りだしたら止まらなくて。
唯喋っていた。

「ねえ、私が本当に嘘つき者でも真人さんはしんじ……」
「信じるぜ、俺は」

即答だった。
私を真っ直ぐ見て。
そう言い切った。

「心配すんな。俺はどんな事でもどんな時でも信じる。絶対に信じる……だから安心しろ、な?」
「真人さん……」


752 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:04:14 ID:nvDOAR3H


753 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:04:46 ID:D19R2eWp
 

754 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:05:10 ID:f3DIx1N1
ニカッと満面の笑みで言う。
私はそれに心が救われるような気がして。
彼はそっと手を差し出し私の髪に触り撫でる。
クシャクシャと髪がぐちゃぐちゃになるけど。
それでも私は嬉しかった。

「ありがとう……」
「何、いいって事よ」

そしてまた私は黙った。

もう言葉はいらなかった。

心が落ち着いていくのを感じ不安もすくなっていくのも感じた。

そっと肩をよせただ星を見る。

その不思議な時間が何処か嬉しくて。

暫くの間、一緒に。

星を。

星を唯見続けていた。


信じてくれて

ありがとうと。

感謝の気持ちを胸に抱き続けて。


755 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:05:38 ID:/V+7mN2N
 

756 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:05:43 ID:nvDOAR3H


757 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:06:00 ID:f3DIx1N1




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「ふう、遅くなっちゃったわね」

暫くの間、真人さんと星を見てそして今は寝室に戻ってきた所だ。
これで寝れるかと思うくらい心が安らかだった。
そして扉を開けるとそこには

「お帰りなさい、ネムさん」
「奏さん……起きてたの?」
「ええ、貴方が起きた時にね」

そっと微笑を称える奏さん。
私がおきてからずっと待っていてくれたらしい。
その事に少し嬉しくなる。
奏さんがベットの腰を下ろしてるところに私も座る。
そして奏さんはそのまま髪を梳き始めてくれた。

「もう、大丈夫?」
「ええ……大丈夫よ」

何があったかは聞いてこなかった。
でも全てを解ってるかのように私の髪を梳いてくれる。


758 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:06:28 ID:nvDOAR3H


759 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:07:05 ID:f3DIx1N1
感じられるのは優しさ。
全てを包んでくれるような暖かさ。

だから私は何も言わず梳いてくれるのを受け入れてるだけ。


ああ、暖かい。

私は思う。


ここにいたい。
私はこんな暖かい人達に囲まれていたい。

私はこの居場所がほしい。


私の居場所はここだ。

今ならそういえる。


失いたくない。


そっと奏さんに言う。

「奏さん……私はここに居ていい? 居場所はここでいい?」
「ええ、貴方が望むなら、ここが貴方の最高の居場所よ」



760 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:07:06 ID:/V+7mN2N
 

761 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:07:10 ID:D19R2eWp
 

762 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:07:48 ID:nvDOAR3H


763 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:07:54 ID:f3DIx1N1
そっと後ろから抱きしめてくれる。


ああ。


嬉しいな。
私の居場所は。


ここだ。


本当に心のそこから思う。

記憶が無いから本当の場所じゃないかもしれない。

幻、蜃気楼のように儚いかもしれない。


でも想う。


ここが私の居場所。

失いたくない。


唯抱きしめられながら。
彼女の慈しみを感じながら。
ママのような暖かさを感じながら。


764 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:08:34 ID:nvDOAR3H


765 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:08:45 ID:D19R2eWp
 

766 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:09:05 ID:f3DIx1N1

彼女が歌い始めた子守唄を聞きながら。


私は心が満たされていくのを感じながら。



そっと眠りに落ちた。

悪夢じゃなくて幸せな夢を見ることを確信して。


【B-1 教会裏手の宿舎/1日目 真夜中(放送直前)】



【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:パジャマ
【所持品】:なし
【状態】:健康、爪にひび割れ
【思考・行動】
 基本方針:極上生徒会会長として、ゲームに対抗する。
 1:『入店証』の正体を探り、懺悔室を調査する。
 2:蘭堂りのを探す。
 3:古書店の店主が鍵を握ると信じ、調査を進める。
 4:藤乃静留を探し、神埼黎人の素性を調べる。
 5:首輪に関してはドクター・ウェスト、トーニャを頼りにする。
 6:いずれ大十字九郎と合流を果たし、恩を返す。
 7:いつかまた、トーニャと再会する。
 8:『参謀役』が欲しい。
【備考】

767 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:09:24 ID:/V+7mN2N
 

768 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:09:30 ID:D19R2eWp
 

769 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:09:32 ID:nvDOAR3H


770 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:09:53 ID:f3DIx1N1
※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
 ※浅間サクヤ・大十字九郎、トーニャ・真人、やよい・プッチャンと情報を交換しました。
 ※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
 ※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰か(古書店の店主?)がいるのではと考えています。
 ※禁止エリアには何か隠されているかもと考えてます。



【ファルシータ・フォーセット@シンフォニック=レイン】
【装備】:パジャマ
【所持品】:支給品一式、リュックサック、救急箱、その他色々な日用品、デッキブラシ
      ピオーヴァ音楽学院の制服(スカートが裂けている)@シンフォニック=レイン、
      ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、イリヤの服とコート@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:熟睡中、重度の記憶喪失(僅かだが記憶が戻り始めている)、強い安心感、
     頭に包帯、
【思考・行動】
 基本:記憶を取り戻し、故郷に帰る。優勝しても生が拾えないなら――とことん信用してみよう。
 0:ここが―――私の居場所。
 1:奏たちと行動。拠り所とする。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室を調査する。
 3:男性との接触は避けたいが、必要とあれば我慢する。
 4:パパやママ、恋人を探し出す。
【備考】
※ファルの登場時期は、ファルエンド後からです。
※仮初の名前はネムです。
※頭を強く打った衝撃で目が覚める前の記憶を失ってますが、徐々に思い出しつつあります。
※記憶を失う前は男性に乱暴されてたと思ってます。
※奏たちと一緒にいたいことを自覚しました。大切な居場所だと思ってます。




771 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:11:00 ID:f3DIx1N1
【高槻やよい@THEIDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)、シスターの制服
【所持品】:支給品一式(食料なし)、弾丸全種セット(100発入り、37mmスタンダード弾のみ95発)、
      かんじドリル、ナコト写本@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ10/64、
      エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(4/5)@現実
【状態】:元気
【思考・行動】
 1:夜食を探す。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 3:真を捜して合流する。
 4:古書店の店主をどうにかして味方に引きずり込む。
 5:暇ができたら漢字ドリルをやる。
【備考】
 ※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
 ※死者蘇生と平行世界について知りました。
 ※教会の地下を発見。とある古書店に訪れました。
 ※古書店の店主は黒幕、だけどそんなに悪い人じゃないと睨んでいます。


【プッチャン@極上生徒会】
【装備】:ルールブレイカー@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:元気
【思考・行動】
 1:やよいと一緒に行動。
 2:りのを捜して合流する。
 3:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 4:古書店の店主をどうにかして味方に引きずり込む。


【B-1 教会裏手の宿舎の屋根の上/1日目 真夜中(放送直前)】



772 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:11:02 ID:nvDOAR3H


773 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:11:28 ID:D19R2eWp
 

774 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:11:47 ID:nvDOAR3H


775 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:12:19 ID:f3DIx1N1
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備】:僧衣、木魚、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、レトルト食品×5、予備の水
      SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと−幻妖異聞録−、大山祈の愛読書@つよきす -Mighty Heart-、
      首輪探知レーダー(残り約X時間)、単三電池袋詰め(数十本)、
      餡かけ炒飯(レトルトパック)×3、制服(破れかけ) 、銅像、弥勒@舞-HiME 運命の系統樹
【状態】:胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲、胸に締め上げた痕
【思考・行動】
 基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出。『信じる』。
 1:朝まで見張り番。放送により逐一対応。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 3:恭介、来ヶ谷を捜して合流する。
 4:主催への反抗のために仲間を集める。
 5:クリス、ドライを警戒。
 6:柚原このみが救いを求めたなら、必ず助ける。
 7:今は無理でも、いつかトーニャと分かり合いたい。
 8:なんかやけに記憶力がいい気がするが気のせいか?
【備考】
 ※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
 ※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
 ※杏・ドクターウェスト、奏、やよい・プッチャンと情報交換をしました。
 ※大十字九郎は好敵手になりえる筋肉の持ち主だと勝手に思い込んでいます。
 ※『前回』の記憶については、微々たる部分しか覚えていません。
 ・儚げでどこか明るかった少女(詳細不明、本人の記憶も曖昧)を、疑心暗鬼で死なせてしまった。
  直後、自分も何者かに殺されてしまった。そのときの現場は教会。
 ・前回の主催者は、言峰や神崎ではなかった。
 ※見張り番をするため、レーダーを始めとした奏の荷物一式を預かっています。



【ダンセイニの説明】

776 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:12:59 ID:D19R2eWp
 

777 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:13:06 ID:f3DIx1N1
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
杏の死とトーニャの離散で、ショックを受けているようです。
プッチャンのことが気に入ったようです





―――「ネム」は本当の居場所を見つけた。だけど「ファルシータ・フォーセット」の居場所はここなのだろうか?
   そして「ファルシータ・フォーセット」はこの居場所を受け入れるのだろうか?―――


778 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:13:51 ID:nvDOAR3H


779 :mirage lullaby ◆UcWYhusQhw :2008/09/03(水) 04:14:19 ID:f3DIx1N1
投下終了しました。
誤字脱字矛盾ありましたら指摘をお願いします。
沢山の支援有難うございます


タイトルは
「mirage lullaby」です。
元ネタはシャッフルのOPから。


780 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:15:00 ID:D19R2eWp
投下乙です
ファル様が物凄く綺麗だ……w
しかし一方で、ニャル様の介入によって過去を少し思い出しつつある?
爆弾が爆発してしまうのか、仲間を信頼し続けたままいられるのか
今後の行く末が気になる所

781 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 04:41:35 ID:/V+7mN2N
投下乙!いい繋ぎですね。
ファルに焦点が当たっていますが、しかしこのファルは誰だ……綺麗過ぎるw
次の爆発が待ち遠しい一話だと思いました。
記憶を失ってからの方がファルは長いからなー。

782 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 21:20:58 ID:sCzrm1xC
投下乙です!
夢にうなされ目が覚めて、仲間たちと順々に対話していく綺麗な構図
これはもう、綺麗なファル様というよりファルたんと呼びたいくらいだぜw
記憶のせいで情緒不安定気味なファルと相反して、修羅場潜ってきたやよいや真人が妙に大人びて見えるw

あ、あとリーダーダンセイニという割には今回ダンセイニなにもしてな(ry

783 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 21:53:57 ID:z/90naz4
投下乙です

コトミー暗躍
マーボーは予想よりも早く動いてくれました
なんか、九条さんが大変なことになりそうなんですが、どうなる
炎凪は定めとはいえ色々付き合わされて切ないね。ノリノリだがw

週刊ギャルゲ
……うん、そのAAにつきますなw

綺麗なふぁるさま
ニャル様は相変わらず嫌がらせがお好きなようで
結局、これまで培った悪事よりも筋肉浄化が勝ったようだがどうなる?
どうなるか分からないけど、南部にヤバイメンバーいるしなあ



784 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:41:13 ID:sCzrm1xC
 体を激痛と脱力感が泥海のように、襲い、蝕み、覆っていく。
 覚めてゆく世界への旅路は険しく、しかし引き返しもせず、突き進んでいく。

「のっひゃあぁ!?」

 静謐な空気が浸透する夜の病院で、ドクター・ウェストは目を覚ました。
 仰天の声と共に開いた視界には、粗末ながらも清楚な、白の天板が埋まっていた。
 辺りを見渡せば、そこはかつての、医学の徒であった頃のウェストが慣れ親しんだ、病院の一室。
 どうやら自身はベッドに寝かされていたらしく、額には微かな重さとぬるい湿り気があった。
 濡らした手ぬぐいが何者かによる看病の証であると推定すると、ウェストはゆっくりと上半身を起こす。

「我輩は、いったい」

 吐息に連れて、頭が動き始める。
 同時に、脇腹の辺りに強烈な痛みが走った。

「つ……!」

 苦い顔を浮かべ、ウェストは思い出す。
 脇腹に負った傷、拙い治療の跡、途切れる前の記憶が、次々に瞬き散った。

 科学の徒として生み出した、スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』。
 急なエンストをきっかけとしての、九鬼耀鋼、一乃谷刀子らとの出会い、そして情報交換。
 間際、何者かによる狙撃を受け、負傷する身、癒そうとする刀子の献身、跳ね除ける自己。
 こんなところでは死ねないという思いを抱いての、高笑い、哄笑、笑いと共に消えた意識。

785 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:42:19 ID:sCzrm1xC
 そして気がつけば、ドクター・ウェストの身は病院の中にあった。
 おそらくは九鬼耀鋼か一乃谷刀子が、あるいは両者が、ウェストを治療するために運び込んだのだろう。
 ならばその、命の恩人足りえる二人は……と視線を巡らせたところで、気づく。

 負傷したこの身が、患部を含む上半身のみならず、腰から足先に至るまで、すっぽんぽんである事実に。
 加えて、隣で寄り添うように横たわる、同じくすっぽんぽんの、九鬼耀鋼の存在がある驚愕の事実に。

「……ホワイ?」

 アーカムシティではその変態的な行動の数々から、仰天人間と囃されてきたウェストも、さすがに驚くほかなかった。
 驚きの深さを思い知らせるほど、彼は口数を減らし、嫌な脂汗を垂れ流し、口をひん曲がらせながら、裸の九鬼を見やった。

「ん……あ……ああ、起きたか」

 ウェストの熱い眼差しを受けて、九鬼が目を覚ます。
 本人いたって冷静な態度で、動揺中のウェストと顔を合わせた。

「あー……とりあえず経緯は省くのである。九鬼よ、なぜに貴様が、全裸で、我輩の、隣に、寝ているのであるか!?」

 声を張り上げるが、常の体を張ったオーバーリアクションは、怪我のためか満足に取れなかった。
 ウェストの詰問に対し、九鬼は小さく唸って対応。顔つきは真面目さを崩さず、また凛々しい。
 少年を過ぎ、青年を経て、渋みの効いた大人の男を主張するその相貌は、ウェストから見てもときめきものだった。
 さらに視線を下に促せば、羨むほどの屈強な肉付き、そして光る股間。ウェストは、鼓動が高鳴るのを自覚した。

「そんなことか。おまえの体が冷え切っていたのでな。人肌で暖めてやったまでだ」
「え……? そ、そうだったのであるか。そ、そ、それならば不自然ではない。むしろ超自然であるな」

786 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:43:52 ID:sCzrm1xC
 九鬼の切り返し方は実に巧みで、言及の隙がない。二人の男が裸で寄り添っていたのは、そういう道理なのだと認識する。
 反論を受けたウェストはそれ以降押し黙り、九鬼もまた言葉をなくし、互いの視線だけが固定された。
 数秒間、いや数分間、もしくは数時間程度見つめ合っていたかもしれない。
 ウェストはやがて九鬼の男らしい肉体から目が離せなくなり、心と共に釘付けとなった。

「ふむ。どうやら、まだ本調子ではないようだな。どれ、もう少し暖めてやろう……」

 キョトンとする意識を置き去りにして、九鬼はウェストの体を、抱く。
 強く、熱く、男性的に、激情的に、汗が迸るほど、想念を燃やして。
 ウェストは、体中の色が肌色から蛸のような赤に変色していることに気づけぬまま、九鬼に身を委ねた。

「まだ、足りないか?」
「足りない、のである」

 短いやり取りが、スイッチとなる。抱擁は、さらに激しさを増した。
 これは、夢なのだろうか。きっと、そうに違いない。だが、些事だ。
 常世の幻想に浸ろうとも、今、この感触だけは確かだと、ウェストは思う。

「そうだ、いいこと思いついた。おまえ、俺の【禁則事項】の中で【禁則事項】しろ」

 九鬼からの、思いもよらぬ誘い。ウェストは頬を赤らめ、どぎまぎした反応を示し、しかし拒否はしない。
 弱みを見せてしまった、補正か。なされるがまま、九鬼に身も心も蹂躙されてしまうのがわかる。

 いや、もしかしたら……これは、願望だったのかもしれない。
 殺し合いなど、なにもかも捨て去って……一人の魅力ある男に抱かれたいと、本気で……。


 ◇ ◇ ◇



787 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:45:55 ID:sCzrm1xC
 体を激痛と脱力感が泥海のように、襲い、蝕み、覆っていく。
 覚めてゆく世界への旅路は険しく、しかし引き返しもせず、突き進んでいく。

