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ギャルゲ・ロワイアル 作品投下スレ13

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/11(火) 23:05:14 ID:9IWmg6s1
ここは、「ギャルゲーキャラでバトルロワイヤルをしよう」というテーマの下、
リレー形式で書かれた作品を投下するための専用スレです。

前スレ
ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1195136329

投下前の予約はしたらば掲示板の予約スレで行なってください。
ギャルゲロワ専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

作品に対する批評感想、投下宣言は雑談感想スレで行なってください。
ギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ6
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1194516182

基本ルールその他は>>2以降を参照してください。
sage進行でお願いします。

2 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/11(火) 23:05:47 ID:9IWmg6s1
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

3 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/11(火) 23:06:17 ID:9IWmg6s1
【舞台】
http://www29.atwiki.jp/galgerowa?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=MAP.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。


4 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/11(火) 23:06:54 ID:9IWmg6s1
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。

【予約】
したらばの予約専用スレにて予約後(ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1173505670/l50)、三日間以内に投下すること。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。

また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請すろことが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。
(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)

5 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/11(火) 23:08:03 ID:9IWmg6s1
0/6【うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
   ●ハクオロ/●エルルゥ/●アルルゥ/●オボロ/●トウカ/●カルラ
0/3【AIR】
   ●国崎往人/●神尾観鈴/●遠野美凪
1/3【永遠のアセリア −この大地の果てで−】
   ●高嶺悠人/○アセリア/●エスペリア
1/2【Ever17 -the out of infinity-】
   ○倉成武/●小町つぐみ
1/2【乙女はお姉さまに恋してる】
   ○宮小路瑞穂/●厳島貴子
1/6【Kanon】
   ●相沢祐一/●月宮あゆ/●水瀬名雪/○川澄舞/●倉田佐祐理/●北川潤
1/4【君が望む永遠】
   ●鳴海孝之/●涼宮遙/●涼宮茜/○大空寺あゆ
0/2【キミキス】
   ●水澤摩央/●二見瑛理子
1/6【CLANNAD】
   ●岡崎朋也/○一ノ瀬ことみ/●坂上智代/●伊吹風子/●藤林杏/●春原陽平
0/4【Sister Princess】
   ●衛/●咲耶/●千影/●四葉 
0/4【SHUFFLE! ON THE STAGE】
   ●土見稟/●ネリネ/●芙蓉楓/●時雨亜沙
0/5【D.C.P.S.】
   ●朝倉純一/●朝倉音夢/●芳乃さくら/●白河ことり/●杉並
1/7【つよきす -Mighty Heart-】
   ●対馬レオ/●鉄乙女/○蟹沢きぬ/●霧夜エリカ/●佐藤良美/●伊達スバル/●土永さん
1/6【ひぐらしのなく頃に 祭】
   ●前原圭一/●竜宮レナ/○古手梨花/●園崎詩音/●大石蔵人/●赤坂衛
1/3【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
   ●双葉恋太郎/○白鐘沙羅/●白鐘双樹

【残り9/63名】 (○=生存 ●=死亡)

6 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:19:31 ID:X3V60Xg6

そうして、慣れない作業に悪戦苦闘しながらも、何とか作り上げた。
瑛理子の形見の品、爆弾を。
威力は……紙に書かれた内容だと、図書館くらいならヤバイかも。
まあ、そんな危険な物を持ち歩く訳にもいかないので、信管はまた外したけどね。


「さて、じゃあ、まあ行くかね」
そうして、爆弾と信管をデイパックに詰めて、準備は完了した頃、あゆが言った。
「うん、そうだね」
予定よりも、大分時間が掛かったけど、その分の収穫はあった。
なので、気合十分にじゃあ行くかと歩き出したら、
「随分、元気になったみたいだね」
あゆが苦笑したような声をかけて来た。

……ああ、そっか。
爆弾作りは、頭を使っていたとはいえ、休息と同じようだった。
(瑛理子……ありがと)
多分、瑛理子が休めと言ってくれたんだと、そう思う事にした。
というか決めた。
(私、頑張るよ)
気合は十分。
体力も回復。
装備もバッチリ。
(行って来るね)
目指すは山頂!!



7 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:20:43 ID:X3V60Xg6
沙羅の手伝い…といってもそんなに手伝うことなんてなかったから、沙羅が集めてきたものをデイパックに詰める作業をしながら、突然の乱入で中断された思考を再開した。
(……どういう事、だろうね)

沙羅が眠った後、気がつけば階段を昇っていた。
特に意識していた訳じゃあないけど、迷うことなくその場所にたどり着いた。
ホテルの、四階に。
そして、在るべき物は、確かにそこに存在していた。
そう、かつてホテルで別れた、別れざるを得なかった相手。
廊下の先、純白のシーツに包まり、
時雨亜沙が、其処に居た。

判っていた事さ。
あの後、何が起きたのかなんてのは。
時雨が、とうに死んでいる事なんか。
だけど、…だからと言って、納得出来るものでは無い。
もう少し、何とか出来たんじゃないかと。
もっと早く覚悟を決めていれば、時雨を救えたんじゃないかと。
つい、意味の無いことを考えてしまった。
考えて、それで、しばらくそこにいた。

十分、

二十分、


その行動に、意味なんてものは無い。
悔やんでも、時間は戻らない。
どんなに悼んでも…死者は還らない。
そんな事は百も承知してる。
だけど、意味なんて必要は無い。
ただ、そうして居たかったから、そうした。

8 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:21:47 ID:X3V60Xg6

そうして、多分三十分くらい後。
捲ったシーツを再び被せて、
(じゃあな、時雨)
再び、今度こそ最後の、別れを告げた。
そして、ロビーに居なかった沙羅を探して地下に来て、今に至る訳だけども、
(何でシーツが掛かってたのかね)
先ほどから考えてはいるのだけど、答えが出ない。
シーツを掛けるというのは、多分弔いの意味だろう。
つまり、誰かが時雨を弔った。
だが、誰が?

いや、考える必要は無い。
ただ一番高い可能性を、認めたく無いだけ。
(…一ノ瀬、それに佐藤)
時雨を殺したあいつらが、弔った?
在り得ない。
恋太郎とかいうのはあんなに無残に放置したのだから

けど、だからと言って、あの後に来た誰かが時雨を弔う、というのも微妙に考えづらい。
そうなるとやはりあの二人が…?
いや、在り得ない。

でも、そうなると他には……
(時雨を殺したのが……)
否。
その可能性は無い。
でも、もし……
「……よし! これで完成!」

「へーえ、これがかい」
思考を中断された事で、生返事を返してしまった。

9 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:22:45 ID:X3V60Xg6
沙羅はそんな事には気づかないみたいで、嬉しそうに眺めている。
なので、私もとりあえずソレを見てみる事にした。
(爆弾…か)
そういえば、私も時雨が死んだ後に作ろうと思っていた。
結局、そんな技術なんて無い事に気付いたんだけど、
(アンタが…見守ってくれてるのかね? 時雨…)
この場所で、それが叶うなんてね。

今目の前にあるのは、沙羅が二見っていう相手から、形見として受け取った物。
二見…その名前は聞いた事があった。
ハクオロの仲間の一人だったとか。
その二見を殺したのは佐藤良美と、月宮あゆだとか……
(ここでも佐藤良美かい)
既に、この世にはいない相手とはいえ、一体何度邪魔をすれば気が済むのだろう。
最も、その最後は糞虫らしいものだったそうだが。
でも、まだ月宮と…一ノ瀬は残っている。
そうさね、あの佐藤と組んでいた一ノ瀬は、結局は糞虫に違いない。
二見の事を考えてもハクオロを疑う理由なんて無いってのに。
全ては狂言、それだけの事さ、
やることは何一つ変わらない。

あいつらは、殺す。



(さて、そろそろだとは思うんだが…)
時計を確認しながら、微妙にせわしなく辺りを見回してみる。
だが、一向に、来そうな気配は無い。
まあアレを確認して作戦を練り直しているのかもしれないが…。
そんな俺の動きを見て、ハウエンクアがまたも声を掛けてきた。

10 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:24:08 ID:X3V60Xg6

「そもそもだよ、カブラギ」
「ん?」
「そいつらは本当に来るのかい?」
は?
いきなり何を言い出すんだこいつは?

「いやね、ボクだって出来れば来て欲しいよ、その方が楽だしね。
 でもさ、ボクのこの姿を見て、怖気づくって事もあるんじゃないかな」
む…
それは……

「まあ、可能性としてはあるな」
「そうだろう!」
ハウエンクアが嬉しそうに返事をする。
現金な奴め。

「だがまあ、どっち道来ない事にはあいつらはどうしようも無いんだから、犠牲覚悟で来るとは思うんだが…」
…嘘だ。
あの時、画面越しに見たあいつらの目。
あれは、揺るがぬ強さを持っていた。
あいつらは、必ず来る。
ただ、早いか遅いか、それだけだ。
「はははは! まあ、このボク相手じゃあそんな風にしか思えないだろうねえ!」
俺の思考などには構わず、暢気に吠えている。
まあ、もう慣れてきたからため息も出ないが…
…しかし、判っていたことなんだが、俺の事は戦力とは考えてはいないんだな。
まあ、来るほうもアレを見てれれば俺の事などそこまで気にしないだろうが…。

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:25:04 ID:I7eAFAxA


12 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:25:10 ID:X3V60Xg6


……ん?
「……あー司令部、聞こえるか」
まてよ、と思い通信機を作動させる。
しばらくして、反応があった。
『はい、なんですか部隊長』
「ここに来る四人の所持品に、双眼鏡などの視覚補助に類する道具はあるか?」
鷹野が出なかった事にホッとしつつ、質問した。
『……少しお待ちください』
そう言って、オペレーターは沈黙した。

「急にどうしたんだい?」
「ん…ちょっとな」
ハウエンクアの問いに適当に答えながら、頭の中で整理する。
…考えてみればだ、俺だって此処に来るとしたら、まずアヴ・カムゥの対策を考える。
というか、遠くに巨大なロボがいれば誰だってそうするだろう。
それが自然、なら……

『お待たせしました。
 確認出来る範囲では、そのような道具を所持している可能性は、ほとんど無いかと』
「ん、そうか。
 すまなかったな、任務に戻ってくれ」
はい、と言って通信は途切れた。
となると…試してみる価値はあるか…

13 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:25:46 ID:cyRMJv55




14 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:26:17 ID:X3V60Xg6


どういうつもりなんだろうね?
いきなり通信始めた後、
「ここを頼む」
とだけ告げて、カブラギは塔の向こう側の方へと歩き出した。
それからしばらく経つが、一向に戻ってこない。

まあ、最初から戦力に数えてなんていないんだけど、それにしたって監視は暇だ
桜という花びらも、とっくに見飽きた。
はーあ、全く退屈だよ。
暇なので適当に辺りを見回しても、目に映るのは、

森の緑…、

ピンクの花…、

青い鳥……


……鳥?

はて?
この島に鳥なんて居ない筈……
そうしてもう一度良く見ようとして、

「!!」
全身に、緊張が走る。
アレは……
(鳥じゃ……ない!)

15 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:26:23 ID:I7eAFAxA


16 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:26:41 ID:cyRMJv55




17 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:26:58 ID:X3V60Xg6
そう、高速で迫るのは鳥では無い。

「てやあああああ!!」

叫び声と共に接近するのは……青い人影!
白い翼を持ち、水色の大剣を携えた少女!!

(避けっ…………ちぃいいいいい)
僅かに迷う暇すら無い。
咄嗟に、両腕で頭を庇う。
その一瞬後に、

「あああああああああ!!」

僅かに光を纏う大剣の一撃が、ハウエンクアの全身を揺らした。



(堅い……っ!)

ウイングハイロゥの出しうる限界の速度で接近して、可能な限りの力を引き出した一撃は、
それでも敵の装甲を破るには至らなかった。

手に伝わる感触で、反射的に身を翻す。
そのまま速度を保ち、少し下がった地点に着地する。
そして、微動だにしない敵の姿を確認。
その交差した両腕に刻まれた傷の浅さに……思わず歯噛みした。
腕の太さの、三分の一程度。
「存在」ではないとはいえ、今出しうる最大の一撃で、あの程度の傷しか負わせられないとは。

18 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:27:06 ID:I7eAFAxA


19 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:27:26 ID:cyRMJv55




20 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:27:52 ID:X3V60Xg6
「フッ…フフフ…………!!」
そこで、漸く敵の体が動き出す。
ゆっくりと両腕を下ろし、腕に刻まれた傷を確認する。
そうして数秒後、その顔が、わたしを真っ直ぐに見た。
「なかなか、驚かせてくれたじゃあないか」
その声には、余裕の色が濃い。
どうやら…ことみが言ったように、外側へのダメージは効果が薄いらしい。

「この傷は…高くつくよぉ!!」
!!
咄嗟に、上に飛ぶ。
その直後に、金属の塊が通り過ぎる。
予想以上の速さで、相手の爪が、わたしが居たところをなぎ払った。

その一撃に警戒を強めながらも、腕を振るったことによって生まれた隙が、目に入る。
「……そこっ!」
宙返りをして、「求め」で斬りかかる。
「求め」は「存在」よりも柄が短い。
遠心力の差の分、威力は劣る。
その差を埋める為に全身を使って空中で回転し、加速。
足りない分を補う。
狙うは、首!

が、
「甘いんだよ!!」
相手のもう片方の手、左腕が、わたしに向けて真っ直ぐ突き出される。
くっ!
咄嗟に軌道修正して、その爪に「求め」をぶつける。
高く響く金属音と、手に走る衝撃。
その一撃に、更に警戒を強め、再び下がる事にする。
その衝撃に逆らわず、むしろその勢いに乗り、再び後方――さっきよりも遠くに、飛ぶ。

21 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:28:42 ID:I7eAFAxA


22 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:28:58 ID:X3V60Xg6

「逃がすかよおおおおぉぉぉぉ!!!」
が、すかさず追撃が来た。
風を巻き起こしながら、連続でなぎ払われる爪。
激昂している口調とは裏腹に、その攻撃には隙が無い。
前進しながら迫り来る連撃に耐え切れず、更に後退する。

(……強い)
動きを止めずに、分析する。
あの大きさで、敏捷性はかなりのもの。
鋭い爪は、速さと重さが加わって、おそらくわたしでは「求め」を使っても防ぎきれない。
そして、その動きは熟練の戦士のそれだ。
強敵と言うしかない。
(でも…)

「逃がさないって言ってるだろおおおお!!」
後退したわたしを、更に追撃してくる。
回避を優先しながら、更に後退。
「ほらほらほらほら!!
 逃げるだけしか能が無いのかい!?」
相手も、また追撃してくる。

(…いける)
確かな手ごたえを感じながら、更に後方。
もう目の前に迫った、森へと下がる。
いくら威力があっても、木々に阻まれれば攻撃の速度は落ちる。
と言っても、わたしも加速がし辛い分、条件は変わらない。
でも、それは重要じゃない。


23 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:29:18 ID:cyRMJv55




24 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:29:51 ID:X3V60Xg6

(みんな……頼んだ)
わたしが、コレに勝つ必要は無い。
勿論、倒せるならそれが理想だけど、目的は別。
あの塔を破壊すれば、それでわたし達の勝ち。
だから、コレを塔から引き離せば、それで十分……
(ミズホ…コトミ…今!)


(無事を、祈るしかないの…)
森に向かうアセリアさんを左手に見ながら、私と瑞穂さんは走りだした。
言うまでも無く、目的は電波塔。
アレを破壊する為に、私達はここまで来たのだから。


少し前、山頂にあのロボット?の姿を捉えた時、決めた事。
アレとはアセリアさんが一人で戦うと。
それ以外に、方法は無かったから。
…私たちでは、足手まといになってしまうから。

そして、私は同時にアセリアさんを囮する事を提案した。
目的は、あくまで電波塔。
アレを倒す必要は無い。


25 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:29:59 ID:I7eAFAxA


26 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:31:00 ID:X3V60Xg6

音で気付かれないように、山の中腹で、車は乗り捨てた。
そうして徒歩で塔の西側の森に到着した後、アセリアさんが一人で北に移動。
そこから突撃して、それで倒せれば最良。
でも、不可能だった場合は、アレを塔から引き離して貰う。
それも不可能だった場合は撤退することになっていたけど、無用な心配だったの。
アセリアさんは、予定通りにアレを引き付けてくれている。
後は、塔の内部に侵入して、中の装置を簡単に直せない程度に破壊すれば私達の勝ちな……

――タアァァァァァン
「え?」
甲高い音が聞こえた瞬間、右足に熱さを感じた。
何故だか、体が前のめりに倒れた。
受身を取る暇なんて無い。
顔から地面に突っ込んで、その顔の痛みで漸く、私は転んだことを理解した。

そして、失策に気付いた。
敵は、アレだけでは無かったのだと。



その音が銃声だと気付いた時には、すこし右後ろに居たことみさんは地面に倒れていた。
咄嗟に、ことみさんに駆け寄って、

「瑞穂! 南!!」
その瞬間、森から梨花さんの叫びが聞こえた。
(くっ!)
咄嗟に、ことみさんの体を抱きかかえ、左に飛ぶ。
その直後に、僕たちの体のあった場所に、再び銃弾が撃ち込まれた。
ことみさんを抱きしめる格好になりながら、二回ほど地面を転がって、そこで体を起こす。
そして、南側の森の中、木の上に立つ男の姿を視界に捉えた。

27 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:31:20 ID:cyRMJv55




28 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:31:42 ID:X3V60Xg6

(不味い)
何処に、逃げればいい?
元居た方向は、最も遠い。
北…論外
塔の中…侵入出来るかわからない
なら…
そこで、男が木から飛び降りた、
(迷う時間は無い)
僕は左に跳び、そのまま真っ直ぐ走り出した。



“ベレッタM92F”
かつての殺し合いにおいて愛用し、いつの間にやら最も使い慣れた武器になっていた獲物。
それが軍でも制式に採用されているものだったのは、幸運なのかもしれないが…
まあ、そんな感傷じみたものはどうでもいい。
カタログによると、こいつの有効射程距離は50メートル程だとか。
俺はどちらかというと身体能力を駆使した接近戦の方が得意なのだが、それでも人並み…この場合は訓練の経験がある奴という意味だが…くらいには使える。

で、だ、あそこで支えあっている二人まで、この木の上からだと大体50メートルくらいか…
言うまでも無く、不安定な木の上からの射撃は成功率は激しく落ちる。
先ほどは40メートル付近で、足の付け根付近を狙った訳なんだが…。
結果は、太ももをかすった程度。
すぐに走るのは無理だが、動きを封じるには至らない。

29 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:32:18 ID:cyRMJv55




30 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:32:26 ID:X3V60Xg6

(どうするか)
このまま、この場所から射撃を続けても、有効なダメージを与えられる確立は低そうだ。
相手は、遮蔽物の無い地点に居て、迅速な撤退は不可能。
そもそも、予防程度のつもりでこの場所に居たのだから、戦果としては十分か。
そう思い、あっさりとその場所から飛び降りる。

“そもそも相手は俺を気にしてはいない”
そう考えたときに、何となく閃いた。
アレだけのものがここにあれば、誰だってそこに目が行く。
目に見える範囲にいればともかく、隠れていれば俺のことなど考えないと。
そして、その閃きは功を制した。
南側に陣取っていたのは、ここからなら、ハウエンクアの居る塔の北側以外が狙えるから、
そして、遠距離を見る手段が無い以上、南側が死角になっている可能性が高いと判断したからだ。
まあ、ここまで上手くいくとも思ってはいなかった訳なんだが…
そうして、降り立った俺を尻目に、彼女達は東側に逃走する。
北にはハウエンクア、南には俺が居るので、消去法で最も近い方に向かおうとしているのだろう。
(判断は悪くない、が、逃がすわけにはいかないな)
そう考えて、二人を追った。


31 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:32:35 ID:I7eAFAxA


32 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:32:59 ID:X3V60Xg6


(何か! 何か方法は無いの!?)
ただ、見ている事しか出来ない私に、腹が立つ。

元々、この体は身体能力においては(私が出会った中では)最低だ。
だから、この役割になった。
瑞穂達とアセリアの中間、ややアセリア寄りの位置。
アセリアが北側の森に移動した場合、
様子を見て、瑞穂達にゴーサインを出す役割に。
仕事は、それだけ。
後は、見ていることしか無い。
でも、必要な人員ではある以上、反対は出来なかった。

そして、アセリアは上手く行動してくれた。
だから私も役割を果す為に合図を送って、
ことみと瑞穂は走り出して、そうして、ことみは倒れた。

咄嗟に狙撃手の位置を叫んで、それでなんとか瑞穂はことみを助けた。
でも、そこまで。
私に出来る事は、それだけだった。

33 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:33:06 ID:cyRMJv55




34 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:33:48 ID:cyRMJv55




35 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:33:57 ID:X3V60Xg6


……どうすれば、いいんだ……
ことみさんに左肩を貸しながら、懸命に走る。
ことみさんの痛みが伝わって来るけど、今は他にどうしようもない。
(迂闊だった…)

アレを注意するあまり、他には目が向いていなかった。
そうして、この様だ。
(どうすればいい?
 どうすれば、この窮地を抜け出せる?)
後ろから、先ほどの狙撃手が追ってくる。
確か、部隊長と呼ばれていた男。
放っておいても、数十秒後には追いつかれる。
いや、その前に後ろから撃たれるか。

なら方法は、一つしか無い。
「ことみさん、歩けますか?」
「……無理でも、何とかするの」
こともさんも、状況は理解している。
僅かに涙を見せながらも、気丈に答えた。

「何とか頑張って下さい」
それだけ言って、ことみさんの肩から手を放す。
そして、振り向きながら銃を手に取り、大まかに狙いをつけて発砲。
…当てる必要は無い、ただ、ことみさんが森まで逃げる時間を稼げればいい。



36 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:34:39 ID:I7eAFAxA


37 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:34:39 ID:X3V60Xg6

が、相手の動きは、予想よりも遥かに速かった。
僕が振り向いた瞬間には、もう右に転がっていて、その勢いを殺さずに立ち上がり、流れるような動作でこちらに発砲。
(くっ!)
幸い、立ち上がる動作に移った際、咄嗟に左に飛んだ為、弾は外れた。
…相手の動きは、明らかに戦いに慣れた動きだ。
マズいと判断して、左右に不規則にステップを取る。
銃の扱いでは、明らかに相手に分があるからだ。

が、次弾は来なかった。
そこで何を思ったのか、男は銃を構えたまま、こちらに歩いて来た。
その歩みは、速くは無い。
いや、僕の精神が昂ぶっているだけで、普通に歩いているのかもしれないけど、とにかくゆっくりと言っていい動きだった。

(……?)
銃口を向けたまま、警戒を続ける。
目的は見えないけど、相手が時間をくれるなら、それに越した事は無い。
そうして、警戒していたが、こちらの動きには構わずに、一歩、また一歩と、男は近づいてくる。

40メートル…
35メートル…
30メートル…
流石に、これ以上近づかれるのは危険と判断して、覚悟を決める。
出来る事はそう多くない。
(一度発砲して、バックステップ。
 その後は、後ろ歩きで森まで下がるしかない…)
何とか、振り切って森に逃げるしか無い。
と思ったその瞬間。
男は突然加速した。

38 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:34:43 ID:cyRMJv55




39 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:35:13 ID:cyRMJv55




40 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:35:35 ID:X3V60Xg6

「!!」
一瞬、対応が遅れる。
(横!? それとも後ろ!?)
次の行動を考えていたせいで、迷いが生じた。
回避運動をとる方向に悩んだその一瞬。
それは、致命的だった。
何とか左半身を後ろに引いたが、そこまで。
相手が引き金を引くことに出来た対応は、それだけだった。

そうして、弾は、
(外れた?)
だが、安堵している暇なんか無い。
何とか、体全部を今度は右に一歩にずらしながら狙いを定めようとして、
――後方から、何かが倒れたような音が聞こえた。
(!! しまっ!)
ことみさん! とその場で思わず振り返ろうとしたその時。
右肩を、灼熱が襲った。



41 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:35:42 ID:I7eAFAxA


42 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:36:23 ID:X3V60Xg6
(まあ、こんなところか)
あの状況では、彼女が採った足止めという選択はまあ最善だろう。
その後の身のこなしもかなりの物だ。
だが、銃を持った相手に狙いを付ける時間を与えたのは、間違いだ。
まあ、そういう風に行動しやすいようにした訳ではあるんだが…
狙いやすい相手を狙い、その時隙が出来ればしめたもの。
それは成功し、今二人の命は俺の手の内にある。

目の前にいる少女。
いや、男……信じるのが難しいが。
確か名前は宮小路瑞穂。
近接戦闘においては、かなりの能力を持っているが、当然、銃は素人。
その彼女…じゃなくて彼は、右肩を押さえながら、こちらに向きあっている。
まだ、やる気は十分といった所か。
とはいえ、先ほどの命中時に銃を取り落としたのは致命的だな。
俺との間には未だに15メートルもの距離がある。
この状況では、何も出来ない。

そうして、瑞穂から視線を半分遠くに向けて、森の少し前で、起き上がろうと苦戦している少女を見る。
こちらの名前は一ノ瀬ことみ。
高名な両親を持つ天才少女だとか。
とりあえず、先ほどの銃撃で左脚を貫いておいたので、先刻の一撃と合わせれば、移動は困難と。
「動くなよ、一ノ瀬ことみ、今度は殺すぞ」
一応、釘を刺しておく。
その言葉に、起き上がる動作を(表面上は)中断して、俺の方を見る。
それにより状況を把握して、おとなしくなる。
そしてもう一人。
「宮小路瑞穂、お前もだ。
 …判っているとは思うが、お前じゃない、一ノ瀬ことみを殺す」
それで、瑞穂の動きも止まる。
引き金を引くより早く飛びかかれる筈が無い。
無論、こちらの隙をうかがってはいるのだが、表面上は俺の言葉に従った。

43 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:37:28 ID:X3V60Xg6

(さて、)
右手で銃を構えながら、考える。
取りあえずこの二人の命は射程内なんだが、
(どうするか……)
迷う。

別に、殺すか殺さないかでは無い。
そんな程度で迷う心は、とうに捨てた。
まあ、別に殺す必要も無いのだが…。

というか、出来れば殺したくない。
(これは…『ゲーム』だからな……)
誰が、何人殺すか。
そういった要素も、当然ゲームの内に含まれる。
イレギュラーである自分が参加者を殺すというのは、無論好ましくない。
自分には、このゲームの結果よりも、重要なものがある。
ゲームを乱して、ソレが侵されるような事態こそが、最も恐れるべき事だ。
…とはいえ、必要ならば迷わないが。

だが、
(上手く、いき過ぎたな)
相手の命はこちらの掌の上にあるので、無理に殺す必要は無い。
逃げようとしても、すぐに動きを止められる。
そして、このまま放っておけば、その内ハウエンクアが来て殺してくれるだろう。
つまり、コチラからは何もする必要が無い。

44 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:38:04 ID:cyRMJv55




45 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:38:34 ID:X3V60Xg6

(そして、目の前にいるのは宮小路瑞穂で、しかも現在監視も無い…か)
何てこった。
理想的、過ぎる。
一つでも、要素が掛けていれば不可能な行為が、今は可能なのだ。
余裕をみせて質問なんてのは、下の下のそのまた下だが、
「……この状況で、お前はどうする?」

欲求を、押さえ切れなかった。




(どうすれば……いいんだ…)
歯噛みしながら、考える。
振り向くことが出来ないので、ことみさんの状態は確認出来ない。
距離がありすぎて、意思疎通も不可能。
そして、射撃の妨害も、この距離では不可能。
銃は3メートルほど右側に転がっている。
…手詰まりだ。

男は、すぐに僕たちを殺すつもりは無いのようだが、安心出来る筈が無い。
何とか状況を好転させる手段を探すが…男に隙なんて無い。
それでも、男の一挙手一動作から目を離さずに、僅かなチャンスを伺う。
その時、
「……この状況で、お前はどうする?」
男が問いかけてきた。

「……どういう、意味ですか…」
慎重に、答える。
目的は読めないが、チャンスではある。
もしかしたら、僅かにでも突破抗が開けるかもしれない。

46 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:38:46 ID:I7eAFAxA


47 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:39:20 ID:X3V60Xg6

「お前一人なら、何とかなるだろ?」
は……?
咄嗟には理解出来なかった。
そして理解した瞬間に怒りが襲ってきた。
…ことみさんを……見捨てろというのか……

「だがそうすれば、お前は助かるかもしれない。
 …っていうか、このままだと二人とも死ぬぞ」

僕の怒りを明確に察しながら、男は更に続けた。
(くっ……)
怒りはそのままに、少し冷静さを取り戻す。
男の言う事は正しい。
このままでは、僕もことみさんも、殺される。

「ん、ああ。
 自分から殺されるとか考えるなよ一ノ瀬。
 宮小路からお前は見えない。
 確信が無い以上は、こいつは動けない。
 それに、殺す以外にもやりようはあるしな」

(……っ!)
男の言葉で、後ろで何があったのかを察した。
ことみさん……どうか早まらないで……




48 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:39:30 ID:cyRMJv55




49 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:40:17 ID:X3V60Xg6

「宮小路瑞穂、お前もだ。
 …判っているとは思うが、お前じゃない、一ノ瀬ことみを殺す」

(どうすれば……いいの…)
撃たれた左脚が、痛い。
幸い関節は外れているけど、ふくらはぎを貫かれて立ち上がるのも困難。
今撃たれれば、対処する手段はないの。
でもそんな事よりも、私が瑞穂さんの邪魔になってしまっている事の方が、遥かに重要。

「お前一人なら、何とかなるだろ?」
そう、
男は、私をわざと『殺さなかった』の、
何かで読んだ、足止めの為にスナイパーがやるという行動、それをまさか私がやられることになるなんて…

「だがそうすれば、お前は助かるかもしれない。
 …っていうか、このままだと二人とも死ぬぞ」
……そう、なの。
男の言葉は正しい。
私のせいで、瑞穂さんは死んでしまうかもしれない。

(なら……)
恐怖は…拭えない。
でも、もう自分のせいで、誰かに死んで欲しくない。
そう、思って……
「ん、ああ。
 自分から殺されるとか考えるなよ一ノ瀬。
 宮小路からお前は見えない。
 確信が無い以上は、こいつは動けない。
 それに、殺す以外にもやりようはあるしな」


50 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:40:46 ID:cyRMJv55




51 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:41:03 ID:X3V60Xg6

男の言葉に、止められた。
怖気付いたからじゃない、

…その言葉で、自分が本当に何も出来ないと思い知らされてしまったから。



先ほど通った別れ道付近に差し掛かって、思わずブレーキを掛けた。
急ブレーキだったけど、沙羅は特に何も言わなかった。
…何故なら、
「……何さね……ありゃあ?」
「……何かしら…ね…?」
意味不明なものが、見えたから。

あー、うん、あれだ。
自慢じゃないけど、私はこの島に来てからそれなりに変なものは見てきたよ。
魔法やら、実物は見てないけど動いてる死体だったのやら、変な仮面やら、全裸や女装の変態。
明らかに人間離れした奴も見たし、さっき見た透明なのなんて極めつけだろうさ。
でもさ、
でもさ、アレは無いだろう?
あの馬鹿みたいにデカイのは…何だろうねえ?

「あー、沙羅……言ってもいいかい?」
「うん、ということは……とりあえず、私の見てる幻ってわけじゃ無い訳ね」
「幻だって言えば幻にはならないかね?」
「うーん、とっても魅力的だけど……無理ね」
「あ、やっぱりかい」
「うん、そうね」
そうして、向き合って、とりあえず笑った。
沙羅はスッゴクいい笑顔だった。
多分私も同じ位いい笑顔なんだろうなー。

52 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:41:08 ID:OTzbtBMH
 

53 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:41:09 ID:I7eAFAxA


54 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:42:07 ID:X3V60Xg6

……さて、

「で、だ、あれはロボットでいいのかね」
「多分……ね」
お互い真剣な顔になって会話を再会してみた。
逆に真剣になるのが馬鹿らしい気もしなくもないがね…。
てか、
「どう見ても巨大ロボットとか呼ばれる代物、にしか見えないものが山頂付近に見えます」
とか言われたら、まず言った奴の正気を疑うね、私なら。
で、それを私と沙羅が見ちまっていると。
とりあえず…妄想とかそういう代物では無い、不本意だがね。

「……あー、まああれが仮に巨大ロボットだとして、なんであそこにそんな物があるのかね?」
何となく答えは分かる気がするけど、あえて聞いてみた。
「…言わなきゃ、駄目?」
「ん……まあ、言われなくても大体分かってるんだけどね」

護衛…ってことだろうねえ。

そして、
「で、私の目にはアレは大絶賛大暴れ中に見えるんだけどね」
「奇遇ね、私にもそう見えるかな」
なにやら両手を振り回して大暴れしている。
時たま木の枝?みたいなものが宙を舞っている。
てか、あんだけデカイ割には随分と機敏に動いてるように見えるね…

55 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:42:50 ID:X3V60Xg6

「何してるんかねえ?」
「うーん……何かと戦ってる…とか?」
「何かって何とさ?」
「うん…まあ言ってみただけ」
まあ、そう見えない事もないんだけど、
あんなもんと何が戦えるって?