「のっひゃあぁ!?」

 静謐な空気が浸透する夜の病院で、ドクター・ウェストは目を覚ました。
 仰天の声と共に開いた視界には、粗末ながらも清楚な、白の天板が埋まっていた。
 辺りを見渡せば、そこはかつての、医学の徒であった頃のウェストが慣れ親しんだ、病院の一室。
 どうやら自身はベッドに寝かされていたらしく、額には微かな重さとぬるい湿り気があった。
 濡らした手ぬぐいが何者かによる看病の証であると推定すると、ウェストはゆっくりと上半身を起こす。

「我輩は、いったい」

 吐息に連れて、頭が動き始める。
 同時に、脇腹の辺りに強烈な痛みが走った。

「つ……!」

 苦い顔を浮かべ、ウェストは思い出す。
 脇腹に負った傷、拙い治療の跡、途切れる前の記憶が、次々に瞬き散った。

 科学の徒として生み出した、スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』。
 急なエンストをきっかけとしての、九鬼耀鋼、一乃谷刀子らとの出会い、そして情報交換。
 間際、何者かによる狙撃を受け、負傷する身、癒そうとする刀子の献身、跳ね除ける自己。
 こんなところでは死ねないという思いを抱いての、高笑い、哄笑、笑いと共に消えた意識。

788 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 22:46:17 ID:8yX+EdVf


789 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:47:28 ID:sCzrm1xC
 そして気がつけば、ドクター・ウェストの身は病院の中にあった。
 おそらくは九鬼耀鋼か一乃谷刀子が、あるいは両者が、ウェストを治療するために運び込んだのだろう。
 ならばその、命の恩人足りえる二人は……と視線を巡らせたところで、気づく。

「なんだか、とんでもない悪夢を見ていたような気がするのである……」

 詳細は思い出せないが、死の渕を歩む間際の世界は、酷く男臭かったような気がしてならない。
 額を満たすべとついた汗が、背筋に悪寒を走らせた。全身の毛が逆立つ。

「ええい目覚めて早々、この大天才たるドクター・ウェストが夢に怯えるなど……恐るべきはナイトメア!
 ああ、なんかごっつい寒い。柔肌ををぶるりぶるりとなぞる寒気が身に染みて我輩ゾクゾクしちゃうっ。
 けどそれがまたカ・イ・カ・ン……なぁ〜どと言うと思ったら大間違いなのである!
 今ほんのちょっとでも我輩にそっちの気があるとか思った愚民共、我輩の靴を舐めさせてやるからそこに跪けい!!」

 目覚めて早々、キチ○イ博士と呼ばしめたる所以を、喧騒によって証明するウェスト。が、

「って、いぃぃぃいつぁたたたたたぁぁ〜っ!? 我輩、怪我人だというのにはしゃぎすぎたのである!
 あ、今バカだなぁとか思った奴は挙手! これは猿も木から落ちる、天才も時には茶目っ気を見せるという諺で……おや?」

 負った怪我にそぐわぬほど元気に騒ぎ、しかしそれに対する反応が皆無であることに、ウェストは今さらの違和感を覚えた。
 脳裏をよぎった悪夢のせいで一時的に棚に上げてしまったが、再度室内を見渡してみれば、そこにウェスト以外の人影はない。
 いぶし銀を思わせる白髪に眼帯を備えた男、九鬼耀鋼。
 ミニスカウェディングドレスに帯刀という変態女、一乃谷刀子。
 意識が途絶える寸前まで一緒にいた、ウェストをここに搬送したと思しき二名の姿は、どこに消えたのだろうか。

790 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 22:48:39 ID:akjcm+oy
 

791 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:49:04 ID:sCzrm1xC
 ウェストはベッドから起き上がり、室内の検分を始める。ちなみに上半身は裸だったが、下穿きはちゃんとそのままだった。
 病室は個室であるらしく、ベッドは一人分。窓にはカーテンがかけられ、窓を覗くと夜天が広がっていた。
 壁にかけられた時計が指し示す時刻は、9:02PM。放送を跨ぎ、熟睡してしまっていたようだった。
 僅かな悔恨を覚えつつさらに調べていくと、ベッド脇の小さな机に、一枚の紙とイヤホンが残されているのを発見した。
 ウェストは紙のほうを手に取り、紙面を眺めていく。文面はこうだ。

『お嬢さんを迎えに行く。おまえはここで養生していろ――九鬼耀鋼。以下、第三回放送の大まかな内容を記す』

 ウェスト搬送後の九鬼の動向と、聞き逃した第三回放送の詳細。以上二点が、ウェストに残されたメッセージだった。
 まずウェストは、『お嬢さんを迎えに行く』という点に違和感を覚える。
 記憶が正しければ、九鬼は刀子のことをお嬢さんと呼んでいた。つまり、九鬼は刀子を迎えに行ったのだろう。
 となれば、推理としてはこうだ。九鬼はあの襲撃の折、刀子と一時的に分断され、しかしすぐには合流を果たさず、ウェストを病院に搬送した。
 搬送後、簡単な治療を施し、ウェストに置き手紙を残して、刀子を迎えに行ったというわけだ。

「我ながら少年探偵団もビックリの名推理なのであ〜る。して、今回の死亡者は……」

 続く第三回放送の内容を知らせる文面を、目で追っていく。
 新たな禁止エリアは北西と南。いずれもウェストのいる病院には引っかかっていない。
 興味深いのは、放送を担当した者が言峰綺礼でも神崎黎人でもなく、炎凪なる新たな人物であったという点。
 実際に放送を耳にしなかったウェストにはどんな人物か思いもよらぬが、少なくとも炎凪という名に心当たりはない。
 そして肝心の死亡者はというと、

「一乃谷愁厳……一乃谷刀子と体を同じくしていたという、兄であるか」

 二人で一人という、参加者の中でも稀な存在であった一乃谷兄妹。その片割れの名が、記名されていた。
 森で九鬼らと情報をやり取りする際、ウェストは牛鬼の人妖である一乃谷兄妹の、特殊な体質についても教えられていた。

792 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:51:09 ID:sCzrm1xC
「一心同体。兄を失った妹ははたしてどうなってしまったのか。人妖……というのもまた、興味深いテーマであるな」

 この地で出会ったもう一人の人妖を思い浮かべ、ウェストはその名が紙面にないことを確認する。
 他にも、加藤虎太郎や直枝理樹と……人づてによるものだが、知った名前がちらほら浮かんでいた。
 互いに筋肉を認め合った雄、井ノ原真人。天才を見縊った凡才、椰子なごみ。かつての自分と重ねた、千羽烏月。
 生き残った知人もまだ多くいるが、今回の周期で生存者も全体の約半数。
 既に、のんきに怪我人でいられる段階ではなくなっていたのだ。

「こんなところでナースの手厚い看護を待っているわけにはいかん。ここは世紀の大天才として奮起せねば――」
「では、さっそく仕事をしてもらいましょうか」

 不意に齎される、声。
 ウェストは瞬時に振り返り、眼差しを病室のドアへと向ける。
 そこには声の主が悠然と屹立し、艶やかな銀のポニーテールを靡かせていた。

「探しましたよ、ドクター・ウェスト」

 見知った顔、聞き知った声、記憶どおりの態度に、ウェストは驚愕の声を上げた。

「き、貴様は――筋肉の妖精、マッスル☆トーニャ!?」


 ◇ ◇ ◇



793 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 22:52:01 ID:akjcm+oy
 

794 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:54:11 ID:sCzrm1xC
「……姿なし、か」

 夜も更け、夜天に星が瞬く頃合になって、九鬼耀鋼は襲撃の地へと帰っていた。
 襲撃者との一悶着の後、九鬼は負傷したドクター・ウェストを病院へと搬送しようとした。
 その際足として用いたウェスト改造の軽トラックだが、病院までの道のりはあいにくと山道であったこともあり、乗り捨てている。
 人ひとり分くらいなら担いで走ったほうが速い、と即断した九鬼は放送が始まる頃合になって病院に到着し、放送を聞きながらウェストに軽い治療を施した。
 休む間もなく疾駆しここに舞い戻ってきたのは、告げられた死亡者の中に一乃谷愁厳の名があったからだった。

(あのまま討たれたとは思いがたいが……死んだのがお嬢さんではなく兄というのも妙だ。
 俺が去った後、もう一悶着あったと考えるべきか。利を追求したとはいえ、失策だったかもしれん)

 あのとき、九鬼は刀子への信頼を判断材料とし、ウェストの救命を優先してしまった。
 ウェストが首輪解除のキーパーソンとなり得る、そういった利を考慮し、両者の命を天秤にかけてしまったことも認める。
 自責の念は僅かながらにあるが、しかし九鬼の本来の人柄、そして目的を考えれば、今は悔やむときではない。

(どこぞの正義馬鹿のように、誰かの味方を気取るつもりはないが、いい気分がしないのは事実だ)

 この地における九鬼の存在理由は、ゲームの背後に潜む外敵を完膚なきまで殲滅することにある。
 霊体の受肉、死者の復活、駒を揃え盤上を整えての茶番など、これ以降一切起こさせはしない。
 目的を成すには、弱者の保護ばかりに気を取られてはおれず、守る立場にあってはいつまでも攻勢に出ることはできない。
 なればこそ、仲間の守護などという善意は莫迦弟子たる如月双七に任せ、己は利の追求を徹底する。

(俺とウェストが病院に向かったであろうことは、お嬢さんも知っているはずだ。なら、ここは無理に探す必要もない。
 俺は、そうだな……ウェストに土産でも用意してやるとするか。この首も、そろそろ解放感を得たいしな)

795 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 22:55:57 ID:akjcm+oy
 

796 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:56:20 ID:sCzrm1xC
 ウェストという人材を無駄にしないためにも、早急に首輪のサンプルを調達し、彼に調べさせたい。
 そのためには、誰かの首が必要となるわけだが……この作業は双七や刀子では担えないだろう。
 殺す覚悟が不完全な若輩二人では、首を削ぎ落とすだけでも傷となる。こういうのは大人の仕事だ。

 加えて、九鬼流が持ちたる武の力。これは、守護に徹すべき力ではない。
 敵を打ち、障害を砕き、破壊する。九鬼耀鋼としての真骨頂を発揮するためにも、中途半端ではいられないだろう。
 となれば、取るべき選択は決まった。寄って来る羽虫の如き敵を、この拳で叩き落し、殺し、得る。
 単純にして、多くの者にとって難しい行為を遂行できる者は、九鬼をおいて他にいない。

(……が、やはりこのまま放っておくのも目覚めが悪いな。あとで双七になんと言われるかわかったものではない。
 もう少し捜索を続けてみるとして、さて……早々に寄って来た羽虫を、如何にして潰すかだな)

 ダイナマイトの爆心地から移動し、散策の足を山内まで伸ばしたところで、九鬼はその気配に気づいた。
 山の、それも夜の静寂の中にあって、異様なほど鋭く突き刺さる、一つの殺気が確認できる。
 現在は背後。九鬼が動けば向こうも動き、殺気を向けたまま機会を窺っているようだ。
 この時点で、敵であることは明白。闇討ちを狙っているようだが、気配が隠蔽できていないところを考えるに、素人か。

(どれ、少し揺さぶってみるか)

 九鬼は軽く笑い、ふと足を止めた。


 ◇ ◇ ◇



797 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 22:57:53 ID:sCzrm1xC
(……試練やなぁ)

 懸命に呼気を落ち着かせながら、藤乃静留は樹木に背を凭れた。
 すぐ近くにいる標的の動きを追いながら、出会ってしまった機会に不安を覚えながら、思う。
 なつきのために修羅になったとして、はたして羅刹を下すことはできるのだろうか――と。

 刀子を騙まし討ちした後、下山を目指して進めた歩は、黒いコートを羽織る見知らぬ男性に行き当たった。
 身を潜めて動向を窺えば、なにを成すでもなくただ森の中をうろうろとほっつき歩いている。
 なにかを探しているのだろうか、と思いつつも、静留は接触には踏み出せずにいた。

 大柄な体躯、右目を覆う眼帯、姿勢の良さ、どれを取ってもただの中年とは思えない。
 人殺しの意志ある者かどうかも不明瞭だが、それなりの心得があることは確かだろう、と静留は懸念した。

(向こうは気づいとらへん。ここは一気にやってしまいたいところやけど……難しおすなぁ)

 なつきを生かすためにも、なるべくスコアを稼ぎたい。減らす機会は、しっかりものにしたいという願望が静留にはあった。
 もちろん、襲撃にはリスクがつきまとう。
 直面した機会は絶好だが、疲労した自身がついてくるか、相手の実力は如何ほどか、悩みは尽きない

(大人しく引き下がって、休むのも手やろうけど)

 危険度と機会の希少さを天秤にかけ、静留は影の中で懊悩する。
 刹那、

「――素人か」

798 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:00:28 ID:sCzrm1xC
 静留のものではない、本人初めて耳にする、標的たる男の声が轟いた。
 その、明らかに独り言とは受け取れない強い語気を、静留は生唾と共に飲み込む。

「すぐ襲撃に踏み込まないのは、ある意味懸命だ。だが、臆病とも言える。撤退の決断を渋るのも、機会を惜しんでだろう」

 男は、誰もいない虚空へと声を向けている。対面する者はいなく、しかし発せられる言霊は、紛れもなく静留宛てだ。

「助言としては、『焦りが殺気に出ている』だ。闇討ちを狙うなら、感情を押し殺し空気と一体化しろ。
 先刻の暗殺者はまだ気配の断ち方が上手かったが……おまえは、もう手遅れだ。
 こちらとしても、首輪が欲しいところでな。実力行使でもぎ取ってもいいんだが……」

 男の声は鋭く尖り、静留に恐怖を植えつける。畏怖すべき貫禄は、やはり只人のものではなかった。
 大変な男に目をつけてしまったのかもしれない、と静留は後悔を覚えながら、返答なく男の声を静聴する。

「あいにく、探し物があってな。そっちを優先しなければならない。まあ、もう少し探して駄目なようなら……首輪の調達に戻って来るか」

 そこで言葉を切り、九鬼は再び動き出した。
 静留は追わず、否、追えず、その場に腰を下ろす。
 全身の骨が砕けたように、へなへなと、情けないことを自覚しながら。

「罠を張る時間をくれてやる、とでも言いたげどすなぁ。えずくろしい。さぶいぼできるわ」

 九鬼は、静留の存在を察知しながらも、まるで歯牙にかけなかった。
 それどころか遊んでいるような態度すら見せ、堂々と山を登っていった。

「いきったらあかへんで、うち。けど……ほんま、試練やわ」

 自身、なつきへの恋心に言い聞かせながら、再度天秤をかける。
 チャンスと、リスク。どちらを取るか――。

799 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:02:57 ID:sCzrm1xC
【E-4 山麓の辺り/一日目 夜中】

【藤乃静留@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:殉逢、コルト・ローマン(0/6)
【所持品】:支給品一式×3、虎竹刀@Fate/staynight[RealtaNua]、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD、 首輪(刀子)、
      玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME運命の系統樹、 ビームライフル(残量0%)@リトルバスターズ!、
      シアン化カリウム入りカプセル、古青江@現実、ラジコンカー@リトルバスターズ!、不明支給品×1(渚砂)、
      愁厳の服、シーツ、包丁2本
【状態】:疲労(大)、左の太股から出血(布で押さえています、出血はほぼ停止)、後頭部に打撲
     左手首に銃創(応急処置済み、傷口が開いている)、全身に打ち身、左脇腹の骨に罅
【思考・行動】
 基本:逸早く、なつき以外の参加者達を殲滅する。
 0:標的は九鬼耀鋼。チャンスとリスク、優先するべきは――。
 1:どんな手段を用いてでも、なつき以外の参加者達を皆殺しにする。
 2:太股の傷を治療する為の道具を探す。
 3:なつきに関する情報を集める。
 4:衛宮士郎を警戒。
【備考】
 ※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします。
 ※士郎より聖杯についての情報を得ました。
 ※媛星が会場内から見える事には未だ気付いていません。

800 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:03:02 ID:8yX+EdVf


801 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:03:58 ID:sCzrm1xC
【九鬼耀鋼@あやかしびと−幻妖異聞録−】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、日本酒数本
【状態】:健康、疲労(大)
【思考・行動】
基本方針:このゲームを二度と開催させない。
1:山を基点に刀子を捜索。
2:適度なところで捜索を打ち切り、山を下りる。静留が留まっているようならば、殺して首輪を得る。
3:上記終了後、病院に戻る。できればそれまでに首輪を入手したい。
4:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
5:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
6:如月双七に自身の事を聞く。
7:主催者の意図に乗る者を、場合によっては殺す。
8:いつか廃屋に行ってみるか。
【備考】
※すずルート終了後から参戦です。双七も同様だと思っていますが、仮説に基づき、数十年後または、自分同様死後からという可能性も考えています。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
※黒須太一、支倉耀子の話を聞きました。が、それほど気にしてはいません。
※アルとの情報交換により、『贄の血』、『魔術師』、『魔術』、『魔導書』の存在を知りました。情報交換の時間は僅かだった為、詳細までは聞いていません。
※首輪には『工学専門』と『魔術専門』の両方の知識が必要ではないか、と考えています。


 ◇ ◇ ◇



802 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:05:19 ID:sCzrm1xC
「――私がツッコミを入れると、そう思いましたか? 思ったでしょう? でも残念、スルーです。
 それはそうとドクター・ウェスト、あなたに仕事を持ってきてやったんだから、ちゃっちゃと取りかかりやがりなさい」

 冷厳な声でさらっと厳しいことを言う、少女元来のスタイル。
 トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナが病院を来訪したのは、なにも偶然ではない。
 山を下り、中世西洋風の街を散策する傍ら、トーニャは森の入り口辺りに停められた軽トラックを発見した。
 楽器運搬用のものとしては華美すぎる装飾に加え、荷台にはごった返したギターアンプや配線の数々。
 極めつけは、乗用席のシートにこびりついた、微かな血痕。

 以上のことから、トーニャはトラックの運転手が森での走行を無理と判断し、入り口で乗り捨て、徒歩で病院に向かったのだと推理した。
 行き先を告げたのは血痕だ。トラックが向いていた方角は北、地図を参照すれば、候補地など一つしかない。
 加えて、あの軽トラック。怪しげな改造の痕跡から、自称天才発明家のドクター・ウェストが関わっているに違いないと睨んだのだった。

 まさか当人が負傷者であるとは思いもよらなかったが、どうにか再会は果たせた。
 ならば、後は隠密としての仕事を遂行するだけだ。
 トーニャはウェストに例のブツ――首輪のサンプルを放り投げる。

「おお、これは――!」
「あなたのお望みの品です。あとは言わなくてもわかりますね?」
「む、むむむぅ……」
「仕事は迅速に。ウチのボスは見た目温厚ですが、あの手のタイプは得てして中身が暗黒な……」
「だが断る、のである」
「……はい?」

 トーニャの放った首輪を受け取りながら、ウェストはさらっと断りの言葉を入れる。
 首輪を見せた瞬間、喜々として解体に乗り出すだろうと想定したトーニャとしては、不意打ちのような反応だった。

803 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:05:33 ID:akjcm+oy
 

804 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:05:38 ID:7R2PdRIW



805 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:07:08 ID:7R2PdRIW



806 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:08:56 ID:sCzrm1xC
「ふふ……わかる、わかるぞマッスル☆トーニャよ。貴様はこの大天才、ドクター・ウェスト様の才をあてにしたのであろう?
 だからこそ我輩を探すために東奔西走し、肩で息をしつつも平然とした様相を見せるいじらしい姿を晒しているのであろう?
 こんなちっちゃい子が頑張って、近所のおばちゃんは飴玉の一つでもあげたいところであろうがあいにく我輩は他人に厳しい!
 首輪はいずれ解析し仮分解し完全解除してやるのである。ただ〜し、我輩を首輪を外してくれる便利屋さんだと思うなかれ!
 我輩が貴様らの首輪を外してやるのは、慈悲ではなく自らの存在証明のため! それが我輩の生きる道!
 大・天・才! ドォォクタァー! ウェェェスト! 様の魅惑的かつ高尚な技術を周知徹底させるための作業なのであるッ!
 こんなちっぽけな孤島の片隅で、観客は筋肉の妖精ただ一人な状況など、もったいないにもほどがあるとは思わんか!?
 我輩に首輪をバラさせたいなら、もっともっとオーディエンスを集めてとぅーびーこんてぃにゅー推奨!
 凡才ならではの都合のいい理想なんぞ、我輩だけが使えるテクニックでとかちつくちてやるのであるっ!
 わかったか? 胸に刻んだか? 理解が追いついたか? ならばその浅知恵をより研磨し、出直してこぉぉぉい!
 のひゃ、のひゃ、のっひゃーっはっはっはっはっはっは! のっわぁーっはっはっはっはっはっはっは!!」

 ……ロシアンスパイのアントニーナとして、神宮寺奏に雇われた隠密として、トーニャはクールに仕事を遂行しようと努めた。
 ゆえに無為なツッコミも自重したのだが、この男に対しては、別の意味でツッコミを入れる気がなくなった。
 凡骨リボン、もとい藤林杏が側にいた頃は、もう少しやりやすい相手とも思えたが。

(まぁ、あれ以降の彼の顛末を詮索するのは、ダーと言わせてからにしましょうか)

 ドクター・ウェストが掲げる三つの教義、『面白く!派手に!悪っぽく!』を知らぬトーニャにとっては、恐るべき難敵だった。
 要はただの目立ちたがり屋、大衆の前で首輪解除という偉業を成し遂げ脚光を浴びたい……という浅ましい考えが見え隠れした。
 実際、トーニャの観察眼は的を射ており、だからといってウェストの意向を呑んでは、彼の態度を増長させるだけだった。

807 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:09:55 ID:akjcm+oy
 

808 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:10:12 ID:sCzrm1xC
「おや、こんなところになんの変哲もなさそうなイヤホンが」

 さてどうしたものか、とトーニャが室内を見回すと、ベッド脇の机に置かれたイヤホンに注意がいった。
 見た目には普通のイヤホン、ただしノンケーブル。セロハンテープで添付された説明書を見れば、何者かによる書き込みがなされている。

『俺では使い道がなさそうだ。おまえのほうで役立てろ』

 達筆で記された文字列は、イメージからしてウェストのものだとは考えられない。
 となればこのイヤホンは誰かがウェストに宛てた贈り物だろうが、やはり詮索は後回しだ。
 トーニャはイヤホンに付属された説明書を読み、ニヤッ、と鉄面皮を崩した。

「ふむふむ。では、装着、っと」
「ノォ〜ウ! なにをしているかマッスル☆トーニャ! 人様のものに勝手に手をつけては母ちゃんに叱られるのであるぞ!?」

 ウェストの了承など待たず、トーニャは謎のイヤホンを強制拝借、自身の右耳に嵌める。
 刹那、

「ふわ〜……♪」

 トーニャの纏う空気が一変した。

「ぬ、ぬぅ? トーニャよ……いったいどうしたのであるか?」
「あ、これはこれはドクター・ウェスト様ぁ〜。別にどうもしてませんよ〜♪」

 鉄面皮を崩すどころか跡形もなく破壊し、ほがらかな女の子としての笑みを作る。
 緩んだ口元は艶やかに、とろんとした瞼は優しげに、夢に浸る乙女のように、トーニャは変身を果たした。
 怯んだのはウェストだ。トーニャとの邂逅はこれで二度目だが、初対面のときからは想像もできない一面を垣間見て、面食らっている。

「うっ……ぬ……ぬぬ。な、なんであるか、いったい……」

809 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:12:15 ID:sCzrm1xC
 ふわふわ〜っと。それこそ本物の妖精のように、夢の住人とも思える奇異な存在感を放っている。
 それはウェストの目からしてもふわ〜っとしており、三十秒目を合わせていると視線が釘付けに、一分間目を合わせていると、なんだか幸せな気分になってきた。
 ウェストの厳つい顔が、トーニャに釣られるようにとろりんと弛緩する。本人自覚もないまま、自然にそうなった。

「わ、我輩になにやら衝撃走る……ホワイ、このふわ〜っとした感覚はいったいなんであるふわ〜っ?」

 動揺を胸に秘めたまま、ウェストの顔つきはニヤニヤと変質し、いつも以上に変態的に昇華された。

「ふわ〜?」
「ふ、ふわ〜、であるか?」
「ふわふわ〜」
「ふ、ふ、ふわわぁ〜?」
「ねーウェスト様ぁ。トーちん、ウェスト様の天才的なところが見たいなぁ」
「ふわッ!? ぬ、ぬ、ぬぐおおおおおぉぉぉ!?」

 トーニャのあまったる〜い猫なで声を受けて、表情だけで悶絶するウェスト。
 態度が激変したトーニャにどう対処していいのもか苦悩し、葛藤し、口元はまだニヤついていた。
 以下、トーニャの精神世界という名のあやかし懺悔室。

(な、なんですかこのイヤホンは。恐るべき効果です。自分の発言がここまで覚醒してしまうとは思いもよりませんでした。
 超高性能イヤホン型ネゴシエイター養成機……説明書の文面は正直眉唾ものでしたが、妙なものを作る国があったものです。
 しかし、これは案外使えるのでは……? さすがに軍事利用までには至らないでしょうが、諜報活動にも有用かもしれません。
 如月君あたりに使ってあのファッキンフォックスを嫉妬の渦に巻き込むのも大そう面白そうな……ふふ、ふ、フフフフフ……)

 以上、トーニャの精神世界という名のあやかし懺悔室。
 何者かがウェストに残したこの機械は、見た目には普通のイヤホンでありながら、中身はロシアンスパイ仰天の技術が詰め込まれていた。
 チラリと説明書を読み返してみれば、『製作:極上生徒会隠密部』とある。
 トーニャは自身に仕事を託した極上生徒会会長と、彼女が抱える極上生徒会という組織に、多大な畏怖を覚えた。

810 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:14:03 ID:sCzrm1xC
 ともあれ、この『装着者の願望と相手の心理を読み取り交渉の補助をなす』機械を、活用しない手はない。
 トーニャはここぞとばかりにふわふわ領域を拡大し、ウェストを陥落へと導く。

「ハッ、読めたのである! 猿も煽てりゃ木に登る、天才を崇めれば下々の連中に慈悲が与えられると、そう睨んだであるな!?
 だが残念、そうは問屋が下ろさないのである! 我輩は煽てに弱い猿とは違うからして、そう簡単に貴様の思惑に乗るなど……。
 お、も……おもおおおおお! そんな瞳で見つめないでベイビー! 我輩、ちょっとやる気出てきちゃってるうん!?」

 このトーニャの症状、機械によって偶発的に齎された懐柔の姿勢ではあるが、神沢学園在籍者ならばこう判断しただろう。
 ――あ、トーニャがふわふわモードになった。
 思春期の男子生徒共を、三次元二次元の好み隔てなく夢心地に追いやり、人間嫌いの狐っ子まで陥れる魔の魅了スタイル。
 それこそがトーニャがときどき発症する『ふわふわモード』であり、彼女はこのイヤホンによって擬似ふわふわモードを獲得することに成功したのだった。

「ま、まあ、ちょっと調べるくらいならお茶の子さいさいなのである。か、かかかか勘違いしないでよね!
 別に筋肉の妖精のひたむきな視線でハートをぐりぐり刺激されちゃったわけじゃないんだからね!
 と否定を入れるとして。ふむふむこれが例の首輪であるな。どれ……」

 意外にというか狙いどおりというか、ウェストはあっさり陥落して首輪を手に取り始めた。
 おもしろいのでイヤホンは装着したまま静観。トーニャは内心で、グッジョブナイス私、と己を称揚した。

(おっと、私はこう見えてもクールなロシアンスパイですからね。プライドなんて気にしてたらまんまは食い上げですよ)

 自分にでもウェストにでもない謎の言を零し、トーニャはふわふわ〜っと天才科学者の手腕を見つめる。
 ――加藤虎太郎に一乃谷愁厳と、ついに身内が二名、死んでしまったのだ。なおのこと手段は選んでいられない。
 ロシアンスパイとしての、隠密としての行動が明日に繋がると信じ、トーニャは感傷を抑えて突き進んだ。

811 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:14:34 ID:akjcm+oy
 

812 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:16:20 ID:7R2PdRIW



813 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:16:34 ID:sCzrm1xC
「お、おお……おお――こ、これは!」

 手にした首輪を回し、覗き、撫で、降り、擦り、吹き、弾き、叩いたりなどして、ウェストは咆哮を上げた。

「ま、まさか……そうか……しかしこんな仕組みになっていたとは……だがそれならば頷ける……謎は全て解けた!
 そう、真実はいつも一つという少年探偵のセリフは正しくもあり、間違ってもいた……ファイナルバウトが見えたのである!
 さ〜てここで読者のみんなにクエスチョン☆である。我輩はいったいなにに気づき、なにを閃いたのか?
 正解率1パーセントの難問奇問に並ぶとも劣らない頭脳への挑戦を、君は受け取ることができるか!?
 あて先はこちら。ハガキに住所、氏名、年齢、電話番号、好きなキャラと問題の答えを書いて送ってほしいのである。
 おっと、それとは別に『ウェスト様ステキ』『ウェスト様生き残って!』といった励ましのお便りも絶賛募集中である。
 ハガキで味気ないと思うならハートマークの入った可愛いレターセットを用いると我輩としてもみんなとしても吉。
 そぉ〜れはそぉーと高鳴る興奮! 募る期待! 膨れ上がるのは謎を残したまま突入する解決編なのであ〜る!
 はたして大・天・才たる我輩だからこそ気づきえた首輪の秘密とはなんなのか!? これまでの伏線を洗いなおすのもまた良し!
 ひょっとしたら意外なところに落とし穴は潜んでいたかも? おーっとこれ以上は放送コードに引っかかるぜである!
 次回、天才科学者ドクター・ウェスト第13話『ウェストくん、首輪を片手間ではずすの巻』にこうご期待!
 終わりのコールはいつものごとく、大・天・才ッ! ドォクタァァァァ――――ッ! ウェェェェェストッッ!!」



814 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:18:32 ID:sCzrm1xC
【A-3 病院/一日目 夜中】

【ドクター・ウェスト@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:なし
【所持品】支給品一式 、フカヒレのギター(破損)@つよきす -Mighty Heart-、首輪(岡崎朋也)、
     九鬼の置き手紙、スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』の鍵
【状態】疲労(大)、左脇腹に二つの銃創(処置済み)
【思考・行動】
基本方針:我輩の科学力は宇宙一ィィィィーーーーッ!!!!
0:か、かかか勘違いしないでよね! ちょっと調べてあげるだけなんだから!
1:首輪を調べる。そして発覚する驚愕の事実――!
2:知人(大十字九郎)やクリスたちと合流する。
3:ついでに計算とやらも探す。
4:霊力に興味。
5:凡骨リボン(藤林杏)の冥福を祈る。
【備考】
※マスター・テリオンと主催者になんらかの関係があるのではないかと思っています。
※ドライを警戒しています。
※フォルテールをある程度の魔力持ちか魔術師にしか弾けない楽器だと推測しました。
※杏とトーニャと真人と情報交換しました。参加者は異なる世界から連れてこられたと確信しました。
※クリスはなにか精神錯覚、幻覚を見ていると判断。今のところ危険性はないと見てます。

815 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:19:59 ID:7R2PdRIW



816 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:22:30 ID:7R2PdRIW



817 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:23:51 ID:akjcm+oy
 

818 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:26:37 ID:nvDOAR3H


819 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:27:42 ID:nvDOAR3H


820 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:28:30 ID:sCzrm1xC
【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと−幻妖異聞録−】
【装備】:ゲイボルク(異臭付き)@Fate/staynight[RealtaNua] 、超高性能イヤホン型ネゴシエイター養成機@極上生徒会
【所持品】:支給品一式、不明支給品0〜2、スペツナズナイフの刃、智天使薬(濃)@あやかしびと−幻妖異聞録−、
      レトルト食品×6、予備の水
【状態】:健康、擬似ふわふわモード
【思考・行動】
基本方針:打倒主催。『隠密』として行動。
 0:ふわ〜っ♪(フフフ……)
 1:ウェストに首輪を調べさせる。
 2:しばらくは単独行動を徹底。物資や情報の調達、各施設の調査などに努める。
 3:藤乃静留を探し出し、主催者(神崎黎人)の情報を絞り取る。
 4:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
 5:主催者への反抗のための仲間を集める。
 6:地図に記された各施設を廻り、仮説を検証する。
 7:クリス、ドライ、このみを警戒。ツヴァイも念のため警戒。
 8:時機を見て、奏と合流する。ファルはやっぱり信用できない。
 9:もし帰れるのなら…………?
【備考】
 ※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。先端の金属錘は鉛製です。
 ※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウェストと情報交換をしたことで確信を深めました。
【トーニャの仮説】
※地図に明記された各施設は、なにかしらの意味を持っている。
※禁止エリアには何か隠されているかもしれない。

821 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:29:11 ID:nvDOAR3H


822 :エージェント夜を往く ◆LxH6hCs9JU :2008/09/03(水) 23:30:14 ID:sCzrm1xC
※スーパーウェスト爆走ステージ『魂のファイアーボンバー』は、D-3南部森の入り口辺りに乗り捨てられています。



【超高性能イヤホン型ネゴシエイター養成機@極上生徒会】
極上生徒会隠密部が諜報活動の糧とするため極秘に開発した。
見た目はイヤホンだが同時にマイクにもなっていて、話している相手の声を拾う。
それが内蔵されたマイクロコンピュータに伝わり相手のタイプを即座に分析、
加えて耳の中の発汗状態から装着者本人の願望も読み取り、
相手を思い通りに動かすためのセリフを、イヤホンを通じて教えてくれる。
さらに口の筋肉を電気制御して、言いづらいくっさ〜い台詞でもすらすら言えるようにしてくれる。



投下終了しました。
えと、一応、自己回収の用意はあるとだけ……スイマセンw

823 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:30:21 ID:nvDOAR3H


824 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:31:23 ID:nvDOAR3H


825 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:32:35 ID:nvDOAR3H


826 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:33:20 ID:nvDOAR3H


827 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:35:57 ID:nvDOAR3H


828 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/03(水) 23:56:00 ID:2B/uLEJW
投下乙です。

とりあえず何処からツッコめば良いのか説明を要求しますwww
悪夢?に始まりいつも通りなウエストにふわふわモード解禁なトーニャに最後のオチと終始笑いっぱなしでしたw
恐るべきは極上生徒会か…。

そしてクッキーとぶぶ漬けが同じ作中に見えないシリアス。
敵対者にも助言するとは何ともらしい…。

GJでしたー

829 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/04(木) 02:35:25 ID:16qNMm9a
投下乙です

夢で良かった、本当に夢で良かったw
途中何度も、神様仏様Lx様どうか夢オチにしてくださいと祈りまくってましたw
そして首輪解析、
あれ?解答編は?解答編がないよ?続くの?来週に続いちゃうの?
こんな斬新な続き方は初めてだwwwwなんというか、さすがです

830 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/04(木) 09:34:44 ID:a/79gKDr
投下乙です!