「…あれ……?」
「ん? どうかしたのかい?」
「待って……!」
というと沙羅は後部座席からデイパックを引っつかみ、中をあさり始めた。
そうして取り出したのは……ホテルで貰ってきた双眼鏡。
それで…なにやら真剣な雰囲気であのデカイのの方を見つめていた。
「……」

そうして、待つこと数秒……
「……アセリア!」
は?
アセリアっ言えばアレだ。
あの物凄く強いお嬢さん。
あの子が……どうしたって?

「アレと…戦ってる……」
はい?
「……マジかい……?」
「うん! 間違いない!
 あんな青い髪で羽根の生えた人なんて他に居るはず無いもの!!」
羽根?
思わず突っ込みそうになったけど、止めといた。
私に向けられる沙羅の瞳も、声も、真剣そのものだったから。

56 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:42:58 ID:I7eAFAxA


57 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:43:57 ID:X3V60Xg6

「戦ってるって事は、戦えてるってことかい?」
「……うん…よくは見えないんだけど、何とか無事みたい…」
「……そうかい……」
驚いた…
強いって事は知っていたけども、まさかあんなの相手に出来る程とは思ってなかったね。
つまりあの時は正に九死に一生レベルだった訳だ。

まあ、そんな過去の事はどうでもいいさね。
問題は、
「で、どうするかい、沙羅?」
「え……?」
「正直言って、今回ばかりは私らが行ってどうにかなる相手じゃ無いよ。
 あんなの相手じゃプチッと潰されるのがオチさね」

車で突っ込んでも効くかどうか怪しそうな相手だし、そもそも私らも無事じゃすまない。
手持ちの道具の中でも、せいぜいさっき造った爆弾くらいしか効き目は無さそうだしね。
それは、沙羅にだって判る筈。
それを踏まえた上で、どうするのか。
「アセリアが戦えてるっていうなら、多分私らが行っても邪魔にしかならない。
 だから…私らはどうするべきかね?」
「それは……」

冷静に考えれば、ここで見てるのが一番賢い方法だろうね。
というか、そうしたい。
あんな物の傍まで行きたいなんて思えない。

けれど……
「でも……ここで見てるだけなんて……出来ない」
沙羅は、言った。

58 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:44:02 ID:I7eAFAxA


59 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:44:43 ID:X3V60Xg6

(はあ…)
「ああ…やっぱりかい」
答えは予想していたので、呆れた声を出す。
でも…思わず笑ってしまったね。

「そう言うと、思ってたよ」
自分でも、嬉しそうだと分かる声を出して、アクセルを踏み出す。
沙羅も、笑った。
「うん、ここで何もしなかったら、確実に後悔するよ」
「まあ…そうさね」
徐々に加速しながら、答えた。

「今更、気圧されるなんて私…いや、私ららしく無いね」
私らしい、いつもの自信を込めて、告げる。
「うん…何か、やれることはある筈だよ」
沙羅も、似たような顔だ。

その顔に、心強さを覚えて、アクセルをさらに踏みしめる。

(しかし、私も甘くなったものさね…)
その内心の呟きは、とても心地よかった。



60 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:45:31 ID:X3V60Xg6
唸りを上げてなぎ払われる左腕を少し上に飛んで回避。
瞬時にやや右寄りに前進、相手の左肩付近に移動、
威力よりも手数を重視して、腕の力だけで斬り付ける。
首、
顔、
首、
肩、

四閃放った時点で真っ直ぐ後ろに離脱。
裏拳気味に放たれた左腕を回避。
連続して放たれた次撃、一歩前進しながら直線に放たれた右の突き、
を「求め」の刀身で受け、衝撃に逆らわずに後退。
その進行方向にあった木にぶつかる直前、
空中でバク転気味に半回転し、両足で木に横向きに着地。

両膝で衝撃を吸収し、反動を利用して再び―今度は相手の足元に向けて―飛ぶ。
(!!)
その勢いに合わせるように、相手の右蹴りが放たれ―
(オーラフォトンシールド!)
瞬時に発動した神剣魔法で軽減しながら受ける。
(…)
少し痺れたが、問題は無い。
だが、勢いを利用し一度離脱。
丁度あった木の枝に着地して…改めて相手を観察する。

何度か突撃と離脱を繰り返したけど、一向に効いている様子が無い。
硬い外殻は、どれだけ攻撃すれば破れるのか検討も着かない。
たとえこの場に「存在」があったとしても、打ち破れるかどうか。


61 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:45:39 ID:I7eAFAxA


62 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:46:07 ID:X3V60Xg6
では、その間の稼動部はどうなのか。
正直、よく分からない。
首を中心に上半身の稼動部には一通り攻撃してみたのだが、確かにそこなら斬れる。
事実、何箇所にも傷跡が存在し、そこから赤黒い体液?が漏れ出ている。
ただ、それがどの程度効いているのかが判らない。
以前戦った龍は、血を流せばそれなりに苦痛の色をみせたのだが…
(どうしよう)
流石に、切断すれば効くとは思うのだけど…
(無理)
相手には、中々隙が見つからない。
攻撃時に生じる隙だけでは、そこまでのダメージを与えるのは難しい。
攻撃し続ければ、いつかはそこまで持っていけるかもしれないけど、多分その前にマナが尽きる。
万全の状態なら或いは…といったところ。

(……こせ…)
ん?

アレ?と思った瞬間。
前方から銃声と、
「瑞穂! 南!!」
リカの叫びが聞こえた。


63 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:48:06 ID:X3V60Xg6



(くそっ! ちょこまかと鬱陶しい!!)
ヒラリ、と木の上に降り立ったアセリアを目にして、ハウエンクアの苛立ちは頂点に達しようとしていた。

最初こそ何も出来ずに引いていくしかない相手に、爽快感を覚えていたのだが、
戦いが長引くにつれて、徐々に苛立ちが増してきた。
こちらは無傷ではない…まあ致命的な傷はないが。
それに対して、相手には未だに有効な一撃を与えられていない。

大抵避けられるか、剣で防がれる。
時たま当たっても、不思議な光で大して効果が無い。
あんなちっぽけな羽虫なんぞ当たればイチコロだと思っていたのだが、どうやら考えを改める必要がありそうだ。

そう、ハウエンクアが考えた時、
後方から銃声と、
「瑞穂! 南!!」
女の叫びが聞こえた。



アセリアが有利に戦いを進めていたのには、いくつか理由が存在する。


64 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:48:54 ID:X3V60Xg6
まず、地形。
巨体であるアヴ・カムゥと、小柄なアセリアでは、森の中での敏捷性に大きな差が生じる。

次に、心持ち。
最初から相手を侮っているハウエンクアと、
万全で無いが故に全力で相手するつもりのアセリア。
それが、更に戦力の差を生む。

更に、目的の違い。
時間稼ぎを視野に入れているアセリアと、殲滅が目的なハウエンクア。
危険が無理をせずあれば離脱するアセリアを、ハウエンクアは捉えられない。

そして、最も大きな要因である、経験。
ハウエンクアとて、左将軍の地位にある以上、戦闘経験は豊富だ。
だが、素早い相手、空を飛ぶ相手と戦った経験はあるが、その両方を備えているのはアセリアが初めてだ。
それに対してアセリアにはアヴ・カムゥと同程度の大きさの相手との戦闘経験が存在した。

主な要因として、この三つが存在した。
だが、

まず、経験とは戦いの場において蓄積されるもの、
戦闘経験の差という要因は、徐々に縮まりつつある。
次に、相手を強敵と判断したハウエンクアからは、侮りが消えた。
それが、更に差を縮める。

元より万全では無いアセリアと、完全な状態であるハウエンクア。
この時点で、戦力はほぼ同等。

では、仮にそこで残る二つ、
地形の有利と、目的の違いを取り払えば、
…どうなるのだろうか。

65 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:49:04 ID:I7eAFAxA


66 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:49:54 ID:X3V60Xg6


(くくく、なるほどね)

思うように、攻撃が当たる。
まあ、どれも軽いし、上手く受け流されているけど、気にならない。
と、その時、振るった腕の衝撃を利用して、女は少し距離を取る。
そこで笑みを浮かべ、
女を追撃せずに塔の方向に前進。

慌てた様に、女はこちらに飛んでくる。
それを待って攻撃。
それを避け、女はボクの進行方向に移動し、剣を構える。
(つまり、囮だったわけだ)

構わずに前進。
動かない女に右腕を振るう。
受けた。
すかさず左。
またも受ける。
右、受ける。
左、受ける。
右、左、右、左、右、
そこで、女は受けきれずに左側に吹っ飛ぶ。


67 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:49:59 ID:cyRMJv55




68 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:50:46 ID:X3V60Xg6

それを見て、再び前進しながら。
「ホラホラ、そんなところで寝てるんなら、ボクは先にいっちゃうよ?」
女を挑発する。
その声を最後まで聞かずに、女は再度ボクの前に移動する。
その表情に、苦痛の色が混じっているのが見える。
ひどく、気分が良かった。
進もうと思えば進めるけど、
わざと止まって相手をしてやった。

先ほどまでの無表情が、今や悲壮感すら漂わせている。
(さあ、ボクをコケにした代償は、高いよ)


「…愚問ですね」

漸く、瑞穂が口を開いた。
最も、こちらの質問に答えるというよりは、ことみの安全の為だろうが。

「愚問か?
 少しぐらいは納得したんじゃないか?」
まあ、答えてくれるというなら文句は無いのだが。
「…………」
またダンマリか。

「かつて、お前は厳島貴子の為に、他人を殺すことを決意しただろう?
 もう一度、同じことをすればいい。
 直接手を下すんじゃない分、楽だろ」
「ふざけるな!!」

69 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:51:27 ID:X3V60Xg6
激昂。
まあ、予想通りだが。
「まあ、そう怒るな。
 ところで話は変わるが、カルネアデスの板って知ってるか?」
「……?」
いきなり話題を変えた事に、瑞穂が戸惑う。

「一ノ瀬、お前なら知ってるよな。
 教えてやってくれないか」
知らなそうだと判断して、とりあえずことみに話を振る。
ややあって、
「……古代ギリシアの哲学者、カルネアデスが出した問題と言われているの。
 別名「カルネアデスの舟板」
 古代ギリシャで、船が難破し、乗組員は全員海に投げ出された。
 ある男が命からがら、一片の板切れにつかまったが、そこへもう一人、同じ板に掴まろうとする者が現れた。
 しかし、二人も掴まれば「板が沈んでしまう」と考えたその男は、後から来た者を突き飛ばして、溺れさせてしまった。
 男は助かり、この事で裁判にかけられたが、罪には問われなかった。
 …刑法で言う、『緊急避難』にあたるの」
硬い声で説明してくれた。
言いたい事がわかっているのだろう。

70 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:51:40 ID:cyRMJv55




71 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:51:44 ID:I7eAFAxA


72 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:52:29 ID:X3V60Xg6

同様に悟った瑞穂が、こちらを睨む。
「まあ、言いたい事はわかるよな。
 今度は、罪にも問われないぜ……多分な」
その視線を受け流しながら、
「ああ、ついでだ、アルキメデスの原理についての説明も頼む。
 公式とかはいらんぞ」
ことみにもう一度問いかける。
「……アルキメデスが発見した物理学の法則。
 水中の物体は、その物体がおしのけた水の重量だけ軽くなる、というものなの」
ことみが答える。
先ほどよりも、怪訝そうな声だが。

だが、それには構わず、
「あるところに、一組の男女がいました。
 その男女は、ある危険な経験に会いましたが、それを経て結ばれ、その危険を退けました」
昔話を始める。
細かいところは省くが。
「ところが、退けていざ愛の逃避行というところになって、問題が起きました。
 二人の乗った潜水艇は、浮力の不足で海上までたどり着けないのです」
二人とも困惑顔だが、構わずに続ける。
「その時、男の頭に浮かんだのは、アルキメデスの原理でした。
 二人乗っていては重すぎるのだと。
 さて、その時男はどうしたでしょう?」
多少は脚色してあるが、まあいいだろう。
本筋は正しい。

73 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:52:29 ID:cyRMJv55




74 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:53:09 ID:cyRMJv55




75 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:53:15 ID:X3V60Xg6
しばし沈黙。
「……男は、その潜水艇から降りた」
ややあって瑞穂が答える。
「正解だ」
まあ、ここで間違えるような奴なら、こんな質問はしていない。
問題は次。

「さて、あるところに別の男…少年が居ました。
 少年は男女たちと同じ場所で危険に遭遇しました。
 その中で、少年は自分を励ましてくれたある少女の事を、とても大事に思うようになりました」
しばしの、追憶。
「その後少年は、男女の活躍もあって危険から逃れることが出来ました。
 ですが、その時少女は偶然から危険の中に取り残されてしまったのです」
今でも、まるで昨日の事のように思い出せる
「少年は、他の仲間と共に、いつの日か少女と男を助ける事を誓いました。
 少女は最も大事な人、男は仲間であり、その英雄的行動は幼い少年の中では憧れとなっていました」
瞬きのように過ぎた時間。
「そうして月日は流れ、成長した少年と仲間は、二人を助ける事に成功したのでした」
そうして訪れた、幸福。
だが、

「めでたしめでたし、と言いたいが続きがある」
そこで終わっていれば、どんなに幸福だっただろうか。
「その少年達に、新たな危険が訪れました。
 男女か少女、少年はどちらかを選ばなければならなくなってしまったのです」
考えても仕方が無いが、つい考えてしまう。
「そうして少年は、少女を選びました。
 めでたくなしめでたくなし」
他に道は、無かったのだろうかと。

76 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:53:25 ID:I7eAFAxA


77 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:53:46 ID:X3V60Xg6

「……貴方は……まさか」
少しして、瑞穂の声。
その響きは、先ほどとは異なる。
「カルネアデスの板だな。
 片方が自分、片方が大切なものなら、男の行動で相手は助かる」
さて、
「だが、片方が大切なもの、もう片方も大切なものだとしたら…
 宮小路瑞穂……お前ならどうする?」

お前なら…
アイツなら…
どうした?
俺は……どうするのが最良だったんだ?

「……私は……」

だがその答えは、聞けなかった。




初めて見たとき、僅かに違和感を覚えた。
その時は、それっきりで、その後は気にしてもいなかった。

けど、
語る男の姿に、再び違和感を覚える。
似ている…のだ。
口調、
仕草、
雰囲気、
酷似とは言わない、だが、どこか共通点がある。

78 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:54:18 ID:X3V60Xg6

そして、結ばれたというある「男女」
その男とは……
「……貴方は……まさか」

「カルネアデスの板だな。
 片方が自分、片方が大切なものなら、男の行動で相手は助かる」
返事の変わりに、新たな問いかけ。
「だが、片方が大切なもの、もう片方も大切なものだとしたら…
 宮小路瑞穂……お前ならどうする?」
その質問には、今までに無い色が篭っている気がした。

僕は……
僕なら……どうするのか。
一度、僕は選んだ。
その時は、貴子さんを。
でも、今は、

「……私は……」

そこまで言った時、
目の前に、何かが落ちた。




79 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:54:34 ID:OTzbtBMH
  

80 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:55:15 ID:I7eAFAxA


81 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:55:58 ID:I7eAFAxA


82 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:55:58 ID:cyRMJv55




83 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:56:35 ID:I7eAFAxA


84 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:56:40 ID:X3V60Xg6
(銃……だと?)
突如、俺と瑞穂の中間辺りに、銃が落ちてきた。
思わず、停止する。
この場にはもう一人、古手梨花がいる事は理解していたが、
それでも、その出来事は予想外だった。

反射的に銃を確保しようと動いて、
視界の右端に、小柄な人影を捉えた。
(くっ!)
すかさず、左に転がる。
直後、銃声。

いつの間にか、古手梨花が南に回りこんでいたようだ。
我ながら迂闊ではあったが、それでも問題は無い。
視界の端に、動き出す瑞穂を捕らえ……迷う。

動けないことみとの距離は、大体50メートル。
狙いを付けるには、1、2秒は必要になる。
恐らくその間に、瑞穂はこちらに銃を向ける筈だ。

(まあ、仕方が無い)
再びことみを人質に使う選択を、あっさり放棄する。
そもそも、今までが上手く行き過ぎていただけなのだから。
何と言おうとしたのかは気になるが、それに拘るわけにはいかない。

(1対2、戦力としては古手梨花の方が劣る)
一秒程度の間に、方針を定めて、南側を向いて……固まる。
(ね、こ?)
なぜだか、梨花の頭に猫の耳が生えていた。

85 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:57:16 ID:X3V60Xg6
そうして、停止した次の瞬間。
視界を、赤が覆った。

10メートル程先の地点を、炎が覆っていた。
は?
…炎?
理解は不可能だった。
だが、反射的にその炎から回避行動をとる。
そうして、後退しながら、その炎が、生じた場所から動かず、数秒たって消えたのを見て、漸く状況を理解した。
(目くらまし!)

瞬間、立ち上がろうとして、
上から4つ、筒状の物体が降って来た。
咄嗟にいくつか確認、その内一つが他と異なる形状をしているのを見て更に後退。
二秒後、それらが、地面に落ちる

一秒、
二秒、
反応は無い。
(ちっ!)
これも囮。

そうして、南と東、どちらを追うか迷った瞬間。
(…これは)
唐突に訪れる、死の予感。

慌てて、その感覚の出所を探す。
(…後ろ!)
位置を察知し、振り向いた瞬間、
青い突風が映り…
(……は?)
光の塊が、視界を覆った。

86 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:57:48 ID:I7eAFAxA


87 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:57:50 ID:X3V60Xg6


南に駆け出しながら、心の中で礼を言う。
“トラップとは、相手の心に仕掛ける物ですのよ”
有り難う…沙都子…
あなたの言葉のおかげで、何とかなった。


森の中を移動しながら考える。
相手は、山狗の部隊長。戦闘のプロだ。
事実、瑞穂とことみが簡単に窮地に追い込まれた。
私がどうにか出来る相手じゃ無い。

でも、そこを何とかするしかない。
(皆なら、どうする?)
圭一なら、話術。
“いいか、そもそも以下略”
…無理。
レナなら…………
“お持ち帰りーー”
どう考えても無理。
みおn……
無理。
沙都子なら、トラップ。
“トラップとは、相手の心に仕掛ける物ですのよ”
……無理、では無い。

88 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:58:28 ID:X3V60Xg6

とはいえ、森の中に仕掛けても意味が無い。
何か道具を使う……これしかない。

(でも)
荷物を確認しながら思考を続ける。
私に使えるのは、精々ヒムカミの指輪と催涙スプレーのみ。
でも、この二つは接近しなければ意味が無い。
銃が二挺あるが、当たらなければ何の意味も無い。
その他の物は、役に立たないか、私では扱えない物ばかり。

それでも、何か無いかと調べて、
潤の荷物の中に、催涙スプレーと似たような缶を三つ発見。
“ゲルルンジュース”
……どうしろと…
とりあえず、心の中で潤に投げつけてやった。
…外れた。
と思ったら、破裂して足に掛かった、いい気味だ。

うん?
『破裂』
急いで、催涙スプレーを見直す。
…どう、かしらね?
成功率は、低いというかそもそもあるのか不明。
けど、別に成功する必要は無い。
……そもそも、相手には、これが何なのかはわからないはず。
よく見れば一目瞭然だけど、咄嗟にはわからない。
なら、少なくても隙は出来る。

89 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:58:39 ID:cyRMJv55




90 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:59:11 ID:I7eAFAxA


91 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 22:59:12 ID:X3V60Xg6
(ていうか、そもそも)
役に立たないか、私では扱えない物
これは、男にはわからないのではないか?

(そう、ね)
決めた。
とにかく、派手にやって隙を作ってやる。


そうして、瑞穂の動きを確認して、
北から、アセリアが飛んできた。
後は、任せるしかない。
そう考えて、森に飛び込む。
そして、合流地点に向かうことにした。


ミズホ…!
コトミ…!

詳しい事は…わからない
でも、木々の隙間から僅かに見えた光景は、最悪に近かった。

でも、助けに行くことは、出来ない。
「あっはははは!
 さあ、どうするのさ!?」
コイツを何とかしない限り。
最大速度では私が上。
でも、ここからミズホ達の所まで行って、二人を助けて離脱するだけの差は……無い。
二人抱えた速度では、コレは振り切れ無い。

何とか……、30…いや20秒。
それだけ、こいつとの時間差があれば、二人を抱えて空に逃げられるのに。

92 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 22:59:32 ID:cyRMJv55




93 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:00:08 ID:cyRMJv55




94 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:00:26 ID:X3V60Xg6

そこで、また吹き飛ばされる。
相手はまた前進。
すかさず、進行方向に移動する。

(もう…持たない)
既に、両腕は限界だ。
全身に、細かい傷を負っている。
マナも、残り少ない。
そうして、もはや油断しきった相手の動きを見て
(やるしかない!)
覚悟を、決める。

「パッションッ!!」

神剣の力を解放する。
熱情のオーラは、攻撃力を上昇させる変わりに、防御力が激減してしまう。
だから、さっきまでは使わなかった。
(食らわなければ…それでいい!!)

こちらから前進。
渾身の一撃が、相手の腕を弾く。
が、すぐさまもう片方の手が振るわれる。

そこを、さらに前進!!
懐に入り込み、
右に振った剣を反動を利用してもう一度斬り付ける。
(浅い)
でも、オーラの力を借りても、相手の外殻を破るには至らない。
(痛)
先ほどの接触時に、爪が少しかすった背中が痛む。
だが、気にせずに連続で斬り付ける。

95 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:00:32 ID:I7eAFAxA


96 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:00:59 ID:cyRMJv55




97 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:01:12 ID:X3V60Xg6
「この! しつこいんだよ!!」
が、そこで、相手の巨体が迫る。
大きさを利用した体当たり。
この距離では……避けられない…

(くっ)
僅かに下がるが、対して意味が無い。
全身に衝撃が走り、後方に飛ばされる。
そして、そこに、

「うあっ!」
追撃、
振るわれた右の爪は…直撃。
弱まっているオーラの守りが破られ、左肩の鎧が砕け散る。
「くっ」
痛い
鎧で防ぎきれず、肩にも傷を負った。

「止めだあああぁぁぁぁぁぁ」
そこに更なる追撃。
それは、渾身の一撃。

それを
(待ってた!!)
振るわれる左腕を、僅かに下がりながら左に回転しながら、避ける。
そして、その勢いにオーラを乗せて。

相手の『左肘に』全力で横薙ぎの一撃を叩き付ける。
「なっっっっ!!」
渾身の一撃に私の全力を上乗せした腕の勢いに、
相手の体が流され、転倒する。

98 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:01:38 ID:cyRMJv55




99 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:01:56 ID:X3V60Xg6

でも悠長に見ている暇なんて無い。

たたき付けた力に乗って。
反転。
全力で……飛ぶ!
そうして、塔を横目に進みながら状況を把握。
リカの行動で、ミズホは行動を開始している。

だが、男は未だに健在。
再びその力を振るおうとしている。


この距離で、わたしに出来る事は…
「マナよ、我が求めに応じよ」
唯一つ
「一条の光となりて、彼の者を貫け!」
残り少ないマナを、「求め」に集めて、

(ユート)

「オーラフォトン」

(力を貸して)

「ビームッッ!!」

神剣魔法が放たれた。
放たれた一撃は、ユートの一撃とは比べるべくも無い。
だが、人間相手にはそれで十分すぎる。

100 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:02:31 ID:cyRMJv55




101 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:02:53 ID:X3V60Xg6
リカは、もう森の目前に居る。
ミズホは、コトミの方に駆け出している。
コトミも、既に起き上がっている。
ただ、動きが遅いので怪我は重いのかも。

念のために、目の前の男に追撃して、そのままミズホとコトミを抱えて離脱、なんとかリカと合流。

そう思い、男に突撃して、
(え?)
そこには、しっかりと両の足で立つ男。

そして、相手の突き出した剣に、わき腹を切り裂かれた。



化け物め…

あの一瞬、死を覚悟した。
具体的に何なのかは不明だが、兎に角、光の塊としか言えないモノ
(ふざ…けるな!)

ソレを見て、怒りが襲ってきた。
俺は、何の為にこんな所に居る?
ここで俺が死んだらココはどうなる?
何のために…武とつぐみを生贄に差し出した?

だが、

102 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:03:28 ID:cyRMJv55




103 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:03:44 ID:X3V60Xg6
(間に、合わない…)
両腕で顔を覆うのが精一杯だった。
流石に、消し炭にされて治る自身は無い。
何とか命だけは永らえようとして、
その時、確かに不思議な力を感じた。
『何か』が俺の体を光から護った。
そして、光と同じ、赤色の輝きを放つ剣
(こいつの…力か?)

その剣を、腰から抜き、
迫る相手に突き出した。

確かな手応えを、感じた。



アセリアさん…

後方で、男の相手をしているアセリアさんが気になる。
だけど、今はそれよりも優先しなければならない事がある。

(ことみさん…)
立ち上がってはいるものの、その動きは遅い。
このままでは、森に逃げ切るまでに、再度攻撃されるかもしれない。
先に、ことみさんを助けないと…。

そう思い、走る。
(だが、片方が大切なもの、もう片方も大切なものだとしたら…
 宮小路瑞穂……お前ならどうする?)
男の声が、心の中で木霊した。

104 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:04:28 ID:X3V60Xg6


(ふん、生意気なんだよ!!)
折角このボクがわざわざ相手をしてやっていたというのに、
無視して行くなんて。

そうして、森を出て駆け出す。
鷹野の命令なんてもうどうでもいい。
あの生意気な女だけは、ボクの手で八つ裂きにしてやる。

そうして、その巨体が少し進んだところで、
(……そうだね、そうしてやろう)
左側に、面白いものを捉えた。



(永遠…神剣?)
突き出された、赤黒い、剣。

今なら、今になって、ようやく、その事を理解した。
(…何故?)
こんな近くに来るまで気付けなかったのか。
男の剣は、こんなにも禍々しいオーラを放っているというのに。

だが、考えている暇は無い。
放たれた突きを、咄嗟に「求め」で受ける。
そこで、男は右前に前進しながら、今度は横なぎの一撃。
肩の怪我のせいで、「求め」を右腕一本で持っていた為、僅かに遅れる。
そのまま、男は、二撃、三撃と様々な角度から攻撃してくる。
両腕で放たれる一撃は、重く、鋭い。
加えて、男はわたしと変わらないくらいに……速い!

105 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:04:30 ID:cyRMJv55




106 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:04:33 ID:I7eAFAxA


107 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:05:35 ID:X3V60Xg6

仕方無しに、両腕で「求め」を握るが、傷ついた左腕では、相手との差が埋めきれない。
男の連撃に、徐々に後退させられる。
(くっ)
斬られた右のわき腹が、痛む。
鎧があったわき腹だったのは、唯一の幸いか。
他の場所なら、とうに終わっていたかもしれない。

だが、いずれにしても、この傷では長くは持たない。
だがそこで、はたと気付く。
(何故、わたしはここから退かないんだ?)
男は速い。
だが、直線の速度ではわたしに及ぶ筈が無い。
そもそも、本来のわたしの戦い方は、距離を取って速度を生かした物であり、
このように近距離で斬りあうものでは無い。

なのに、何故、今まで退くと言う選択をしなかった?
(何か、おかしい)
そう、考えた時。

濃密過ぎるマナと、

(「誓い」を、砕け)

声が、聞こえた。




108 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:05:40 ID:I7eAFAxA


109 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:06:52 ID:X3V60Xg6

(…おかしい)
俺は何故、アセリアと『剣で』戦っているんだ?
無論、アセリアは、確実に脅威になる相手ではある。
そして今、手傷を負い、心を乱す要因も多い。
倒すなら、絶好の機会だ。

だが……
銃を併用する。
ハウエンクアの方に誘導する。
強敵と正面から戦う必要なんて、これっぽっちも無い筈だ。

それに、気がつけば俺の振るう剣は、相手の体では無く、『剣』を狙っている。
何故だ?

この剣は……

桑古木には、神剣の声は聞こえない。
彼は、あくまで外付けの魔力で神剣を使用しているのであり、
その内に魔力を秘めてはいないから。

彼の失敗…あえてそう表現するのであればだが…は一つだけ。
アセリアを、
スピリットを斬ってしまった事だ。
スピリットとは、マナの塊であり、神剣とはマナを食らうモノ。

その時、「誓い」はスピリットの傷からマナを吸収し、その余分なマナは、弱まっていた封印の効力を、打ち破った。

そうして目覚めた「誓い」の目前に、「求め」があった。
そして「求め」に「誓い」の波動が触れた。

そして、二つの神剣は、本能に従った。

110 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:07:35 ID:X3V60Xg6


「ことみさん…行って下さい」
「そんな!」

瑞穂さんの真剣な声。
でも、納得出来ない。
いくら瑞穂さんでも、『アレ』を相手に出来る筈が無い。

北から迫る鋼の巨体。
その速度は、今の私達よりも遥かに上。
何とか森の中までは来れたけど、そう簡単に逃げられる相手じゃない。
アセリアさんは、男と交戦中。
(…まさかあそこまで強いなんて思わなかったの)

そして、私の足では、そんなに遠くには行けない。
どう計算しても、逃げ切れない。
でも、
「私を…置いて逃げて!!」
瑞穂さん一人なら、可能性はある。
私がホンの数秒でも足止めすれば、その確率は上がる。
でも、
「瑞穂さん!!」
私の頼みを聞かず、瑞穂さんは『アレ』に向かう。
……馬鹿、なの。

涙を抑えきれない

111 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:08:32 ID:X3V60Xg6

ここで守られても私じゃあ逃げられないの。
瑞穂さんの……犠、牲……は無駄なの。
私が残れば、瑞穂さんが助かる可能性はあるの。
一人死ぬか、二人死ぬか。
考える必要なんて……無いの。

嗚咽が漏れる。
でも、私も、多分同じことをする。
立場が逆なら、私だってああするの。

一歩、また一歩、痛みを無視して歩く。
無駄だろうと考えながらも、僅かな可能性に掛けて。
瑞穂の…犠牲を、無駄にしない為に。

そうして、少し、一分も無かったかもしれない。

「アッハッハッハッハッハ!!!」
背後から高く響く嬌声。
振り向くと、倒れ付す瑞穂さんと、そこに迫る凶刃。

咄嗟に、…無意味と知りながら…銃を向けようとして、

(え?)

突然の浮遊感。
そして、私の意識は、突然の閃光にかき消された。




112 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:09:19 ID:I7eAFAxA


113 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:10:07 ID:I7eAFAxA


114 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:11:25 ID:I7eAFAxA


115 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:12:37 ID:I7eAFAxA


116 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:12:41 ID:X3V60Xg6
「私を…置いて逃げて!!」
ことみさんの言葉に、反射的に駆け出す。

「瑞穂さん!!」
後ろから聞こえる声には、答えなかった。

ことみさんの言葉は正しい。
でも、
(だから、何だって言うんですか!)
そんな事、出来る筈が無い。

(カルネアデスの板だな)
男の言葉がよみがえる。
(片方が自分、片方が大切なものなら、男の行動で相手は助かる)
確証は無い、でも、多分そうなんだろう。

駆け出しながら、思う。
男の最後の問いには、未だに明確な答えが出ていない。

(でも、)
一つ、気付いた。
男の質問は、前提が間違っている。
“彼”の頭には、そんな計算なんて無い。

ただ、そうしたかった。

それだけの事なんだと。



117 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:13:11 ID:cyRMJv55




118 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:13:24 ID:X3V60Xg6
(やれやれ、全く愚かだね)

こちらに向かってくる女を見て思う。
恐らくは、足止めのつもりなんだろう。
無意味な事だ。
本当だったら、のんびりといたぶってやるんだが、今はあの女を苦しめるのが先だ。

そう思い、一気に加速する。
女の持つ銃が撃たれるが、無視。
そのまま、突撃。
女は横っ飛びにかわすが、そこであえて追撃をせず、
森を進もうとする。

その行動に、女は慌てて駆け寄り、
振るった左手が、女の胸に命中した。

「アッハッハッハッハッハ!!!」

なんて愚かなんだろう。
こうも簡単に引っかかるなんて。
どっちみち、もう一人の女だって、逃がさない。
無駄死にだ。
(オヤ?)
とそこで気付く。
まだ、起き上がろうとしている。
しぶといな、思い、今度こそ止めを刺そうとして、

次の瞬間、ハウエンクアの意識は消えた。

119 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:13:30 ID:I7eAFAxA


120 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:14:15 ID:I7eAFAxA


121 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:14:28 ID:X3V60Xg6



まさか…これに命を救われるなんてな…。
胸を、強打されて、吹き飛んだ。

ただ、鋭い爪はギリギリ届かなかった。
(運が……いいのかな……)
胸にいつもいれてあったアレが、僅かに、爪を防いでいた。

とはいえ、全身打撲状態だが。

(……まだだ)

一分でも、一秒でも時間を稼ぐ
力を振り絞って、起き上がろうとする。

そこに影が差した。
相手が、腕を振り上げている。
(ここ、までか……)

諦めるつもりは無い。
ただ、理解は出来た。

(梨花さん……どうかご無事で)
もう、何も出来ないと。
(ことみさん……頑張って下さい)
それでもせめて、
(アセリアさん……約束、果たせませんでした)
少しでも、持たせようとして、

その瞬間、光が視界を埋め尽くした。

122 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:15:22 ID:X3V60Xg6


(「誓い」を、砕け)

体が、勝手に動く。
目の前の男と、
いや、男の手にある剣「誓い」と、戦い続ける。

(求め……!)