冒頭のgthmとラストの以下次号な続きっぷりに盛大に吹いたw
西博士は何て夢見てんだwww
そしてふわふわトーニャに和みつつ、言動も行動も渋くていかにも九鬼先生らしい先生に痺れました
静留ははたしてどう行動するのか…


831 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/04(木) 22:10:17 ID:TtxRCTsd
投下乙!

あれ?あれれ?ほ、本当に解決編に続くんですかー!?w
西博士まで篭絡するとはふわふわモード、恐るべし。
しかし九鬼先生は敵対者に助言とか……流石だw

832 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:01:12 ID:LTVRhhyr
ツヴァイ、ドライ、千羽烏月、柚原このみ、源千華留、トウカ致します(・3・)
凄まじく長い作品なので、お暇な方いらっしゃいましたら支援宜しくお願いします

833 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:02:46 ID:LTVRhhyr
 鳴り響く銃声、木霊する悲鳴。
 舞台は秘密結社インフェルノの拠点、城と見紛わんばかりの大きな洋館。
 難攻不落の筈のその地が、今はたった一人の亡霊によって阿鼻叫喚の様相を呈していた。

「畜生! たった一人の癖に……ファントム、奴は化け物か!?」
「応援だ! 応援を呼べ!」
「西棟、沈黙! 応答ありません!」
「そ、そんな馬鹿な――」

 ファントムことツヴァイが単身で館に襲撃を仕掛けたのは、ほんの数十分前の事だ。
 館の兵隊達も懸命に防衛しようとしているものの、状況は刻一刻と悪化してゆく。
 どんなに数を集めても、陣形を組んでも。
 止められない。
 復讐鬼と化した亡霊は、決して止められない。

「…………」

 鷹のような鋭い瞳、闇を連想させる黒髪。
 薄暗い通路の中、全身血塗れで突き進む人影は、嘗て吾妻玲二と呼ばれた男の成れの果てである。
 血は敵から浴びせられたものだけでは無く、自分自身のモノも大量に混じっている。
 身体には何発もの銃弾を撃ち込まれており、肋骨は襲撃前から既に骨折している。
 満身創痍と云っても差し支え無い状態で、無事な部位を探す方が難しい程だった。

 だが、止まらない。
 インフェルノの手先が仕掛けた爆弾によって、キャルは命を奪われてしまったのだ。
 最愛の人を理不尽に殺された怒りが、怪我を負った程度で収まる筈が無い。
 何処までも深い憎悪を以って、何処までも無慈悲に、ツヴァイは狩りを続けてゆく。

834 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:06:05 ID:LTVRhhyr
――殺す。

「ごふっ……」
「グ、ガッ――――」

 長い廊下の角を曲がると同時、頭の中で数ヵ所に照準を合わせて、それらを一息の間に纏めて銃撃する。
 最早日常動作と化したソレを行うと、待ち構えていた数人の敵兵が人形のように弾き飛ばされた。
 残された一人の敵兵が、恐怖に顔を歪めながら敗走を開始する。

――殺す、殺す。

「ひ、助け――――ガハッ……!」

 逃げ惑う男の背中に向けて、冷たい殺意と共に鉛玉を叩き込む。
 男は夥しい量の血を撒き散らしながら、地面へと沈んだ。
 物言わぬ躯と化した男を踏み付けながら、ツヴァイは更に奥へと足を進めてゆく。

――殺して、殺して、殺し尽くす。

「何なんだよ……何なんだよお前! うわ……うわあぁぁあぁああっ!」

 恐慌状態に陥った敵兵を、一遍の容赦も無く撃ち殺す。
 前へ、前へ。
 時折身体に銃弾を撃ち込まれながらも、確実に館の奥へと歩を進める。
 インフェルノの幹部が潜むであろう部屋まで、後少し。

835 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:08:03 ID:LTVRhhyr

「キャル……キャル…………っ」
 
 身体が重い。
 手足の先端が氷のように冷えてしまっている。
 キャルの温もりが恋しい、キャルの声をまた聞きたい。
 死に体の身体、壊れ掛けの精神を引き摺って、ツヴァイは復讐を完遂しようとする。
 さあ、もう終着点までの距離はごく僅か。
 ツヴァイの生命が潰えるまで、キャルが待っているであろう世界に赴くまで、後少し――
 
 
 
 
 
 
 
「……そこで、俺はこの島に連れて来られた」
 
 そうしてツヴァイは過去の回想を打ち切り、意識を現実へと引き戻した。
 頬に吹き付ける冷たい風、夜空に輝く無数の煌めき。
 既に三十人以上もの死体が転がっている、殺戮の孤島。
 その南東に位置するリゾートエリアの一角で、ツヴァイは静かに歩いていた。
 キャルの捜索が最優先課題である以上、一秒たりとも無駄にする訳には行かない。
 決して歩みは止めぬまま、摩訶不思議な此度の殺人遊戯について考察を巡らせる。

836 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:09:21 ID:LCiR2pil
 


837 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:09:42 ID:LTVRhhyr
(今回の事件……不可解な点が多過ぎる)
 
 あの時自分は、確かに組織との激戦の真っ最中であり、瀕死に近い重傷を負っていた筈だった。
 にも関わらず、気付いた時にはもうこの島に連れて来られており、あれ程深かった傷も全快していた。
 それは、普通に考えればまず有り得ない事。
 人の身では決して及ばぬ、超常現象が起こったとしか思えない。

 そして、それ以上に有り得ないのが名簿に記載されている二つの名前。
 アイン、キャル・ディヴェンス。
 死体こそ確認していないものの、アインは自分がこの手で殺した筈。
 キャルは、インフェルノが仕掛けた爆弾によって命を落とした。
 既にこの世には居ない筈の二人が、この島に連れて来られていると云うのだ。
 自分が殺害した桂言葉も、死亡後に生き返らされたと主張していた。
 ならばこの殺人遊戯を企画した主催者は、死者蘇生の力を持っているのだろうか。
 そう考えれば全ての辻褄は合うが、一方で最悪の可能性が一つ残っていた。
 
(もし……全てが嘘だったとしたら?)
 
 名簿に記載されているキャルやアインが、同姓同名の別人に過ぎず、桂言葉も嘘を吐いていたとしたら。
 柚原このみや棗恭介はキャルと直接会ったと云っていたが、それが絶対に本当だとは限らない。
 彼女達が何らかの理由でツヴァイを騙そうとしていた可能性も、決して零では無いのだ。
 全ては嘘で、本物のキャルはやはり死んだままだった。
 それは正しく、最悪のケース。
 そうなれば、今まで何の為に戦ってきたのか、何の為に人を殺してきたのか分からなくなる。
 全ての希望が、潰えてしまう。
 だが――そんなツヴァイの恐れは、直ぐに解消される事となる。 

838 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:11:31 ID:sqvp4sZs
 

839 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:11:46 ID:LTVRhhyr
「……この音は?」
 
 唐突にツヴァイの耳へと、急速に接近して来るエンジン音らしきものが届いた。
 建物越しである為に正体までは窺い知れないが、車にしては音が激し過ぎる為、恐らくはバイクだろうと当たりを付ける。
 エンジン音はツヴァイの程近く、建物を三、四個隔てた向こう側で停止した。
 
 接近してきた人物が誰かは分からないが、キャルに関する情報を持っているかも知れない。
 そうで無かったとしても、キャルを襲撃しかねない危険人物だという可能性もある。
 捨て置くべきでは無いと判断し、ツヴァイはエンジン音が途絶え辺りを目指して進み始めた。
 狙撃を警戒して、飲食店やレジャー施設の壁から壁へと移る形で移動する。
 闇に紛れながら、路地裏から表通りへと足を踏み出して。 
 そこで、唐突に後ろから声を掛けられた。
 
 
「――こんな所に居やがったか」
「…………ッ!?」
 
 
 心臓を冷たい手で鷲掴みにされたかのような悪寒。
 馬鹿な、と思った。
 ツヴァイは鍛えに鍛え抜かれた暗殺者であり、隠密行動は得意とする所。
 常に敵の不意を突くように、そして自身の不意を突かれないように生きて来た。
 それが、こうも易々と背後を取られるなど普通では有り得ない。
 ツヴァイは驚愕と共に、銃を構えながら後ろへと振り返る。
 すると薄暗い広場の中央部に、赤いジャケットを羽織った女の姿があった。
 

840 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:12:10 ID:KcqeoTsQ


841 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:13:06 ID:sqvp4sZs
 

842 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:13:17 ID:LTVRhhyr
「お前、は…………」

 金のポニーテールに、緑の瞳。
 手には黒と赤の入り混じった拳銃、口元には獰猛な歓喜の笑み。
 ツヴァイにとって、その女性は初めて見る相手の筈だった。
 見覚えなど無い筈なのに、決してあってはならない筈なのに――どうしようも無く、懐かしい気持ちが込み上げてくる。
 どくんどくんと、心臓が狂ったかのように跳ねている。

「玲二……やっと見付けた。ただこの時だけをずっと待ち侘びたよ」

 まるで親の仇に向けられたかのような、明確な憎しみの籠もった声。
 それすらも、ツヴァイにとっては聞き覚えのあるものだった。
 ツヴァイは狼狽に肩を震わせながら、目の前の女に問い掛ける。

「お前…………キャルなのか?」

 そんな筈は無いと、ツヴァイの心は叫んでいる。
 記憶の中のキャルは、もっと幼い。
 背も低かったし、顔にもあどけなさがまだ残っていた。
 そして何より、キャルが憎悪に染まった瞳を向けてくるなど、決して有り得ない筈だった。
 だが無情にも、女は冷たい現実を突き付けてくる。

「……信じられないって顔をしてやがるね。
 だけど間違い無く、あたしはあたしだ。嘗て吾妻玲二と愛を誓い合ったキャル・ディヴェンスだよ」
 
 それで、矛盾は決定的なものとなった。
 キャルと愛を誓い合った事は、誰にも話していない。
 その事実を知っているのはツヴァイと、そしてキャル本人の二人のみ。
 目の前の女は間違い無く、キャル・ディヴェンスその人だった。

843 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:14:19 ID:LCiR2pil
  


844 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:15:02 ID:LTVRhhyr
「そんな……何で……? キャルはもっと……幼かった筈だ……」
「馬鹿か? あんたがあたしの前から姿を消して二年。成長するのは当然だろ」
「二年――?」

 見下すような視線。
 ツヴァイが驚愕するのにも構わず、キャルことドライは言葉を続けてゆく。

「そう……二年だ。あんたに置いていかれてからの二年間。
 あたしはずっと、あんたに復讐する事ばかりを考えていた」

 紡がれた言葉は憎悪に満ちたもの。
 本来ならばそれは、キャルを心の拠り所にするツヴァイにとって、何よりも辛い責め苦だろう。
 だが今のツヴァイはそのような感傷よりも、次々と沸き上がる疑問に思考を埋め尽くされていた。

(二年も経過しているだと……?)

 ツヴァイが最後にキャルの下を離れてから、この島に連れて来られるまで、時間で見れば一週間足らず。
 だと云うのに眼前のキャルは、二年の月日が流れたと主張しており、実際彼女は以前よりも格段に成長している。
 これは一体、どういう事なのか。

 一番最初に思い付いたケースは、キャルが二年先の未来から連れて来られたという事。
 だが、直ぐにその説は打ち消した。
 アパートの爆発によって、キャルは確かに命を落とした筈。
 あの時点で死んでしまった以上、二年後のキャルなどというものが存在する筈が無いのだ。
 それに、もう一つ疑問が残っている。

「俺がお前を置いていったとは……何の事だ?」

 ツヴァイは組織の魔の手から、キャルを守る事が出来なかった。
 それは厳然たる事実であり、その事について責められるのなら分かる。
 だが置いていったつもりなどは、毛頭無い。

845 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:16:13 ID:sqvp4sZs
 

846 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:16:13 ID:DNXuV4km


847 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:16:18 ID:LCiR2pil
   


848 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:17:01 ID:LTVRhhyr
「俺はお前を一人にしておくつもりなんて無い。
 もしお前が手の届かない所へ行ったとしても、必ずそこまで追い掛けていくつもりだし、実際にそうして来た」

 ツヴァイの言葉は、決してその場限りの嘘偽りなどでは無い。
 キャルを守れなかった後、ツヴァイは一人で生き延びようなどとはしなかった。
 正しく捨て身で組織への復讐を敢行して、あの世までキャルの後を追う予定だったのだ。
 故にツヴァイは疑問を露わとしたのだが、途端にドライは眉を鋭く吊り上げた。

「……一人にしておくつもりは無い、だって? どの面下げてほざいてんだよ。
 あたしを見捨てて、アインと二人で逃げた癖に。自分だけ平和な日本で学生ゴッコしていた癖に……!」
「俺が、アインと……?」

 獰猛な肉食獣をも上回る殺意の視線が、こちらへと向けられる。
 しかし、ツヴァイは全く身に覚えが無い。
 自分は日本に戻ってなどいないし、アインは既に命を落としていた筈。
 そもそも自分がキャルを捨てて平和な生活に逃げるなど、絶対に有り得ないと断言出来る。
 
 違う。
 ツヴァイの知る自分自身と、キャルの語るツヴァイ像が余りにも違い過ぎる。
 死んだ筈なのに成長した姿となって現れたキャルも、ツヴァイの知る彼女とは別人の如き変貌振りであった。
 生じた違和感が、どうしようも無い程に肥大化してゆく。
 最早、常識など一切通じぬ状況。
 ツヴァイはありとあらゆる常識を封印して、思い付く限りの可能性を模索する。

 死者蘇生……否。蘇らされただけと云うのならば、キャルは自分の知る幼い姿で現れる筈だ。

 未来からの拉致……否。キャルは命を落とした以上、二年後の未来には存在しない筈。

 記憶改竄……否。この仮説でも、キャルが成長した姿で現れた理由付けにはならない。

849 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:17:39 ID:sWCpkTlZ


850 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:18:05 ID:sqvp4sZs
 

851 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:19:05 ID:LTVRhhyr
 主催者が何か並外れた力を持っている事は明らか。
 空想じみた可能性も、決して選択肢から外さず、考えて、考えて、考えて抜く。
 そうしてツヴァイは、やがてとある一つの結論に辿り着いた。


――平行世界。


 死者蘇生でも、時間移動でも、目の前のキャルについては説明出来なかった。

 だがもしも、もしもだ。
 世界が一つだけでは、無かったのだとしたら。
 アインやキャルが命を落としておらず、ツヴァイが保身に走った世界があったとしたら。
 目の前のキャルは、そんな世界から連れて来られたのだとしたら。
 全ての疑問、全ての矛盾は解消されるのでは無いか。
 ツヴァイは震える声、動揺し切った表情で、己が仮説を確認すべく問い掛ける。

「なあ、キャル……。お前の知っている俺は、インフェルノに襲撃を仕掛けたか?」

 この島に連れて来られる直前まで、ツヴァイはインフェルノと激戦を繰り広げていた。
 その事についてキャルが知らないというのならば、それで良い。
 あの時点で既にキャルは命を落としていた以上、知らないのは当然だ。
 だがツヴァイの問い掛けに対して、返ってきたものは。
 
「あんたがインフェルノに襲撃を仕掛けただ? ハッ、冗談も大概にしやがれ。
 インフェルノに狙われた途端、あたしを置いてとっとと逃げやがった臆病者の分際でよ」 

 ドライが口にしたソレは、知らない、では無く明確な否定の言葉。
 実際にツヴァイは襲撃を仕掛けた以上、『ツヴァイの居た世界』で生きていたキャルならば、この回答は有り得ない。
 最早、疑いようも無く。
 今目の前に居る少女は、ツヴァイの知るキャルとは、別の世界から来た人間だった。

852 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:19:17 ID:sWCpkTlZ


853 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:19:46 ID:LCiR2pil
    


854 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:20:45 ID:KcqeoTsQ


855 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:20:51 ID:LTVRhhyr
「あ、――――」

 それで、終わった。
 この少女が、ツヴァイの知るキャルで無いというのならば。 
 あの時守れなかったキャルは、蘇ってなどおらず、アパートの爆発によって命を落としたままなのだ。
 
 今度こそ、絶対に守ると誓ったのに。
 何を犠牲にしてでも、守り抜くつもりだったのに。
 守るべき対象など、居なかった。
 キャルを救える可能性など、最初から存在しなかった。
 彼女の声を聞く機会も、彼女の温もりを感じる機会も、二度と訪れはしないのだ。

「あ、ああぁああ……………っ」

 ツヴァイは力無く地面へと膝を付いて、形を成さぬ声を上げ始めた。
 もう、立てない。
 もう、戦えない。
 当然だ。
 銃を手に取るだけの理由も、これ以上生き続ける理由すらも、吾妻玲二にはもう存在しない。
 冷たい風が広場の中を吹き抜けて、亡霊の身体を冷やしてゆく。
 そこに希望も救いも無く。
 亡霊が抱いた束の間の夢は、呆気無く終焉の時を迎えた。


856 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:21:39 ID:LCiR2pil
 


857 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:22:01 ID:sWCpkTlZ


858 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:22:42 ID:LTVRhhyr






「おいおい……一体何だってんだよ」

 突如崩れ落ちたツヴァイを前にして、ドライは困惑を顔に表していた。
 己が怨敵である吾妻玲二は、初代ファントムを直接対決で破った程の怪物。
 血で血を争う激戦も覚悟していた。
 或いは玲二が、必死に言い訳を並べ連ねて来るケースも想定していた。
 だが、流石にこの展開は予想外。
 要領の得ぬ問答を僅かばかり行った結果、ツヴァイは地に伏してしまった。
 その理由までは分からぬが、ツヴァイの姿からは絶望している事が容易に見て取れる。
 
「下らねえ。何だか知らねえが、戦う前から自滅かよ」

 ドライが心底失望した表情で吐き捨てたが、ツヴァイは地に膝を付いたまま動かない。
 この状態で復讐を成し遂げるのは容易い。
 目の前の亡霊に向けて、ただ一度引き金を引けば、それで事は済む。
 だが、それは動かぬ人形に銃弾を叩き込むのと何ら変わらぬ行為。
 自分は見捨てられた後、二年もの間ツヴァイへの復讐だけを目標に生きて来たのだ。
 その総決算がこのような結末に終わるなど、そう簡単に許容出来る筈が無い。 

「おい、立てよ。こんな形であたしの復讐を終わらせるんじゃねえよ」
「がぁッ……」

 ドライは大きく足を振り上げて、ツヴァイの腹部を蹴り飛ばした。
 ツヴァイが受け身すら取らずに、力無く地面へと倒れ込む。
 ドライはそのまま二度、三度と、無慈悲にツヴァイの横顔を踏み付けた。 

859 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:23:41 ID:sWCpkTlZ


860 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:23:47 ID:LCiR2pil
  


861 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:24:11 ID:LTVRhhyr
「ほら、銃を取れよ。あんたはこんなんじゃないだろ?
 自分の身が一番可愛いクソ野郎だろ!? だったら自分を守る為に、早くあたしと戦えよ!」
「ぐ、がふ、ごっ…………!」

 罵倒の叫びと共に、何度も何度も蹴撃が撃ち込まれる。
 だが、ツヴァイは動かない。
 罵られても、足蹴にされても。
 魂が抜け落ちたかのように、亡霊は最早動かない。

「…………本当に、下らねえ」

 桃色の唇から、様々な感情の入り混じった声が零れ落ちた。
 ドライは暫しの間逡巡していたが、やがて何をしても無駄だと悟ったのか。
 自動式拳銃――ルガー P08の銃口が、ツヴァイへと向けられた。
 月光が降り注ぐ広場の中で。
 金色の修羅が、亡霊に死神の鎌を突き付ける。

「じゃあな。誰よりも憎く――――誰よりも、大切だった人」

 そうしてドライは、己が拳銃の引き金へと指を掛けた。
 完全に肩透かしを食らった形だが、だからと云ってツヴァイを見逃す訳には行かない。
 復讐を果たす為にも、この二年間を無駄にしない為にも。
 何があろうとも、この男は必ず自分自身の手で仕留めなければならないのだ。
 ドライは過去を清算すべく、トリガーを引こうとして――
 そこで、急速に近付いてくる駆け足の音を聞き取った。

862 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:24:24 ID:sqvp4sZs
 

863 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:25:09 ID:LCiR2pil
 


864 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:25:39 ID:LTVRhhyr
「ドライさん!」

 ザッと大地を踏み締める音。
 ドライが振り向くと、そこには見覚えのある少女が立っていた。
 血に塗れた桃色の制服。
 平均よりも随分と劣るであろう小柄な体躯に、ツインテールの形で纏められた黒髪。
 少女の両手には、元はドライの支給品であった魔銃――イタクァが握り締められている。
 
 現れたのは、殺人遊戯の開始直後に遭遇した少女、柚原このみだった。
 新たな役者の登場を受けて、ドライは口元に凄惨な笑みを浮かべる。

「――へえ。良い面構えになったじゃねえか」

 以前に別れた時、ドライはこのみと再び会う事など無いと踏んでいた。
 このみ如きが、それまで生きていられる筈が無いと思っていたのだ。
 たが予想に反して、このみは再びドライの前に現れた。
 しかも、ただ現れたというだけではない。
 未だ互いの距離は二十メートル以上開いていると云うのに、押し潰されるような圧迫感が伝わってくる。
 爛々と輝く赤い瞳の鋭さは、一流の暗殺者と比べても何ら見劣りせぬ程。
 柚原このみは内に鬼を飼う人外として、ドライの前に戻ってきた。

「それに……お仲間まで二人、連れて来たみたいだな」

 このみの両脇には、ドライの見知らぬ少女が二人。
 黒い長髪に鋭い瞳を湛え、日本刀を手にした少女は千羽烏月。
 ベーシュの制服を身に纏い、黒髪を腰まで伸ばした少女は源千華留だった。
 現場の状況を見て取った烏月は、図らずして眉間に皺を寄せる。

865 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:26:16 ID:sqvp4sZs
 

866 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:27:29 ID:LCiR2pil
   


867 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:27:31 ID:sWCpkTlZ


868 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:27:41 ID:LTVRhhyr
「どうしてあの男が、キャルさんに銃口を向けられているんだ?」

 このみがドライと呼んだ以上、眼前の少女はキャル・ディヴェンスと考えて間違い無いだろう。
 ツヴァイは正しく死に物狂いでキャルを探し、守り抜こうとしていた。
 それが何故、保護対象たるキャルに殺され掛けているのか。

「ツヴァイ、何があったんだい?」
「…………」

 仰向けに倒れているツヴァイへと問い掛けたが、答えは返ってこない。
 ツヴァイは生気を失った瞳で、ただ天だけを仰ぎ見ている。
 その様はさながら脱け殻のようであった。
 数時間前に交戦した恐るべき暗殺者と同一人物だとは、とても思えない。
 ならばと、このみが視線をドライに移す。

「ドライさん……何でツヴァイさんを殺そうとしているの?
 ツヴァイさんは、必死にドライさんを守ろうとしていたんだよ?」

 それは至極真っ当な質問だろう。
 しかし問われた当人であるドライは、ただ鼻で笑うだけだった。

「ハッ、逆に聞きたいぜ。あたしがこいつを殺さない理由なんて、一体何処にあるんだ?」

 愉しげな、しかし鋭い声。
 ファントム・ドライがツヴァイを殺そうとするのは、当然だと。
 殺意に塗れた緑の視線で、ドライはそう告げていた。

「そんなの……分かんないよ。私はドライさんの事もツヴァイさんの事も、ほんの少ししか知らないもん。
 でもツヴァイさんは、必死にドライさんを助けようとしてたのに、それを裏切るなんて――」
「ガタガタうるせえな。あたしは玲二が憎い。人が人を殺す理由なんてそれで十分だろ?」

869 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:28:54 ID:sWCpkTlZ


870 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:29:14 ID:sqvp4sZs
 

871 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:29:37 ID:LTVRhhyr
 諫めようとしたこのみの言葉は、途中で遮られた。
 部外者が何を云おうが、全くの無意味。
 憎しみに囚われた今のドライが、その程度で考え方を改める筈も無い。

「大体よ、お前ら此処に何しに来てんだ? この島は日本みたいな生温い場所じゃ無く、殺し合いの舞台なんだぜ?
 なら、無駄なお喋りなんて要らねえだろうが」
「え――?」

 このみの目が大きく見開かれる。
 ドライの腕がすいと動いて、ルガー P08の銃口がこのみへと向けられていた。

「さあ、あんたも銃を構えろよ。前にやった銃は、飾りなんかじゃないんだからさ」
 
 以前に出会った時、ドライはこのみを叱咤激励して、あまつさえ己が銃まで分け与えた。
 だが、あの行動はドライにとって、只の気まぐれでしか無かった。
 当時のこのみは、殺す価値すらも無い弱者だったから、敢えて今度の成長に期待しただけの事。
 こうして今、戦うに値する強敵として現れた以上、最早見逃す理由など存在しない。

「……貴女は、殺し合いを肯定しているのかい?」
「ああ、そうさ。あたしは生温い連中と馴れ合うつもりなんてねえからな」

 烏月が問い掛けると、ドライは迷う事無く首を縦に振っていた。
 その答えは、このみに確かな絶望と驚愕を齎す。

「ドライさん! そんな、どうして!?」
「だからガタガタうるせえって云ってるだろ。あたしがそうしたいから、そうするってだけだ。
 何を云われようとも、あたしはお前らを殺す。無抵抗で死んだりして、あたしを失望させるなよ?」
「そんな……そんな……」

872 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:29:44 ID:LCiR2pil
 


873 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:30:46 ID:sWCpkTlZ


874 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:31:16 ID:LTVRhhyr
 このみはドライの言葉に愕然とし、ただ弱々しく肩を震わせる。
 魔銃イタクァを握り締める両手は、汗でびっしょりと濡れていた。
 このみにとって、ドライは感謝すべき相手。
 全てを失った自分に、再び生きる気力を与えてくれた恩人だった。
 その恩人が絶対の殺意を以って、こちらに銃を向けている。
 悪夢のような現実を前にして、このみの思考は停止していたが、そこで横から仲間の声が聞こえて来る。

「このみさん、しっかりするんだ!」
「……烏月さん?」

 このみが振り向いた先には。
 何処までも冷静な表情で刀を構える、烏月の姿があった。

「あの人は、間違い無く私達を殺すつもりだ。此処で抵抗しなければ、理不尽に命を奪われるだけだよ。
 だから、戦うんだ。貴女の命はこんな所で捨てて良いモノじゃない……違うかい?」

 このみの命は、もう自分自身だけのものでは無い。
 殺人遊戯の開幕時に、向坂環が捨て身で救ってくれたからこそ、このみは今も生きていられるのだ。
 烏月の後を継ぐ形で、千華留が言葉を続ける。 

「……そう。このみちゃんは、生き続けなければならないの。
 それに、忘れないで。貴女が死んだら、悲しむ人達が居るって事を」
 
 このみが死ねば、確実に烏月と千華留は嘆き悲しむだろう。
 烏月達だけでは無く、今は亡き伊藤誠や河野貴明達も悲しむ筈だ。
 懸っているのは二人分の命、背負っているのは仲間達の想い。
 ならば、簡単には死ねない。
 どのような事態に陥ろうとも、柚原このみは必死に生き続けなければならない。

「……そうだね。ドライさんと戦いたくなんて無いけど……。
 私にだって守りたいもの、譲れないものがあるもん。だから私――戦うよ」

875 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:31:38 ID:LCiR2pil
  


876 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:32:44 ID:sqvp4sZs
 

877 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:33:15 ID:LTVRhhyr
 そうしてこのみは、未だ遠慮がちながらも銃を構えた。
 銃口の斜線上には、既に戦闘態勢へと移っているドライの姿。
 
「良いぜ……お前ら最高だ。玲二なんかよりも、よっぽど殺し甲斐があるよ」

 このみの、烏月の、千華留の視線を一身に受けながら、ドライは獰猛な笑みを浮かべる。
 今ドライの前に立っているのは、それぞれが強固な意志を秘めた三人。
 脱け殻同然のツヴァイなどよりも、余程手応えのある相手だ。
 故にドライは復讐を後回しにし、今はファントムとしての気勢を猛らせる。

「さあ、始めようぜ――命の奪い合いをよ!」

 何処までも愉しげに死闘の開幕が告げられる。
 ドライのルガー P08が火を吹き、それとほぼ同時にこのみもイタクァの引き金を引いた。
 互いが上体を横に傾けた事で、銃弾は空を裂くに留まる。
 間合いを詰めるべく烏月が駆け出して、逆にドライは接近戦を嫌い後退し始めた。

 直ぐ様、千華留も烏月達の後を追って走り出す。
 だがそこで、千華留は唐突に横から呼び止められた。

「なあ……そこのお前……。一つ、聞いても良いか?」
「――――?」

 聞こえてきた声に足を止めて、千華留は横に振り返る。
 するとそこでは、ツヴァイが仰向けに倒れたまま、視線だけこちらに向けていた。

「この殺戮の孤島で。守ろうとしていた大切な人が、自分とは別の世界から連れて来られたのだと判ったら。
 お前は……どうする?」
「……ごめんなさい。云っている意味が、良く分からないわ」

 相手の云わんとする事が理解出来ず、千華留は首を横に傾ける。
 ほんの僅かな間の後、ツヴァイは更に言葉を投げ掛けてきた。

878 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:33:18 ID:LCiR2pil
 


879 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:33:50 ID:sWCpkTlZ


880 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:34:37 ID:LTVRhhyr
「この島に連れて来られたその人は……自分の知る彼女とは違う記憶を持っているんだ。
 別人のように、変わり果ててしまっていたんだ。元の世界では、深く愛し合っていた筈なのに。
 憎悪に満ちた眼で睨まれたら、銃口を向けられたら……お前なら、どうする?」

 悲痛な表情、苦汁に満ちた声で問い掛けられる。
 それで、ようやく千華留はおおよその事情を察した。
 この質問の中で想定されている状況は、正しくツヴァイ自身が陥っている境遇なのだ。
 ツヴァイと出会ったばかりの千華留には、この質問にどう答えるのが正解か分からない。
 だから素直に、自分自身が同じ境遇に陥ったらどうするかを考えた。

 千華留にとって、最も大切な人間とは蒼井渚砂に他ならない。
 もし渚砂が別人のように変わり果てていたら。
 憎悪と共に銃口を向けてきたら、源千華留は――――


「――何も、変わらないわ」


 告げる瞳に迷いは無く。
 闇を切り裂くような澄んだ声で、千華留は答えを口にした。

「かわら、ない……?」
「ええ、私は変わらない。きっと辛いと思うけど……。
 物凄く辛いと思うけど、それでも私は何も変わらない。何処から来ていようとも、大切な人は大切な人だから。
 別人のようになっていたとしても、どれだけ憎まれていても、命懸けで守るわ」