心の中で叫ぶ。
だけど、体が自由に動かない。

(やめてくれ……)

こんなことをしている暇なんて無い。
ミズホと、コトミを助けに行かないと
視界の遠く、二人をあのキカイが追っているのが見える

(「誓い」を、砕け)

「求め」の声は変わらない。

再び「誓い」と刃を交える。
力の限り、相手を押し、
男も、同様に押し返してくる。

と、そこで、
(え…?)

森の木々の間、吹き飛ぶミズホの姿が見えた。

123 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:15:32 ID:I7eAFAxA


124 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:15:59 ID:X3V60Xg6
(「求め」……!!)

(「誓い」を、砕け)
その言葉に、絶望する。
キカイが腕を振り上げた。
もう、どう頑張っても、間に合わない。



(…………そうか、わかった)
だから、その声に、応えた。
(「誓い」を、砕く)
(ユートの変わりに、わたしが義務を果す)
(…どんな代償でも構わない)

ガラスが割れるような高い音

(力を…貸して!)
(わたしは…皆を守る!)

澄んだ音と共に、『誓い』にヒビが入り、

(今度こそ……大切な人を……救うんだ!)

アセリアは、飛んだ。




妖精の、叫びが聞こえる。
純粋なる、求めを、
力を、願っている。

125 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:17:10 ID:X3V60Xg6
かつての契約者は、既にマナへと還ったのか…
我の内に、僅かにだがその残滓を感じた。

……劣化存在たる妖精には、契約者たる資格は、あった。

不都合は、無い。
ならば、その求めに応じよう。
汝を、新たな契約者として認めよう。

ただ、一つだけ誤りがある。
(否)
(我は……『  』)



感じる。

全身に満ちる、神剣のマナを。
『存在』を遥かに超越した力を。

…出来る。
これなら、届く。
ミズホを、みんなを、今度こそ……救える!

そう、
どう頑張っても、間に合わない。
それは、さっきまでの話。
確かに、今の速さでも剣は届かないかもしれない。

126 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:17:43 ID:I7eAFAxA


127 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:19:29 ID:I7eAFAxA


128 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:19:35 ID:X3V60Xg6
でも…
――神剣に、マナを集める。
『力』は届く

――その速度は、先ほど一撃よりも遥かに早く、まさに一瞬。
わたしの、力は…想いは…必ず、届く!!

マナよ!
(マナよ、我が求めに応じよ)
「集えマナよ……」




 
……え?

(一条の光となりて)
「我に従い」

……違う

(彼の者を貫け!)
「敵を爆炎で包み込め!」

何かが……違う

これは…これは……

129 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:20:12 ID:I7eAFAxA


130 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:20:48 ID:X3V60Xg6

わたしは、知らない。

(「オーラフォトン」)

これは…『求め』の、ユートの、力じゃ……ない


これは、これは…これは

(否)

………………何?

(我は……『世界』)


わたしは今……何を……


「ブレイクッ!!」



何を……している?





131 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:21:29 ID:X3V60Xg6
あの時、何が起きたのか。
俺の知識程度では何一つ解らなかった。
だから、俺に理解出来たのは、事実だけだ。

あの時、澄んだ音と共に、俺の持っていた『誓い』にヒビが入り、俺は唐突に自由になった。
そうして、完全に無防備になった俺を素通りして、アセリアはハウエンクア達の方へと飛んだ。
…突然の出来事に、完全に停止してしまったが、やることは変わらない。
アセリアは危険過ぎる。

神剣の力は大分弱くなっているが、それでもまだ戦える。
むしろ、変な干渉がない分、さっきよりも戦いやすい。
そうして、追撃の為に振り向こうとした。
だが、
だが、振り向き、銃を構えて、
そこで漸く異変に気付いた。

『何か』が六つ程、アセリアの周りに浮かんでいた。
その時は何なのか解らなかったが、あれは恐らく『「誓い」の破片』だったのではないだろうか。
その赤い、いや、『赤かった何か』は、アセリアに付き従うかの様に進んでいたが、ホンの数秒。
いや、一秒にも満たない時間だったのかもしれないが、
とにかく僅かに後、気づけば一つ一つが蒼い刀身の様な形状と化し、
アセリアの背に、まるでもう一枚の翼であるかのように広がった。

そして、『ソレ』は来た。

圧倒的な……『恐怖』
銃とかナイフとかそんな物では比較にもならない
アヴ・カムゥのような兵器とも根本的に異なるモノ
それは言うなれば、あのLemuの浸水の時味わったような……人には抗えぬ力
そう、人のDNAにまで刻み込まれた自然の猛威
『天災』の恐怖
そう表現するのが適切な気がした。

132 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:22:02 ID:X3V60Xg6
反射的に、後ろに飛んでいた。
僅かに、ホンの僅かにでも、アレから離れようとしていた。
……心の何処かで、冷静な自分が“無駄だ”と告げていた。
そんな行動に意味はないと。
ちっぽけな人間に、目の前の天災から逃れる術など存在しない。
人はただ頭を抱えて地に蹲り、通り過ぎるのを待つ事しか出来はしない。


…まあ結果から言えば、確かに無駄だった。
最も、先ほどのとは意味が違う。
要するに、最初から、俺の行動なんてどうでもいいものだったわけだ。
アレは、俺の事なんかカケラも気にしていなかった。
ただ、その余波みたいなものが俺に向いただけだ。
ま、天災なんてのはハナからそういうモノだった気もするがな。
とにかく、俺は何をする必要も無かったって事だ。

……悪い、言い直そう。
俺には、何も出来ることなんか無かった。
ただ、眺めている事以外、何一つ。
その時に起きた事実を理解する事だけが、俺の唯一出来た事。
それだけだ。



アセリアも、桑古木も、
本来の持ち主である高嶺悠人も、
この島に運んできたディーですらも、

……いや、「求め」と「誓い」すらも知らなかった事実があった。

133 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:22:53 ID:I7eAFAxA


134 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:23:32 ID:I7eAFAxA


135 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:24:12 ID:I7eAFAxA


136 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:25:00 ID:I7eAFAxA


137 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:25:16 ID:X3V60Xg6
「求め」
「誓い」
「空虚」
「因果」

ファンタズマゴリアにおいて四神剣と呼ばれるこの四振りは、
元々は、一つの神剣であった。
四神剣の合い争う本能は、元の姿に戻ろうとする行為の表れであったのかもしれない。

かつて、高嶺悠人は、「求め」を用いて「空虚」と「因果」と戦い、
その際に、その両方のマナを取り込んでいた。

そして今、妖精が力を望み、「求め」との契約が成立したその僅かな後、
ごく少量ではあるが、最後の一つである「誓い」のマナを取り込んだ事によって、
「求め」は本来の姿、

「永遠神剣第二位『世界』」へと姿を変えた。

その誰にとっても予想外の力は、弱まっていた桜の封印を解き放ち、
一気に開放され、

ハウエンクアの、
宮小路瑞穂の、
アセリアの、
この島のゲームの、
そして、「世界」そのものの、

『破滅』が、生じた。

138 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:32:48 ID:WuMpzmZq
.

139 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:32:58 ID:X3V60Xg6



山頂に、閃光が走った。
「何!?」
一瞬、雷? とも思ったけど、次の瞬間には否定した。
何故って、『見えたから』

「……何が…………起きてるのさ……」
あゆの気持ちは私も同じだ。
あのロボットを中心に山頂全域を覆うかのような光の竜巻と、その中に木霊している稲光のようなもの。
明らかに、普通ではあり得ない現象だ。

その光の嵐は、数秒、あるいは数十秒間吹き荒れて、唐突に収まった。

そして……そこにあのロボットの姿は無かった。

「……破壊……したの?」
「……そう、なのかね」
何がなんだか判らないけど、多分、それが正解。
何故って、感じたから。
“『あんなもの』に巻き込まれて、無事な筈がない”
根拠は無いけど、そう確信していた。

140 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:33:54 ID:WuMpzmZq
.

141 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:34:17 ID:I7eAFAxA


142 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:34:52 ID:X3V60Xg6
「……行くしか、無いね」
少し、多分一分位経って、あゆが言った。
このままここにいても、何にもならないから。
「うん、でも…慎重に」
「わかってるさ」
あゆに、返事をしながら、
(魔、法?)
私は別の事を考えていた。
一つだけ、心当たりはある。
でも、かつて見たのとは桁が違いすぎる。
何か、嫌な予感がした。


だが、その思考は、答えが出ぬまま、
「! 誰さね!?」
数分後に、中断を余儀無くされる事になった。



背後に、何かが落ちた音がした。

“我……は……”

どこかから、何か、聞こえる。
でも、でも、そんなのは『どうだっていい』

何が…起きた?
わたしは、今、『何を』した?
何を……してしまった?

「ミズ……ホ…」

143 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:35:01 ID:WuMpzmZq
.

144 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:35:35 ID:WuMpzmZq
.

145 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:35:58 ID:I7eAFAxA


146 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:36:00 ID:X3V60Xg6
何故だ?
何故、ミズホが倒れている?
わたしは……間に合わなかったのか?


違う…
いや、違わない…
ううん、でも違うんだ…
違わない
違う…
違わない!
違う…
違わない!!
違う…
違わない!違わない!違わない!!!

でも……違う

わたしは、間に合った。
ミズホを凶刃が襲う直前に、間に合った。
わたしの放った神剣魔法は、確かに間に合った。
あのキカイを破壊して、ミズホを救ったんだ。

ただ、その時の私の魔法はミズホをも襲った。
「あ……」

(行きましょうね……アセリアさん)

それだけ。

「あ、あ…………」
(終わったら、何もかも終わって、この島から帰ったら、必ず、行きましょうね……ハイペリアに)

147 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:36:35 ID:WuMpzmZq
.

148 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:36:39 ID:X3V60Xg6
それだけ。

「あ、あ…………」
(終わったら、何もかも終わって、この島から帰ったら、必ず、行きましょうね……ハイペリアに)

それだけの、

「ああああああああああああああ!!」





(…撤退)

光が止んだ後、その場所に『アヴ・カムゥだったもの』を確認した瞬間、判断した。
全力で森の中まで移動し、その後不規則に進路を変更。
数分間そうしておいて、追撃が無い事を確認し、漸く停止した。

そうして、考える。
撤退は、確実に鷹野の不評を買うだろう。
だが、『アレ』を相手に電波塔を護りきるなど不可能だ。
ならば、不評を覚悟で撤退し、本部に情報を伝える。

他に、生き長らえる道は……

(……『アレ』なら、或いは……)
いや、
不確定な可能性に掛ける訳には、いかない。

149 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:37:03 ID:I7eAFAxA


150 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:37:49 ID:WuMpzmZq
.

151 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:37:50 ID:X3V60Xg6
浮かんだ思考を即座に否定し、方針を定める。
(この位置からなら、東口か)
廃鉱の入り口を頭に思い浮かべながら、行き先を決定。

そうして、最大限に警戒しながら、北東方面に移動して数分後、
(…何?)
それを、見つけた。



(何!?)

突如、背後に轟音が響き、同時に光が辺りを包んだ。

咄嗟に、駆け出す。
危険とかそんなものはどうでもいい。
ただ、嫌な予感だけがした。

そして、光が止んで少しして、
「え?」

上空を青い影が走った。

「アセリア?」
確かに、アセリアだ。
かなりの怪我の様にも見えたけど、そんな事は今はどうでもいい。
「瑞穂……?」

152 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:38:26 ID:I7eAFAxA


153 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:38:37 ID:WuMpzmZq
.

154 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:39:02 ID:X3V60Xg6
アセリアが抱えていたのは、瑞穂だ。
そして、アセリアは合流地点とは別の方向に向かっている。

「どういう、こと?」
ことみはどうしたのか。
瑞穂に何があったのか。
何故別の方向に向かっているのか。
……山頂は、どうなったのか。

そして、数分後。
山頂に移動した私の目に、
「何よ……これ」

塔の東側、
爆弾でも落ちたような地面と、
広範囲になぎ払われた木々。
そして、その中に巨大な金属の破片が転がっていた。




(さて、どうするか)
正面から聞こえた、車の排気音に、迷う。
本来なら、このままやり過ごすのだが、
(まあ、丁度良いか)
目的の為に接触する事にした。

155 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:40:03 ID:X3V60Xg6
森から出て、道路の端に立つと、
「! 誰さね!?」
運転席の少女が、こちらに気付いて叫ぶ。
確か、大空寺あゆ。
どこかの社長の令嬢だとか。

「貴方は……何者?」
横には、…白鐘沙羅か。
探偵助手であり、
(丁度良いな)
倉成武の事を知る人間。


「とりあえず、今は何もする気は無いさ」
森の中に後退しながら、
こちらに敵意が無い事を伝える。
最も、相手は警戒の表情を解かないが。
(まあ、当然か)
ここまで時間が経って、初対面の相手を簡単に信じる筈が無い
それに、俺は首輪をしていない。
参加者で無い事に、気付くだろう。

「ま、俺の事は、大体想像した通りの人間と思って貰っていいぞ」
隠しても意味が無いので、こちらから告げる。
それを聞いて、二人の表情が硬くなる。

156 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:40:08 ID:WuMpzmZq
.

157 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:40:36 ID:I7eAFAxA


158 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:40:56 ID:X3V60Xg6
その表情から、長居は無用と判断。
「とりあえず、俺達は電波塔を放棄する事にした」
用件だけ伝える事にする。

「何故、それを伝えるの?」
ややあってから返答があった。
無論、表情は硬いままだが。
成る程、探偵助手というのは伊達では無いらしい。
そう簡単に、こちらを信じる気は無いと。

まあ、信じてもらう必要は無い。
「頼みが、あってな」
「……頼み?」
「倉成武に伝えてくれ」
二人の表情が変わる。
名指しで言っておけば、会えば必ず伝えてくれるだろう。
「レムリア遺跡で待つ、ってな」

「……どういう、意味?」
二人の表情に、困惑が混じる。
「言えば、わかるさ」
細かく言う必要は無い。

159 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:41:21 ID:I7eAFAxA


160 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:41:33 ID:WuMpzmZq
.

161 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:42:43 ID:X3V60Xg6
「以上だ、上で何があったのかは」
片手で後方の木を指し示す。
「彼女に聞いてくれ。 一応、お仲間だろ」
先ほど偶然拾って、未だ気絶中で木にもたれ掛かっている少女を。
当初は、彼女に頼もうと思っていたのだが、足に怪我している為ここまで持って来た、
起きるのを待つのも面倒だし、参加者同士に任せるとしよう。
今更首輪をどうされても意味が無いしな。

「じゃあな」
用件は済んだ。
返事は待たずに森の中に戻る。
まあ、上手く伝わる確率は、いいとこ半々位か…


アイツと会っても、意味なんか無いかも知れないが、
もしかしたら、答えが見つかるかも知れない。

瑞穂の答えは、途中で終わってしまったが、
同じ意思をもつアイツなら、
俺の気まぐれの答えをくれるかもしれない。

(気まぐれ…か)
もう一度、二人の方を見ながら、
「ああ、それともう一つ、
 恐らく、全ての答えは17年前と同じ場所に……『HIMMEL』の先にある」

最後にもう一つだけ、伝えてもらう事にした。

162 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:43:24 ID:X3V60Xg6
【D-5 南西(林道)/2日目 夕方】

【桑古木涼権@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第五位「誓い」】
【所持品:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾7/15+1)、ベレッタの予備マガジン×3、マナ結晶(マナ残量60%)、通信機、】
【状態:肉体疲労中程度、両腕に軽い火傷】
【思考・行動】
0:廃鉱からLemuに帰還する。
1:電波塔での出来事を鷹野に伝える。
2:武に伝言が伝わる事を期待。
3:アセリアを危険視。

【備考】
※「誓い」にはヒビが入っています。(その内直ります)
※「誓い」の意思は消滅しました。(今日子仲間時の「空虚」と同じ状態です)
※「誓い」とマナ結晶の併用で、身体能力強化と中レベルのディフェンススキルが使用可です。



言うだけ言って、男は去った。
何者か気にはなったけど、
「………………」
男が置いていった相手を見たら、どうでも良くなった。

一ノ瀬、ことみ
最も殺してやりたい糞虫が、今私の目の前に居る。
意識を失い、無防備な姿で。

…考えが、纏まらない。
余りに無防備すぎて、逆に行動しようとする気が起きない。

163 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:44:34 ID:X3V60Xg6
と、そこで袖が引っ張られた。
そちらを向くと、沙羅が首を横に振っていた。
(ああ……)
「わかってるさ…コイツには聞かないといけない事が山ほどあるさね」
殺すなら、簡単だ。
だが、まだ早い。

あの塔で、何があったのか
瑞穂とアセリアは、どうしたのか。
あの『首輪をしていない』男との関係は何か。
…そして、何故『首輪をしていない』のか。

洗いざらい、喋らせてからだ。

「とりあえず、何か縛るものは無いかい?」
私の問いに、沙羅がデイパックからロープを取り出す。

焦る必要なんて無い。

ゆっくりと、その罪に相応しい扱いをくれてやるよ。

【D-5 南西(林道)/2日目 夕方】

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:ワルサー P99 (6/16)】
【所持品1:S&W M36(4/5)、ワルサーP99の予備マガジン2 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、双眼鏡、医薬品】
【所持品2:支給品一式×2、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE、往人の人形】
【所持品3:『バトル・ロワイアル』という題名の本、、映画館にあったメモ、家庭用工具セット、情報を纏めた紙×12、ロープ】【所持品4:爆弾本体、信管】
【状態:疲労極大・肋骨にひび・強い決意・若干の血の汚れ・両腕に軽い捻挫、両肩間接に軽い痛み】
【思考・行動】

164 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:44:42 ID:WuMpzmZq
.

165 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:44:49 ID:I7eAFAxA


166 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:45:25 ID:X3V60Xg6
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
0:ことみをロープで縛る。
1:ことみから話を聞く。
2:山頂に向かい電波塔を調べる。
3:情報端末を探す。
4:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
5:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす

【備考】
※国崎最高ボタンについて、暗号文と関わりありと考えてます。
※爆弾を作成しました。 安全の為信管は外しています。(威力は、図書館が吹っ飛びます)
※坂上智代マーダー化の原因が土永さんにあることを知りました。
※きぬを完全に信頼。
※あゆを完全に信頼。
※フロッピーディスク二枚は破壊。地獄蝶々@つよきすは刀の部分だけ谷底の川に流されました。
 エスペリアの首輪、地獄蝶々の鞘はC-6に放置。

【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (2/6) 防弾チョッキ 生理用品、洋服】
【所持品:予備弾丸6発・支給品一式x5 ホテル最上階の客室キー(全室分) ライター 懐中電灯、食料(パン等食べやすいもの)】
     大型レンチ、オオアリクイのヌイグルミ@Kanon 、ヘルメット、ツルハシ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄 虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ベレッタ M93R(10/21)】
【状態:生理(軽度)、肋骨左右各1本亀裂骨折、強い意志、左前腕打撲(多少は物も握れるようになってます】
【思考・行動】
行動方針:殺し合いに乗るつもりは無い。しかし、亜沙を殺した一ノ瀬ことみは絶対に逃さない。
0:とりあえずことみを拘束する。
1:ことみを叩き起こして洗いざらい喋らせる。
2:二人を殺す為の作戦・手順を練る
3:沙羅と一緒に行動
4:殺し合いに乗った人間を殺す
5:甘い人間を助けたい
6:川澄舞に対する憎しみ

167 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:46:10 ID:X3V60Xg6
【備考】
※ことみが人殺しと断定しました。
※ハクオロに多少の罪の意識があります。
※支給品一式はランタンが欠品 。
※生理はそれほど重くありません。ただ無理をすると体調が悪化します。例は発熱、腹痛、体のだるさなど
※きぬを完全に信頼。
※沙羅を完全に信頼。

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:Mk.22(3/8)】
【所持品:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、支給品一式×3、予備マガジン(8)x3、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、
陽平のデイバック、分解された衛の首輪(NO.35)、情報を纏めた紙】
【所持品2:ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数、】
【状態:気絶中、決意、肉体的疲労中、後頭部に痛み、即頭部から軽い出血(瑞穂を投げつけられた時の怪我)、強い決意、全身に軽い打撲、
 左肩に槍で刺された跡(処置済み)、右腿に銃による裂傷、左ふくらはぎに銃創(貫通)、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。必ず仲間と共にゲームから脱出する。
0:不明
1:アセリア、瑞穂、梨花に付いて行く
2:ハクオロとあゆに強い不信感、でもまず話してみる。
3:首輪、トロッコ道ついて考察する
4:工場あるいは倉庫に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
5:鷹野の居場所を突き止める
6:ハクオロを警戒
【備考】
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。(少し揺らいでいます。)
※あゆは自分にとっては危険人物。
※瑞穂とアセリアを完全に信用しました。
※この島が人工島かもしれない事を知りました。
※i-podに入っていたメッセージは『三つの神具を持って、廃坑の最果てを訪れよ。そうすれば、必ず道は開かれるだろう』というものです。
※研究棟一階に瑞穂達との筆談を記した紙が放置。

168 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:47:21 ID:I7eAFAxA


169 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:47:24 ID:WuMpzmZq
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170 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:48:04 ID:WuMpzmZq
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171 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:48:07 ID:I7eAFAxA


172 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:48:12 ID:X3V60Xg6
カップメンを思いっきり放り投げてみた。
…五秒、
…十秒、
…反応は無い。

銃を何回か塔に向けて撃ってみる…

…反応は無い。

(やっぱり、誰も居ないのかしら?)
森から出て、慎重に進んでみる。
少しずつ、少しずつ塔に近寄るが、何も起こらない。

森と塔の中間付近まで来て、全力で塔まで駆け出す。
あっさりと、塔の麓にたどり着いた。

(何が……あったっていうのよ?)
状況から見れば、あのロボットに何かがあって、それで敵は塔を捨てた。
それが自然ではあるのだけど…
(どうやってよ?)
可能性は低い。
アレを破壊するなんて、私たちでは不可能だった。
近くに何か青い剣みたいのが何本か刺さってるけど、関連は謎。
或いは、故障して自爆したという可能性もあるけど。
(その場合、アセリアの行動に説明が付かない)
それに、ことみが居なかったのも謎だ。
(……とりあえず、中を調べてみようかしら)

そう考え、塔の扉に手を掛ける、
……容易く、開いた。

173 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:49:17 ID:WuMpzmZq
.

174 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:49:19 ID:I7eAFAxA


175 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:49:20 ID:X3V60Xg6
C-5 電波塔/二日目 夕方】

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、ミニウージー(21/25)
     ヒムカミの指輪(残り0回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 】
【所持品:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの)】
【所持品2:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、
     ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、首輪の解除手順に記したメモ、
     食料品、ドライバーやペンチなどの工具、他百貨店で見つけたもの 、、首輪探知レーダー(現在使用不能)、車の鍵 】
【状態:頭にこぶ二つ 精神的疲労小、強い決意、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:潤と風子の願いを継ぐ。
0:何が……あったの?
1:瑞穂とアセリアとことみが心配。
2:きぬが心配
3:仲間を集めたい
【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※梨花の服は風子の血で染まっています
※盗聴されている事に気付きました
※月宮あゆをマーダーと断定、警戒
※レーダーは現在電池切れ、 電池(単二)が何本必要かなどは後続の書き手に任せます
※ノートパソコンの微粒電磁波装置や現在地検索機能、レーダーは、電波塔の機能が回復するまで使用不可能(電波塔の回復は、第7回放送直前)
※催涙スプレー、ゲルルンジュース×3、チンゲラーメン、コルトパイソン(.357マグナム弾2/6)が塔の南側に落ちています。


176 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:49:58 ID:X3V60Xg6
【ハウエンクア@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:破壊されたアヴ・カムゥ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、他不明】
【所持品:不明】
【状態:気絶】
【思考・行動】
0:???
1:あの女(アセリア)は殺す。
2:殺し合いを楽しむ

【備考】
※アヴ・カムゥは既に残骸です。 破片は塔の東側の森付近に散らばっています。
※胴体の中に閉じ込められています。 素手での脱出は難しいです。
※塔の東側の広範囲の地面と森が抉れています。



(…契約者よ)
(うるさい!!)

聞こえた声を、黙らせる。
今はかまっている時間なんて無い。

…リカは、既に逃げてくれてた。
…コトミは…近くに姿は見えなかったから、逃げてくれてたんだと思う。

二人の事は心配。
でも、探している時間なんて無かった。

……ミズホ

177 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:50:44 ID:WuMpzmZq
.

178 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:50:47 ID:I7eAFAxA


179 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:50:47 ID:X3V60Xg6
胸に抱えたミズホの息は、弱々しい。
咄嗟にオーラの力を用いたけど、悪化しないようにするのが精一杯だった。

あの場で二人を探す。
合流地点で二人を待つ。
どちらも、時間が足りるとは思えなかった。

(ここは……)
(後でいくらでも聞く!
 だから今は待って!!)

病院…傷が治せる場所と聞いた。
一刻でも早く、そこに向かわないといけない。

ハイロゥの全力で、飛び続ける。

(ミズホ…頑張ってくれ)

恐怖に、震えながら。



あの時、確かに『何か』を感じた。
だが、それが何であったのかが思い出せない。
ただ、『何か』があった事だけは事実のようだが。

(…契約者よ)
(うるさい!!)

む……
おのれ、そっちが望んだのだろうが。

180 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:51:26 ID:X3V60Xg6
…そもそも、ここは何処なのだ?
契約者の死と、契約を求める声に応じて、とっさに妖精と契約したが……

(ここは……)
(後でいくらでも聞く!
 だから今は待って!!)

……おのれ、元餌候補の癖に…………

……まあ、寛大な心で待ってやるか……
……干渉してやろうとも思ったが、いまいち上手く力が使えんし……

しかし妙だな?
先ほどまで「誓い」と争っていた気がするのだが……
今はどこにもその意志を感じん。

いや、そもそも、
我は何故アレをそこまで砕こうと思っていたのだ?

【D-6 上空/二日目 夕方】
【女子二人】
1:電波塔を破壊する。
【備考】
※廃坑別入り口を発見しました
※殺害ランキングは梨花以外のメンバーは適当にしか見ていません。
※メンバーは全員、羽入、鈴凛、企画書から情報を得ました(詳しい内容は、本文中の情報纏め参照)
※メンバーは全員、羽入と鈴凛を信用しました
※オーラフォトンブレイクによって塔に影響があったかは不明です。

181 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:52:28 ID:WuMpzmZq
.

182 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/15(土) 23:52:31 ID:I7eAFAxA


183 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:53:37 ID:X3V60Xg6
【アセリア@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、高嶺悠人の首輪、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、
 情報を纏めた紙×2】
【状態:恐怖、肉体的疲労極大、魔力残量ほぼ零、両腕に酷い筋肉痛、左肩と右わき腹に深めの切り傷(出血中、動かすと痛み、鎧の該当部位損失)、全身に切り傷、
       右耳損失(応急手当済み)、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)、首輪解除済み、「求め」と契約】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0:ミズホを助ける。
1:コトミとリカが心配
2:無闇に人を殺さない(殺し合いに乗った襲撃者は殺す)
3:存在を探す
4:ハクオロの態度に違和感
5:川澄舞を強く警戒
【備考】
※アセリアがオーラフォトンを操れたのは、「求め」の力によるものです
※制限の低下によって、「求め」と契約しました。 これにより全体的に能力が上昇しています。
※現在、誤って瑞穂に攻撃したことによって、神剣との同調率は最低レベルまで低下しています。
 それに伴い、ほとんどのスキルの威力が低下しています。

※オーラフォトンブレイクについて
 「世界」のサポートスキル、広範囲に破壊を巻き起こし、相手の行動を封じる力を持つ。
※永遠神剣第二位「世界」について
 「求め」が、「誓い」のマナを吸収したことによって、本来の「世界」へと変化しました。
 しかし、覚醒直後に大量のマナを消費した事と、僅かに残っていた制限が加わって、現在は「求め」の姿に戻っています。
 それに伴い、「世界」の一部である青い刃が六本、アヴ・カムゥの残骸の傍に刺さっています。
 再び接触した際に変化が起こるかは不明です。

184 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/12/15(土) 23:54:18 ID:X3V60Xg6
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾0/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】
【所持品1:支給品一式×9、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ5本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2〜3割ほど完成)、予備マガジンx2、情報を纏めた紙】
【所持品2:バニラアイス@Kanon(残り6/10)、暗視ゴーグル、FN−P90の予備弾、電話帳、スタングレネード×1】
【所持品3:カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、竹刀、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、懐中電灯】
【所持品4:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)】
【所持品5:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品6:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】
【状態:気絶中、全身打撲、全身に魔法によるダメージ、強い決意、肉体的疲労小、即頭部から軽い出血(処置済み)、脇腹打撲、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0:気絶中
1:ことみとアセリアと梨花を守る
2:川澄舞を警戒
【備考】
※一ノ瀬ことみ、アセリアに性別のことがバレました。
※他の参加者にどうするかはお任せします。
※この島が人工島かもしれない事を知りました。
※アセリアのオーラの効果によって、状態の悪化は防がれていますが、危険な状態です。

185 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:48:48 ID:proR3jGT
「……畜生……いてえな、おい……まだなんかよ……」

ボクは智代と別れた後、祭具殿の奥を進んでいた。桜を散らすために。
それは思ったより長い道で下りの階段が延々と続いている、先は未だ見えない。
でもここで諦めるなんてできるもんか。皆の為にも。
皆、脱出為に頑張っているんだ、ボクがここで止まってどうするよ。

「なんだ!?……今の音……智代達……頑張れよ」

ボクが進んでいる途中凄まじい音が響いた。
きっと智代達の戦いが激しくなっているんだろう。
智代達はきっとあのロボットみたいな奴と戦っているんだ。それこそ必死に
急がなくちゃ。
あいつらが必死に戦ってるのにボクがのんびりしていられる訳がないんだ。
足が痛い? そんな辛さあいつらに比べればまだまださ。

「急がなきゃ……純一……見てろよ」

そしてボクはポケットからボタンを出す。
その輝きは以前にまして強くなっている。まるで進む事に強くなっているような。
まさか純一からもらったボタンがこんな事になるとは思わなかった。
そして純一から聞いて夢で見たあの枯れない桜。まさかここにあるなんて。
正直こんなファンタジーみたいな事が起きるとは思わなかったよ。
でも桜にボタンを持っていくのはボクしか考えられなかった。
だってこのボタンは純一から貰ったんだ。他の仲間には渡したくは無い。
そして純一はボクだからこそ託したんだろう、この役目を。
自惚れではなくてそう思う。

186 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:49:46 ID:proR3jGT

「なら……ボクがやんなきゃな……」

思えばこの島で色々あった、悲しい事も、苦しい事も。
レオ達と会わないまま一生会えなくなった。
土見、そして放送で知ったつぐみ達の仲間の死。
そして純一との別れ。

でも決して悲しみばかりじゃなかった。
それはやっぱ純一との出逢い。
純一がいて一緒にいて楽しかった。
こんな殺し合いの中でも幸せを感じた。
そして好きになった。
何処に惚れたのか未だにわかんねー。あんなヘタレに。
でも純一のことを思うとこころが暖かい。
それが好きなった証拠なのかも。

だからこそボクがやらないと。
それが僕に残された命の使い道。
諦めちゃ、歩みを止めちゃいけねーんだ。
なあ、これがボクがとるべき道なんだろ?
純一?
だからさ、見てろよ。
ボクの思いを。
最後の頑張りを、さ。





187 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:52:31 ID:proR3jGT
「はっ……はっ……見え……た!……後もう少しで……」
どれくらいほど階段を下りたんだろう。
兎も角凄い長かった気がする。
そしてやっと見えた。出口が。
もう少し先に明かりが漏れている。
やっとやっと辿り着いた。
さあ行こう。もうちょっとなんだ。
「……あれ?……足が……うごかねー?……もうちょっと……なんだよ……しっかりしろ……ボク」
遂に怪我した足が動かなくなってきた。何か痺れる
だけどここで諦める事なんかできないんだ。
だから
「もう……ちょっと……頑張れ……ボク」
足を引きずりつつもしっかり進む。

一歩。また一歩。
少しずつも確実に。
短くても確実に。
皆の為に。
自分の為に。
進んでいた。

そして
「つ……い……たぞ」
ついに辿りついた、光の先に。
そして光が明ける先に見えたのは


「なんだ……これ……すごい……綺麗」


なんとも幻想的な風景なんだろう。
この世の景色とは思えないぐらい。

188 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:53:41 ID:2v2VAuar
 

189 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:54:00 ID:proR3jGT

まずは見えるのは綺麗な湖、いや池か。
とても澄んで底が見える。
濁りなんか全く無い。
きらきら輝いているようだった、

そしてその中央には小さな島が浮かんでいる。
その島を覆うのは色とりどりな無数の花。
そう無数に咲き誇ってる、地面は全く見えない。
種類も様々で見たことないのもある。

そしてその花畑の中央に位置するもの。
それはボクの目的。
やらなければいけない事。

「……あれが……桜……」

そうそれは夢で見た桜。
夢と変わらない大きくそして儚く咲いてる。
だが夢と違うのは少しずつ散り始めているという事。
一つ、また一つと散っていく。
でもそれで枯れる事はないんだ。
完全に散らせるにはこのボタンが必要なんだ。
ボタンはさらに光を強め眩しい位だ。

いつまで見入って訳には行かない。
決着をつけなきゃ、ボクの手で。

190 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:54:38 ID:2v2VAuar
 

191 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:54:43 ID:proR3jGT

「行くしかないだろ……っ水が……しみる……つめてーな……オイ」

気合を入れて池に入るもその冷たさ、そして傷口に水がしみて尻込みしてしまった。
その水は非常に冷たく少し足をつけただけでも、もう凍えそうなぐらい。
幸いにも深さは僕の腰ぐらいまでそこまで深くはない。
島までに長さは20メートルあるかないか。
それでも冷たい水は僕の体力を奪っていくのには十分なくらいだった。
少しずつ進むにつれ残り少ない体力すら無くなっていく。

「畜生……なんで……っ……あきら……める訳……いかねーんだよ!」

でも諦めない。
どんなに体力を失ってもこんな所で力尽きる訳にはいかねー。
ただボクにあるのは執念。
それのみがボクを突き動かしている。

「ボク……が……やるんだ……純一……ボクが」

傷口から流れる血が水面を染めるのを見つつ少しづつ水を掻き分け進み続ける。
どんなに痛くても。
どんなに辛くても。
ただ進む。

なぜだろう?
純一が背を押してる感じがする。
応援してくれるような。
頑張らなくちゃ。

192 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:55:09 ID:2v2VAuar
 

193 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:55:39 ID:2v2VAuar
 

194 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:56:07 ID:proR3jGT
一掻き、一掻きと進む。
ただ、黙々と。

そして

「…………はぁ……今畜生……付いたぜ……オラ……」

辿り着く、その花が咲き誇る島へ。
また時間が掛かったかもしれない。
でも遂についたんだ。
あともうちょい、もうちょいなんだ。
休む暇なんかない。
ボクは立ち上がろうとするも
「……おろ?……遂に……立てなくなっちまったか……」
力が全く入らない。
体力を使い果たしたのか?
もう動けないのか?

違う!

「なら……這ってでも……辿り着くんだ……こんにゃろ」

ボクは諦めない。そう誓った。
だから這ってでも進む。
桜までの距離は30メートルぐらい。
進めない距離じゃないんだ。
純一なら絶対諦めない。
最後まで抗ってみせる。


195 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:56:10 ID:2v2VAuar
 

196 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:56:11 ID:CyCu81G/


197 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:56:41 ID:2v2VAuar
 

198 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:56:44 ID:CyCu81G/


199 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:57:23 ID:proR3jGT
傷口からは血が止め処なくながれ、綺麗な花を紅く染める。
ボクが通った花は全て深紅に染まる。
まるでボクが生きていた証の様に。

「なんで……こんな時……いろんな事思い出すんだよ……まだ……走馬灯には早いぜい……」

少しずつ進むにつれて今まであった事が頭をよぎる。
この島に来る以前にレオ達と過ごした事。
もう二度と戻らない楽しい日々。

純一とつぐみに出会い騒いだ事。
この島であった仲間との楽しい喧騒。

純一との触れ合い。
最愛の人との一つ一つが大切な触れ合い。

他にも楽しい事、悲しい事全部含めて沢山思い出す。
その全てがボクにとってとても大切なんだ。
一生なくしたくはない。

その思い出がボクを進ませる。
楽しみも痛みも悲しみも全ての力にして。

這って、這って、ただ這って。
もうボクに残ってるのは大切な思いなんだ。
その全てが力をくれる。
ボクはそれだけを考え進む。


200 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:57:30 ID:2v2VAuar
 

201 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:57:34 ID:CyCu81G/


202 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:58:00 ID:2v2VAuar
 

203 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:58:03 ID:CyCu81G/


204 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:58:07 ID:proR3jGT
ただ進む

「ぐぅ……お……い……這う……ぐらい……できろよ」
だけどまたしても止まる。
体が限界らしい。
のこり5メートルも無いのに。
駄目だ、体が言う事を聞かないんだ。

諦めたくない。
だから必死に足掻く。
なのにどうしても動かない。

「動け!……動け!……動いてくれよお!」

諦めたくないんだ。
なあ動けよ。
このまま何もせずに死ぬ訳にはいかないんだよお。
頼むよ。
頼むからさ。


その時、ボクは池の向こうからありえないものを見た。
そう、こんなことあってはいけない。
だって、人が水の上に立ってるのだから。
いくら幻想的なものを見てきたってこれはねーよ。

その人はそのまま水の上を歩いてこっちに歩いてくる。
水面には波紋が広がるだけで決して沈んだりしない。
一歩ずつしっかりと歩いて来る。


205 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:58:36 ID:2v2VAuar
 

206 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:58:39 ID:CyCu81G/


207 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:59:07 ID:proR3jGT
そして島に降り立った。
ボクはさらにありえないものを見た。
羽が生えてる、あの人。

おいおい天使かよ……冗談じゃねーって。
まだお迎えは早すぎるって。
まだなにもしてないんだよ。
諦められないんだよ。

その人をそのままこっちに歩くのを続ける。
その人が地面に足を触れるたび花が一気に咲いた。
だが地面に足が離れるとその花は一気に枯れた。
完璧、人間じゃない。
まるで神。
神そのままだった。
なんかアニメで見たことあるような気がする。

その天使みたいなのはボクにちかづき
「ほう、ここまで来たか」
ボクにそう重々しくいった。
ボクはそんな男にただ戸惑って
「なんだよ……お前は」
「我が名はディー。汝に問おう」
ディーはそう応えボクに射抜くような視線を向け

「汝は何故そこまで抗う? 己が命を犠牲にしてまで。その行為にどんな意味、価値があると言うのだ?」

208 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:59:24 ID:2v2VAuar
 

209 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 01:59:27 ID:CyCu81G/


210 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 01:59:34 ID:proR3jGT

意味、価値だって?
そんなのボクにだってわかりやしない。
ただ理由があるのなら
「……ただ……ボクがしたいだけさ。それだけ」
「……わからんな……そんなの為に死ぬのか。汝が無理をしなくても桜を枯らす者が来るというのに」
「違うね……ボクがやらないと駄目なんだ……そう……ボクが……どんなに止める奴が来ても……お前、ボクを止めるのか」
「我が汝を止めても他の者が来る……歯車はもう狂っているのだから、我はそれを見届けるだけだ」
「なら……黙ってみてろ」
「ふん……せっかく皆から生かされたというのに、それでは純一なる者の無駄死にだな」

なん……だと
ふざけるな!
何も知らないお前が、純一を語るな!
ボクは瞬時に激昂した。
痛みなんて気にならない。それよりも純一を馬鹿にしたこいつが赦せない!

「黙れ……お前に純一の何がわかるんだよ! 何も分からないお前が純一を馬鹿にすんじゃねーよ!! 純一の事を言うんじゃねー!!」
「汝こそそうではないのか。彼は生きろと言った筈だ」

確かに純一はそういった『生きろ』と。
でも純一は今のボクを見て馬鹿にするか?
違う、あいつはそんなんじゃない。
純一ならきっと応援する。
だってあいつは頑張ろうとする奴の頑張りを馬鹿になんか絶対しない。
そういう奴だから、だから
「違う、純一は絶対に応援する、今のボクを! 誰よりも解るからあいつの事。だから今、ボクがやるんだ!」
そうだよな! 純一!
ボクはボタンを取り出す。ボタンはもう眩しい位に光ってる。

211 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:00:34 ID:2v2VAuar
 

212 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:00:43 ID:proR3jGT

飛び出せ! ボク!
体の限界なら超えろ!
体で動かないなら心で動け!

大丈夫。皆応援してる。
土永さんも、乙女さんも、よっぴーも、姫も。
つぐみも、土見も、ハクオロも、美凪も。
フカヒレ、スバル、レオも皆見てくれてる。
そして純一。絶対見てくれてるよな。

だからボクは
「頑張んなきゃいけないんだよーーーーーー!!!!!!!」

そして体が動く。心が動かす。
本当は動けないはずなのに。
一歩一歩を力強く。
もう直ぐ!
ボタンを翳し吼える。

「これが! ボクの頑張りだあああああ!!!!!!!!!」

その瞬間桜の木から光が発し始め
「これは……」
ディーが何かを呟いた瞬間、ボクの視界は光に覆われた

213 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:01:16 ID:2v2VAuar
 

214 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:01:38 ID:proR3jGT







――さくら、さくら。
  空に舞い散るのは悲しみ?
  それとも……






ボクやったのか? 桜を枯らす事できたのか?
第一ここ何処よ? 目の前には桜が広がってるけど。
ああ、ボク、死んじゃったのか。
じゃなきゃこんな光景ある訳ない。
だって今、目の前に純一がいるんだから。それに金髪の少女もいる。
「蟹沢……よく頑張ったな」
「……本当に純一なのか? それにここは」
そして純一は笑顔で穏やかに話し始めた。
間違いない。あの時の純一のままだ。でもどこか存在が儚い。


215 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:01:58 ID:2v2VAuar
 

216 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:02:23 ID:proR3jGT
「ここは……なんて言えばいいかな? まあ桜が見せてる夢って考えればいいよ。俺は純一だけど純一じゃない」
「はあ!? どういう意味よ」
「お前に渡したボタン。そこに植えつけられた残留思念つーか残留意志みたいなものだな。……ずっと応援してた」
「なんだかよくわかんねーけど純一なんだろ? どうしてボタンなんかに?」

そうボクの当然質問に答えたのは純一ではなく金髪の少女だった。
「それは私が答えるよ」
「ばあちゃん」
はあ!? 今なんていった? この少女が純一のばあちゃんなのか?
若すぎる……むしろ幼女。
そのばあちゃんらしき少女はすました顔で
「別に年取った姿で出なくてもいいだろ……ここは夢なんだから……まあそれはおいといてきぬと言ったね、よくやってくれた。ありがとう」
「そこまで事はやってないぞ」
「いいや……私をこの呪縛から解き放ってくれた、本来何にも無いあなたが。
 本当は純一に任せるべきなんだけど……死が確実なった時私は遺された力で純一の意志とほんの少しの魔力をボタンにつけた。
 そして貴方に託した……純一が大切にした貴方に……本当にありがとう」
そうばあさんは言い切り深くお辞儀をした。
ボクはなんだか恥ずかしくなり手をぶんぶんふって気になったことを聞いた。
「べ、別にたいした事じゃないって……それになんで純一のばあさんがここに?」
「それは……私が桜の木そのもの……残留思念だからさ」


217 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:02:25 ID:CyCu81G/


218 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:02:55 ID:proR3jGT
え? どういうこと?
じゃ、じゃあこのばあさんが殺し合いの元のなのか?
そんな……どうして! なんで!
そのせいで純一が! 皆が! 僕はただ行き場のない怒りであふれて
「どうして……なんで? こんな悲しいのに協力したんだよ! そのせいで純一が……アンタの孫なんだろ!」
涙が溢れて止まらない。
違う。
これは怒りよりも悲しみ。
やりきれない。どうして? なんでということばが頭の中でグルグル繰り返される。
ばあさんは悲しそうにそうとても悲しそうに話し始めた。
「すまないね……赦してほしいとは思わない……だけど聞いて欲しい私の罪を」
「罪?」
「そう、決して赦されない罪……私は願ってしまった。もっと生きて桜の木じゃなく生きた魔法使いとして人に役に立ちたい。夢を叶える手助けしたい、と。
 でもそれは叶わない願いのはずだった。もう私は残された意志しかないのだから。
 でも突然声が聞こえた。『その願いをかなえたいか?』と。そして欲した、その手を。嬉しかったさ。もう一度出来るんだって。
 そして私はここに連れてこられた、そしてただ終わるまで力を縛っておくだけでいわれた。そうしたさ。
 でもその後愕然としたさ。自分の孫がいた。それだけじゃない。殺し合いを行なうことも知った。
 そして私は絶望した。子供達が殺しあいを始めたんだ。自分の孫ですら一時期乗ったのだから。そして失った、大切な孫を。
 その時気付いたんだ。私はそんな自分の願いで苦しめていた。子供達を。
 そしてここで行われてるのは私の夢見た夢の世界とはほど遠い物。
 だからもう終わらせようと思った。こんなの私の願いじゃない。だから私は枯れたと思った。私はもういてはいけないから。
 その時にはもう取り返しのつかないぐらい死んでしまった。悔やんでも悔やみきれない。そして辛い役目をあなたにおしつけた。
 そう、それが私の罪。私のせいで沢山の命が失われた。取り返しの付かないぐらい。願いのせいで。すまない……本当にすまない」

そうばあさんは言い切ってまた頭を下げた。
その顔には涙が溢れて止まらない。

219 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:03:39 ID:CyCu81G/


220 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:03:50 ID:proR3jGT

ボクはただ何も言葉が思いつかない。
想像絶する苦悩があったんだろう。
この人も被害者なんだ。
しらずしらずのうちに巻き込まれて。
この人に罪があるかなんかボクは分からない。
でもこれだけならいえる。
それは純一とボクが繰り返してきた事。
「罪とか……解らない。でもこれだけは思う。一度、後悔して苦しんでそれで貴方は何とかしようと思った……立ち止まらなかった……進もうと思った
 ならいいんじゃないのかな? それで。皆そうだぜ、ボクも純一も。後悔は誰でもする。でもそれから進もうとするなら決して悪い事じゃないよ、たぶん」

そう後悔なんて誰でもする。
問題はその後。進むか、止まるか。
純一は躓いても進んだ。ボクもそうできた。
諦めなきゃきっと何とかなるって。
進もうとすればきっと悪いことなんかないから。
辛くてもそれは悪くないから。

だからそういえたんだ。

「……そうかい……そう……思えばいいのか……ありがとうね、なんだか心が軽くなったよ……この年で教えられるなんてね」
ばあさんは微笑んでそういった。
なんか憑き物が落ちた様な感じがする。
ばあさんはそのまま口を開き
「なら夢は終わらせなきゃね……私が望んだ夢を」
「おばあさん……」
「いいんだよ……元々死んでるんだから。貴方はもっといきなさい」
「でも……ボク」
「ほら……純一! アンタの出番だよ」
ばあさんは純一の背を押し純一は前に出し
「ったく……荒いぞ、ばあちゃん。蟹沢、俺がお前と別れるとき何を望んだ?」
純一は笑いながらそう言った。

221 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:04:16 ID:2v2VAuar
 

222 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:05:01 ID:proR3jGT

え? 最後って、まさか

『だから……生きろ……蟹沢……生きて……生きて……いき続けろ……それが……願……い……だ……』

あ、え?
「……あ……あ……嘘……」
「そう……俺の残留意志そのものは最後の時同じ。『蟹沢を守り通す事。生きてほしい事』そうことさ。変わらない。
 だから蟹沢。俺は最後までお前を守り通す。生かす!」
「で……でもどうやって」

純一は笑って手を大きくかがけて
「見ろよ。出来損ないの魔法使いの一世一代の魔法を。大切な人のためにさ!」
「馬鹿もん……アンタの魔力じゃたりんだろ。少し手伝うよ……それときぬ。私の魔力をほんの少しだけそのボタンに別けてあげる何かあったら使いなさい」
「ばあちゃん……サンキュ」
「これでお別れだ蟹沢。頑張れよ」

純一はそう手を振り言った。
もうお別れなんて嫌だよ、純一。
もっともっと話したい。
「まだ話したい……純一! ボクは!」
「駄目だ……これは夢なんだ。いつかさめなきゃおかしいんだ……大丈夫、また会えるさ」
「え?」
「夢で会おう、さよなら」

その瞬間純一たちはあやふやになりよく見えなくなる。
夢が醒める。
駄目だ。これだけは伝えないと。


223 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:05:25 ID:2v2VAuar
 

224 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:05:30 ID:CyCu81G/


225 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:05:37 ID:proR3jGT
「純一ーーーーーーー!! お前の事、大好きだからーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

やっと伝えられた。
そして視界が開ける。






これはきっとダカーポのような終わりとはじまりの夢。
また、いつか。夢で逢いましょう。
ありがとう、大好き。さよなら。





――さくら、さくら。
  本当に空に舞い散るのは希望。
  いつまでもそれは舞散る。
  果てのない空の先まで。








226 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:06:07 ID:2v2VAuar
 

227 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:06:12 ID:CyCu81G/


228 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:06:21 ID:proR3jGT
桜は光が広がった後、直ぐに全て舞散った。
それはすべてきぬを包み桜で覆う。
まるで癒すように。

一つの風が吹く時、桜の花はどこかに行った。
そしてきぬの傷はなおされすやすやと寝ていた。
ボタンには優しい光が宿っている。


それは小さいでも温かい魔法。
出来損ないの魔法使いが見せた優しい魔法。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






ボクが目を覚ました時にはもう桜があったところにはいなかった。
どうも神社の外らしい。
そして傷が治っていた。
きっと純一が……そう思った瞬間心が温かい。
ありがと、純一。
生きよう、この命の最後まで。

229 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:06:37 ID:2v2VAuar
 

230 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:06:39 ID:CyCu81G/


231 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:07:12 ID:2v2VAuar
 

232 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:07:14 ID:CyCu81G/


233 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:07:14 ID:proR3jGT

「クソオオオオオオォォォォォォォ!」
そのとき武の咆哮が聞こえた。
何があったのか?
ボクは駆け出しその声の元に言った。

「武! あ……智代」
ボクが辿り着いた先に見えるのは武がひざを付いて悔やんでいた。
そして倒れてる智代。
瞬時に理解した。

戦いが終わり智代が死んだのだ。
そんな……なんで。
ボクが生きて智代が。

「……蟹沢!? お前なんで生きてるんだ」
武が気付きボクのほうを向いた。
当然だ、死んでおかしくなかったから。

ボクは武の方を向いた。
話さなければいけない。
「それは……」
ボクは話し始めた。
桜を枯らした事。
純一とあって最後に傷を直してもらったらしい事。
全部。




234 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:07:57 ID:proR3jGT

「そんな事が……なんか信じられねえけどここいるから確かなんだよな」
「うん……また生かされた……ボクだけ」
「そうか……こっちは」
武からも全部聞いた。
あゆと戦った事。
智代は命をかけて武を救った事。
そして智代は死んだ。

なんて皮肉。死にそうだったボクがいきて智代が死ぬなんて。

「俺も生かされた……また」
武はうなだれている。

でも僕らは生きている。
ならやることは単純。

「生きようぜ、武。皆の分まで。ボクは戦う。もう守られてばっかじゃない。生きるために戦うんだ。第一ボクを守るナイトはもう一杯いるんだ。」
今も傍にいると思う。純一やレオ達が。
だから戦う。生きるために。


「ああ、俺も生きる! 皆の分まで! 生きて生きて生き延びてやる!」
武も顔を上げて誓った。

それが生かされたものたちのやるべき事なんだから。
皆の分まで、最後まで。
だから誓う、ボクらは。

235 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:08:52 ID:proR3jGT

空に桜がまだ舞散っている。
僕らにはそれが祝福にも思える。

だから進む。
諦めない事を知ってるから。

諦めなければ道は開かれるから。

そうだよな? 純一?




――さくら、さくら
  空に舞散れ、永久に。
  それはきっと未来へ続く希望。



【D-4 神社付近/二日目 夕方】

【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】
【所持品1:支給品一式x24、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、バナナ(台湾産)(3房)】
【所持品2:C120入りのアンプル×5と注射器@ひぐらしのなく頃に、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、
      大石のノート、情報を纏めた紙×9、ベネリM3(5/7)、12ゲージショットシェル50発、ゴルフクラブ】
【所持品3: 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾58発】
【所持品5:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房)】
【所持品6:包丁、救急箱、エリーの人形@つよきす -Mighty Heart-、スクール水着@ひぐらしのなく頃に 祭、

236 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:09:12 ID:2v2VAuar
 

237 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:09:16 ID:CyCu81G/


238 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:09:24 ID:proR3jGT
      顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品7:IMI デザートイーグル 10/10+1、 IMI デザートイーグル の予備マガジン6、多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)】
【所持品8:サバイバルナイフ、トランシーバー×2、、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、 九十七式自動砲 弾数7/7
      九十七式自動砲の予備弾85発、デザートイーグルの予備弾85発】
【状態:肉体的疲労大、脇腹と肩に銃傷、全身打撲、智代に蹴られたダメージ、胸部を中心に体が切り裂かれている、女性ものの服着用】
【思考・行動】
基本方針:仲間と力を合わせ、ゲームを終わらせる
1:電波塔へ援護に行く
2:合流後、廃坑南口に向かう
3:瑞穂たちを心配
4:自分で自分が許せるようになるまで、誰にも許されようとは思わない
5:ちゃんとした服がほしい



【備考】
※制限が解かれたことにより雛見沢症候群は完治しました。
※キュレイにより僅かながらですが傷の治療が行われています。
※永遠神剣第三位"時詠"は、黒く染まった『求め』の形状になっています。
※海の家のトロッコについて、知りました。
※ipodに隠されたメッセージについて、知りました。
※武が瑞穂達から聞いた情報は、トロッコとipodについてのみです。
※武器の配分をしました。




239 : ◆UcWYhusQhw :2007/12/18(火) 02:09:54 ID:proR3jGT
【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:純一の第2ボタン、永遠神剣第七位"献身" S&W M37エアーウェイト弾数4/5】
【所持品1:S&W M37エアーウェイト弾数4/5、S&W M37エアーウェイトの予備弾85、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭トカレフTT33の予備マガジン10】
【所持品2:クロスボウ(ボルト残24/30)竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス 釘撃ち機(10/20)】
【所持品3:食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)、ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【所持品4:可憐のロケット@Sister Princess、 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品5:、コルトM1917の予備弾25、コルトM1917(残り2/6発)、トカレフTT33 0/8+1、ライター】
【状態:強い決意】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出 、ただし乗っている相手はぶっ潰す。
1:電波塔へ援護に行く
2:合流後、廃坑南口に向かう
3:瑞穂たちを心配
4:戦う決意。
5:純一の遺志を継ぐ
6:ゲームをぶっ潰す。
7:殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出




【備考】
※純一の死を乗り越えました。
※純一の第2ボタンは桃色の光を放っており多少の魔力があるようです。
※武器の配分をしました。

240 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:10:18 ID:2v2VAuar
 

241 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/18(火) 02:10:21 ID:CyCu81G/


242 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/20(木) 01:31:06 ID:jCZ8kRar
んー、編集しようかと思ったけど、したらば落ちてて見られない…
ごめん、寝る。

243 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:01:34 ID:Wmj+Jl70
ひゅうひゅうと風が吹いていた。
鮮やかな夕日が、眼下に広がる孤島を赤く照らし上げている。
真っ赤に染まった孤島の姿はまるで、多くの人間が流した血に塗れているかのようであった。

「――――っ」

大剣を携え、幾重にも連なる雲の真下で飛翔しているのは、アセリア・ブルースピリットと呼ばれる妖精である。
圧倒的な加速力を生み出す純白の翼と、只の人間では及びもつかぬ凄まじい身体能力。
第四位の永遠神剣『求め』と契約し、オーラフォトンの力すらも手に入れたアセリアは、生存している参加者中で間違いなく最強の存在。
しかしその最強の妖精の表情が、今は悲痛に大きく歪んでいた。

「お願いだミズホ……どうか持ち堪えてくれ……!」

呟くアセリアの腕の中には、血塗れになった宮小路瑞穂の姿。
瑞穂の口から放たれる吐息は、今にも消え入りそうな程に弱々しい。
アセリアも必死に永遠神剣の力を引き出して、瑞穂の状態が悪化しないようにしているが、それだけでは足りない。
一刻も早く、適切な治療を施す必要があった。

その為、当初アセリアは病院に向かおうとしていたのだが、現在は電波塔の上空辺りを飛翔している。
この島にくるまで戦う事しか知らなかったアセリアは、治療に関する知識など全く持ち合わせていない。
自分だけで病院に向かったとしても、瑞穂に対して何の処置も出来ないだろう。
アセリアは遅ればせながらその事実に気付き、電波塔の周辺へと舞い戻って、瑞穂を治療し得るであろう仲間達の姿を探していた。

「早く……早くコトミ達を見つけないと……」

満身創痍の肉体を酷使し、残り少ないマナを総動員して、全速力で電波塔の周辺を探索する。
後に控えているであろう主催陣営との対決を考えれば、出来るだけ力は温存しておくべきだが、そのような理屈など知った事では無い。
今のアセリアにあるのは、瑞穂を救いたいという想いだけである。
しかしそんなアセリアの想いも空しく、一ノ瀬ことみや古手梨花の姿は一向に見付かる気配が無かった。

「上空から見える位置には居ない――でも、森の中になら……っ」


244 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:03:34 ID:TDpw5wpy


245 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:03:47 ID:Wmj+Jl70
上空から見渡してみた限り人の姿は見受けられなかったが、未だ森の中は確認していない。
アセリアは高度を落として、生い茂る木々の間を縫うように突き進む。
視界の端に映ったアヴ・カムゥの残骸など気にも留めず、意識を捜索に集中させる。

「コトミ、リカ! 居るなら返事をしてくれ!」

高速で飛び回りながら、可能な限り大声で叫んだ。
焦燥に染まったその声は、静まり返った森の中に大きく響き渡る。
だが何度声を発しても、返って来るのは周囲に吹き荒れる風の音だけであった。

(……落ち着いて考えろ。コトミ達は何処に居る……!?)

ともすれば溢れ出しかねない感情の奔流を抑え込んで、アセリアは懸命に思案を巡らせる。
これだけ叫んでも返事が無い以上、ことみ達が森の中に居る可能性は低いと云わざるを得ない。
他の場所を当たってみるべきだろう。

「未だ調べていないのは……あの搭だけ」

小さく呟いてから、アセリアは前方に聳え立つ巨大な塔を眺め見た。
電波塔――首輪の操作という役目を課された、此度の殺人遊戯に於ける最重要施設。
元々はあの搭を破壊するのが、アセリア達一行の目的だった。
最大の脅威であったアブ・カムゥを打倒した以上、ことみや梨花が舞い戻ってきて、電波塔を破壊しようとしていても可笑しくは無い。
一縷の望みに懸けて、アセリアは電波塔の前に降り立った。

「フ――――!」

ウイング・ハイロゥを仕舞い込んでから、半ば体当たりするような形で、搭の扉を強引に押し開ける。
開け放たれた扉の向こう側には、巨大な通路が広がっていた。
幅は優に五メートル以上あり、奥行きは数十メートル、壁面は無骨なコンクリートで覆い尽くされている。
通路の所々には金属製のコンテナが配置されており、その影に敵が潜んでいる危険性もあるだろう。
本来ならば、慎重を期して進むべき場面。
しかし今は、ほんの一秒一時すらも惜しい。

246 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:05:03 ID:Wmj+Jl70
「……敵が居たとしても、倒せば良いだけ!」

敵の領域である通路を、アセリアは何の躊躇も無く駆け抜けてゆく。
その速度は、疾風と見紛わん程に凄まじい。
通路に面する扉を一つずつ押し開けて、中に人が居ないか確認する。
見張りの敵兵等は潜んでいないようであったが、仲間達の姿もまた見当たらない。
そのまま突き進んでゆくと、やがて正面に曲がり角が見えた。

(誰か……待ち構えている)

神経を研ぎ澄ませると、角の向こう側に何者かが潜んでいる気配を感じ取れた。
これだけ派手に足音を立てて動き回っているのだから、こちらの存在は察知されている筈。
そう判断したアセリアは、両足に残された筋力を総動員して、角の方向へと思い切り跳ねた。
相手に攻撃の照準を絞らせぬよう、通路の壁面を蹴り飛ばす事でジグザグに跳躍する。

「――――てやあああああっ!!」

甲高い雄叫びと共に、蒼の妖精は己が大剣を勢い良く振り下ろす。
疲弊し切った身体から放たれるソレは、全快時とは比べるべくもない駄剣だが、それでも並の相手なら十分に切り伏せ得る一撃。
しかし『求め』の刃先が標的を捉える寸前、アセリアの腕がピタリと停止した。

「……リカッ!?」
「……アセリアッ!? それに瑞穂!?」

アセリアの蒼い瞳に映るは、捜し求めていた仲間――古手梨花。
梨花の両腕には、ミニウージーがしっかりと握り締められている。
恐らくは、敵が中に侵入して来たのだと勘違いして、迎撃しようとしていたのだろう。
梨花はミニウージーの銃口を下ろすと、血に塗れた瑞穂の方へと視線を移した。

「ちょっと、一体何があったのよ!? ボロボロじゃない!」
「……説明している時間は無い。今は早く……ミズホを、助けて欲しい」

247 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:05:06 ID:TDpw5wpy


248 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:05:47 ID:TDpw5wpy


249 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:06:03 ID:ZRfznrJ8
 

250 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:06:24 ID:Wmj+Jl70
アセリアの片腕に抱き抱えられている瑞穂は、今も苦しげに胸を上下させている。
その顔色は、徐々に青白く変色しつつあった。
直ぐにでも適切な治療を施さねば、手遅れになってしまうかも知れないだろう。

「分かったわ、瑞穂の手当てを優先しましょう。アセリア、まずは瑞穂を横に寝かせて頂戴」
「……ん!」

梨花は指示を送りながら、冷静に瑞穂の様子を観察した。
瑞穂の身体の至る所には、打撲跡や擦り傷が見受けられるが、致命傷と呼べる程の物は無い。
深い傷といえば精々、左腕上腕部に刻み込まれた傷くらいだ。
傷の深さだけを見れば、命には別状の無い状態。
しかし、負傷箇所が極めて不味い。
人体の構造上、左腕上腕部は心臓から程近い位置にある。
そのような箇所を深く傷付けられた場合、必然的に大量の出血を許してしまう。
つまり今の瑞穂は、出血多量が原因で生命の危機に晒されているのだ。

「リカ……どうだ? ミズホは……助かりそうなのか?」
「……集中したいから、少し黙ってて」

アセリアが不安げに問い掛けて来たが、丁寧に対応している余裕など無い。
質問をぴしゃりと跳ね付けてから、過去の記憶を呼び起こす。
梨花は雛見沢症候群の女王感染者として、長い間入江診療所に通い続けてきた。
そういった関係上、診療所の所長――入江が他の患者を治療する場面も、梨花は幾度と無く目撃している。
専門的な知識までは持ち合わせていないが、簡単な応急処置を行う程度なら、見よう見まねで出来る筈だ。

(……帰ったら、入江に礼を云わなくちゃね)

梨花は鞄の中に手を伸ばして、百貨店で見つけた物――治療用具一式を取り出した。
まずは左腕上腕部の傷口に、消毒ガーゼを強く押し当てた。
続けて左腕を心臓よりも高い位置に持ち上げる事で、出血の勢いを押し留める。
最後に包帯で、左肩口の辺りを強く縛り止めた。