 相手がどの世界から来ていても、たとえ自分を憎んでいても、己の想いは変わらないと。
 海よりも深い愛を以って、少女はそう告げていた。
 だが、程無くして千華留の表情に暗い影が差す。

881 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:34:55 ID:LCiR2pil
   


882 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:35:29 ID:sWCpkTlZ


883 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:36:18 ID:LTVRhhyr
「尤も――私の大切な人は、もうこの世には居ないけれど」

 千華留にとってかけがえの無い存在である渚砂は、既に命を落としている。
 最早二度と彼女は、大切な人の声を聞く事も温もりを感じる事も出来ないのだ。
 だがそれでも千華留は立ち止まらない。
 蘭堂りのの想いが、直枝理樹の跡を継ぐという決意が、彼女を支えている。

「……少し、お喋りが過ぎたわね。早く皆を助けに行かないと」

 手元の拳銃――スプリングフィールドXDを、強く握り締める。
 この島で出会った新たな仲間達を守るべく、千華留は駆け出した。

 広場を照らし上げる月光。
 取り残される形となったツヴァイは、地に倒れたまま動かない。
 ただ黙したまま、走り去る千華留の背中を眺め見ていた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「ハッ!」
「チィ――――」

 鬼切りの少女の繰り出した剣戟が、暗殺者の鼻先を掠め過ぎてゆく。
 ドライは大きく舌打ちしながら、バックステップで距離を取ろうとした。
 だがそうはさせぬと云わんばかりに、烏月が懐へと踏み込んできた事によって、ドライは再び守勢を強要される。

884 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:36:26 ID:sWCpkTlZ


885 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:36:29 ID:LCiR2pil
 


886 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:36:43 ID:g41lQzct



887 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:36:46 ID:sqvp4sZs
 

888 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:37:35 ID:KcqeoTsQ


889 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:37:57 ID:LTVRhhyr
 ――三発。
 烏月達との戦いで、これまでにドライが用いた銃弾の数だ。
 これは普段の彼女からすれば有り得ない事。
 圧倒的火力と手数で敵を叩き潰すのが、ドライ本来の戦闘スタイル。
 だが僅かな数の銃弾しか持っていない今、無闇に銃を乱射すれば、程無くして弾切れの憂き目に遭ってしまうだろう。
 それに脱け殻同然であるとは云え、ツヴァイとの決戦も控えている。
 故にドライは、敵が隙を晒すまで待ち続けると云う、消去的な戦い方をするしか無かった。


「くっ……」

 ドライの眼前より鬼切りの少女が迫り来る。
 薙ぎ払い、振り下ろし、袈裟斬り。
 矢継ぎ早に放たれる連撃はそのどれもが、並の人間ならば回避不可能な程に鋭いもの。
 ドライは反撃もままならず、紙一重の回避を続けている。
 だがドライとて、ツヴァイに天才と云わしめた程の戦闘センスの持ち主であり、そう簡単に敗れたりはしない。

「ふっ…………!」

 烏月が一歩深く踏み込むと共に、疾風と見紛わんばかりの速度で刺突を繰り出した。
 それは相手の胸部を狙った正しく必殺の一撃だったが、そこでドライが自ら地面へと転がり込んだ。
 標的を見失い、空転する白刃。
 ドライは大地の上を、勢い良く二回、三回と転がってゆく。
 上体を起こした時にはもう、烏月に向けて銃を構えていた。

「甘えんだよ」

 しっかりと態勢を整えてから、両手で構えて撃つのが銃撃を行う際の鉄則。
 その基本から外れた撃ち方をしてしまえば、銃弾はあらぬ方向へと飛んでゆくのみ。
 だがことドライに限っては、そのような鉄則など通用しない。
 並外れた才能を持つ彼女ならば、如何なる態勢からでも、必中の一撃を繰り出す事が出来る。
 ドライはがら空きとなった烏月の腹部に、銃弾を叩き込もうとして―― 

890 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:38:08 ID:LCiR2pil
  


891 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:38:50 ID:sqvp4sZs
 

892 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:39:22 ID:LTVRhhyr
「いいや、甘いのは貴女だよ」
「――――ッ!?」

 刹那、ドライの背中に悪寒が奔った。
 考えるよりも早く上体を後ろに傾けて、バック転の要領で後方へと跳躍する。
 直後、子供のように小さな拳が、しかし恐るべき勢いで一秒前までドライの居た空間を切り裂いていた。
 その余波で生じた凄まじい暴風が、ドライの前髪を巻き上げる。

「柚原このみ、行くでありますよ!」

 ドライが目撃したのは、大きく拳を振り上げたこのみの姿。
 使い慣れない武器に頼るべきでは無いと判断したのか、その手に銃はもう握られていない。
 このみは徒手空拳の状態で、果敢にドライへと殴り掛かる。

「やあぁぁぁっ!」

 一発、二発、三発、四発、五発――。
 まるで早鐘を打つかのように、拳の連撃が繰り出される。
 悪鬼の力による強化は、このみの身体能力を大幅に引き上げていた。
 放たれる拳は烏月の剣戟よりも尚速く、人間の限界すらも凌駕している。

 回避に徹しても凌ぎ切れぬと判断したドライは、即座に弾丸の温存を諦めて、銃口を水平に持ち上げた。
 至近距離でルガー P08が死の咆哮を上げたが、人外の反応速度を見せるこのみには当たらない。
 再び銃を構えるよりも早く、このみの拳が繰り出されて、ドライは後退を余儀無くされた。

「はっ、随分と立派になりやがったじゃねえか……!」

 回避を続けながら、ドライは愉しげに口元を吊り上げる。
 実際に戦ってみた所、このみの実力は予想以上のものだった。
 最早一流の暗殺者と比べても、決して引けを取らないだろう。
 その変貌振りは成長と云うよりも寧ろ、進化と表現する方が相応しい。

893 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:39:52 ID:LCiR2pil
 


894 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:40:49 ID:LTVRhhyr
 何がこのみを此処まで強くしたのか、ドライには分からない。
 だが目の前に強敵が現れたと云うのならば、やるべき事など一つだった。

「面白え、やってやるよ」
 
 後退する足を止めて、両足でしっかりと地面を踏み締める。
 直ぐ近くでは、千華留と烏月が加勢する好機を狙っているが、至近距離を維持している限り邪魔が入る心配は薄い。
 下手に介入しようとすれば、味方にまで攻撃が当たってしまうかも知れないのだ。
 暗殺者として、一対多の無茶な戦いも経験してきたドライは、その事を良く分かっている。
 ならば退く必要など無い。
 敵の猛攻をこの場で迎え撃って、自分こそが最強のファントムなのだと証明するのみ。
 
 勝負は一瞬。
 このみの拳も、ドライの銃撃も、一撃で相手を無力化出来るだけの威力がある。
 暗殺者の懐に、上体を屈めた鬼の少女が潜り込む。
 ドライは決して退かずに、ただこのみの拳へと神経を集中させた。

「ぃやあぁぁっ!」
「くう――――っ!」

 振り上げられた一撃を回避すべく、ドライは全力で上体を後ろへと反らす。
 チリッと、肌を掠める破壊の暴風。
 完全には避け切れず、胸の辺りに妬けるような痛みが奔ったが、兎に角大きなダメージは負わずに済んだ。
 空振りの隙を狙って、ドライは銃を構えようとする。
 だがそこで、視界にとあるものが映った。


「…………っ!?」

 ドライの眼前で、宙を舞う円状の物体。
 それは、嘗てツヴァイから贈られた懐中時計だった。
 懐中時計はペンダントのように首から掲げられていたが、このみの一撃によって紐を断ち切られてしまったのだ。

895 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:40:53 ID:sqvp4sZs
 

896 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:40:57 ID:g41lQzct



897 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:41:16 ID:UxcW6RL+
支援するであります

898 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:41:35 ID:LCiR2pil
  


899 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:42:26 ID:LTVRhhyr
「あ――――」

 脳裏に去来するのは、懐中時計を買った時の記憶。
 当時ドライはツヴァイの家に居候している身であり、個人の所有物となる物まで買って貰うのは悪いと考えていた。
 店頭でこの懐中時計を見付けた時、欲しくて欲しくて堪らなかったが、遠慮して云い出せずにいた。
 にも関わらず、ツヴァイは自分から買ってやると云ってくれたのだ。
 大して値の張らぬ、しかしドライにとっては大切な思い出の詰まった一品。
 このまま地面へと落ちれば、壊れてしまう可能性は十分にある。

「く、そ――――!」

 気付いた時にはもう、自然に片手が伸びていた。
 ドライは他の全てを後回しにして、ただ必死に懐中時計を掴み取る。
 戦いの最中に於いて、その行動は致命的なまでの隙を生み出す。
 首の付け根の辺りに奔る衝撃。

「ガッ…………!」
「……ごめんね」

 このみは殺さぬ程度に手加減した手刀で、ドライの首を打ち据えていた。
 幾分か威力が弱められているとは云え、意識を刈り取るには十分過ぎる一撃。
 無防備な所を強打されたドライは、力無く大地へと崩れ落ちた。



「ドライさん……」
 
 静寂が戻った広場の中。
 このみは哀しげな瞳で、地に倒れ伏すドライを眺め見る。
 ズキズキと、胸の奥を締め付けられるような感覚。
 たとえ命を狙われていたとは云え、嘗て自分を救ってくれた恩人を傷付けるのは、酷く心の痛むものだった。
 しかしそんな彼女を追い討つかのように、烏月は冷然たる声で告げる。

900 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:42:26 ID:g41lQzct



901 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:42:28 ID:sqvp4sZs
 

902 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:42:45 ID:LCiR2pil
 


903 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:43:15 ID:wpgSMiWf



904 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:43:52 ID:LCiR2pil
   


905 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:44:08 ID:LTVRhhyr

「さて……仕上げに入ろうか」
「仕上げ?」
「気絶している今が好機だ。此処で命を断たせて貰うよ」

 そうして烏月は、刀の切っ先を倒れ伏すドライへと向けた。
 切れ長の瞳に明確な殺気が宿る。 
 このみは一も二も無く、烏月の行動を押し止めようとする。

「そ、そんなの――」
「駄目だ、とは云わせないよ。キャルさんは強い。もし此処で見逃せば、多くの人が殺されてしまうかも知れないんだ。
 鬼切り役としても、桂さんを守る為にも、私はキャルさんを討たなければならない」

 烏月の言葉は正しい。
 肉食獣の如き獰猛な殺意と、類稀なる実力を併せ持ったドライは、全ての参加者達にとって危険極まりない存在。
 ならば此処で仕留める事こそが、大勢の人々を救う結果に繋がるだろう。
 千華留もドライの危険性は理解している為、烏月を止めようとしない。

「大切な人を失った貴女だからこそ、これ以上の悲劇は防がねばならないと分かる筈だ。
 私はキャルさんを討つ。良いね?」
「…………」

 このみは答えない。
 だがこの状況に於ける無言は、肯定しているのと同意義だった。
 反対意見が潰えた事を確認した烏月は、日本刀を握り締める手に力を籠めた。
 元より役目の為、目的の為ならば、容赦無く人を屠って来た。
 鬼切りの少女は何処までも冷静に、己が敵を切り捨てようとする。
 
 その、刹那。

906 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:44:15 ID:g41lQzct



907 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:44:57 ID:wpgSMiWf



908 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:45:10 ID:g41lQzct



909 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:45:34 ID:LCiR2pil
 


910 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:45:43 ID:sqvp4sZs
 

911 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:45:55 ID:LTVRhhyr
「――殺させない」


 地獄の底から響いてきたかのような声。
 烏月が顔を上げると、何時の間にかツヴァイが立ち上がっていた。

「絶対に、この子は殺させない」
「……何?」

 放たれた言葉、向けられた意思の強さに烏月が眉をしかめる。
 ツヴァイの瞳はもう、生気を失った死人のソレでは無い。
 以前戦った時よりも尚鋭い決意を秘めた、戦士の目だった。
 再び立ち上がったツヴァイは、ゆっくりと己の胸中を口にする。

「分かっている……分かっているさ。この子が、俺の知るキャルじゃ無いんだって。
 俺はもう、『俺の世界のキャル』を救う事が出来ないんだって」

 ツヴァイの夢は既に終わっている。
 元の世界で守り切れなかったキャルは蘇ってなどおらず、希望は完全に失われた。
 救いの手を差し伸べてくれた人達も、殺して。
 怒りを胸に立ち向かってきた人間も、殺して。
 大勢の人々を踏み躙って来たツヴァイの行為は、何の意味も為さなかった。

「けどな――」

 全ての迷いを断ち切るように。
 強く、強く、拳を握り締めて。

912 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:46:28 ID:wpgSMiWf



913 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:46:39 ID:g41lQzct



914 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:46:39 ID:sqvp4sZs
 

915 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:46:53 ID:LCiR2pil
  


916 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:47:16 ID:LTVRhhyr
「この子もキャルである事に変わりはないんだ」

 ツヴァイの脳裏に思い起こされるのは、嘗ての思い出。
 懐中時計を贈った時、キャルはツヴァイと約束した。

――大事にしろよ
――うん。ずっと……大事にするよ

 生きて来た世界が違っても、彼女はやはりキャルだった。
 目の前から敵が迫っているにも関わらず。
 安物の懐中時計を宝物のように扱う、大馬鹿だった。

「この子がキャルであると云うのなら、見殺しにして良い筈が無いんだ。
 どんなに憎まれていたとしても、二度と暖かい声を掛けて貰えないとしても、俺がこの子を守らない理由になる筈が無いんだ」
 
 今目の前で倒れ伏すキャルは、元の世界でツヴァイにすらも見捨てられたと云っていた。
 世界のあらゆるモノに裏切られて、彼女はこれ程までに深い憎しみを抱くようになったのだ。
 救ってあげなければならない。
 誰かが手を差し伸べてあげなければならない。

「たとえこのキャルが、別の世界の人間だとしても。たとえ世界の全てが、キャルを憎んだとしても。
 たとえキャルの世界の吾妻玲二が、彼女を見捨てたのだとしても――」 
 
 何があっても、キャルと一緒に居ると約束した。
 絶対にキャルの事を守り抜くと誓った。
 血を吐くような決意と共に、ツヴァイは――吾妻玲二は宣言する。


「俺は。俺だけは――永遠にキャルの味方だ」


917 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:47:45 ID:g41lQzct



918 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:48:44 ID:KcqeoTsQ


919 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:48:58 ID:LCiR2pil
   


920 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:48:59 ID:LTVRhhyr
 そうしてツヴァイは再び、己が銃を手に取った。
 今度こそ、キャルを守り抜く為に。
 烏月が横に飛び退いた直後、コルトM1917の銃口から弾丸が放たれて、民家の壁面へと突き刺さった。

「くっ……。このみさん、千華留さん、援護を!」

 敵が発砲してきた以上、行動を起こさねば待っているのは死のみ。
 烏月は表情を引き締め直すと、ツヴァイに向かって駆け出した。
 コルトM1917が構えられたのと同時に、サイドステップで銃の射線から身を躱す。
 それは以前ツヴァイの銃撃を空転させた回避法だが、同じ手法が二度通用する道理は無い。
 ツヴァイは烏月が横に回避するのを予測して、銃口の向きをそちらへと修正していた。
 烏月も咄嗟に上体を捻ろうとしたが、それよりも早く銃弾が撃ち放たれる。

「つあああぁっ……!」

 烏月は脇腹を浅く抉られて、大きくバランスを崩し地面へと転倒した。
 そこに、すかさず向けられるコルトM1917の銃口。
 そうはさせじと、このみが横からツヴァイに殴り掛かる。
 悪鬼の身体能力によって振るわれる拳は、一撃で大木を砕くだけの威力がある。
 だが、それも命中しなければ無意味。
 ツヴァイが上体を低く屈めた事によって、少女の剛腕は空を裂くに留まった。

「こ、この――――!」

 このみは至近距離で足を止めて、何度も攻撃を繰り出してゆく。
 一撃毎に旋風を巻き起こす拳は、しかしツヴァイの身体に掠りもしない。 
 まるで未来を予知しているかのように。
 ツヴァイは正確にこのみの予備動作を見極めて、拳が振るわれるよりも早く身を躱している。
 豪快な風切り音だけが、繰り返し広場の中に鳴り響く。