251 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:06:25 ID:TDpw5wpy


252 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:06:43 ID:ZRfznrJ8
 

253 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:07:11 ID:Wmj+Jl70
「終わった……のか?」
「ええ、きっとこれで大丈夫な筈よ」

決して手際が良いとは云えないものの、何とか応急処置は完了した。
それは確かに効果があったようで、あれ程激しかった瑞穂の出血が、今はピタリと止んでいる。
アセリアがオーラフォトンで治療を行っている事もあり、瑞穂の顔に少しずつ血色が戻ってゆく。
まだまだ油断は出来ないが、一先ず峠は越えたと考えて間違い無いだろう。

「ミズホ……良かった……」

アセリアは瑞穂の手を取って、しっかりと握り締めた。
手の平から感じられる暖かさは、今も瑞穂が生きているという証に他ならない。
最悪の事態を避けられたと分かり、アセリアは安堵に表情を緩めた。
しかし此処は平和な病室等では無く、敵の重要施設であるという現実を失念してはいけない。
アセリア達が成さねばならない事は、それこそ山のように残っている。

「さて、何があったか説明して貰おうかしら」
「……ん、分かった」

そうして、アセリアは梨花と情報交換を開始した。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「つまりあの巨大なロボットを破壊したのは、貴女なのね?
 貴女は神剣に操られて、瑞穂ごとロボットを攻撃してしまったと――そういう事なのね?」
「……うん。私が……ミズホを傷付けた」

梨花が問い掛けると、アセリアは力無く頷いた。
今のアセリアの心は、深く重い罪悪感に囚われている。

254 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:07:12 ID:TDpw5wpy


255 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:08:29 ID:Wmj+Jl70
「アセリア……貴女は一生懸命、瑞穂を守ろうとした。その結果は悲しい物になったけれど、きっと瑞穂は許してくれる。
 『仲間を守りたい』という貴女の想いは、ちゃんと伝わっている筈よ」
「うん……ミズホは優しいから……それは分かっている。でも……だからこそ、私は心が痛い」

瑞穂とアセリアがこの島で培った信頼関係は、何が起ころうとも決して崩れはしない。
瑞穂が意識を取り戻したとしても、罵倒の言葉を浴びせられる事は無いと断言出来る。
しかし、だからこそアセリアは形容し難い程の痛みを感じていた。
自身の身など顧みずに、『求め』の力を引き出して、只ひたすらに瑞穂の治療を続ける。
残り僅かなマナで行われる治療は、相当に効果が落ちてしまっているが、何もしないよりは随分とマシだろう。


「……アレを壊すのは、暫く無理ね」

梨花はそう呟いてから、前方に立ち塞がる扉を眺め見た。
他の部屋には重要そうな機械が置いていなかった以上、この扉の向こう側に、電波塔の機能を司る設備があるのは間違いない。
その設備さえ破壊すれば、電波塔は只の鉄屑と化す筈。
しかし扉は見るからに頑丈そうな金属で構成されており、しっかりと施錠もしてある。
中に入るには破壊するしかないが、銃弾程度では到底不可能だし、疲弊し切ったアセリアにも破壊する事は難しい。

(なら一旦外に出て、ことみを探すべきかしら? 
 ……ううん駄目ね、なるべく早く電波塔を破壊しないと)

一瞬頭に浮かんだ考えを、直ぐに打ち消した。
次々に不覚を取った鷹野達が、このまま黙っているとは考え難い。
勝負とは、後手に回れば回る程不利になる物。
鷹野達が次の手を打つよりも早く、電波塔を無力化しておきたい所。
とは云え、瑞穂の治療を後回しにするという選択肢は論外だ。

まずは瑞穂の容態がもう少し回復するのを待って、それからアセリアに休憩を取らせるべきだろう。
多少なりとも休憩を取った後のアセリアならば、造作も無く扉を破壊出来る筈だった。
結論を下した梨花は、アセリアにも応急処置を行うべく、治療の準備をし始めた。

256 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:08:32 ID:TDpw5wpy


257 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:10:09 ID:Wmj+Jl70

    ◇     ◇     ◇     ◇


場所は移り変わり、電波塔の周辺に広がる草原。
激戦の傷跡が深く刻み込まれた地に、赤色の車が停車していた。

「――はん、アレさえ壊せばこの糞ったれゲームも終わりって訳かい」

逸早く車から降りた大空寺あゆは、酷く皮肉気な笑みを浮かべた。
車の助手席には白鐘沙羅の姿が、そして後部座席には両腕を後ろ手に縛られた、一ノ瀬ことみの姿がある。


――あゆはことみをロープで拘束した後、直ぐ様話を聞きだそうとした。
しかしことみが最初に話したのは、電波塔によって首輪が管理されている為、今すぐ破壊しにいくべきだという内容の物だった。
それは本来ならば、眉唾物の話。
殺人遊戯の生命線とも云える最重要施設を、参加者が攻撃可能な場所に設置するなど考えられない。
ましてやその情報源が、殺人鬼である一ノ瀬ことみなのだから、信じろと云う方が無茶だろう。

だが塔に関する情報は、あゆ達も幾つか耳にしている。
蟹沢きぬの情報によれば、参加者達は暗示を掛けられていた所為で、少し前まで電波塔の存在を認識出来なかったらしい。
そして主催者側の人間だと思われる男も、『電波塔を放棄する事にした』と云っていた。
あの電波塔が何か重大な機能を担っているのは、ほぼ間違いない。
今回に限っては、ことみの話を信じるに足る材料が十分過ぎる程揃っていた。
そこであゆと沙羅は、ことみへの尋問よりも、電波塔の破壊を優先する事にしたのだ。
山道であった為車での移動は難航したが、何とか無事電波塔まで辿り着けた。


「……沙羅、準備は良いかい?」
「うん、バッチシよ。ちゃんと信管もセットあるし、何時でもいけるわ」


258 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:10:10 ID:TDpw5wpy


259 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:11:30 ID:ZRfznrJ8
 

260 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:11:42 ID:Wmj+Jl70
答える沙羅の両腕には、サッカーボール大の爆弾が抱き抱えられている。
その威力は、天才少女・二見瑛理子のお墨付きだ。
電波塔という巨大な施設を無力化するのに、これ以上適した武器は無いだろう。
敵が待ち伏せしている可能性も考慮すれば、内部よりも外部から破壊する方が良い筈だった。

沙羅は車から降り立つと、生い茂る草々を踏み締めながら、電波塔の外壁傍まで歩いていった。
爆弾を地面に設置してから、祈るように目を閉じる。

「瑛理子――力を貸して。鷹野達に、飛びっきりのカウンターパンチを食らしてやって……!!」

強い想いを篭めた言葉と共に、沙羅は爆弾を起動させた。
続けて全速力でその場を離脱し、あゆやことみと共に、自分達が乗ってきた車の背後へと身を隠す。
そのまま暫く待ってみたものの、爆発が起きる様子は無い。
もしかしたら失敗作だったのでは、という不安も沸き上がったが、それは杞憂に終わった。
爆弾の外装が急激に膨らみ、そして破裂する。


「「「……………………ッ!!!」」」


轟く爆音、視界を覆い尽くす閃光。
余りの衝撃に大地すらも振動し、凄まじい爆風が容赦無く吹き荒れる。
コンクリートや金属片等、電波塔を構成していた様々な物体の破片が、雨のように降り注いでいた。
もし沙羅達が車の背後に身を隠していなかったら、残骸の幾つかが身体に突き刺さっていたかも知れないだろう。

「塔は……どうなったの!?」

爆風が収まるのを待ってから、沙羅は車から身を乗り出した。
するとボロボロの風体を晒している塔の姿が、瞳に映った。
元が巨大な施設だった事もあり、何とか原型を留めてはいるものの、アレでは最早修理不可能の筈。

「瑛理子……やっぱりアンタ凄いよ。アンタは……天才よ」

261 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:11:44 ID:TDpw5wpy


262 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:13:31 ID:Wmj+Jl70
失敗作など、とんでもない勘違いだった。
瑛理子が準備してくれた爆弾は、恐るべき威力を発揮したのだ。
瑛理子の遺した切り札は、悪魔の枷を完全に打ち破ってくれたのだ。
沙羅は瑛理子が遺したもう一つの道具――小さな人形を、慈しむ様に抱き締めた。

しかし何時までも、感慨に耽っている訳にも行かない。
首輪の機能を無効化させたとは云え、未だ全てが解決した訳ではないのだ。


「それじゃ、そろそろ行こっか」

目的を果たした沙羅達は、直ぐに場所を移そうとする。
初めに沙羅が車に乗り込んで、エンジンを起動させた。
次にあゆとことみが車のドアを空けて、後部座席に乗り込もうとする。
しかしそこであゆは、唐突に動きを止めた。
未だロープで拘束したままのことみを、値踏みするように眺め見る。

(……本当にコイツは悪人なのか?)

あゆの中に渦巻いているのは、『もしかしたら、一ノ瀬ことみは殺人鬼なんかじゃ無いのでは?』という想いである。
殺し合いに乗っている人間ならば、首輪を無力化させる方法など考えたりはしないだろう。
そんな事をするよりも、優勝する為の方法を考えた方が遥かに有益だ。
にも関わらず、ことみは電波塔の機能を解明していたし、その破壊を推奨だってしていた。

「なあ一ノ瀬、もう一度聞いてやる。時雨を殺したのは、お前なのか?」
「……何度聞かれたって答えは同じ。亜沙さんは私の大事な仲間だった。
 そんな人を、殺したりする訳ないの」

263 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:13:32 ID:TDpw5wpy


264 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:15:13 ID:TDpw5wpy


265 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:15:13 ID:Wmj+Jl70
問い掛けてみると、全く迷いの無い答えが返って来た。
告げることみの表情には、動揺している様子など微塵も無い。
冷静に観察してみると、とても嘘を吐いているようには思えない。
やはり、自分が間違っていたのでは――あゆの中に根付いていた猜疑心と憎悪が、徐々に薄れてゆく。
だが、全てが丸く収まるかと思われたその瞬間。
パアン、という乾いた音がした。

「――――なっ!?」

あゆ達の近くに生い茂っていった雑草が、鳴り響いた銃声と共に弾け飛ぶ。
唐突に飛来した弾丸が、束の間の平穏を切り裂いていた。


    ◇     ◇     ◇     ◇


電波塔が爆破された時、アセリア達はまだ塔内に留まっていた。
アセリアが残された力の全てを振り絞って、オーラフォトン・バリア――強力な防壁を展開する魔法――で仲間達を守ったものの、一歩間違えれば死んでいた。
今のアセリア達にとって、外から攻撃してきた人間は冷酷無比な襲撃者に他ならない。
だからこそ梨花は、即座に反撃を行ったのだ。

「くっ……やっぱりこの距離じゃ当たらないわね」

梨花はベレッタM92Fを握り締めながら、苛立たしげに吐き捨てた。
塔の外壁が破壊されたお陰で、視線こそ通ってはいるが、いかんせん距離が遠過ぎる。
どうしてものか――梨花が結論を出すよりも早く、横からアセリアの声が聞こえて来た。

「あれは……コトミ? サラ……それに、ダイクウジアユッ…………!」
「え――――?」

266 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:16:38 ID:Wmj+Jl70
云われて梨花は、襲撃者達の姿を注視した。
一見した所、相手の人数は三人。
栗色の髪の少女――外見的特徴から察するに、白鐘沙羅。
そして車の直ぐ傍に金髪の少女、大空寺あゆと、ロープで拘束されたことみの姿があった。

「ちょっと、どういう事!? 何でことみが捕まってるのよ!?」
「分からない……。だけど、ダイクウジアユは……危険な人間だ。
 このままじゃ、コトミが危ない……!」

アセリアからすれば、そう判断するのが一番自然だった。
予告無しの爆撃攻撃に、ロープで拘束された仲間の姿。
アセリアとことみは一度、あゆに襲撃された経験だってあるのだ。
何故ことみが捕まっているのか、どうして沙羅があゆと同行しているのかは不明だが、危険な状況である事は間違い無い。

「確か沙羅って云う人は、貴女の知り合いだったわよね? だったら交渉の余地くらいあるかも知れない。
 まずは話し合ってみましょう」
「……ん!」

すぐさま対応策を決めた梨花達は、二人同時に塔を飛び出した。
塔は何時倒壊するか分からない状態なので、満身創痍の瑞穂を残してゆく訳にはいかない。
アセリアは草原の一角に瑞穂を横たわらせてから、静かに呟いた。

「ミズホ……暫く此処で待っていて。必ず……コトミを助けて、戻るから」

生命の危機は脱したものの、瑞穂は未だ気絶したままである。
出来ればずっと傍に付いてあげたい所だが、今は緊急事態。
先ずはことみを救出するのが先決だろう。
蒼の妖精は視線を上げて、己が役目を果たす為に歩き出した。


「――アセリアッ!?」
「――アセリアさんっ!」

267 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:16:40 ID:TDpw5wpy


268 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:16:56 ID:ZRfznrJ8
 

269 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:17:40 ID:ZRfznrJ8
 

270 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:18:37 ID:Wmj+Jl70
アセリアの姿に気付いた沙羅とことみが、同時に驚きの声を上げる。
それに構わずアセリアは歩き続け、沙羅達から二十メートル程離れた所で足を止めた。
ひゅうひゅうと、冷え切った風が草原の中に吹き荒れる。
降り注ぐ夕日が、アセリアの顔を朱色に照らし上げていた。

「サラ……どういうつもりだ。どうして……こんな事をする」
「こんな事って――、私達は只、電波塔を破壊しようと……」
「――ふざけないで! 下手したら私達、死んでいたのよ!?」

弁解しようとした沙羅の言葉は、梨花の声によって遮られた。
梨花は怒りの表情を浮かべたまま、ロープに縛られていることみを指差す。

「私の仲間をそんな風にロープで縛って! 何よ、人質にするつもりなの?
 貴女と大空寺あゆは、殺し合いに乗ってるって云うの?」
「……違う! 私達は殺し合うつもりなんて無い!」
「だったら、ことみを放しなさい! 今すぐによ!」

云われて沙羅は一瞬迷ったが、直ぐにことみの縛めを解いた。
今下手に逆らっては、取り返しの付かない事態になりかねないからだ。
自由になったことみは、負傷している足を引き摺りながらも、アセリアの元へと駆け寄っていった。

「アセリアさん、梨花ちゃん!」
「コトミ……もう大丈夫。私の後ろに……隠れて」

アセリアはそう云って、ことみを後ろへと下がらせた。
アセリアの両腕には、今も『求め』がしっかりと握り締められている。

囚われの身であったことみは解放された
しかしアセリア達もあゆ達も、臨戦態勢を解いたりはしない。
両者共に、既に一度ずつ互いを攻撃してしまっているのだ。
そのような状況で、安易に相手を信用したり出来る筈も無い。

271 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:18:38 ID:TDpw5wpy


272 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:20:05 ID:Wmj+Jl70

アセリアと古手梨花。
大空寺あゆと白鐘沙羅。
両者は各々の得物を手に、緊張した面持ちで睨み合う。
だが唐突にあゆが口元を吊り上げて、心底可笑しそうに哂い始めた。

「く――、くくッ……アハハハハハハハハハっ!! そうか……そういう事か…………!!」

狂ったような笑い声が、静寂に包まれた黄昏の草原を打つ。
一人で納得したように哂い続けるあゆの姿は、本人以外の誰にとっても理解不能な物だ。
訝しげな視線を送る沙羅に対して、あゆが語り掛ける。

「分からないのかい、沙羅。私達はまた、一ノ瀬に騙されたんだよ」
「……どういう事?」
「あの糞虫にとって電波塔を壊す事なんて、どうでも良かったのさ。只――私達とアセリア達を、潰し合わせようとしただけだ」
「なッ…………」

絶句する沙羅を他所に、あゆは言葉を続けてゆく。

「考えたもんだねえ、一ノ瀬。生き残りが少なくなってきたから、そろそろ仲間を切り捨てようって腹か。
 塔の中にアセリア達が居るって事も、最初から分かっていたんだろ? 分かった上で敢えて、塔を爆破させようとしたんだろ?」

語るあゆは、憎悪に染まり切った目でことみを睨み付けている。
今まで集めた情報によれば、自分達と同様、アセリア達も殺し合いには乗っていない筈。
しかし自分達は、塔の中に居るアセリア達を問答無用で攻撃してしまった。
生じてしまった亀裂を修復するのは、並大抵の事では不可能だろう。

対主催を志す者同士が潰し合えば、一番得するのは誰か――そんなモノ、殺し合いに乗っている人間に決まっている。
余りにも出来すぎた、作為的に準備されたとしか思えぬ状況。
一度消えかけた疑心暗鬼の炎は、以前を遥かに上回る勢いで燃え上がっていた。


273 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:20:06 ID:TDpw5wpy


274 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:21:11 ID:ZRfznrJ8
 

275 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:21:36 ID:TDpw5wpy


276 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:21:36 ID:ZRfznrJ8
 

277 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:21:55 ID:Wmj+Jl70

「ちょっと待つの! 私にはそんなつもり、これっぽちも無かったの!」
「はっ、この期に及んで言い逃れとはね。流石に売女なだけあって、面の皮が厚いさね。
 その調子だとアレか、男相手なら股でも開いて懐柔してんのかい?」

ことみが懸命に無実を訴えるが、あゆは全く取り合おうとしない。
必死の弁明は寧ろ、あゆの憎悪に拍車を掛けるだけだった。

「首輪の機能を無効化しようとしてたのも、全ては私達を欺く為だった訳だ。
 いやいや、ホント大した役者だよ」
「……幾らなんでも、それは一方的に決め付け過ぎなんじゃないの?」
「沙羅――お前、未だ寝惚けてるんだな。なら良い事を教えてやろうか?」

ことみを殺人鬼と断ずる材料は十分に揃っているが、未だ沙羅は確信を持てていない様子。
だから、あゆは口にする――今まで伝えていなかった『事実』を。


「お前の元の世界の知り合い――確か、恋太郎といったか。ソイツを殺したのはな、そこの糞虫さ」
「え…………」
「聞こえなかったんなら、もう一度云ってやる。双葉恋太郎を惨殺したのは、一ノ瀬ことみだ」

念を押すようにあゆが云うと、沙羅の顔から表情が消えた。
最愛の人間を奪った怨敵が目の前に居るという情報は、確かに沙羅へと伝わった。

「どう? これでもまだ、そこの糞虫を信頼する余地が残されてるって云うのかい?」

投げ掛けられた問い掛け。
沙羅は静かに俯いて、暫しの間沈黙を守っている。
そのまま待つ事、十数秒。
やがて沙羅は、幽鬼の如くゆっくりと顔を上げた。

278 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:22:18 ID:EB5r7av/
 

279 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:22:23 ID:ZRfznrJ8
 

280 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:23:08 ID:Wmj+Jl70


「……す」


その声は小さ過ぎて、誰にも聞き取る事が出来なかった。
しかし聞き取るまでも無く、この場に居る全員が沙羅の意思を理解出来ただろう。
何しろ沙羅の表情は、般若の如き形相に変わっていたのだから。

「殺す……殺してやる!! よくも恋太郎を…………ッ!!!」
「違う! 私は恋太郎さんを殺してなんか……」
「五月蝿い! アンタだけは、絶対に許さないんだからッッ!!!」

ことみの弁明は、最後まで聞く必要すら無いと云わんばかりに跳ね付けられた。
今の沙羅の心は、激しく燃え盛る憎悪で埋め尽くされている。
交渉など不可能だ。

「お前達、話は聞いてただろ? 一ノ瀬ことみは極悪非道な殺人鬼さ。
 今から一ノ瀬を殺すから、ソコ退けや。邪魔するって云うんなら、生命の保証は出来ないよ」
「冗談じゃないわね。ことみが殺し合いに乗っているなんて、そんなの有り得ない。
 私は貴女達なんかよりも、ことみを信じるわ」
「……何を云われようとも、私は……コトミを守る。お前が敵だと云うのなら……倒すだけ」

話は終わりだと云わんばかりに、あゆが刺々しい声で通告したが、梨花もアセリアも退こうとしない。
殺気に満ちた視線と視線が、火花を散らすかのように激しく鬩ぎ合う。

「そうかい……。なら――」

あゆの手に握り締められたS&W M10が、すっと持ち上げられる。
応じるようにして、アセリア達も各々の得物を構えた。

「――死ねや、糞虫共!!」

281 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:23:09 ID:TDpw5wpy


282 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:23:57 ID:Wmj+Jl70

甲高い銃声を轟かせながら、あゆのS&W M10が火花を吹く。
放たれた銃弾は一直線に、アセリアの胸部目掛けて飛んで行った。
アセリアは恐るべき動体視力で銃弾の軌道を見抜き、『求め』の刀身を盾にして受け止めると、そのまま前方へと疾駆した。

今アセリアは疲労困憊の状態だが、それでも素人の銃撃程度なら問題にならない。
次々に襲い掛かるあゆの銃撃を着実に防ぎながら、確実に間合いを詰めてゆく。
だが突如アセリアは背中に薄ら寒いものを感じ、咄嗟の判断で後方へと跳躍した。
次の瞬間、それまでアセリアが居た空間を、猛り狂う銃弾の群れが切り裂いてゆく。

「アセリア――私達の邪魔をするつもりなら、アンタも倒す!!」
「サラッ……」

沙羅はアセリアの着地を待たずして、立て続けにワルサー P99のトリガーを引き絞る。
熟練した銃の使い手である沙羅が、狙いを外す事は有り得ない。
放たれた銃弾は一つの例外も無く、アセリアの胴体部に向かって飛んで行った。
本来のアセリアならば、ウイング・ハイロウゥを展開して回避する場面。
しかし今のアセリアには、そのようなマナなど残されては居ない。
宙に浮いたまま、必死に身を捩って逃れるのが精一杯だった。

「くあっ…………!」

何とか銃弾の回避には成功したものの、アセリアは着地に失敗して転倒してしまう。
それは沙羅にとって絶好の好機であり、アセリアにとっては絶体絶命の危機。
沙羅はほんの一秒足らずの動作で、倒れ伏すアセリアへと照準を定める。
だが沙羅は視界の端にあるモノを認めると、直ぐに射撃動作を中断して、傍にあった瓦礫の山――電波塔の残骸――へと身を隠した。
連続して鳴り響いた銃声と共に、瓦礫の一部が弾け飛ぶ。

「――――ッ、まさか今のを躱されるなんて……」

283 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:23:58 ID:TDpw5wpy


284 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:25:27 ID:EB5r7av/
 

285 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:26:08 ID:Wmj+Jl70
銃撃を行った梨花は、沙羅の卓越した危機回避能力に舌打ちしながらも、ミニウージーを鞄へと仕舞い込んだ。
短機関銃であるミニウージーは強力無比な火器だが、何回も使用してしまえば直ぐに銃弾が切れてしまうからだ。
幸い瑞穂の鞄を持ってきたお陰で、ミニウージー以外にも武器は沢山ある。
梨花は鞄からベレッタM92Fを取り出すと、沙羅が隠れている瓦礫の山に向かって銃撃を開始した。

「6、7、8…………」

沙羅は一目で梨花の銃が何であるかを見抜き、相手の弾切れまで耐え凌ぐ作戦に出た。
反撃など一切行わずに、敵が消費した弾数を数えながら、瓦礫の影で息を潜め続ける。
焦る事は無い。
敵の銃弾さえ切れてしまえば、一気に攻め込む好機が生まれる筈なのだ。

「14……15――今ッ!!」

敵の弾切れと同時に、勢い良く瓦礫の山を飛び出す沙羅。
そんな彼女の目に映ったのは、コロコロと転がってくる空き缶のような物体だった。
次の瞬間、沙羅の視界が眩い閃光で覆い尽くされる。

「しま……っ、くああああああああ!!」

物体が閃光弾であると気付いた沙羅は、半ば反射的に目を閉じたものの、その程度では防ぎ切れない。
炸裂した閃光段は、沙羅の視力を一時的に奪い去っていた。

「半ば賭けだったけど――どうやら、決まってくれたみたいね」

梨花はそう呟きながら、両目を覆っていた手を外した。
こちらの弾切れと同時に敵が攻め込んでくると踏んで、梨花は予め閃光弾を投擲していたのだ。


286 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:26:09 ID:TDpw5wpy


287 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:27:35 ID:Wmj+Jl70
低い身体能力しか持たぬ梨花と、高度な射撃の技能を持つ沙羅。
正面から戦えば、何百回やろうとも沙羅が勝つに決まっている。
しかし、梨花とて自身の非力さくらい自覚している。
実力で劣っているのならば、正面から戦わなければ良い。
心理戦という一点に限っては、梨花の方が一枚上手だった。

「これでチェックメイト――暫くの間、大人しくして貰おうかしら」

梨花は敵の戦闘能力を奪い去るべく、銃口を沙羅の左足へ向けた。
沙羅は未だ視力が回復していない為に、碌な回避行動を取れない。
一対一の対決なら、これで勝負は決まっていただろう。
だが今は複数人による乱戦の最中であり、常に周囲へと気を配る必要がある。
あれだけ派手な攻撃を行ってしまえば、他の者に狙われぬ筈が無いのだ。
梨花は突如左肩に鈍い痛みを感じ取り、ベレッタM92Fを取り落とした。

「あぐっ…………!?」
「――アホ面晒して、一人で勝った気になるなや」

梨花の左肩に銃弾を掠らせたのは、疑心暗鬼に囚われし金色夜叉――大空寺あゆだ。
直撃こそ免れたものの、銃弾は梨花の左肩に浅くない損傷を与えていた。
間髪置かずに、あゆはS&W M10で追い討ちを行おうとする。
だが沙羅に仲間が居るのと同様、梨花にも仲間が居る。
何者かが近付いて来る気配を察知したあゆは、首を横へと向けた。

「たああああああああっ!」
「アセ、リアッ……!!」

288 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:27:36 ID:TDpw5wpy


289 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:29:30 ID:Wmj+Jl70
吹き荒れる蒼の疾風。
あゆの両足に狙いを絞って、アセリアの大剣が横凪ぎに振るわれる。
しかしあゆにとっては幸いな事に、満身創痍のアセリアが放つ剣戟は、常人でも反応可能な速度にまで落ちている。
あゆは済んでの所で真上に跳躍して、迫る一撃をやり過ごした。
凌ぐ事に成功してしまえば、危険な状況も一転して自らの好機となる。
この距離ならば照準を定めるまでもなく、銃弾は必ず敵に命中する。
あゆは地面に降り立つと同時に、S&W M10の引き金を絞った。
だが至近距離からの銃撃でも、アセリアを打倒するには至らない。

「こんなモノ……当たらない!」

アセリアは身体を横に傾けて、迫り来る銃弾を薄皮一枚で回避する。
あゆの放った銃弾は、空しく宙を切り裂いてゆくに留まった。
今のアセリアは疲弊し切っており、普段の一割も力を出せていない。
それでも人間離れした動体視力と、卓越した戦闘センスだけは健在だった。

「化け物がっ……!」

悪態を吐きながら、あゆが一旦距離を取るべく下がってゆく。
一方アセリアは追撃しようとせずに、別の方角に向けて走り出した。
あゆとアセリアが戦っている間、他の人間が何もしていなかった訳では無い。
アセリアの向かった方角には、沙羅とことみの姿がある。
沙羅は梨花の銃撃を掻い潜り、ことみに襲い掛かろうとしている所だった。


「当たって……ッ」
「馬鹿ねえ、そんな物が通用するとでも思ってんの!?」

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:29:31 ID:TDpw5wpy


291 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:29:56 ID:ZRfznrJ8
 

292 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:30:49 ID:Wmj+Jl70
ことみは車の影に隠れながら、周囲に落ちていた瓦礫の欠片を投擲するが、そのような抵抗無意味。
沙羅は難無く身を躱しながら、瞬く間に距離を縮めてゆく。
足を負傷していることみは、障害物に身を隠す以外、銃撃から逃れる術を持っていない。
捕虜になった際に荷物も奪われてしまった為、武器を用いて反撃するのも不可能だ。
このまま距離が縮まり切ってしまえば、数秒と保たずに殺されてしまうだろう。
そんな状況を覆したのは、満身創痍の身体で駆け付けたアセリアだった。

「てやああああああっ!!」
「――――ッ!?」

重厚な轟音に続いて、土煙が巻き起こる。
沙羅の進路を防ぐような位置に、アセリアが『求め』を振り下ろしていた。
アセリアは真っ直ぐに沙羅の瞳を見据えながら、極力冷静な口調で語り掛けた。

「……落ち着け。コトミは、人殺しなんか……していない。サラは……アユに、騙されているだけだ」
「――そんなの、信じない! 信じられるもんかああっ!!」

感情が昂ぶっている沙羅は、アセリアの言葉に耳を貸そうともしない。
最愛の人を殺した怨敵が眼前に居る以上、やるべき事など一つ。
立ち塞がる障害を排除すべく、少女はワルサー P99片手に蒼の妖精へと挑み掛かる。
三度、咆哮を上げる銃口。

「サラ……ッ」

アセリアは表情を歪めながらも、容赦無く降り注ぐ銃弾の連撃を正確に見切ってゆく。
一発目と二発目の銃弾はサイドステップで躱し、三度目の銃弾は上体を屈める事でやり過ごした。
そのまま足を前に進めつつも、再度説得を試みる。

「もう、止める……! 憎しみに身を任せるなんて……こんなの、サラらしくない……!!」
「五月蝿い! アンタはねえ、私と恋太郎の絆の深さを知らないから、そんな事が云えるのよ!!」
「ッ――――」

293 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:30:50 ID:TDpw5wpy


294 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:32:38 ID:Wmj+Jl70
説得が不可能だと判断したアセリアは、止む無く攻撃態勢へと移行する。
話して止めれないのなら、殺しはしないまでも一時的に無力化させるしか無い。
アセリアは沙羅のワルサー P99に狙いを絞って、『求め』を斜め上方に振り上げた。
しかし今のアセリアの剣戟は、一般人のあゆですら反応出来る程に衰えてしまっている。
そんなモノ、探偵助手を勤めし少女に通用する筈が無い。

「ふん――遅いわよ!」

沙羅はワルサー P99の銃身を持ち上げて、アセリアの攻撃を空転させる。
続けて、がら空きとなったアセリアの胸部に向けて、ワルサー P99の銃口を向けた。
そんな沙羅の動作に反応して、上体を横に傾けて回避しようとするアセリア。
しかし沙羅も、並大抵の攻撃ではアセリアを打倒し得ぬ事くらい理解している。
沙羅は右手でワルサー P99を撃ち放ちつつも、左手でポケットからS&W M36を取り出した。

「…………ッ!?」
「――貰ったああああああああ!!!」

二丁撃ち。
精度が落ち、腕に負担も掛かるのが難点だが、近距離戦に限って云えば正しく必殺の攻撃。
上体を傾けた状態のアセリアに対して、S&W M36の銃口が向けられる。
この状況からアセリアが逃れるには、一体どうすれば良いのか。

全身全霊の力で飛び退くか――否、今の体勢からでは間に合わない。
再度攻撃して銃を破壊するか――否、これも間に合う筈が無い。

紛れも無い絶対絶命の窮地。
されどアセリアは、今に匹敵する死地を何度も潜り抜けて来た。
蒼の妖精は秒に満たぬ時間で、最善の選択肢を見つけ出す。

295 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:32:39 ID:TDpw5wpy


296 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:33:02 ID:EB5r7av/
 

297 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:34:21 ID:ZRfznrJ8
 

298 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:34:35 ID:EB5r7av/
 

299 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:34:39 ID:Wmj+Jl70
「ク――――!!」
「なっ…………!?」

銃声が鳴り響くのとほぼ同時に、重厚な金属音が木霊した。
銃弾を防いだのは、アセリアの左腕を覆っている頑強な鎧。
アセリアは咄嗟の判断で、左の籠手を盾としたのだ。
しかし流石に衝撃までは殺し切れず、アセリアの左手に重い鈍痛が襲い掛かる。
一方、沙羅も無茶な射撃を行った所為で、両腕に痺れるような痛みを覚えていた。
二人は無理に接近戦を続けようとせず、各々の方向へと飛び退いてゆく。
正しく刹那の攻防いうべき衝突は、どちらの側にも軍配があがる事無く、仕切り直しとなった。