921 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:49:20 ID:wpgSMiWf



922 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:49:32 ID:sWCpkTlZ


923 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:50:07 ID:g41lQzct



924 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:50:17 ID:LTVRhhyr

「……無駄だ。お前の攻撃には余分な動作が多過ぎる」

 ツヴァイは眉一つ動かさぬまま、確実にこのみの連撃を回避してゆく。
 初めて戦った時は、常識外れの身体能力に驚きもした。
 しかしどれだけ動きが速かろうとも、所詮このみは戦いに関して素人である。
 アインのように最短の軌道、予測不可能な連携で命を獲りに来るのでは無い。
 このみの攻撃は酷く大振りで、フェイントが混ぜられるような事も無い。
 だから、読める。
 並外れた身体能力さえ計算に入れておけば、問題無く捌く事が出来る。 

 ツヴァイは迫る拳を掻い潜り、至近距離でコルトM1917をこのみへと向けた。 
 このみは人外の反応速度を駆使して、即座に銃口から身を躱す。
 直後、ドンという音がした。

「う、あ…………!?」

 足の親指に激痛が奔り、このみが苦悶の声を洩らす。
 ツヴァイは銃撃を行うと見せ掛けて、このみの足を踏み付けていた。
 このみも苦し紛れに拳を振り上げようとしたが、既にツヴァイは次の動作へと移っている。
 引き金を引く時間すらも惜しんだ、銃身による薙ぎ払いの殴打。
 側頭部を強打されたこのみが、受け身も取れぬまま地面に叩き付けられる。
 このみは起き上がれない。
 脳を大きく揺らされた影響は、短時間で抜ける程甘くない。

「次は――――」

925 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:50:27 ID:LCiR2pil
 


926 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:50:39 ID:sqvp4sZs
 

927 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:51:22 ID:g41lQzct



928 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:51:36 ID:wpgSMiWf



929 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:51:38 ID:UxcW6RL+
…支援

930 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:51:41 ID:LCiR2pil
  


931 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:51:43 ID:sWCpkTlZ


932 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:51:58 ID:LTVRhhyr
 敵は複数、無力化した相手に構っている暇は無い。
 ツヴァイは倒れ伏すこのみを一瞥すらせずに、視線を横へと移す。
 そこでは先程銃撃を浴びせた烏月が、ようやく立ち上がろうとしている所だった。
 脇腹を撃ち抜かれた影響か、その動きは酷く散漫である。
 間髪置かずに、ツヴァイはコルトM1917を構えた。
 暗殺者は何処までも無慈悲に、傷付いた獲物を撃ち殺そうとする。
 そこで、ツヴァイと烏月の間にとある人影が割り込んだ。

「させないわっ!」

 黒の長髪を風に揺らしながら、千華留は悠然とツヴァイの前に立ち塞がる。
 その手元には、盾のように傘が構えられていた。
 そんなモノ何の妨げにもならぬと、ツヴァイは二連続で銃を撃ち放つ。
 それは本来ならば確実なる死を与えるモノだったが、甲高い金属音と共に銃弾が弾かれる。
 千華留が手にした傘。
 それは特殊な素材で作られた、高い防弾性能を誇るカンフュールという代物だった。

「……烏月さん、私の後ろに!」
「ああ!」

 烏月は脇腹の激痛を噛み殺して、千華留の背後へと駆け寄る。
 そのまま二人は、真っ直ぐにツヴァイ目掛けて走り出した。
 千華留がカンフュールを構えて、その後ろに烏月が付いて行くという形。
 強固な防護に裏付けされたその突撃は、鎧で身を固めた騎士のソレと何ら変わりはあるまい。

 だがどんな強固な鎧を身に纏おうとも、圧倒的な破壊の前には無力。
 ツヴァイは即座に鞄の中へと手を入れて、新たな銃を取り出した。
 一際大きい銃声が、戦場に鳴り響く。

933 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:52:31 ID:sqvp4sZs
 

934 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:52:53 ID:LCiR2pil
 


935 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:52:58 ID:wpgSMiWf



936 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:52:58 ID:g41lQzct



937 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:53:43 ID:LTVRhhyr
「あぐっ――――!?」
「くあああっ……!」

 カンフュールが宙を舞う。
 強大な衝撃によって、千華留と烏月が一纏めに後方へと弾き飛ばされた。
 舞い上がる砂埃。
 地面に尻餅を付いた態勢のまま、烏月達は顔を上げる。  
 そこには、巨大な拳銃を握り締めるツヴァイの姿があった。

――トンプソン・コンテンダー。

 鞘に収まった短剣を連想させる、拳銃としては規格外な十四インチの銃身。
 使用弾丸は、強力無比な5.56mmx45ライフル弾。
 それらの組み合わせによる銃撃は、コルトM1917の四倍近い衝撃力を生み出していた。



「――お前達の、負けだ」
 
 ツヴァイは眼下の烏月達を見下ろしながら、得物をコルトM1917に戻す。
 対する烏月と千華留はまだ立ち上がっておらず、このみもようやく上体のみを起こした所だった。
 完全なるチェックメイト。
 三人が態勢を立て直すまでの所要時間と、ツヴァイが銃を放つまでの所要時間、どちらが短いかなど考えるまでも無い。
 烏月達は三人掛かりであるにも関わらず、ただ一人の暗殺者の前に敗北を喫した。

 これが、ツヴァイと烏月達の差。
 人を殺す事に特化した暗殺者と、そうで無い者達の違いであった。

938 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:54:02 ID:g41lQzct



939 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:54:03 ID:DNXuV4km


940 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:54:15 ID:LCiR2pil
   


941 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:54:38 ID:sWCpkTlZ


942 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:54:57 ID:LTVRhhyr
「動くな。お前達の誰か一人でも動けば、その瞬間に残り二人を撃ち殺す」
「くっ…………」

 冷たい声で告げられて、烏月は身動き一つ取れなくなった。
 それは千華留もこのみも同じ。
 警告を無視すれば、この男は眉一つ動かさずに引き金を引くと、三人全員が理解していた。
 されど直ぐに殺そうとしない以上は、未だ交渉の余地が残っている筈。
 千華留は死への恐怖を噛み殺して、頭上の暗殺者に問い掛ける。

「……貴方は何が目的なの?」
「分かり切った事を聞くな。俺の目的は只一つ、キャルと一緒に生きて帰る事だけだ」
「つまり……キャルさんに危害さえ加えなければ、私達を殺すつもりは無いと?」
「場合によるな。此処でお前達を殺さなければ、後々の害になる可能性もある。
 だが、この島から脱出する為には少しでも多くの情報が欲しい。お前達が有力な情報を提供するのなら、見逃す事も考えよう」

 ツヴァイの目的はあくまでもキャルとの生還であって、他者の殲滅では無い。
 今まで人を殺し続けて来たのは、手の届かぬ場所でキャルが殺されてしまう可能性を、少しでも減らそうとしていただけの事。
 歪な形であるとは云え、キャルとの合流を果たした以上、後は傍で守り続ければ問題無い。
 状況は、具体的な脱出の手段を探る段階へと移り変わっているのだ。

「烏月さん、此処は……」
「話すしか、無いね。幸い私がこの島で出会った知り合いに、脱出に関する有力者だと思われる人物がいる。
 彼について話そう」

 生殺与奪を握られている以上、烏月達も迂濶には逆らえない。
 烏月はツヴァイの要求に従って、この島で出会った知人――ドクター・ウェストについて一通り話した。
 話を聞き終えたツヴァイは、烏月達には聞こえぬような小声で小さく呟いた。

943 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:56:03 ID:LCiR2pil
 


944 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:56:33 ID:g41lQzct



945 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:56:36 ID:sqvp4sZs
 

946 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:56:38 ID:UxcW6RL+
支援ね

947 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:56:51 ID:LTVRhhyr
「白衣を纏った、緑の髪の男……。まさか……?」

 烏月達から伝え聞いたドクター・ウェストなる人物の外見的特徴は、数時間前にツヴァイが狙撃した白衣の男と一致する。
 恐らくは、同一人物であると考えて間違い無いだろう。
 この島からキャルと共に脱出する為には、首輪解除が可能なウェストは重要な人材。
 あの時狙撃を仕掛けたのは悪手だったかと、唇を噛み締める。
 ツヴァイがそんな風にしていると、このみが声を投げ掛けて来た。

「ねえ、ツヴァイさん……」
「何だ?」
「ドライさんを保護出来たのなら、もう人を殺す必要なんて無いよね?
 殺し合いなんてもう止めて……私達と協力し合おうよ」
 
 キャルと共に島から脱出するというツヴァイの目的は、このみ達の目的と競合しない。
 それにこのみ個人としては、ツヴァイにこれ以上人殺しをして欲しくなかった。
 愛する者の為に戦えるツヴァイのような人間とは、仲間として接したいと思った。
 だからこその、提案だったのだが。

「駄目だ。キャルを守る為には、他の人間達と一緒に動く訳には行かない」

 ツヴァイは殆ど即答に近い速度で、このみの申し出を拒絶していた。
 息が詰まったように黙り込むこのみにも構わず、ツヴァイは言葉を続けてゆく。

「正面から襲ってくる相手より、内に潜む敵の方が恐ろしいんだ。
 もし他の連中を行動を共にして、背中を撃たれたら? 食事に毒を混ぜられたら?
 そうなったら、俺にはキャルを守り切れる自信が無い」
  
 今まで過酷な生を歩んできたツヴァイは、安易に他人を信用したりしない。 
 この島で執り行われているのは、『生き残れるのは一人』というルールのデス・ゲーム。
 そのような状況下で他者と行動を共にするのは、自分の、そしてキャルの生存確率を引き下げる愚行に他ならない。
 必要なのはキャルと共に生き残るという、その一点のみ。
 暗殺者はあらゆる可能性を考慮して、己が目的のみを遂行しようとする、

948 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:57:22 ID:g41lQzct



949 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:57:58 ID:sqvp4sZs
 

950 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/08(月) 23:58:18 ID:LTVRhhyr

 
「だから、俺は……」
「――見下してんじゃねえぞ」


 ツヴァイの言葉を途中で遮って、冷え切った声が空気を震わせた。
 少し遅れて、響き渡る銃声。
 びしゃりと鮮血が舞い散った。


「あ、がっ…………?」

 ツヴァイは何が起きたのか即座には理解出来ず、呆けた表情のまま己が左肩を抑える。
 すると生暖かい液体が掌に纏わり付き、遅れて激痛がやってきた。
 撃たれたという事実をまずは認識し、次いで背後に振り返る。
 烏月達も、鳴り響いた銃声の始点へと視線を寄せていた。

「守る、守るって、馬鹿の一つ覚えみたいに云いやがって。あたしは自分一人じゃ何も出来ないガキか?」

 気絶していた筈のドライが、悠然とそこに屹立していた。
 その手には、ルガー P08がしっかりと握り締められている。
 ほんの少し前に意識を取り戻していたドライは、背後からツヴァイを狙撃したのだ。

「キャ……キャル……」
「おいおい、何マヌケ面してるんだい。あたしがあんたを撃つのは当然だろ。
 今更あんたの事を許すとでも思ったのか?」

 緑目の殺戮者は、嘲笑交じりに両肩を竦める。
 それは、守られる立場の人間が取る態度では無い。
 だがドライからすれば、そもそも守られる立場だという前提が間違っている。

951 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:58:31 ID:LCiR2pil
  


952 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/08(月) 23:59:30 ID:sWCpkTlZ


953 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:00:09 ID:VDQLaF1g

「――勘違いしてんじゃねえぞ。あたしはあんたなんかに守られるつもりはねえ。
 自分の身くらい自分で守るし、玲二なんかに守られるくらいなら、死んだ方がマシだ」

 ツヴァイがどれだけ必死に、ドライの事を守ろうとしていても。
 ドライがそれを素直に受け入れる道理など、何処にも在りはしないのだ。

「ドライさん、何で!? どうしてそんなに、ツヴァイさんの事が憎いの……?
 ツヴァイさんはドライさんの事を、こんなにも愛しているのに……。
 ドライさんは、ツヴァイさんの事が大切じゃないの!?」

 このみの叫びは、この場に居る皆の疑問を代弁したものだと云って良い。
 投げ掛けられた問い掛けに、ドライの口元から馬鹿にしたような笑みが消えた。
 殺戮者たる少女は僅かな間を置いた後、躊躇わずに断言する。


「……違う。好きだったからこそ、愛していたからこそ――憎いんだ」

 
 ひゅうと風が吹いて、金の髪を揺らした。
 ドライは真剣な面持ちとなって、自身の胸中を解放する。


「好きだった。あたしは玲二の事を、心の底から愛していた。
 ツヴァイ――吾妻玲二は、インフェルノと云う組織の中で最強と謳われた暗殺者。
 そしてあたしは、玲二と共に暮らす、身寄りの無い只の子供だった。

 アパートの一室で一緒に過ごした日々は、今までに一度だって忘れた事が無いよ。
 二人で買い物に出掛けたのも、街の中を調べて回ったのも、任務に挑んだのも、全部大切な思い出。
 『もしキャルと違う世界に行っても、その後で、必ず俺は帰ってくる』……ニ年前、玲二があたしに云った台詞だ。
 本当に嬉しかった。ずっと玲二の傍に居たいと思ってた。玲二さえ居れば他には何も要らないって思ってた」

954 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:00:09 ID:jHQL5dS5
 


955 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:00:36 ID:sWCpkTlZ


956 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:00:44 ID:BgJduhZ0


957 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:01:38 ID:VDQLaF1g


 語るドライの表情は、今までに一度も見せた事が無い優しいものだった。
 ドライは嘗てツヴァイと一緒に過ごした日々を忘れた訳では無い。
 当時の暖かい思い出は、今も少女の胸に焼き付いている。
 だが、物語は幸せな結末で終わらない。


「だけど――玲二はあたしを裏切った」


 再び、ドライの顔付きが暗殺者のソレに戻った。
 凍り付く空気。
 ドライの全身から、決して隠し切れぬ程の殺意が漏れ出ている。


「ある日、突然アパートが爆破されて。部屋が廃墟みたいになっても、あたしは玲二を待ち続けた。
 馬鹿みたいに、玲二は必ず戻ってくると信じてね。
 だけど玲二は、戻って来なかった。玲二はあのアパートにあたし一人を残して、のこのこと日本に逃げやがったんだ。
 あたしが渡した五百万ドルを持って、他の女と一緒に逃げたと知った時は、怒りと絶望で目の前が真っ白になったよ。

 残されたあたしに待っていたのは、玲二の後釜として組織に飼われる生活。
 才能を認められたあたしは、組織の暗殺者として育てられた。 

 何人も、何人も、殺して。
 ただやり場の無い憎悪を発散する為に、殺して。
 見失った自分自身の価値を取り戻す為に、殺して。
 玲二に復讐出来るだけの強さを手に入れる為に、殺して。 
 何時の間にかあたしは、インフェルノ最強の証、ファントム・ドライの称号を手に入れていた」

958 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:01:58 ID:fQ4PqGrg


959 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:02:02 ID:jHQL5dS5
  


960 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:02:04 ID:AVLxwpTM



961 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:02:46 ID:LA5P0mjH


962 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:02:55 ID:VDQLaF1g


 語る声は重く。
 憎しみに染まったドライの瞳に、キャルだった頃の面影はもう僅かしか残っていない。
 吾妻玲二が姿を消してから二年間。
 インフェルノの一員として過ごした日々は、キャルを獰猛な暗殺者・ドライへと変貌させた。
 そうならなければ自我が保てぬ程に、玲二の裏切りはキャルにとって辛いものだった。
 大き過ぎる愛情、深過ぎる絆は最悪の形で反転して、キャルを束縛する憎しみという名の鎖と化す。
 少女は狂気の笑みを口元に浮かび上がらせて、最悪の決意を口にする。


「あたしがそうしてる間、玲二は何をやっていたと思う? 日本で暢気に学生ゴッコをやってんだぜ?
 ……絶対に許せない。
 だからあたしは決めた。あたしを捨てた玲二を、必ずこの手で殺してやるってね。
 玲二本人を殺すだけじゃ足りない。玲二が逃げ込んだ先も壊す。
 殺す。玲二と同じ学校に通ってる連中を全員殺してやる。玲二の逃亡を手伝った連中も探し出して、当然殺す。
 皆、皆、殺してやる。玲二を取り巻くモノ全てを、跡形も無く壊してやる。
 吾妻玲二への復讐――それが、今のキャル・ディヴェンスの全てさ」