「――ッハァ……、フ、ハァ―――」

懸命に呼吸を整えるアセリアは、心中穏やかでは無い。
嘗て沙羅とは共に行動した事があったものの、これ程の実力を持っている事は知らなかった。
疲弊し切った今の自分では、そして相手を殺さずに止めようという甘い考えでは、恐らく厳しい戦いを強いられるだろう。
しかし、それでもやるしかないのだ。
妙な言い掛かりをつけてくるあゆはともかく、沙羅が善人であるのは間違いない筈。
ことみを見捨てるといった選択肢は有り得ないし、怒りに支配されているだけの沙羅も殺せない。
アセリアはそう結論付けると、沙羅を殺さずに無力化するべく駆け出した。



蒼の妖精と、この島に於けるラスト・ガンナー白鐘沙羅が再度衝突しようとしている頃。
時を同じくして、梨花とあゆも熾烈な戦いを繰り広げていた。

「ほら、どうしたのさ? でかい口叩いてた癖にこの程度か?」
「……勝手に吼えてなさい。すぐに目にモノ見せてやるわ」

罵倒の言葉を浴びせられつつも、梨花はベレッタM92Fのトリガーを引き絞る。
しかし先程撃たれた左肩の傷が影響して、思うような位置に銃弾を撃ち込めない。
見当違いの方角に放たれる銃弾は、あゆの身体を掠めすらしなかった。

300 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:34:40 ID:TDpw5wpy


301 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:35:31 ID:eYbxiRwF
 

302 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:36:04 ID:Wmj+Jl70
「…………ッ!!」

今度はあゆのS&W M10が火を噴いて、梨花の傍にあるコンクリートの破片が弾け飛んだ。
子供並の身体能力しか持たぬ梨花は、塔の残骸を遮蔽物として利用する事で、何とか命を繋いでいた。
対するあゆは遮蔽物を利用するまでもなく、楽々と梨花の銃撃を躱している。
それなりに場数を踏んでいるあゆと、まともな銃撃戦を初めて経験する梨花では、銃撃の精度が違い過ぎるのだ。

あゆは前傾姿勢を保ったまま、円を描くような軌道で走り回り、徐々に梨花との距離を縮めてゆく。
その間にも梨花が、遮蔽物の影から数度に渡って発砲したが、やはり当たる気配は無い。
そして両者の間合いが五メートル程まで近付いた時、梨花のベレッタM92Fが弾切れを迎えた。

「……次っ、――――!」

弾切れを予測していた梨花は、すかさず鞄からミニウージーを取り出そうとした。
しかし直ぐにその動作を中断して、形振り構わず大地を蹴って離脱する。
その一秒後には、あゆが遮蔽物の裏側にまで回り込んで来ていた。

「――逝けや!!」

あゆが握り締めたS&W M10の銃口から、連続して銃弾が撃ち放たれる。
早めの回避行動が功を奏して、梨花は何とか銃撃を躱す事に成功した。
窮地を凌いだ梨花は、そのままあゆに飛び掛る。
あゆも直ぐに銃を構え直そうとしたが、僅かに梨花の方が早い。

「……たああぁぁぁぁあああああっっ!!」
「――――くあっ!?」

梨花はあゆの左足に組み付いて、思い切り両腕で引っ張った。
あゆは身体を支え切れずに、雑草が生い茂る地面へと背中から倒れ込む。
間髪置かずに梨花は次の動作へと移行し、馬乗りの形であゆに覆い被さった。

303 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:36:06 ID:TDpw5wpy


304 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:37:46 ID:Wmj+Jl70
「こんな程度で、私を抑え込めるとでも……」
「――聞きなさいっ!!!」

あゆが強引に撥ね退けようとしてきたが、その前に梨花は大声で叫んだ。
既に戦いは始まってしまっているが――未だ、誰一人として死んではいない。
今なら取り返しは付く筈だ。

「ことみは人殺しなんかしていない。私はソレが事実だという『証拠』を、ちゃんと持っているわ」
「……どういう事さね?」

当然の如く訝しげな声が返って来る。
だが梨花の云っている事は、その場凌ぎの嘘偽りなどではない。
互いの吐息を感じ取れる程の距離で、梨花はあゆの瞳をじっと見詰めながら、静かに言葉を続けてゆく。

「私が持っているノートパソコンにはね、『殺害者ランキング』という物が付いてるのよ。
 それさえ見れば、ことみが殺人者かどうかが分かるわ」
「……見せてみろや」

梨花はこくりと頷くと、あゆの上から身体を退けて、パソコンを立ち上げる作業へと移った。
雑草を掻き分けて、空いた場所にノートパソコンを配置する。
ノートパソコンの電源を入れて、あゆと肩を並べたまま暫く待つ。

(これで大丈夫。きっと誤解は解ける筈よ)

言葉による説得はまるで効果が無かったが、物証となれば話は別。
実際に証拠を見せ付ければ、流石にあゆも信じざるを得ないだろう。
梨花は説得の成功を確信しつつ、『殺害者ランキング』のアイコンをダブルクリックしたのだが――
次の瞬間梨花の目に入ったのは、信じられないような光景だった。

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:37:47 ID:TDpw5wpy


306 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:39:24 ID:Wmj+Jl70



――殺害者ランキング八位、一ノ瀬ことみ。
――殺害した相手、双葉恋太郎、時雨亜沙。



「……嘘、何で――――」

梨花は自身の表情が、奇妙な形へと歪んでいくのを感じていた。
ノートパソコンに表示された文字は、ことみが殺人者であるという情報を示していたのだ。

「――はっ、嘘吐きの仲間は嘘吐きって事かい」

怒りの表情を浮かべたあゆが、冷たい銃口をこちらに向けてくるが、それさえも梨花の視界には入らない。
梨花は混乱し切った頭を懸命に鎮めて、必死に思案を巡らせていた。

有り得ない、これは絶対に有り得ない。
ことみは殺人遊戯を肯定するような人間では無い。
第一ことみが殺人者で無い事は、以前ランキングを調べた時に確認してあるのだ。
なのに、一体どうして――そこまで考えた梨花は、一つの推論に思い至った。

「……鷹野だわ。鷹野が私達を陥れる為に、嘘の情報を流したのよ!」

恐らくは、それで間違いない筈だった。
首輪すらも解除してのけた自分達は、鷹野からすれば完全な抹殺対象。
執念深い鷹野ならば、あらゆる手段を用いて、様々な角度から攻撃を仕掛けてくるだろう。
ノートパソコンに嘘の情報を流す事くらい、十分に有り得る話だった。
しかしそのような推論、今のあゆに理解して貰える筈も無い。

307 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:39:25 ID:TDpw5wpy


308 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:40:36 ID:eYbxiRwF
 

309 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:41:29 ID:Wmj+Jl70
「今更言い訳なんかしても、通用すると思うか? もう終わりにしようや」
「…………っ」

最早完全に説得は不可能。
銃口を向けられているこの状態では、反撃も間に合わない。
アセリアも、疲れ果てている今の状態では、沙羅を振り切って助けに来るのは困難だろう。
それは梨花とあゆ、双方に共通した見解。

「糞虫――最後に何か、言い残す事はあるか?」

あゆは時間的猶予があると判断し、最後の問いを投げ掛けた。
金色夜叉の眼光が、標的を真っ直ぐに射抜く。
死を目前に控えた梨花が語るのは、弁明の言葉か。
それとも、理不尽な襲撃に対する罵倒の言葉か。
否――そのどちらでも無かった。

「貴女は、人の手で奇跡を起こせると思う? 魔法みたいな超常現象の事を云ってるんじゃないわ。
 定められた運命を打ち破るような、本物の奇跡を起こせると思う?」
「…………あん?」

予想外の言葉が返ってきて、あゆは一瞬呆けたような表情を浮かべた。
余り悠長に考えている暇は無い。
直ぐに鋭い表情へと戻って、自分なりの答えを口にする。

「……無理さね。運命なんてモノに干渉出来るのは、本物の神だけだ」

あゆが答えたのは、至極真っ当な回答だ。
この島に於いて、あゆは様々な超常現象を目にしたものの、只の人間に奇跡は起こせないと思っていた。
しかしそこで、梨花が唐突に微笑を浮かべた。


310 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:41:31 ID:TDpw5wpy


311 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:43:06 ID:EB5r7av/
 

312 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:43:17 ID:Wmj+Jl70

「……普通なら、そう考えるでしょうね。でも――私は信じてる」

梨花は告げる。
百年を超える人生の中で学んだ、『奇跡の起こし方』を。


「――何よりも強い意思と、仲間を信じる心さえあれば、奇跡だって起こせると信じてる!!!」


梨花の魂から漏れ出た叫びが、周囲一帯に木霊する。
その直後、あゆは後方から近付いてくる足音に気付いた。
慌てて対応しようとするが、遅い。


「ガッ――――!?」


背中に強い衝撃を受けたあゆは、S&W M10を取り落とす。
驚愕と共に振り返ると、そこには――ことみの姿。


「――――い、一ノ瀬ええええええぇぇッッ!!!」
「梨花ちゃん、今なのっ!!!」


幾ら負傷しているとは云え、仲間の危機を前にしては、隠れてなどいられない。
故にことみは傷付いた足を酷使して、あゆの背中に体当たりしたのだ。
即座に梨花は反応して、ベレッタM92Fに銃弾を装填すると、あゆの脇腹目掛けて撃ち放った。
強固な意志を籠められし銃弾が、金色の夜叉へと食らい付く――!!

「……がああぁぁぁあああああああああっ!!」

313 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:43:18 ID:TDpw5wpy


314 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:43:48 ID:BYsf2H7R


315 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:43:53 ID:EB5r7av/
 

316 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:45:04 ID:Wmj+Jl70
この状況、この距離では狙いを外す筈が無い。
着弾による衝撃は半端で無く、あゆの身体がくの字に曲がって、後方へと吹き飛ばされてゆく。
あゆはそのまま、背中から地面に沈んでいった。




「殺したの……?」
「いいえ、ちゃんと急所は外してあるわ。後で治療すれば多分助かる筈よ」

梨花がそう答えると、ことみは安堵したように息を吐いた。
ことみにとって、あゆは謂れの無い言い掛かりを付けて来た、憎むべき敵だ。
とは云え、幾ら敵であろうとも、同じ人間である事に変わりは無い。
殺さずに済むのならば、それが最良だった。

「さて、次は――あっちを何とかしないとね」

梨花はそう云って、ベレッタM92Fを深く構えた。
銃口が向いている方角には、アセリアと戦っている最中の沙羅の姿。
アセリアが踏み込む瞬間に合わせて、引き金を絞る。
梨花の放った弾丸は、沙羅の足元に着弾して土埃を舞い上げた。

「――――ッ!?」

突如銃撃を受けた沙羅が、驚愕に一瞬硬直する。
それはアセリアにとって、勝負を決めるのに十分過ぎる程の時間。
仲間によって作り出された好機を活かすべく、蒼の妖精は勇猛果敢に斬り掛かる。

317 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:45:05 ID:TDpw5wpy


318 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:45:27 ID:EB5r7av/
 

319 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:45:44 ID:eYbxiRwF
 

320 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:46:29 ID:Wmj+Jl70
「ぃやあああああっ!!」
「しまっ……」

雌雄を決す一閃は、疾く速く。
雄叫びと共に振るわれた大剣が、沙羅のワルサー P99を弾き飛ばした。
更にアセリアは、体勢を立て直す時間など与えんと云わんばかりに、沙羅の左腕を掴み取る。
そのまま強引に押し倒して、問答無用で関節を極めた。

「くっ……放しなさいよ!」

必死に沙羅が暴れ回るが、この状態になってしまっては如何ともし難い。
相手が只の素人ならばともかく、今沙羅を抑え付けているのは、数多くの死地を潜り抜けてきた強者なのだ。
飛び抜けた怪力など持たぬ沙羅では、脱出しようが無い。

取り敢えず、沙羅を無力化するという目的は果たされた。
しかし未だ、解決すべき問題はもう一つ残っている。

「ちゃんと話を聞いて欲しいの。私は――」
「嫌よ! 恋太郎を殺した奴の話なんて、聞きたく無い!」

ことみが弁明しようとしたものの、沙羅はまるで聞く耳を持とうとしない。
誤解の解消。
事態を収束させるには、それが絶対必須条件なのだが、今の沙羅を説き伏せるのは容易な事では無い。

「……違う、コトミはそんな人間じゃない。一緒に居た私には分かる……コトミは、とても優しい」
「そんなのアテにならないわよ。表面上では幾ら善人面してたって、裏では何を考えてるか分からない。
 あの女――月宮あゆは無害そうな顔をしてた癖に、土壇場で私と瑛理子を裏切ったんだから!」

アセリアの言葉も、疑心暗鬼に陥っている今の沙羅には届かない。
嘗て裏切り行為に遭った時の怒りと、二見瑛理子の死を知った時の無念。
それが、沙羅の疑念をより一層駆り立てる。

321 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:46:29 ID:TDpw5wpy


322 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:47:19 ID:BYsf2H7R


323 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:47:53 ID:eYbxiRwF
 

324 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:47:57 ID:EB5r7av/
 

325 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:48:34 ID:Wmj+Jl70
現状は、両者共にある意味手詰まりだと云える。
アセリア達からすれば、説得は困難。
沙羅からすれば、独力での脱出は不可能。
即ち、場を大きく動かすには、外部からの干渉が必要だ。
そして、それは何の前触れも無く起こった。


「ッああああ――――!?」

銃声がしたかと思った次の瞬間には、梨花の身体が揺らいでいた。
左足を撃ち抜かれた梨花は踏み留まる事が出来ず、ゆっくりと地面に崩れ落ちてゆく。
その最中に梨花は見た――陽が落ちた草原の中、大空寺あゆがS&W M10片手に屹立しているのを。

「……やってくれたねえ、糞虫共。でも、まだまだ詰めが甘いさね」

あゆは地面に座り込んだ梨花を見下ろしながら、勝ち誇ったように言い放った。
その姿は、先程鉛球を撃ち込まれた人物のものだとは到底思えない。
状況を理解出来ぬことみが、意図せずして驚愕の声を漏らした。

「そんな、どうして……」
「忘れたのかい、一ノ瀬。私が佐藤に撃たれた時、どうして助かったのかを」
「……ッ、まさか――」

そこまで云われて、ことみは何故あゆが五体満足でいるのかを理解した。
この殺人遊戯に於ける、最高の防具――防弾チョッキ。
あゆは防弾チョッキで胴体部を守っていたからこそ、こんなにも早く戦線に復帰する事が出来たのだ。
これは完全に、ことみの失策。
もう少し慎重に思案を巡らせていれば、防げた筈の事態。


326 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:48:36 ID:TDpw5wpy


327 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:48:56 ID:BYsf2H7R


328 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:49:30 ID:EB5r7av/
 

329 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:50:06 ID:Wmj+Jl70
「じゃあな――嘘吐き女。恨むんなら精々、その糞虫に騙された自分の愚かさを恨んでくれや」

あゆは冷たく告げると、梨花の頭部に向けてS&W M10を構えた。
一番目にことみを狙うような真似はしない。
一発の銃弾で即死させるなんて、絶対にしてやらない。
最大の怨敵であることみは、出来る限り苦痛を与えてから殺したい所。
故にまずは、ことみを擁護するような愚か者達から排除する。

「……リカァァァッッ!!」

アセリアが無我夢中で駆け出したが、梨花との距離は二十メートル以上もある。
とても、間に合わない。
冷え切った風が吹き荒れる草原の中、あゆは何の躊躇いも無く引き金を引いた。




「……………………え?」




驚きの声は、きっと一人を除いた全員のものだ。
梨花の頭部には、今も掠り傷一つ付いていないし、他の箇所に被弾した様子も無い。
では放たれた銃弾は、一体どうなったと云うのか。


330 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:50:07 ID:TDpw5wpy


331 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:52:11 ID:Wmj+Jl70



「――やっと、守れた」


ぼそりと、少女が声を漏らした。
腹部を真っ赤に染め上げながらも、満足気な笑みを浮かべている。
定められた死の運命を覆した、心優しき少女の名は――

「こ、ことみぃぃぃぃぃぃ!!!!」

叫びを上げるや否や、梨花が直ぐにことみの元へ駆け寄ろうとした。
しかしことみは両の足で屹立したまま、手で梨花の動きを制した。
視界もまともに定まらない状態で、それでも思い切りあゆを睨み付ける。

「私の事は……もう良いの。疑いたいのなら、勝手に……疑えば良い。殺したいのなら……殺せば良い。
 その代わり――」

まだ倒れられない――今にも崩れ落ちそうな身体を、気力だけで支える。
呼吸器官から湧き上がる血液を強引に飲み込んで、精一杯の声で叫ぶ。


「これ以上、皆に……手を出さないで!! 梨花ちゃんが! アセリアさんが! どれだけ優しい人かも知らない癖に!
 私の……大切な仲間を傷付けないでッ!!!」


それで、限界。
云い終えると、ことみは静かに地面へと崩れ落ちて行った。
だが彼女の言葉は確かに、あゆの耳にまで届いていた。

332 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:52:12 ID:TDpw5wpy


333 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:52:50 ID:eYbxiRwF
 

334 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:54:03 ID:Wmj+Jl70

「一ノ瀬――お前、何やってんだ…………? 自分が撃たれちゃあ……今まで人を騙してきた意味が……無いさ……」

あゆは呆然とした表情をしたまま、弱々しく唇を震わせている。
目の前の光景が、正しく理解出来なかった。
否、理解したくなかった。
そんなあゆの態度に激昂した梨花が、張り裂けんばかりの叫びを上げる。

「貴女まだ分からないの!? ことみは……私を庇って撃たれたのよ!
 仲間の為に命を投げ出せるような人間が、悪人な訳無いじゃないっ!!」

自らの命を犠牲にしてまで、凶弾から仲間を庇う。
それは、正体を偽っているだけの殺人鬼ならば絶対に出来ない事だ。
自身の命よりも、仲間の命に重きを置いているからこそ可能な、献身的行動だ。
そのような行動を取る人間が、殺し合いに乗っている筈も無い。
疑う余地など、最早欠片も無い。

「ことみ……しっかり! しっかりして!!」

梨花はことみを抱き上げると、懸命にその身体を揺さぶった。
するとことみは静かに腕を伸ばして、梨花の頬に優しく手を添えた。

「ぁ……梨花ちゃん……無事で良かったの」

――もう助からない。
背中に回した梨花の手が、赤い血でべっとりと濡れていた。
出血量から判断するに、ことみが受けた傷は間違い無く致命傷だ。
だが仲間の安否のみを気遣うその姿、その言葉には、何の後悔も見受けられない。
在るのは、ようやく仲間を守り切れたという安堵だけだ。
そんなことみの姿を目の当たりにして、あゆも沙羅もようやく一つの事実を認めた。

335 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:54:05 ID:TDpw5wpy


336 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:55:29 ID:Wmj+Jl70


「……アアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアッッ!!!!」

あゆは天を仰ぐと、凄まじいまでの咆哮を上げた。
今まで自分が取っていた行動は、完全に間違いだったのだ。
自分は何の罪も無い人間に、何度も何度もあらぬ疑いを掛け、命まで奪ってしまったのだ。
自らの罪業に気付いたあゆは、只唯叫び続ける。

一方沙羅は、全速力でことみの元へ駆け寄って、徹頭徹尾に謝っていた。

「ごめん……本当にごめんッ! アンタは何も悪くなかったのに……。
 私、怒りで頭が真っ白になって……恋太郎の仇だって決め付けちゃって…………!」

どれだけ謝っても許されるような罪ではない。
一時の激情に身を任せ、善良な人間達に武器を向けた罪は、それ程に重い。
だというのに。

「……ううん。分かってくれれば……良いの。憎しみは、何も……生み出さないから……もう良いの。
 それよりも……これからは、……皆と仲良くして欲しいの」

ことみは罵声の一つすら浴びせる事無く、沙羅を許してのけた。
沙羅はボロボロと涙を零しながら、何度も首を大きく縦に振っている。
続けてことみは、あゆの方へと視線を向けた。
ことみにとっては、この島で一番因縁深い宿敵であるし、致命傷を負わされた相手でもある。
だが――ことみは憎しみを捨てて、ゆっくりと言葉を紡いでゆく。

「大空寺さんも……お願い。私の事はもう良いから……二度と同じ間違いを犯さないで。
 私の仲間を……傷付けないで」


337 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:55:30 ID:TDpw5wpy


338 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:56:33 ID:EB5r7av/
 

339 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:57:18 ID:Wmj+Jl70

決して、楽な選択では無かっただろう。
積み重ねられた遺恨は相当な物だろう。
それでもことみは聖母の様な慈悲を以って、あゆを許したのだ。

「……ああ。絶対……絶対にだッ! 私はお前の仲間を傷付けないし、誰にも傷付けさせはしない!!」

叫ぶあゆの瞳は、一目で見て取れる程に潤んでいる。
あゆがことみを見る目には、もう何の憎しみも篭められていない。
憎悪に囚われし金色夜叉は、余りにも不毛な戦いを経て、ようやく人間の少女へと戻っていた。

そこで、一行の下へと近付いて来る新たな足音。

「……ことみさんっ!? これは一体……」
「――ミズホッ!」

振り返ったアセリアの瞳には、宮小路瑞穂の姿が映っていた。
応急処置やオーラフォトンによる治療を施され、数時間に渡って休眠も取った瑞穂は、かろうじて動ける状態にまで回復したのだ。
瑞穂は直ぐに梨花から説明を受けて、大体の事情を把握した。


「聞いて、瑞穂さん……。私、四葉ちゃんも……恋太郎さんも……亜沙さんも……衛ちゃんも……守れなかった……。
 大好きだった朋也くんも……死んじゃった……。でも……今度こそ、やっと守れたの」

ことみはそう云ってから、傍らに居るアセリアの手を取った。
自身の血に染まった右手を使って、優しく握り締める。

「ごめん、コトミ……。私はコトミを……守れなかった……」
「良いの……、アセリアさんがどれだけ頑張ってくれたかは、ちゃんと分かってるから……。
 これからも……皆を守ってあげて欲しいの」
「うん……大丈夫。皆を守る……それが、私の生きる意味だから……っ」


340 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:57:19 ID:TDpw5wpy



341 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:57:31 ID:eYbxiRwF
 

342 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:58:09 ID:eYbxiRwF
 

343 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:58:43 ID:TDpw5wpy



344 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 17:58:44 ID:Wmj+Jl70
少女の想いを受け取ったアセリアが、表情を歪めながらも、強く、強く、頷いた。
次にことみは空いてる方の手で、梨花の手をしっかりと握り締めた。

「ことみ……お願いだから死なないで! 後ちょっとじゃない……もう少しで、皆一緒に生きて帰れるのに!!
 私は嫌なの! 瑞穂も! ことみも! アセリアも! 誰か一人でも欠けたら嫌なのっ!!!」
「梨花ちゃん……泣かないで。別れは……何時か必ず、訪れるものなの。
 それでも……例え別れが悲しみを残したとしても……私達はそれ以上に大切な物を……築けたんだから……っ」
「ことみ……っ、ぅああ……うわああぁぁぁぁああああっ…………!!!」

ポタリポタリと、梨花が流した涙がことみの頬へと降り注ぐ。
その涙はとても悲しいものだったが、命の息吹を感じさせる暖かさも秘めている。
降り注ぐ涙は、ことみが確かに仲間を守り切った証だった。

「アセリアさん……梨花ちゃん……瑞穂さん……、みんな私の大切な仲間達。やっと……守れたの」

血に塗れし少女は、口許を綻ばせて誇らしげに微笑む。
身体の感覚は既に消えかけているけれど、この島で初めて仲間を守り切れた喜びが、ことみの胸を満たしていた。

「ねえ瑞穂さん……最後に一つ……お願いして良い?」
「良いわよ……。私に出来る事なら、何でも云って頂戴」
「初めて出会った時みたいに……ギュッとして欲しいの。瑞穂さんの胸の中は……とても暖かいから……」
「……ええ、分かったわ」

瑞穂は直ぐに両腕を伸ばして、ことみの身体を優しく抱き寄せた。
瑞穂の心中にあるのは、深い悲しみと、途方も無い程の後悔だ。
間に合わなかった。
ことみを守ると誓っていた筈なのに、気付いた時には全てが終わっていた。
そんな自分がどのような言葉を掛ければ良いのか、瑞穂には分からなかった。

345 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 17:59:39 ID:eYbxiRwF
 

346 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:00:44 ID:TDpw5wpy



347 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:00:49 ID:Wmj+Jl70
「変だよね……私、ことみさんに、いっぱい……云わなきゃいけない事がある筈なのに……。
 なんにも……なんにも言葉が……出て、こないよ……」
「ううん……云わなくたって、私には分かるの。だって、瑞穂さんは……こんなにも優しいから……」

ことみの瞳が徐々に光を失い、ことみの声が、徐々に掠れて小さくなってゆく。
それでもことみは大きく息を吸い込んで、自身の想いを言葉へと変える。

「私は……沢山貰ったの。瑞穂さんから……沢山、温もりを貰ったの……。だからっ…………!」

――出会ったばかりの自分を慰めて、心の底から信じてくれたから。
――全てを失ってしまった自分に、再び温もりを与えてくれたから。
溢れんばかりの感謝と想いを籠めて、告げる。

「――ありがとう、瑞穂さん……大好きだったの」
「私も、っ…………、僕もだよっ……。僕もことみさんの事が……、本当に大好きだったよ……っ!」

瑞穂は止め処も無い涙を流しながら、ことみを一層強く抱き締める。
機能が停止した少女の神経では、もう瑞穂の抱擁を感じ取れないかも知れない。
それでも少女は、とても穏やかな微笑みを浮かべていた。

「ふふ……本当に、暖かいの……」


――やっと守れた大切な場所で、少女は眠る。
――大好きな仲間達に囲まれて、確かな暖かさを感じながら。




【一ノ瀬ことみ@CLANNAD 死亡】

348 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:01:36 ID:Wmj+Jl70






【C-5 電波塔周辺の草原/二日目 夜】

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:ワルサー P99 (2/16)】
【所持品1:S&W M36(3/5)、ワルサーP99の予備マガジン1 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、双眼鏡、医薬品】
【所持品2:支給品一式×2、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE、往人の人形】
【所持品3:『バトル・ロワイアル』という題名の本、、映画館にあったメモ、家庭用工具セット、情報を纏めた紙×12、ロープ】
【状態:疲労極大、深い罪悪感、肋骨にひび・強い決意・若干の血の汚れ・両腕に軽い捻挫、両肩間接に軽い痛み】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:仲間を守る
2:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
3:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす
【備考】
※きぬを完全に信頼。
※あゆを完全に信頼。
※フロッピーディスク二枚は破壊。地獄蝶々@つよきすは刀の部分だけ谷底の川に流されました。
 エスペリアの首輪、地獄蝶々の鞘はC-6に放置。

349 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:01:36 ID:TDpw5wpy



350 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:01:57 ID:eYbxiRwF
 

351 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:02:11 ID:Wmj+Jl70



【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (1/6) 防弾チョッキ 生理用品、洋服】
【所持品:支給品一式x9、ホテル最上階の客室キー(全室分) ライター 懐中電灯、食料(パン等食べやすいもの)、大型レンチ】
【所持品2:、ヘルメット、ツルハシ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄 虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ベレッタ M93R(10/21)】
【所持品3:オオアリクイのヌイグルミ@Kanon、Mk.22(3/8)、予備マガジン(8)x3】
【所持品4:ビニール傘、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、 分解された衛の首輪(NO.35)、情報を纏めた紙】
【所持品5:ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:生理(軽度)、深い罪悪感、中度の肉体的疲労、肋骨左右各1本亀裂骨折、左脇腹に重度の打撲、強固な意志、左前腕打撲(多少は物も握れるようになってます】
【思考・行動】
行動方針:殺し合いに乗るつもりは無い。
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:何があっても、ことみの仲間達(瑞穂、梨花、アセリア)を守り切る
2:殺し合いに乗った人間を殺す
3:甘い人間を助けたい
4:川澄舞に対する憎しみ
【備考】
※支給品一式はランタンが欠品 。
※生理はそれほど重くありません。ただ無理をすると体調が悪化します。例は発熱、腹痛、体のだるさなど
※きぬを完全に信頼。
※沙羅を完全に信頼。

352 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:02:15 ID:TDpw5wpy



353 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:02:41 ID:Wmj+Jl70



【アセリア@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、高嶺悠人の首輪、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、
 情報を纏めた紙×2】
【状態:恐怖、肉体的疲労限界、魔力残量皆無(自身の存在維持のみ可能)、左肩と右わき腹に深めの切り傷(応急処置済み、動かすと痛み、鎧の該当部位損失)、
 全身に切り傷、右耳損失(応急手当済み)、左上腕部打撲、両腕に酷い筋肉痛、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)、首輪解除済み、「求め」と契約】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない、仲間を守る
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:ミズホとリカを守る
2:無闇に人を殺さない(殺し合いに乗った襲撃者は殺す)
3:存在を探す
4:川澄舞を強く警戒
5:沙羅とあゆに対する複雑な思い
6:瑞穂に対する罪悪感
【備考】
※アセリアがオーラフォトンを操れたのは、「求め」の力によるものです
※制限の低下によって、「求め」と契約しました。 これにより全体的に能力が上昇しています。
※神剣との同調率は多少回復しましたが、マナが無い所為でスキルは使えませんし、身体能力も強化不可能です
※オーラフォトンブレイクについて
 「世界」のサポートスキル、広範囲に破壊を巻き起こし、相手の行動を封じる力を持つ。
※永遠神剣第二位「世界」について
 「求め」が、「誓い」のマナを吸収したことによって、本来の「世界」へと変化しました。
 しかし、覚醒直後に大量のマナを消費した事と、僅かに残っていた制限が加わって、現在は「求め」の姿に戻っています。
 それに伴い、「世界」の一部である青い刃が六本、アヴ・カムゥの残骸の傍に刺さっています。
 再び接触した際に変化が起こるかは不明です。

354 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:02:51 ID:TDpw5wpy



355 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:03:51 ID:Wmj+Jl70



【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾13/15+)、バーベナ学園女子制服@SHUFFLE! ON THE STAGE、豊胸パットx2】
【所持品1:支給品一式×9、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ5本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2〜3割ほど完成)、情報を纏めた紙】
【所持品2:バニラアイス@Kanon(残り6/10)、暗視ゴーグル、FN−P90の予備弾、電話帳】
【所持品3:カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、竹刀、トウカの刀@うたわれるもの、懐中電灯】
【所持品4:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)】
【所持品5:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品6:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】
【状態:全身打撲、全身に魔法によるダメージ(応急処置済みだが、激しく動き回るのは不可能)、強い決意、即頭部から軽い出血(処置済み)、脇腹打撲、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:アセリアと梨花を守る
2:川澄舞を警戒
3:沙羅とあゆに対する複雑な思い
【備考】
※アセリアに性別のことがバレました。
※他の参加者にどうするかはお任せします。
※この島が人工島かもしれない事を知りました。

356 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/21(金) 18:03:54 ID:TDpw5wpy



357 : ◆guAWf4RW62 :2007/12/21(金) 18:04:28 ID:Wmj+Jl70

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、ミニウージー(16/25)
     ヒムカミの指輪(残り0回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 】
【所持品:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの)】
【所持品2:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、
     ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、首輪の解除手順に記したメモ、
     食料品、ドライバーやペンチなどの工具、治療用具一式、他百貨店で見つけたもの 、首輪探知レーダー(現在使用不能)、車の鍵 】
【状態:頭にこぶ二つ、中度の肉体的疲労、精神的疲労小、左肩と左太股に銃創(動かせるが痛みを伴う)、強い決意、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:潤と風子の願いを継ぐ。
0:まずは暫くの間休憩を取る
1:瑞穂とアセリアを守る
2:きぬが心配
3:仲間を集めたい
4:沙羅とあゆに対する複雑な思い
【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※梨花の服は風子の血で染まっています
※レーダーは現在電池切れ、 電池(単二)が何本必要かなどは後続の書き手に任せます
※ノートパソコンの微粒電磁波装置や現在地検索機能、レーダーは使用不可能(電波塔の半壊が原因)
※ノートパソコンの『殺害者ランキング』は、鷹野によって情報を改竄されました
※催涙スプレー、ゲルルンジュース×3、チンゲラーメン、コルトパイソン(.357マグナム弾2/6)が塔の南側に落ちています。





【備考】
※電波塔は破壊されました(正確には半壊状態だが、復旧はほぼ不可能)。破壊された時刻は18時前です
その為、首輪の機能は完全に無効化されています。
※瑞穂達のすぐ近くに赤色の車が停車しています(キーは刺さっている)。残燃料は70%程です。

358 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:04:51 ID:pkCHP1qW


「……………………」

私は公園へと訪れていた。
時間が掛かってしまった。もう時刻は黄昏の遅い頃、太陽が沈み始める時間だった。
傷が痛くて苦しいから、少し速度が落ちてしまったのだろう。

急ごう。
あのふさげた嘘を確認するためには、穴を掘らないといけない。
暗くなってしまったら難しい。……もっとも、探し物が見つかるはずがないのだが。

「んっ……これでいい」

公園の土を掘るために『存在』を取り出す。
それにしても、どこを掘ればいいのだろうか。まさか公園の土を全部、ひっくり返せとでもいうのだろうか。
時間がない。ともかく当たりを見つけて、行動に移さないと。
こうしている間にも佐祐理が寂しい思いをしてるかもしれない。だから、こんな戯言は一笑に付さなければ。

でも、おかしいな。
真に受けなくても、嘘だとわかっているなら確認する必要なんてないのに。
どうして。どうしてどうして、私はこんなに不安なんだろう。

「……あ……」

ふと、目を向けた地面が不自然なことに気づいた。
膨らんでいる。その部分だけが妙に周りの土よりも明るめなのが、暗くなってきた世界でも良くわかった。
人為的に何かを埋めたような後だな、と思ったとき……心が跳ね上がるぐらいに飛び上がった。

359 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:06:51 ID:mAPQj3BV
 

360 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:07:52 ID:Rh+o/6Gk
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361 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:08:10 ID:pkCHP1qW

「有り得ない……」

否定しつつ、地面に『存在』を突き刺した。大剣は容易に、奥まで簡単に突き刺さった。
柔らかい。簡単に掘り返せる。数分もかからない。
それなのに手が震えた。心臓をそのまま鷲づかみにされたような、不快な感覚に取り憑かれた。

地面を掘る。穿つ。破砕する。
嫌な汗が止まらなくなった。まず出てきたのが、腕。それも細い……女の手。
死体が埋まっていた。眩暈がした。そんなはずがない、と口に出して否定さえした。
それでも……それでも、大地を削る腕だけは止まらない。
一度湧き出した恐怖が襲い掛かる。ここで止めろ、と冷静な自分が警鐘を鳴らしている、にもかかわらず。

「はっ……はっ……はっ……」

息が荒い。
吐く息が、吸う空気が苦しい。
やがて足が出てきた。服が出てきた。髪が出てきた。そして……埋葬された犠牲者の顔が出てきた。

「あっ……ああっ……」

それは……その顔は。

「あっ……はっ、はっ……はあっ……」

佐祐理…………じゃなかった。

知らない女だった。笑いながら、微笑みながら目を閉じている金髪のポニーテールの女だった。
乾いた笑い、妙な安堵感に私は尻餅をついてしまった。
真正面からすれば下着が丸見えになってしまっているだろうけど、そんなことは関係ない。完全に脱力してしまっていた。

362 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:09:39 ID:mAPQj3BV
 

363 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:10:06 ID:Rh+o/6Gk
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364 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:10:35 ID:pkCHP1qW

「……やっぱり、戯言だった」

そう、あれは苦し紛れの嘘だった。
確かに埋葬された女はいた。だけど、佐祐理じゃない。
騙したのか、それともただの勘違いだったのか。それこそ、どうだっていい。

佐祐理は生きている。
こんな公園に埋まってなんていない。
だからもういいだろう。ここに来るまでの数時間、戦闘はなかった。体力も魔力も回復している。
体はジクジクと毒に犯されたかのように痛い。青い痣が侵食しているけど、気にしない。

「もう、行こう……」

立ち上がって、その場から去ろうとする。
だけど立ち止まった。後ろには微笑みながら生涯を終えた女の亡骸。
それが何故か、美凪の微笑みと重なる。偽善ですらないが、せめて埋葬しなおしてやったほうがいいかも知れない。

そうして掘り返した穴を見下ろして。
色に見覚えのある髪が埋まっていることに気づいた。

「え……」

振り返った先、横たわる少女のポニーテールは金色だった。
なら、この穴にまだ埋まっている『茶色の髪の毛』は誰のもの?
埋葬した人間の髪……じゃない。まだ埋まっている。何かが埋まっているのが分かる。

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:10:48 ID:Rh+o/6Gk
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366 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:11:16 ID:mAPQj3BV
 

367 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:11:31 ID:Rh+o/6Gk
.

368 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:11:43 ID:pkCHP1qW

「だ、れ……?」

理性が凍った。本能が恐怖した。
天使と悪魔が揃って警告する。確認はした、あれは嘘だった。

だから即刻この場を離れろ、あれは見るな、勘違いだから問題ない、そこには何もない。
帰れ踵を返せ早く参加者を殺せそんなつまらないことに使う時間はない――――私は佐祐理を助けなければいけないんだから!
だから、だからだから見るな。地面を掘るな。

「うっ……あっ……」

そう警告しているのに、忠告しているのに、警鐘を鳴らしているのに。
どうしてどうしてどうしてどうしてこの手は止まらない?
嫌だ、見たくない、見れば壊れる、何もかも失う、そんなの嫌だ、そんなの耐えられない。

「あっ……あああああああっ……!!」

なのに。
見て、しまった。
その顔を見てしまった。

それは私が逢いたかった親友の顔。
彼女は私の全てにして無二の親友。
この手を汚してまで生きていてほしい、と。今まで目を抉り取られても体を炙られても揺るがなかった願いの象徴。

佐祐理の亡骸がそこにあった。
目を閉じて、眠るように葬られていた大切の人がそこにいた。
その刹那、その瞬間、その無明。


369 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:12:18 ID:Rh+o/6Gk
.

370 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:12:28 ID:pkCHP1qW


私は何もかも終わっていたことを知った。


「うぁぁあああああああああぁぁぁぁあああああああああっ!!!!!」


じゃあ、どういうことだ?
私が今までやってきたことは……全て無意味だった、というのか?

ことりや千影を見殺しにしてきたことも。
美凪を直接、この手で殺したことも。
五人もの人間を殺し尽くしてきたことも、全て無意味だったということか?

もう届かない。佐祐理を救うことなんてできない。
死んでしまった。もう蘇るはずがない。片目を失ってまで、この手を汚してまで頑張ってきたことが。

(何もかも……無駄な足掻きだった……?)

思わず、空気の乾いた笑みをこぼした。
なんて滑稽、なんて無様に踊る道化だったんだろう。

「は、はは…………はっ……」

もう、何もかもどうでもいい。
生きる希望はとっくの昔に無くしていた。もう、何もかも全部が終わった。水泡に帰したのだ。
佐祐理だけがいれば良かったのに。そんな最後の願いさえ、私には与えられなかった。

371 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:12:33 ID:mAPQj3BV
 

372 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:12:51 ID:Rh+o/6Gk
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373 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:13:10 ID:mAPQj3BV
 

374 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:13:13 ID:pkCHP1qW

「っ……うあああっ――――――!!!」

終わりにしよう、全部。
持っていた『存在』を自分の腹に突き出す。
きっと痛みもある、苦しみもある。自分が人に与えてきた激痛の何分の一ぐらいだろうか。
だけど、その先には佐祐理がいる。それだけで十分……私は最期の最後の救いを求めて。


この手に力を込めた。



     ◇     ◇     ◇     ◇


「こちら鳳1。本部、聞こえるか?」

山頂、電波塔を北へ。
あの激戦地区から、できるだけ距離を置いたところに俺はいた。
本来なら廃坑北口、C-5から『ヤシロの神』とやらの力を利用して帰還する予定だった。

だが、アヴ・カムゥを一撃で葬り去ったアセリアのことを思い出す。
奴に狙われたら終わりだ。きっと消し炭にされてしまうだろう。白い灰か、黒い灰かの違いはあるだろうが。
そんなリスクは負えない。まずはその場を離れるのが先だった。

375 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:13:21 ID:Rh+o/6Gk
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376 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:13:52 ID:Rh+o/6Gk
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377 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:14:07 ID:pkCHP1qW

「本部……本部、応答しろ」
『こちら本部よ。桑古木、分かるかしら?』
「……優? 鷹野はどうした?」

憂鬱ながら、鷹野には報告しないといけない。
電波塔を放棄したことや、その他の伝えなければいけないことについて。
まさかこの忙しいときに、優雅に紅茶を楽しんでいるわけがあるまいし。

『今はいないわ。山狗の中でパソコンに詳しい人間を連れて、鈴凛の研究所に向かったみたいだけど』
「……? なんだ、あのノートパソコンに細工でもする気か?」
『さあ? とにかく今、管制室にいるのは私とヒエンと数人の山狗たちだけよ』

まあ、鷹野がどんな行動をしようが関係ないが。
確かに今は管制室にいてもやることがない。鷹野は俺たちの勝利報告を待っているに違いない。
ご期待に沿えることは、出来なかったけどな。

「じゃあ報告だ。結果から伝えると……俺は電波塔を放棄した」

通信機の向こう側から部下たちのざわめきが聞こえた。驚愕の色を含んでいるのが分かる。
さて、どう説明したものか。
これ以上、部下たちの士気を下げたくはないが、この話はそれを許してくれそうにない。
伝えること、聞きたいことが山ほどある。それを考えると欝になってしょうがない。

『…………詳しい報告と事の顛末を』
「じゃあまず電波塔についてだが……参加者の一人、アセリアが覚醒した」
『……覚醒?』
「ここについてはそう言うしか説明がつかん。俺には奴らの世界とやらの知識がないからな」


378 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:14:22 ID:Rh+o/6Gk
.

379 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:15:00 ID:pkCHP1qW
とにかく強くなった、それも圧倒的にだ。
あの力が振るわれれば、俺たち山狗部隊など十秒足らずで壊滅する。
これについてはオフレコだ。帰還した後、首脳陣を集めて報告するとしよう。

「俺は撤退。ハウエンクアは……生死不明。個人的には助からんと思う」
『……こちらヒエン。つまりそれは、アヴ・カムゥが敗れたということか?』

ああ、と生返事だけを返す。
そうか、ヒエンもいたんだったな。鈴凛の言葉で優の裏切りを警戒されているんだろう。
奴は監視役、というわけか。とにかくアレに関しては優よりも適任だろう。

「アセリアが覚醒した……こいつは予測だが、桜のほうも陥落したと見て間違いないな」
「こちら、優。……ええ、それについては把握してるわ。何よりも私たち異常者たちがね」

俺たちもキュレイのキャリアだ。
よって一応は俺たちも制限を受けていた身となる。それが解放されたことは体が教えてくれた。
だから確信していた。恐らく桜は枯れて……防衛に向かった月宮あゆは戦死したのだろう。
優の隣でヒエンが絶句しているのが気配で分かる。
電波塔と桜……どちらも奴らご自慢のアヴ・カムゥが配備されていた。それが敗れ去り、今や搭乗者はヒエンだけとなったのだから。

『ひ、雲雀1より鳳1へ。わ、我々はどうしたらいいのですか……?』

敗戦の報告に耐えられなくなった隊員の一人が、焦燥に駆られて質問してくる。
かつての雲雀1は前隊長の小此木直属の部下だったため、奴の死と同時に何人かと姿を消した。
今のこいつは二代目だが……早々に殺し合いに順応し、優勝者を巡る賭け事を始めていた。
個人的には気に入らない。そんな奴がようやく降って沸いた不安に声が震えているのが、少し痛快だった。

380 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:15:01 ID:mAPQj3BV
 

381 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:15:13 ID:Rh+o/6Gk
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382 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:15:45 ID:Rh+o/6Gk
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383 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:15:47 ID:pkCHP1qW
「……鳳1より、全員へ」

改めて補充された山狗たちも含めて全員の通信機へ。
鳳、鶯、雲雀、白鷺。
自分を含めて1〜13の隊員たち。そいつら全員に向かって言い放つ。

「装備レベルをAまで引き上げる。発砲許可も出そう。俺が帰還するまでに並んでおけ」

レベルAは戦闘準備を意味する。
一人につき、一つの銃とナイフと通信機を携帯することを義務付ける。
それ以外にも各々が武器を持ち出すことを許可した。


「いいか、テメェら。俺たちは電波塔では敗れた。それは認めよう。
 だが、桜は枯れた。これで制限はなくなった。もう俺も全力が出せる。今度は負けないさ。

 まだ不安な奴がいるな? だったらお前ら、よく考えてみろ。
 敵は俺たちよりも年下の子供がほとんどで、全員が重傷軽傷を問わず負傷している。それも女がほとんどの比重占めてるんだ。
 それが9人。いや、川澄舞を除けば8人だ。
 俺たちは何人だ? そして地の利はどちらにある? 装備は負けてるか? 俺たちはプロじゃないのか?

 そうだ、負けない。そんなはずがない。
 恐れるな、怖がる必要はない。それが分かった奴からエルストボーデンに集合だ。
 そこで詳しい配置と指令を与える。ぼさぼさするな、とっとと集まれ」


通信機の向こう側が騒がしくなった。
士気を上げられた保証はない。何しろ真実を考えれば、鼓舞した本人は全力を出しても負けたのだから。
それに殺し合いに勝ち残った猛者たちだ。
ハウエンクアが敗れた以上、言うほど簡単にはいかない。いくはずがない。

384 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:16:13 ID:Rh+o/6Gk
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385 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:16:31 ID:mAPQj3BV
 

386 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:16:37 ID:pkCHP1qW

「さて、それじゃあ、どうやってそちらに帰還するかだが―――――すまない、また連絡する」
「え、ちょっと、桑古木――――?」

通信を終えた。
いや、正確には終えざるを得なかった。
ここはD-3地点だろうか。話しながら随分と北上してしまったようだ。北には誰もいないはずだったのだが。

俺の眼前、その先に。
隻眼の少女、殺し合いにまだ乗っている最後の存在が、幽鬼のようにひどい顔で立っていた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



桑古木と舞が接触する時間より、少し遡る。
公園で舞は自決を決意した。
舞が握った『存在』は舞の腹を突き破り、最後の殺人肯定者はそれで幕を閉じるはずだった。

だが。

387 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:16:48 ID:Rh+o/6Gk
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388 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:17:07 ID:mAPQj3BV
 

389 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:17:19 ID:Rh+o/6Gk
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390 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:17:25 ID:pkCHP1qW

「うっ……」

刃が舞の腹を突き破ることはなかった。
直前で止まったまま、ぶるぶると震えていた。ただそれだけだった。

「ううううううっ……!!」

死ぬのが怖いんじゃない。
だけど、このまま死ぬのが怖かった。無意味にこの生涯を終えるのが怖かった。
一度自決を決意したあのとき……どうして、自分はそこで死んでおかなかったんだろう、と思うと悔しかった。

そこで自殺しておけば、美凪や他に手をかけた人たちは死ななかったのに。
そう思うと今更ながら悲しかった。

死ねなかった。
このまま全てを諦めて死ぬなんて惨めで無様だった。
悔しくて悲しくて情けなくて、そのままの体勢で涙を流した。そうするしか知らないと嘆くように。

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:17:50 ID:Rh+o/6Gk
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392 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:18:17 ID:pkCHP1qW

「今更……なん、で……」

何のために戦ったんだ?
何のために殺したんだ?
何のために傷ついたんだ?
そして何のために彼らは自分に殺されたのだ?

殺そうとする自分を助けようとした男がいた。
自分を捨て駒にしてまで仲間を逃がした少年がいた。
この地獄の中でも理想を貫こうとした青年がいた。
正しい選択を、その道を指し示して自分の道を変えようとした男もいた。

彼らは皆、正しいことを信じていた男だった。
決して馬鹿にしてはいけない、尊い人間たちだったはずなのだ。

(皆、殺したのに……)

仲間がいた。
この島で出来た友達がいた。
ことり、千影、美凪。
皆、死んでしまった。あまつさえ一人は自分で殺してしまった。

だけど、そのこと自体には後悔はない。
それは全て覚悟の上だった。佐祐理が生きるために死の礎を築くと決めたときから。
自分のやり方を貫く、そう言った。正しいやり方じゃなくて、自分のやり方を。
どんなに傷ついても、傷つけても。どんなに殺しても、裏切っても。

それで、佐祐理を救えるというのなら。


393 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:18:19 ID:Rh+o/6Gk
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394 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:18:38 ID:mAPQj3BV
 

395 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:19:04 ID:pkCHP1qW

(なのに……)

報われない、とはどういうことだ?
もう救えない、なんてふざけてるとしか思えない。
止まれない、絶対に諦められない。そんな思いが舞を繋ぎ止めていた。

だって、そうなると嘘になる。
死んでいった命が無駄になる。何のために、皆は死んでしまったんだ。
何のために彼らは自分に殺されたのだろう。だから、絶対に……絶対に諦めるわけにはいかなかった。

時刻は間もなく夜。
電波塔の機能はまだ回復しない。いや、舞は知らないが電波塔は半壊してしまっている。
鷹野が今の舞を見たなら、すぐにでも優勝の褒美の話を持ちかけるだろう。
いや、あゆの時のように取引しようとするかも知れない。今の舞なら、たとえ一度騙されているとしても信じるしかない。
それしか、佐祐理を助ける方法がないのなら。

(だって……そうじゃないと……)

これだけ殺して。
これだけ友達の思いを裏切って、傷つけて、走り続けて。
報われない、なんてことは許されない。
彼らの死が、友人たちの死が無駄になるなんて決して許さない、認めない、諦めない。

だが、今は首輪の機能もない。よって鷹野は何も知らない。
牢獄の剣士は閉じ込められたまま、絶望を引きずって公園を後にする。

396 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:19:10 ID:Rh+o/6Gk
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397 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:19:50 ID:pkCHP1qW

「………………」

ふらふらと、舞は彷徨っていた。
空虚な心が揺れる。凶器を力なく握りながら舞は歩く。
目には生気がない。何処をどう歩いたのかも分からない。もう舞には人が生き返る方法を模索するしかなかった。
そんな絶望的なほどの奇跡を求めるしかなかった。

そうして南下していったところで、ようやく気づく。
自分の視界、その向こう側。『存在』が同種の剣のことを告げる。彼の者の登場を伝える。

「……すまない、また連絡する」

彼もまた、舞の姿に気づいて通信を切る。
二十歳ぐらいだろうか。まだ逢ったことのない参加者だ、と思ったところで気づいた。
首輪がない。それが何を意味するかなんて、考えるまでもない。

「川澄舞、か」
「……誰」
「首を見れば分かるだろ? 主催者側の人間だよ、俺は。お前の標的じゃない」

主催者側の人間、その言葉。
僅かな願いを賭けて、舞は問いかける。奇跡の中にあるような奇跡、それを祈るように。

「聞いていい……? 人は、生き返ると思う?」

即座に、桑古木は首を振った。

398 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:19:56 ID:Rh+o/6Gk
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399 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:20:27 ID:Rh+o/6Gk
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400 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:20:36 ID:pkCHP1qW

「俺の個人的見解からすれば、否だ。俺だって何度も夢想したことがある。
 仲間が、今まで殺してきた奴らが生き返ってくれないかって。
 でも、無理だ。人如きには分不相応な望みだよ。ましてや……俺やお前みたいに、血に濡れたような奴にはな」

そう、と舞は肩を落とす。
そうして一瞬の静寂、桑古木が踵を返してその場から去ろうとした、その瞬間。


「なら、あなたは私の敵」


ニューナンブM60が、桑古木に向かって火を噴いた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「ちいっ……!?」

咄嗟に永遠神剣の力を防御結界に回せたのが幸いした。
受け止めている間に体を捻って弾丸を避ける。
舞に驚いた様子はない。一発でダメなら二発、三発……そこで弾が切れたのか、補充に入る。

401 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:20:48 ID:Rh+o/6Gk
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402 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:21:35 ID:mAPQj3BV


403 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:21:36 ID:pkCHP1qW

「何のつもりだ……? 俺は参加者じゃない、優勝を狙うなら銃弾の無駄だ」
「違う……これは、憂さ晴らし。もしくは八つ当たり」
「はっ、ふざけろ。今更、正義感を振りかざすつもりか……? 他ならぬ、お前が?」
「違う。これは本当に、八つ当たり」

一度騙されたことについて、文句を言うつもりはない。それを盲目に信じた自分も自分だ。
ただ代償は払ってもらう。その上で実際に鷹野に逢って交渉する。
佐祐理を生き返らせろ、と。あの会場でのテレポート……鷹野はきっと、自分と同じ存在に違いない、と。

いや、自分よりも格上の力を持っている、そう信じることにした。
どうせ向こうの目的は殺し合いの遂行だ。なら、ここで男を殺して、鷹野に改めて警告する。
私は本気だ、と。
そちらが佐祐理を救ってくれないのなら、お前たちを皆殺しにしてやる、と。

破綻した話だ。
矛盾した願いだ。
だけど、向こうがこちらを話術で騙す可能性がある。
だから簡単に懐柔されてはいけない。こちらの悲壮な決意を知ってもらわなければならない。

「……っ!」
「――――ふ!」

銃声がふたつ、交差する。
舞のニューナンブM60とベレッタM92F、ふたつの銃器が互いを喰らい尽くそうとする。
舞は『存在』を盾にし、時には剣として銃弾を切り伏せながら相対する。

404 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:22:14 ID:Rh+o/6Gk
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405 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:22:40 ID:mAPQj3BV


406 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:22:57 ID:Rh+o/6Gk
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407 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:23:08 ID:pkCHP1qW
「フローズンアーマー!」

空気中の水分を凍結させ、氷の鎧を作り出して銃弾から身を護る。
魔力は数時間使わなかったから、ある程度は回復した。
氷の前に受け止められる弾丸を見て、桑古木は苦い顔で舌打ちをした。

(ちっ……面倒だな)

使い慣れたベレッタ、こんな感じに引き金を引いて殺し合いを制してきた。
殺してきた相手の顔が脳裏をよぎる。何度も夢で魘された、何度も呪いの言葉を囁かれた。
それら全てを振り切って桑古木は引き金を引く。
精度は比べるべくもなく、こちらが上。相手が永遠神剣を持っていなければ、すでに五度殺しているはずだ。

「所詮は素人……って言いたいとこだが、数日で身に着けたとは思えないな、その動き!」

銃弾が空になると同時、桑古木が予備マガジンに手を伸ばす。
その一瞬の隙が舞の唯一の反撃の機会だった。
魔力を身体能力の増強にあて、十歩の距離を刹那の時間、一歩だけで詰める。
振り上げた『存在』は桑古木を相手にしても視認不可能。

「なにぃ!?」
「はぁぁあああああっ!!!!」

声もまた交差する。
一人は驚愕。確実に取っていた絶妙な距離感は、でたらめな力でねじ伏せられた。
一人は咆哮。この一撃は避けられない。桑古木は避ける体勢に入っているが、間に合わない。

鮮血が散った。

408 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:24:06 ID:Rh+o/6Gk
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409 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:24:23 ID:pkCHP1qW
右肩から腹を袈裟に斬られる桑古木。ぐは、と乾いた息しか吐けなかった。
確実に致命傷、確実に殺った。
それは舞の今までの経験から来る常識だった。今まで皆、こうすることで死んでいった。

「さよなら」

舞が『存在』を振るってトドメとばかりに振り下ろす。
それと同時に。

「いやいや、そいつは早いな」

桑古木の姿が視界から消えた。
今度こそ、舞が驚愕する。あの傷で動けるはずがない、と理性がそれを否定した。
桑古木は確かに致命傷のような傷を負いながら、『誓い』の身体強化で強引に体を動かしていた。

油断した舞の背後。
ボクシングなどの格闘技でも禁忌とされる一撃。
後遺症が残ると恐れられた急所に、桑古木の容赦のない鉄拳が迫っていた。

ゴドンッ!!

壮絶な音と衝撃。
舞は何も告げない、何も話せない。
ただ、どうして自分が倒れようとしているのか理解できないまま、ゆっくりとその場に倒れ伏した。
漠然とただ、舞はそれを知った。

410 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:24:40 ID:Rh+o/6Gk
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411 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:25:14 ID:pkCHP1qW

(ああ……負けたんだ……)

それが本当に、舞の心が折れた瞬間だった。
結局、牢獄の剣士は牢に閉じ込められた卑しい罪人。鎖に繋がれた咎人だ。

たった、それだけのこと。



     ◇     ◇     ◇     ◇



これが、舞と桑古木の差。
プロだから素人に対して余裕が生まれるとか、傲慢に舐めてかかるとか、そういう話ではなく。
隙を見せてなお、絶対に埋まらない力の差があってこそ、素人とプロの違い。
僅か二日の非日常の住人とは次元が違う。そんな世界で、桑古木はずっと勝ってきた。勝つしか、護れる術を知らなかった。

斬られた部分は制限の解けたキュレイの前では無力。
不完全とはいえ、桑古木を殺すには頭を破壊して脳を潰すか、心臓を取り出して潰すしかない。
だから桑古木は急所を確実に守るだけでよかった。あとは、時間が勝手に直してくれる。
所見の相手、キュレイの力を知らない者は確実な致命傷を与えたところで油断する。
その隙を突いて、桑古木は戦ってきた。今の戦いも、そして17年もの長い年月を。

412 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:25:21 ID:Rh+o/6Gk
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413 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:25:57 ID:pkCHP1qW
「……鳳1より、本部」
『こちら本部。何があったの?』
「いや、気にしないでくれ。少し八つ当たりをされただけだ……ちょっと血が足りないが、問題ない」

さっさと帰りたい、と桑古木は思う。
まあ、帰還したら鷹野の癇癪を起こした姿が待っていると思うと、二の足を踏んでしまうのも事実だが。

「それでヒエン、俺はどうやって帰ればいい? 鷹野に教えてもらったんだが、廃坑へのルートには行けないんだ」
『……分かった。行きと同じようにしよう。もう少し待っていてくれ。自分から話してみる』

誰に、とは聞かなかった。
多分、テレポートが使える『あの人』とやらに違いないのだが……まあ、桑古木には関係ない。
兎にも角にも、ここからは離れよう。
これ以上の面倒事はゴメンだ、と言いたげに踵を返して。

そして、自分のズボンの裾を掴まれていることに気づいた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



舞の心情世界はまさに監獄だった。
自分は牢屋に閉じ込められ、鎖で繋がれている。鏡があるだけの小さな世界。
外は真っ暗だが、誰かの視線を感じる。
考えるまでもなく、舞には分かっていた。今まで自分が殺してきた人間たちだ。

犯した罪の報いを受けよ、と怨嗟の声が聞こえるような気がした。
まったくその通りかもしれない、と舞は思う。そんな諦めの言葉が心の中を支配していた。

414 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:26:12 ID:Rh+o/6Gk
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415 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:26:47 ID:Rh+o/6Gk
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416 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:26:59 ID:pkCHP1qW

(……………………)

もう、疲れていた。
立ち上がりたくなかった。
佐祐理は生き返らないし、自分の体はどうしたことか動かない。
ここが終焉だ。
ここで生き延びたとしても、一度砕かれた自信は戻らない。

敗北してはいけなかったのに。
折れてしまってはいけなかったのに。

(ごめん、佐祐理……)

剣士の少女は牢獄に繋がれたまま。
ここで果てる運命だと知った。もう、何をしても無駄だと……さっきまでの気概も砕かれた。
ギリギリの空元気も不発に終わった。

このまま、牢獄の中で大人しくしていよう。
絶望した。有りのままに、何もかもを受け入れよう。そんな自暴自棄が体に染み込んでいった。
そんなとき。


ドガンッ!!


(え……?)

417 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:27:17 ID:Rh+o/6Gk
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418 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:27:37 ID:mAPQj3BV


419 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:27:47 ID:Rh+o/6Gk
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420 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:27:48 ID:pkCHP1qW
心象世界たる牢獄の柵、暗闇へと続く壁が……砕かれた。
座り込んでしまっていた舞は頭を上げる。ここは自分の心の世界、誰も登場するはずがないのに。

見上げた先、そこには真っ黒な顔ナシがいた。
両手にはトンファーのようなものを持っている。それは、かつて……自分が初めて殺した男のシルエットだった。
牢獄が崩壊した。信じられない顔つきのまま、座り込んだままだった。

(……どう、して?)

―――――キミヲ、タスケタイ―――――

その直後、二人目の顔ナシが現れる。
そいつは黒いシルエットの中でも金色の髪だけは健在で、座り込む舞を無理やり引っ張って立ち上がらせる。
繋がれていた鎖があったはずだった。
続いて現れたのは二人のシルエット。片方は平凡な青年のようなもので、もう片方は着物を着ていた。

(何、してる……? 皆、みんな私が殺したのに)

―――――アルケ―――――

鎖が、着物の男が持っていた鉄扇で破壊される。
自由の身になった。心象世界で私は牢獄から解放された。
だけど、その中から動き出すことはない。暗闇の向こう側が怖くて、歩けない。

421 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:28:33 ID:Rh+o/6Gk
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422 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:29:03 ID:Rh+o/6Gk
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423 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:29:17 ID:pkCHP1qW

(こんなことしても、私は自分のやり方を選ぶ。今更、改心するつもりなんてない、今更道を変えたりしない!)