 そうして、ドライの独白は終わった。
 このみも、烏月も、千華留も、その独白に籠められた凄まじい憎悪を前にしては、もう何も口に出来ない。
 キャル・ディヴェンスという少女が抱いた憎悪は、愛した人間に裏切られた故のものだった。
 少女はツヴァイへの復讐だけを目標にして、底無しの絶望の中を生きてきたのだ。
 そんな少女の生き様を、この島で出会ったばかりの烏月達が安易に否定出来る筈も無い。
 それはツヴァイも同じ。

963 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:02:57 ID:fQ4PqGrg


964 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:03:26 ID:IFOfWoju
支援だ

965 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:03:51 ID:jHQL5dS5
 


966 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:04:18 ID:fQ4PqGrg


967 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:04:27 ID:BgJduhZ0


968 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:04:32 ID:VDQLaF1g
「キャル……」

 ツヴァイは撃ち抜かれた左肩を押さえながら、ただ哀しげな呟きだけを洩らす。
 ドライが口にした言葉の数々は、本来ツヴァイにとって謂れの無い非難である。
 今此処に居るツヴァイ本人は、最後までキャルだけの為に戦い抜いたのだから。
 だが、言い訳しようとは思わなかった。
 たとえ違う世界での出来事だとしても、ドライがツヴァイによって地獄へと叩き落とされたのは事実。
 復讐だけを糧に生きて来た少女に対して、身に覚えが無いから恨みを忘れろなどと、そんな残酷な事は云えない。
 第一、深い憎悪に囚われた今の彼女に、平行世界云々の話をした所で、聞き入れて貰える筈が無いのだ。
 だからツヴァイは決して言い逃れしようとせずに、ただ質問のみを口にする。

「お前は……あのアパートの爆破があったのに、生き延びたのか?」

 それは、決して見過ごせぬ大きな疑問。
 ツヴァイのアパートを襲った爆発は、中の人間が決して生き延びられない程大規模なものだった。
 だからこそ、眼前のドライが過ごしていた世界では、アパートの爆破という事件自体が無かったのだと思っていた。
 あの凄惨な事件に遭遇しなかったからこそ、ドライは命を落とさずに、二年の月日を生き延びてきたのだと。 
 だが話によれば、ドライの世界でもアパートの爆発はあったとの事。
 ならば何故、ドライは未だに命を繋いでいられるのだろうか。

「あたしはあの日、偶然外出していたからね。帰ってきた時、部屋が黒焦げになっていて呆然としたよ」

 答えは、酷くあっさりと告げられた。
 何も難しい話では無い。
 爆破事件が起きたとは云え、ドライはその現場に居合わせなかったというだけの事。
 そして当然、ツヴァイの脳裏に次の疑問が沸き上がって来る。

「ま、さか――――」

 目の前のドライが、アパートの爆発があったにも関わらず生き延びたのなら。
 『ツヴァイの世界のキャル』も、同じようにして命を繋いでいたのでは無いか。

969 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:05:12 ID:jHQL5dS5
  


970 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:06:02 ID:sWCpkTlZ


971 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:06:13 ID:LTVRhhyr
 アパートの爆発があった時、ツヴァイはキャルの死体を発見した訳では無い。
 爆発の規模からキャルが死んだと判断し、激情のままに組織への復讐を開始したのだ。
 ならばキャルが生き延びていたとしても、可笑しくは無い。
 『ツヴァイの世界のキャル』を救える可能性は、未だ残っているかも知れない。
 生じた可能性にツヴァイが動揺する中、ドライは冷え切った声で告げる。
 
「さあ、お喋りは此処までだ。これだけ話せば、もう何を云ってもあたしが止まらないのは分かっただろ?
 あんたがどれだけ綺麗事を吐いたって、あたしは二度と騙されない。
 殺し合おうぜ――玲二」
 
 そう云って、ドライは懐から円状の懐中時計を取り出した。
 それは、嘗てツヴァイが贈った一品に他ならない。
 殺戮の少女は懐中時計を地面に置いて、指先でその蓋を開けた。
 懐中時計の中に仕込まれたオルゴールから、か細い音楽が流れ始める。
 
「早撃ち勝負だ。曲が終わったら、抜きな」

 ルールは単純にして明快。
 オルゴールの曲が終わった瞬間、互いに銃を抜き放って、必殺の一射を打ち合うというもの。
 これこそが、ドライの多用するやり方。
 数多の敵を無慈悲に葬り去って来た、決闘方法だった。
 
「この曲を聴かせて殺していないのは……そういやあんた一人だよ、玲二」
「…………」

 聞き覚えのある懐かしい旋律が、ツヴァイの耳へと届く。
 だが今のツヴァイに、感慨に耽っているような余裕は無い。
 頭の中を占めるのは、どうしようも無いくらいに大きな難題。 


972 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:08:50 ID:VDQLaF1g
(俺は、どうすれば良い……?)

 眼前のキャルを説得するのは、もうどうやっても不可能だ。
 相手は近くにバイクを停めている以上、逃亡も困難だろう。
 ならば選択肢は、抵抗せずに撃たれるか、もしくは撃ち合いを挑むかの二択となる。
 ほんの少し前までならば、迷う事は無かった。
 キャルに復讐を完遂させてやり、それで終わるだけだった。
 だが今のツヴァイには、再び希望への道筋が示されている。

(此処で死んだら、『俺の世界のキャル』を救えない……)

 もし、元の世界でキャルが生きていたとすれば、きっと今もツヴァイの帰りを待っているだろう。
 ずっと一緒に居ると約束した。
 何を犠牲にしてでも、絶対に守り抜くと誓った。
 ならば自分は生き延びて、約束を果たすべきではないのか。
 たとえ、目の前の少女を撃ち殺してでも。
 そこまで考えたツヴァイは、鞄からトンプソン・コンテンダーを取り出して、ベルトの前へと差し込んだ。
 強大な破壊力を誇るこの拳銃ならば、一撃で相手の命を断ち切る事が出来るだろう。

「ハッ……随分とえげつない銃を使うんだね。ならあたしも、本気で行かせて貰うよ」

 ドライが獰猛な笑みを浮かべて、ルガー P08を腰のホルスターへと差し込んだ。
 続けて魔銃クトゥグアを取り出して、もう一個のホルスターへと収納する。
 彼女程の射撃センスがあれば、二丁撃ちも問題無く行える。
 連続して放たれる二つの銃弾を受ければ、対象はまず生きていられまい。

 これで、条件は互角。
 互いに、狙いは必殺。
 コンマ一秒でも先に銃を撃ち放った側が、確実に相手を死に至らしめる。
 程無くして訪れるであろう惨劇を前にして、このみは狼狽に声を震わせる。


973 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:08:53 ID:jHQL5dS5
   


974 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:08:57 ID:IFOfWoju
支援だよ

975 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:09:08 ID:bRuuOZ4J



976 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:10:24 ID:bRuuOZ4J



977 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:10:29 ID:VDQLaF1g
「う、烏月さん……。このままじゃ、どちらかが死んじゃうよ!
 早く止めないと!」

 このみはツヴァイにもドライにも、死んで欲しくなど無かった。
 ドライは、生きる気力を与えてくれた恩人である。
 ツヴァイも、ただやり方が間違っているというだけで、決して悪人などでは無いのだ。
 だからこその懇願だったが、烏月は首を左右へと振るだけった。

「駄目だ。殺人者達が潰し合うと云うのならば、私には止める理由が無い。
 それに、世の中にはあるんだ……誰も邪魔してはいけない一対一の勝負というものが」

 たとえ、結末に惨劇しか待っていないのだとしても。
 此処で烏月達が手を出す訳にはいかなかった。
 これは、あくまでも当人達だけの問題。
 介入しようとすれば、ツヴァイとドライは即座に標的を烏月達へと変更するだろう。
 故に烏月達には、静観する以外に道は残されていなかった。


「…………」
「…………」

 吹き抜ける冷たい風。
 月明かりだけが頼りの薄暗い広場で、二人の暗殺者が睨み合う。
 オルゴールの音楽が辺りに鳴り響く。


 在りし日の賛美歌の残響のように。
 旋律は細く、優しく、薄闇の世界を満たしてゆく。
 だが、それも長くは続かない。

978 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:11:34 ID:jHQL5dS5
 


979 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:12:06 ID:BgJduhZ0


980 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:12:12 ID:VDQLaF1g
 曲が小さくなってゆく。
 決着の時が迫る。
 ツヴァイもドライも、決して目は逸らさない。
 互いの顔を記憶に焼き付けるように、しっかりと視線を交錯させる。


 そして、静寂が訪れる直前。



「――キャル、復讐はこれきりにしてくれ。後は自分自身の幸せを、追い求めるんだ」
 
 
 
 ぼとりと。
 ツヴァイは自ら、ベルトに挟んでいた銃を捨てた。 
 
 
 曲が、終わる。
 

981 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:13:40 ID:LA5P0mjH


982 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:13:56 ID:bRuuOZ4J



983 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:14:11 ID:VDQLaF1g
 
「え……?」
 
 
 ドライは止まれない。
 身体に馴染み切った動作は、驚愕の最中に於いても遂行される。
 クトゥグアによる一撃は上方へと逸れたが、動揺の影響はそれで終わり。
 
 天性の才能による銃撃は、二度も標的を逃したりはしない。
 ルガー P08から放たれた銃弾は、絶望的な正確さで、ツヴァイの胸部へと、突き刺さって、いた。
 
 後方へと吹き飛ばされる身体。
 まるでスローモーションか何かのように、ゆっくりとツヴァイは地面に崩れ落ちた。
 
 
「あ――――」


 ドライが呆然と声を洩らしたが、結末は変わらない。
 倒れ伏したツヴァイは、ぴくりとも動かない。
 もう、動かない。
 立ち塞がる者の姿は既に無く。

 残ったものは、ただ一つ。
 吾妻玲二は最後までドライの味方だった、と云う事実だけ。

 どれだけツヴァイが、『元の世界のキャル』を救いたいと願っていたのだとしても。
 眼前のキャルを犠牲に出来る筈が、無かったのだ。

984 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:14:13 ID:jHQL5dS5
  


985 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:14:33 ID:AVLxwpTM



986 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:15:42 ID:VDQLaF1g




「何で……」
 
 震える声。
 ドライには分からなかった。
 いかに綺麗事で取り繕うとも、玲二がキャルを置き去りにしたと云う事実は変わらない。
 所詮自分は、玲二にとっての一番では無く、後回しにされる存在に過ぎぬ筈なのだ。
 故に今回も、極限まで追い詰めれば、玲二は必ず保身を優先するだろうと思っていた。
 それが何故、自ら戦いを放棄し、命までをも捨てたのか。

「何で、だよ…………。どうしてあんたが、そんな事を…………」

 沸き上がる疑問だけが頭の中を占めて、一切の思考を麻痺させる。
 胸の奥が締め付けられて、心が軋むように痛む。
 ドライは眼前の現実を否定するかのように、弱々しく首を左右に振る事しか出来ない。
 そんな中、答えを口にしたのは千華留だった。

「……彼は、永遠に貴女の味方で在り続けると云っていた。分からないかしら?
 彼は最後まで、その誓いを守り抜いたのよ」
「え、あ――――」

 突き付けられる言葉に、ドライが肩を震わせる。
 とどのつまり。
 過去がどうあれ、先程まで眼前に居たツヴァイは、誰よりもドライを大切にしていたと云う事。

 亡霊は、永遠に少女の味方で在り続けると誓い。
 銃口を突き付けられても、新たなる希望を見出だしても、その誓いは変わらず。
 少女を復讐という名の鎖から解放すべく、銃弾を一身に受け止めた。
 結局は、それだけの、話。

987 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:17:00 ID:jHQL5dS5
 


988 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:17:17 ID:IFOfWoju
支援しよう…

989 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:17:23 ID:AVLxwpTM



990 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:17:36 ID:BgJduhZ0


991 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:17:44 ID:VDQLaF1g
「あっ……あ……あああああぁぁぁあああ……っ……!」

 緑の両眼から、止め処も無く涙が零れ落ちる。
 ドライは背中を丸めて、世界が終わったかのような叫びを上げる。
 復讐を果たす事で得られたのは満足感などでは無く、途方も無い程の喪失感だった。

「あたしは……っ。あたしはァァァ――――!!」

 ずっと追い求めていた救いが、直ぐ近くにあった筈なのに。
 大切な人が、目の前に居た筈なのに。
 ドライは復讐心に駆られるあまり、自分から全てを壊してしまった。
 砂時計の砂は決して逆流しないように、失われてしまったツヴァイの生命は、もう、戻らない。
 

「……やり切れないね」

 絶叫するドライと倒れ伏すツヴァイを眺め見ながら、烏月はぼそりと呟いた。
 ツヴァイとドライの間にどのような事情があったのか、完全に把握出来ている訳では無い。
 それでも二人がお互いをとても大切に思っていたであろう事は、理解出来た。
 ツヴァイがドライの事を愛しているのは一目瞭然。
 そしてドライも、ツヴァイの事を愛しているからこそ、裏切り行為に対してあそこまで深い憎悪を抱いていたのだ。
 これは、誰も救われない物語。
 最悪の結末で終わってしまった、暗殺者達の物語だった。

992 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:17:49 ID:bRuuOZ4J



993 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:19:12 ID:bRuuOZ4J



994 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:19:15 ID:jHQL5dS5
  


995 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:19:32 ID:VDQLaF1g
 重い雰囲気に満ちた広場。
 星空を雲が流れてゆき、カーテンのように月を覆い隠す。
 ぼそりと、ドライが呟いた。

「………憎い」
 
 紡がれた声。
 その一言に籠められた感情は、今まで少女を支えてきたものだった。 
 
「玲二を信じられなかった自分が憎い。玲二を許してあげられなかった自分が憎い。
 銃撃を止められなかった自分が憎い。玲二を殺してしまった自分が――」

 ドライは只ひたすら、自身に対する呪詛の言葉を並べ立てる。 
 これまでドライの動力源となっていたのは、ツヴァイへの復讐心と、吾妻玲二への恋慕。
 復讐が完遂された事により、最も憎く、最も大切な人は、息絶えた。
 今のドライに残されているのは、どうしようもなく沸き上がって来る憎悪のみ。


「ドライさん……」
「……行こう。全てはもう……終わったんだ」

 哀しげな声を絞り出すこのみに対して、烏月が撤収を促す。
 サイコロの目はもう出てしまった。
 結末が確定してしまった以上、この場に残っても仕方無いのだ。
 だと云うのに、このみは一向にその場を動こうとはしなかった。


996 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:20:30 ID:bRuuOZ4J



997 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:21:19 ID:AVLxwpTM
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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド16
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1220886303/l50

998 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:21:21 ID:BgJduhZ0


999 : ◆guAWf4RW62 :2008/09/09(火) 00:21:30 ID:VDQLaF1g
「このみさん?」
「……駄目、だよ。放っておけないもん」

 このみは、このままドライを放っておく事など出来なかった。
 今のドライは、深い憎悪と絶望に苛まれている。
 恩人であるドライがそんな状態に陥っているのに、放っておける訳が無い。
 思い起こされるのは、千華留から贈られた言葉。

――どんな困難にも挫けない不屈の心と、一歩を踏み出す勇気こそあなたに必要な物よ

 嘗てドライは、憎しみを糧に生きるという生き方をこのみに教えてくれた。
 それがあったからこそ、このみは再び立ち上がる事が出来たのだ。
 なればこそ、今度はこのみがドライを助ける番。
 自分から一歩を踏み出して、ドライに手を差し伸べなければならない。
 このみは蹲るドライに歩み寄って、静かに語り掛けた。

「……もう止めよう? ドライさんは確かに間違えたかも知れないけど……自分を責めるだけじゃ、何にもならないよ。
 自分の罪は忘れたら駄目だけど、そればかりに拘って、前を見ないのはいけないと思う」
「…………」

 答えは帰って来ない。
 だがこのみは構わずに、言葉を続けてゆく。

「ツヴァイさんは最後までドライさんの幸せを望んでいたんだよ? だったら……応えないと」
「玲二が……?」
「うん。ツヴァイさんは、ドライさんに復讐はこれきりにしてくれって、後は自分自身の幸せを追い求めろって云ってたじゃない。
 だったら、直ぐには無理かも知れないけど……少しずつ、自分を許していかなきゃ駄目だよ」

 玲二は最後に、幸せになれと言い残して散っていった。
 自身の命が奪われると理解していて尚、ドライの事だけを想っていたのだ。
 もし玲二を殺してしまった事を悔やむと云うのならば、自分を責めるよりも、前を向いて生きていくべきだった。

1000 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/09/09(火) 00:21:51 ID:jHQL5dS5
 


1001 :1001:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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