―――――ナラ、ワレワレも、ジブンノヤリカタヲ、エラブダケダ―――――

叫ぶ声が無視される。
眼前に広がるのは暗闇。後ろには元の牢獄が待っている。
舞の背中を、三人目の顔ナシが勢いよく押した。
そのまま暗闇へと放り出される。その世界の中でなお、舞は一人ではなかった。

ことり、千影、そして美凪。
三人が怯える舞の手を引っ張って暗闇を歩く。光に向かって歩いていく。
ことりが歌を聞かせてくれた。
千影と美凪がそれに続く。誰かを送るコーラスのように。綺麗な旋律が流れていく。

そんな、そんな夢を見ていた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「……無駄だ、止めとけ」
「っ……っ……っ……」

気づけば、桑古木の手を掴んでいた。
気絶していたわけじゃない。ただ、体が動かないだけだった。
だから桑古木の会話も聞こえていたし、自分が今何をやっているかも分かっていた。

424 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:31:59 ID:pkCHP1qW

「体、指一本を動かすのだってギリギリだろ。後頭部攻撃ってのはそんな類だ。精神論じゃない、そういうものなんだ」

聞こえない。

「どんなに鍛えても鍛えられない箇所がある。それが急所で……お前はそこに一撃をもらった」

聞くつもりもない。
一瞬生まれた諦めを飲み込んだ。

「もう俺も後がない。今度、失敗でもしたら、全部水の泡になる。だからこんな反則技だって使う」

装備を確認する。
銃は手を離れているし、何より弾切れになってしまってる。『存在』も弾き飛ばされていた。
たった一瞬の夢、都合のいい夢想。
それを思い出していた。なんて今更、なんて都合の良い。

「もう、俺は手加減しないぞ。本来ならご法度だが、離さなければ殺す。……離せ」

思わず、舞は薄い感情ながら……ほんの少しだけ、笑った。
小さく笑えるほど、世界は変わっていた。

「今頃になって……こんなことしてまで……」
「うん?」

手を離した。
それでいい、と桑古木が目を細め……そして驚愕に見開いた。

425 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:32:17 ID:Rh+o/6Gk
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426 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:32:38 ID:mAPQj3BV


427 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:32:51 ID:Rh+o/6Gk
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428 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:33:19 ID:pkCHP1qW

「皆の力も友情も、受け取る資格なんて……ある筈がないのに。そんな自分勝手は……百も承知なのに」
「なっ……これ、は……なんだ?」

空間が歪む。
桑古木が一歩、下がった。目の前の光景の異常に警戒するしかなかった。


「私はまだ……救いが欲しかったみたい」


魔物。
舞の命を削る切り札。


「「「「亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞!!!!!!」」」」


唸り声、意思のある獣たちの咆哮が夜の闇で吼える。
数は1、2、3……7体。
どうやらこれがリミット。これ以上の数となると、それは確実に自分の命を差し出すことになりそうだ。

「……廃坑から鷹野たちのいる場所に行けるのは本当?」
「ぐっ……」
「なら、これから逢いに行く……私の弱さが見せた、あの有り得ない夢想歌を……もう一度だけ、力に変えて」

429 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:33:26 ID:Rh+o/6Gk
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430 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:33:55 ID:Rh+o/6Gk
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431 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:34:29 ID:mAPQj3BV


432 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:34:43 ID:Rh+o/6Gk
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433 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:34:45 ID:pkCHP1qW

魔物の内の一体が、動けない舞を背中に乗せる。
そして残りの6体は主を護るために……いや、敵を屠るために、一斉に桑古木へと飛び掛った。

「「「「亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞亞ーー!!!!」」」」
「うっ……ぐ、ぉぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!!!!」

手には『誓い』とマナ結晶。
それらをディフェンスにまわして猛攻に耐える。隙を見て、距離を取ろうとする。

「アイス―――――!」

ここが、決着の分岐点。
舞は魔物の力を借りて移動し、震える指で『存在』を握る。
目標は当然、桑古木。僅か数秒の時間を奪えればいい。それだけで、それで十分すぎる。

「バニッシャーーーーーーッ!!!」

氷の牢獄が桑古木を捕らえる。
男は死神の姿を確かに幻視した。
透明な腕が全方位から命を絶たんと襲い掛かる。
動けない。
氷の魔力を打ち破るまで、数秒。たったそれだけの時間、桑古木は何も出来なかったのだ。

「ふざけるな……」

桑古木が敗北することは、彼が護りたかった人を危険に晒すことと同意。
まだ答えを得ていない。武の答え、それとも瑞穂の答えか。
どちらも聞いていない以上、くれてやるものは何一つだって……ない。ある筈がない。

434 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:35:24 ID:Rh+o/6Gk
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435 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:35:46 ID:Rh+o/6Gk
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436 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:35:52 ID:pkCHP1qW

ココを護りたい。
そのために人を捨てた、仲間も売った、どうしようもない悪魔になった。
そうしてまで進んできた道が。
こんなところで閉ざされるわけにはいかない。閉ざされていいはずがない。


「俺はぁぁあ、負けられないんだぁぁぁあああああああああっ!!!!!」


その叫びも虚しいまま。
桑古木がいた空間を切り裂き、貫き、破壊し尽くした。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「…………」

全てが終わった後、舞は一人でため息をついた。
魔物たちは自分を近場の博物館まで運ぶと、幻のように姿を消していった。
どうして魔物の統制がうまくなったのかは分からないが、それでもそんなことを考える暇はなかった。

437 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:36:07 ID:Rh+o/6Gk
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438 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:36:24 ID:mAPQj3BV


439 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:36:35 ID:Rh+o/6Gk
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440 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:36:43 ID:pkCHP1qW

「……逃げられた」

魔物たちが裂いた空間の先には、何もなかった。
あるはずの男の死体がなかった。つまり、逃げられた……会場で見せられたテレポートの類だろう、と舞は思う。
いや、確かに桑古木の命を救ったのはタイミングの良いテレポートだ。
だけど若干のタイムラグがあった。それは一秒にも満たない時間だったが、男の胸を裂くには十分すぎる時間だったはずだった。

あの男は僅か一秒で。
氷の牢獄を『誓い』の力で破壊し、魔物の全方向からの攻撃を防いで見せたのだ。
絶対の意志の強さが運命を決めるというのなら、桑古木はその意志で強引に自分の死ぬ未来を引っ繰り返した。

「…………疲れた」

ごめん、と夢の中の住人たちに謝る。
結局のところ、舞は道を変えられない。佐祐理を救うためなら、鷹野の説得次第で戻ってしまうだろう。
なんで彼らに救われたのかは知らない。かつての約束を果たされたのか、それも分からない。
だけどもしも、改心を期待していたというのなら……多分、自分は期待に添えることは出来ないのだろう。

いずれ、あの壊された牢獄に戻ってくる。
だから自由になった今だけは、主催者を敵と認識しよう。それが精一杯の譲歩。
そして佐祐理を救う算段が立てば、彼らが命賭けで護ってきた人たちを殺しに行く。


441 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:36:55 ID:Rh+o/6Gk
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442 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:37:42 ID:pkCHP1qW

「ごめん……私は、頑固で、自分勝手で……何考えてるのか、分からないような人間だから……」

かつて誰かが、そんなことを叫んでいたような気がした。
佐祐理のために忘れてしまった男の子。死んでしまった後も、薄情な自分は悲しむことすらしなかった。
思えば、彼は助けに来てくれなかった。
違う、あの心象世界には佐祐理と彼だけが現れなかった。……きっと、怒っているのかも知れない。

ただ、あの暗闇の向こう側。
光の差し込む世界で、誰かに手を差し伸べられていた。

―――――けど、俺も佐祐理さんも、そんなお前が好きなんだぞ。

「……だけど、貰った借りは返すから」

美凪のハンカチを、握り締める。
他の参加者たちと協力する、という気はない。受け入れられるはずがないし、そうする気もない。
ただ今だけ、標的が参加者から主催者に代わるだけ。
ほんの一瞬、数時間だけの暴挙。

鷹野と直接、実際に相対するまで説得は受けない。
ただ声だけの虚偽などもうたくさんだ。直々に逢って話をするしかない。
だからそれまでの間……舞は修羅として殺し尽くす標的を変えた。

そういえば弾丸も尽きていたんだったか。
期待薄かもしれないが、この博物館を捜索してみよう。
でも、それは後で……今はもう少しだけ、体を休めよう。舞は静かに目を瞑りながら、息を整える。

443 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:37:43 ID:Rh+o/6Gk
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444 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:38:23 ID:Rh+o/6Gk
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445 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:38:24 ID:mAPQj3BV


446 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:38:42 ID:pkCHP1qW

もう少し夢が見れないかな、と。
そんな期待を胸に秘めたまま、月下の下、川澄舞は意識を失った。


【D-3 博物館/2日目 夜】


【川澄舞@Kanon】
【装備:永遠神剣第七位"存在"@永遠のアセリア−この大地の果てで−、学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾0)、ハンドアックス(長さは40cmほど)、草刈り鎌、ニューナンブM60(.38スペシャル弾0/5)、美凪のハンカチ】
【状態:決意、疲労大、右目喪失(止血済み)、肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、脇腹に被弾、"痣"の浸食(現

在身体の40%)、魔力残量15%】
【思考・行動】
基本方針:鷹野の本拠地へと移動する。
0:博物館で体力の回復。
1:動けるようになったら、廃坑を探索する。
2:佐祐理を救う算段が立つまでの間、主催者を敵と見なして戦う。
3:他の参加者と協力する気はないし、襲ってくるなら応戦する。
4:鷹野と直接会うまでは、説得に応じない。
5:武器を期待して博物館を捜索する。


【備考】
※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。舞は神剣の力を使用可能。
 アイスバニッシャー…氷の牢獄を展開させ、相手を数秒間閉じ込める。人が対象ならさらに短くなる。

447 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:40:02 ID:pkCHP1qW
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。
 他のスキルの運用については不明。
※永遠神剣の反応を探る範囲はネリネより大分狭いです。同じエリアにいればもしかしたら、程度。
※<<魔物>>
 制限によって禁止されていた魔物を生み出す力が、枯れない桜の力の減少によって使用可能になっています。
 呼び出す対価として魔物がやられる度に舞は生命力を失います。




「た、隊長っ……すぐに救護室へっ!」
「どけどけ、急患だっ! 隊長を通せ、急げ……」
「慌てるなっ!!!」

テレポートで帰還するなり、桑古木の傷を見た山狗の隊員たちが慌てふためく。
右肩から腹までバッサリな斬撃は致命傷だし、魔物の猛攻を受け止めた左腕は有り得ない方向に曲がっていた。
士気の低下を心配した桑古木は、元気だった頃と同じような怒号で答えた。

「この程度、三時間程度で直る。優とヒエンを呼んで来い、今すぐに!」
「は、はい!」

やがて数分もしないうちに二人が駆けてくる。
その傷を見てヒエンは顔色を真っ青にしたが、優は比較的冷静に桑古木の肩を掴んだ。

448 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:40:16 ID:Rh+o/6Gk
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449 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:40:43 ID:mAPQj3BV


450 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:41:03 ID:pkCHP1qW
「救護室に運ぶわよ、いいわね?」
「ああ」
「ヒエンは先に行って。救護室で医療用具の準備を指揮してきて。包帯と三角巾さえあればいいわ」
「……し、承知した」

走っていくヒエンの背中を見送りながら、優は尋ねる。
何があったのか、とは聞かなかった。
そんな些細なことはどうでもいい。問題は彼の意思、彼自身の力はまだ失われていないのか。

「まだ、戦える?」
「当然だ」

間髪いれずに答えた。
それが桑古木の意志だった。決して、どんなことがあろうと折れない一途な想いだった。
あまりにも一瞬の答え、呆気なさ過ぎて……優は笑った。

「そう・・・なら、私も戦うわ」

優の懐には一丁の拳銃、ベレッタM1951……そしてもう一つ、S&W M500という名のリボルバー。
キュレイの腕力を持ってすれば、二挺拳銃など容易かった。身体能力だけを見れば、並の成人男性を遥かに超える。
それは桑古木にすれば意表を突かれることだった。そんな選択を優はした。
まだ、迷っていたはずだった。武の件を考えれば当然だと思ったし、彼は彼女の行動を容認していた。

ただ、さすがに裏切りの可能性を聞いたときは問い詰めたものだ。
優が裏切るとなれば、次の疑いは自分にかかってくる。そうなれば子供たちの身が……ココが危ないのだから。
結局、時間がなくて答えを聞くことは出来なかった。
そのときの答えを問いかけるように、静かに桑古木は尋ねた。後悔はしないのか、と。

451 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:41:27 ID:Rh+o/6Gk
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452 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:41:53 ID:pkCHP1qW

「……いいのか?」
「ええ、いい加減に目を覚まさないとね。私は……少し寄り道が過ぎたのよ」

桑古木はココのために何もかも捨てた、その覚悟を見せた、意志の力を示した。
その想いは優も持っている。自分の最愛の娘を護るために、ずっとそうしてきた。桑古木と共に泥を舐めてきた。
自分の全て。
娘は自分の妹にして、自分自身。その想いは誰にも負けない、負けるはずがない。

たとえ、それが桑古木が相手であっても。
彼がココを想う気持ちに、優が娘を想う気持ちが負けてしまう、なんてことはさせない。

「本当に大切なものは……強い意志で護る、護り通さないと……いけないのよね」
「そう……だな」
「だから戦うわ。私たちは地獄に落ちる。桑古木一人だけを地獄に突き落とすわけにはいかないしね」

クッ、と桑古木は笑った。
そんな地獄の道連れを名乗り出た女の言葉が可笑しかった。
そうだった、この女は自分のパートナーだったのだ。そんなことを思って、桑古木は痛快に笑った。

やがて救護室に辿り着く。
優は山狗の一人に桑古木を預けると、手際よく治療の用意を始める。
体を見ると、キュレイが全力を持って傷を塞ごうとしていた。逆流する血を見ていると、自分が化け物だと実感する。

453 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:42:07 ID:Rh+o/6Gk
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454 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:42:45 ID:Rh+o/6Gk
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455 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:42:59 ID:pkCHP1qW

「そういえば、桑古木」

診療台に横たわる桑古木に話しかけたのは、ヒエンだ。
少し離れたところから治療の邪魔をしないようにして、ゆっくりと情報を伝えていく。

「電波塔が破壊された。それと『あの方』に聞いたのだが……どうやらハウエンクア、まだ生きているらしい」
「……そうか。よく無事でいたな、あいつ」
「自力で脱出できないらしいのだが」

そうなるとインゼル・ヌルに置いてきぼりということになる。
あれから二時間は立っている。いい加減、空気の関係もあって限界のような気がした。
まあ、まだ生きている以上、空気は大丈夫なんだろうと漠然と思っただけだった。

「もう少ししたらハウエンクアもテレポートで帰還するはずだ。……奴らは、来るか?」
「ああ、間違いなくな」

そうか、とヒエンが溜息をつく。
それで会話は終わった。ヒエンは救護室から退出する。
複雑な表情、それはヒエンに残った良心か……それとも武士としての誇りなのか。

(やはり、この手で倒さなくてはいけないのか)

ヒエンは歩く、アヴ・カムゥを収納している場所へと。
命じられればすぐに動けるように。
こうなれば手加減は無用。この手で、引導を渡してやるのがせめてもの情けだった。


456 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/22(土) 15:43:07 ID:Rh+o/6Gk
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457 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:43:21 ID:pkCHP1qW

激突は近かった。
もう間もなく、最後の戦いが始まろうとしていた。



【LeMU 地下二階、救護室/二日目 夜】


【桑古木涼権@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第五位『誓い』】
【所持品:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、ベレッタの予備マガジン×2、マナ結晶(マナ残量45%)、通信機】
【状態:肉体疲労大、両腕に軽い火傷、肩に斬撃、左腕骨折】
【思考・行動】
0:治療し、次の戦いに備える。
1:電波塔での出来事を鷹野に伝える。
2:武に伝言が伝わる事を期待。
3:アセリア、舞を危険視。



【備考】
※『誓い』にはヒビが入っています。(その内直ります)
※『誓い』の意思は消滅しました。(今日子仲間時の『空虚』と同じ状態です)
※『誓い』とマナ結晶の併用で、身体能力強化と中レベルのディフェンススキルが使用可です。
※三時間〜四時間ほどで大体の傷が完治します。



458 : ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/22(土) 15:43:48 ID:pkCHP1qW


【田中優美清春香菜@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:ベレッタM1951(8/8)+1、S&W M500(5/5)】
【所持品:ベレッタの予備マガジン×2、S&W M500の予備弾20】
【状態:健康、強い決意】
【思考・行動】
1:桑古木の治療。
2:戦う決意、参加者を迎え撃つ。



【ヒエン@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康、参加者への強い警戒】
【思考・行動】
1:契約に従い、ゲームを遂行する。
2:ハウエンクアを心配。
3:戦闘準備を開始する。



459 :機神胎動 ◆tu4bghlMIw :2007/12/24(月) 02:02:56 ID:QOADtdrz
最終更新から設定時間経過。パーソナルシグナルダウン確認。
緊急時対策マニュアル=ナンバー<<12-8>>――オープン。


マスターの生体反応を探索。

…………LeMU 地下第三層ドリット・シュトック、地下牢内にて反応を受信。
熱量、生体反応共に薄弱。マスターの生命の危機を確認。



よって現時刻をもって緊急時対策マニュアル000の開始を宣言。



LeMUメインコンピュータからデータ、及びメモリブローバック開始。


……32%。

……67%。

……100%。


優先生存者の生存状況、ダウンロード完了。
咲耶、千影、衛、四葉。四名の死亡を確認。
特殊保護プログラムの実行は不可と判断。ルールαに従いデータを破棄。


引き続き死亡者データのダウンロードを開始。


460 :機神胎動 ◆tu4bghlMIw :2007/12/24(月) 02:03:42 ID:QOADtdrz

ハクオロ/エルルゥ/アルルゥ/オボロ/トウカ/カルラ
国崎往人/神尾観鈴/遠野美凪/高嶺悠人/エスペリア/小町つぐみ
厳島貴子/相沢祐一/月宮あゆ/水瀬名雪/倉田佐祐理/北川潤
鳴海孝之/涼宮遙/涼宮茜/水澤摩央/二見瑛理子
岡崎朋也/坂上智代/伊吹風子/藤林杏/春原陽平
土見稟/ネリネ/芙蓉楓/時雨亜沙
朝倉純一/朝倉音夢/芳乃さくら/白河ことり/杉並
対馬レオ/鉄乙女/霧夜エリカ/佐藤良美/伊達スバル/土永さん
前原圭一/竜宮レナ/園崎詩音/大石蔵人/赤坂衛/双葉恋太郎/白鐘双樹


以上、先のデータとリンク。……監視データロスト。
現時点での生存者約九名想定=アセリア、倉成武、宮小路瑞穂、川澄舞、一ノ瀬ことみ、大空寺あゆ、蟹沢きぬ、古手梨花、白鐘沙羅。
ラボ内の音声データ、及び録画映像、監視映像とリンク。


……実践データ不足。ひとまず現時点での生存者全てを保護対象と仮定。


基地内戦闘レベルA。
基地内部の温度上昇、多数の熱源確認。
……設定状況【LeMU攻略戦】と92%までの一致を確認。同一状況と判断。


優先度AAA――よって緊急時対策マニュアル001、本時をもって実行を宣言。

マザーコンピュータ、及びLeMU内メインサーバーに対してハッキング開始。
マスターへシグナル発信………………受信確認。


システムを第二段階に移行。

461 :機神胎動 ◆tu4bghlMIw :2007/12/24(月) 02:04:21 ID:QOADtdrz


パワーステルス解除。調整チューブパージ。
保護カプセルハッチアウト。
LeMU 表層部インゼル・ヌルにて起動中の姉妹機とコンピュータ直結。
参加者が所持する端末からパスワードを強制ダウンロード。
データベースリンク、送信。緊急時対策マニュアル002の実行を委託。


動作良好。システム、オールグリーン。
機体破損率ゼロパーセント。動力エネルギーフルチャージ。
バックアップ、仮想コンピュータ稼働率99%。
現在地確認。目的地への最短距離を演算開始。


特殊制圧武装展開。
戦闘用バックパック装着。対衝撃用バトルドレス装着。
バスタードソード装着。
マウザーBK-27 カスタム、フルリロード。

目的=マスター鈴凛、及び協力者富竹ジロウの救出/生存者の保護/敵戦力の除去――鷹野三四の確保。



MR-006――メカ鈴凛起動。




462 :機神胎動 ◆tu4bghlMIw :2007/12/24(月) 02:04:54 ID:QOADtdrz
【LeMU 地下一階『エルストボーデン』秘密格納庫/二日目 夜】

【メカ鈴凛@Sister Princess】
【装備:バスタードソード、マウザーBK-27 カスタム(700/700)、対衝撃チャイナドレス】
【所持品:なし】
【状態:動作正常、エネルギー100%】
【思考・行動】
基本行動方針:生存者と協力しつつ、下記の目標を達成する。
1:鈴凛、富竹ジロウの救出。
2:生存者の保護
3:敵戦力の除去。
4:鷹野三四の確保。

※ハッキングによりLeMU内各シャッターや警報装置の機能が一時的に麻痺しています。


463 : ◆tu4bghlMIw :2007/12/24(月) 02:31:08 ID:QOADtdrz
えーと、メカ鈴凛のマウザーBK-27 カスタムの弾数修正で。

700/700→2000/2000

なんかアホみたいに増えてますが、気にしないで下さい。

464 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:04:01 ID:x6M4ZGDf





「…………ん」

牢獄の中に少女はいた。
冷たい壁に背を預け、体を動かすことなく座っている。
瞳を閉じて、じっと待っていた。時間が過ぎるのを……沼に潜んだ竜が天に昇る時節を待つように。

(五秒前……三、二、一……うん、時間は経過したね)

この監獄に時計はない。
だから体内時計を利用しているだけに過ぎないのだが、大体の目測は立っている。
そろそろ起動するはずだ。
鈴凛が2034年の技術を追加して作り上げた、自慢の切り札……メカ鈴凛が。

「……鈴凛くん、無事かい?」
「うん、まだ大丈夫だよ、富竹さん」

自分の牢獄の隣、もうひとつの牢獄から同志の声がした。
富竹史郎。自分と同様に疑われ、そして私と手を組み、捕まって投獄された男。
かなりの拷問を受けているようだったが、それでも当人は意外と元気そうにしていた。

鈴凛自身も、鷹野に殺されるという秒読みがスタートしている段階なのに、まだ何も音沙汰がない。
牢獄の監視役たる山狗も最低人数を残して、出て行ってしまった。
おかげでほとんど放置されてしまっているのが現状だ。冷たい床と壁、そして不衛生な環境は鈴凛を少し辟易させた。

465 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:08:50 ID:x6M4ZGDf

「ごめんね、富竹さん。私も失敗しちゃった」
「いや、十分さ。山狗たちが何だかてんてこ舞いなのも、鈴凛くんが頑張ってくれた成果だろうからね」
「はは……そうなら、いいけどさ」

ここは未来のない人間たちが閉じ込められる場所だ。
鈴凛にもはや未来はない。たとえメカ鈴凛が起動しようとも、マスターである自分は恐らく間に合わない。
こつ、こつ、こつ。
足音がする。ハイヒールのような女性ものの靴特有の高い音。

「こんばんは、鈴凛……それにジロウさん」
「…………鷹野さん」
「鷹野……」

牢獄の中、富竹史郎は対峙していた。その隣の部屋には鈴凛もいる。
レムリア遺跡は好んで訪れるような場所ではない。
訪れるのは囚われの身である富竹や鈴凛、彼らを監視する山狗たち……そして、彼らに用のある者。

鈴凛はいよいよか、と思った。
首輪の設計法を訊きだしてから、殺される。もう終わりが近いということを知っていた。
当然の報いだと思った。
鷹野を裏切ったことに対することじゃない。大切な姉妹たちを含めて見殺しにしてきたことに対して、だ。
臓物を引きずり出されて殺される、など……自分に相応しい罰じゃないだろうか。

「……ふふふふ、そう怖がらないで、鈴凛ちゃん。今は貴女の命で愉しむ暇がないの」
「どういう、こと」
「貴女の希望が、もう少しでここに来る。それだけのことよ……嬉しいでしょう?」

鈴凛の目に光が灯る。
梨花は、そして皆はやり遂げてくれたのだ。
電波塔の破壊を、そして本拠地への突入もまもなく。だからこそ、山狗たちを戦闘態勢に入らせた。

466 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:17:43 ID:Y+yD8pM9
 

467 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:19:31 ID:x6M4ZGDf

「だからその前に、やるべきことをやりに来たの」
「……やるべき、こと?」

もう、鈴凛には視線すら向けていなかった。
鷹野は山狗の一人に富竹の牢獄の鍵を開けるように要求する。
開錠の音が静寂を破る。
鷹野はこつ、こつ、と富竹が縛られている場所まで歩いていく。

「ねえ、ジロウさん……いい加減、ハッキリさせましょう?」
「…………」
「今からでも遅くないわ。私の味方になってくれれば……何でもあげる。何だって、ね」

富竹は溜息をついた。
それは鷹野がここに来るたびに尋ねる内容だった。

「何度聞かれても、僕の答えは変わらない。もう……ハッキリしていることだよ」
「……命が惜しくないの? 山狗にも莫大なお金を上げたけど……貴方はいくらで私の味方になってくれるのかしら?」
「寂しい人だな……貴女は」
「私はね、ジロウさん……指揮官として、囚われの身である貴方に聞いてるんじゃないの」

鷹野三四として、富竹史郎に尋ねているのだ、と。
お互いの立場も、敵と味方という現状も無視して……鷹野三四は勧告する。
ただ、戦力として考えているわけではない。富竹と鷹野の二人にしか分からない、そんな……願い。

「くどいよ、鷹野さん。僕は協力できない……もう嘘も、つきたくない」

一時的にでも協力した振りをしたことがある。
あれですら、富竹には限界だった。それだけ彼は真面目で、そして優しかった。非道に痛める良心があった。
そんな真っ直ぐな誠実さが、鷹野が富竹を気に入っている理由のひとつだった。

468 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:21:30 ID:UpfnjWgM
  

469 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:22:11 ID:x6M4ZGDf

「そう……」

残念そうに鷹野は頭を垂れた。
そんな姿を見て富竹は思う。今からでも考え直してはもらえないだろうか、と。
彼だって鷹野三四が好きだった。だけど、彼の正義は鷹野と対立した。
だからこうして抗い、そして今また彼女の言葉を拒絶している。愛し合った彼らは、しかし互いの信念がためにこうなっている。

「なら、最後の手段しかないわね」
「えっ……?」

顔を上げる富竹は、確かに絶望を感じ取った。
鷹野は笑っていた。狂気に溺れたような、それでいて正常な笑みで笑っていた。
それは妙齢の女性らしい蟲惑的な笑みで……ぞっとするほど残酷なものだった。

「取引しましょう、ジロウさん」
「とり、ひき……?」
「そうよ。もう一人の裏切り者……鈴凛の処遇をめぐって、ね」

パチン、と鷹野が指を鳴らす。
レムリア遺跡に監視をしていた山狗が鈴凛の閉じ込めていた牢獄を開錠すると、そのまま雪崩れ込む。
一瞬、何が起きたか分からない鈴凛は大した抵抗もなく、取り押さえられた。

「うあっ……!!?」
「鈴凛くんっ!?」

隣で起きた異変に富竹が声を上げる。
だが、鷹野はそんな富竹を見下ろしながら笑っていた。これから起こる喜劇に向けて。
悪魔のような女は哂っていた。
まるで悪夢を代表する怪物のように、人の身を超えようとした人型が笑っていた。


470 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:22:41 ID:UpfnjWgM
  

471 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:22:59 ID:x6M4ZGDf

「ねえ、ジロウさん……鈴凛は、どんな目に合わせたほうがいいと思う?」
「ぐっ……」
「ゲームを打ち壊してくれた裏切り者には、それなりの罰が必要でしょう……? でも寛大な私はジロウさんに選ばせてあげるわね」

それは死刑宣告にも似た最終選択だった。
床に数人がかりで押し倒された鈴凛は身動きひとつできず、顔を青くしながら事の成り行きを見るしか出来なかった。
罰、と聞いてまともなことは連想できない。覚悟があった鈴凛でも、不安は隠しきれない。

「痛い目にあわせるのと、恥ずかしい目にあわせるの……どちらがいいと思う?」

瞬間、呼吸が死んだ。
富竹は呆然と変わってしまった恋人を見る。
嗜虐心に彩られた瞳が爛々と輝いていた。変貌した彼女は……もはや、人には見えなかった。

「君は……鬼か? それとも悪魔なのか……?」
「鬼でも悪魔じゃないわ。私は人を超えて神になる……これは、私の祟り。そして私が下す裁きよ」

哄笑が響く。
鈴凛はただ、震えていた。だけど耐えていた。
このまま何もかも鷹野に屈するにはいかなかった。地獄に放り込まれた姉妹たちは戦った。
千影も、咲耶も、衛も、四葉も精一杯生きた。
だったら屈するわけにはいかない。卑屈には死ねない、矜持をもって……鈴凛は恐怖を無理やり噛み殺した。

「富竹さん、私なら大丈夫っ……絶対に鷹野に……むっ、むぐぅぅぅう〜〜〜!!」

叫ぼうとした鈴凛の口が塞がれる。
口枷をかけられた鈴凛にはもはや、叫ぶことも自決することも許されない。
突然消えた声に、富竹の焦りが倍増する。


472 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:23:47 ID:UpfnjWgM
  

473 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:24:11 ID:x6M4ZGDf

「あらあら、隊員たちが我慢できないで始めちゃったかしら。うふふふふふ……」
「鷹野、さんっ……!!」
「ジロウさん、早く決めないと。別に恥ずかしいほうがお好みなら、このまま黙っていればいいんだけど?」
「違うっ!!!」

この窮地を凌ぐ方法を考える、がどうしようもない。
富竹には鈴凛を助けることが出来ない。
すぐ隣で少女が危難にあっているというのに、助けることが出来ない。この体は、意思は、そんなことすらしてやれない。
そんな事実が富竹の中に浸透していく、と同時に絶望が襲ってくる。

そんな、彼の耳元で。

「貴方が私の味方になってくれれば……鈴凛は特別に赦してあげてもいいのよ?」

悪魔が、甘言を囁いた。

「んっ……ぅぅぅん、んんんんんん……!!」
「あらあら、隣も必死ねえ。どうするの、ジロウさん……? 早く決断しないと、間に合わないわよ?」
「………………」

富竹は思う。
確かにこんな殺し合いは肯定できない。それは富竹の信念にして絶対の真実だ。
だけど、そのために目の前の女の子も助けられない。
見捨てろ、というのか。協力者を……見殺しにしろというのか。
自分の命ならいい。だけど、他人の命までが自分の行動に握られている。それがとてつもなく、恐ろしい。

「…………」


474 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:25:26 ID:Y+yD8pM9
 

475 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:25:34 ID:UpfnjWgM
  

476 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:25:40 ID:x6M4ZGDf
このまま意地を張れば、鈴凛は想像を絶するほど酷い目に合わされて、殺される。
自分は牢獄に閉じ込められたまま。
いや、これを断れば無為に殺されるだけだ。そうなれば生き残った参加者のために何かをしてやることすら出来ない。
ここで鷹野の言葉を拒絶すれば。
意味もなく、価値もなく、二つの命が酷い終わりを迎える。それはなんて、意味のないことだろう。

「…………た」
「聞こえないわ」

なら、認めろ。
外道に落ちろ。そしてこの牢獄より立ち去れ。
そうしなければ、参加者たちも鈴凛も助からない。そのためなら……屑になってしまえ。

「わかった……鷹野さん、僕の負けだ……」
「……なら、私の味方になってくれる、と?」
「ああ……鈴凛くんの身柄の安全を保証してくれるのなら。僕は敗北を認める。君に絶対服従する」

それが決定的だった。
鷹野三四に屈するという誓い。
鬼は哂う。ようやく手に入れた、と……魂を手に入れた悪魔のように、クスクス、と。

「その言葉が聞きたかったの」

ガチャリ、隣で戒めの鎖を外される音がした。
富竹は若干、衰弱していた。
そんな様子を鷹野は見咎め、このまま付いてくるように言う。救護室にでも連れていくつもりなのだろう。


477 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:26:15 ID:UpfnjWgM
  

478 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:27:05 ID:x6M4ZGDf

「鷹野さん、鈴凛くんは……」
「ええ、良いわ。貴方が味方になってくれたなら、小娘の一匹ぐらい見逃してあげる」
「んん、ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、んっ……んんんんっ!!!」

鈴凛は暴れた。
隣から聞こえるやり取りに反発するように、彼女は抵抗した。

(違う……)

違うのだ。
自分に救われる価値なんてない。
最後まで真っ直ぐ歩んできた富竹に、自分の正義を裏切らせてまで長らえる命じゃなかった。

どの道、もう最愛の妹たちとの日常には帰らない……帰れない。
だからここで罪を贖わねばならなかったのに。
たとえ女として辛い目にあったとしても、それは自分自身の因果の末に。
富竹が自分を犠牲にしてまで救われる命じゃない。助けられていいはずがなかったのに。

(あっ……ぁぁああああああああっ!!!!)

鈴凛は連れて行かれる富竹の後姿を見て、嘆くしかなかった。
また、自分のせいだ。
最後まで真っ直ぐあろうとした人が、自分に利用される形だったにも関わらず、鈴凛を救った。

「じゃあね、鈴凛。貴女にもまだ利用価値があって嬉しいわ」

鷹野は言う。
ありがとう、自分のおかげで富竹の意志を砕けた、と。


479 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:28:20 ID:UpfnjWgM
  

480 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:28:58 ID:Y+yD8pM9
 

481 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:29:22 ID:x6M4ZGDf
「牢獄の鍵、開けておくわね? だけど、出てきちゃダメよ? レムリア遺跡以外で見たら撃ち殺す命令を出しておくから」
「んっ……む、ぐ、ぷはっ……鷹野っ……鷹野ぉーーーーーーっ!!!」
「動くなっ!!!」

なっ……と、鈴凛の体が硬直する。
今すぐにでも牢獄を出て、富竹を呼び止めるつもりだった。
だが、自分を制したのも富竹だった。心が凍りつくぐらい激しい言葉が体を縛り付けていた。

「鈴凛くん……生きるんだ」

それで、最後。
もう二度と逢えないだろう確信にも近い予感があった。
彼は人のために自分を捨てる覚悟があったのに、鈴凛にはそうしてやることが出来なかった。


「うっ……あ、ああっ……あああぁぁああああああっ!!!!!」


己の無力をただ噛み締めて。
どうして人のために命を投げ出すことも出来なかったのか、と自身に問い詰めた。

簡単な話だった。
結局のところ、怖かったのだ。
残酷な方法で命を奪われることも、女として酷い目にあうのも。
罰と知りつつ、心で受け入れていたつもりでも……恐ろしかった。そして富竹の救いに、その優しさに甘えてしまったのだ。

482 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:30:21 ID:UpfnjWgM
  

483 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:31:20 ID:Y+yD8pM9
 

484 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:31:31 ID:x6M4ZGDf

「弱い……」

冷たい床を強く叩いた。
今からでも扉を開ければ富竹を追いかけられるのに。
怖くて、苦しくて。
それが彼を見殺しにすると理解していても、鈴凛は動けなかった。

「私は、弱いっ……!!」

激しい自己嫌悪と悔恨を抱えたまま。
鈴凛はその場に蹲って、自分の弱さに咽び泣いた。



【LeMU 地下三階『ドリット・シュトック』地下牢/二日目 夜中】

【鈴凛@Sister Princess】
【装備:鈴凛のゴーグル@Sister Princess】
【所持品:無し】
【状態:健康、若干衰弱、自分に対する不甲斐ない気持ち、契約中】
【思考・行動】
1:参加者たちの突入とメカ鈴凛の反乱を待つ。
2:富竹の身を心配。
3:それまで牢獄で待機する。



     ◇     ◇     ◇     ◇


485 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:32:50 ID:Y+yD8pM9
 

486 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:33:04 ID:UpfnjWgM
  

487 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:33:47 ID:x6M4ZGDf



「……鷹野さん、何処に行くんだい?」
「ふっ、ふふふふふ……この先よ。せっかく本当に私たちの仲間に加わったんだから、主催者に会わないとね」
「主催者……?」

おかしな話だ、と富竹は思った。
この馬鹿げた殺し合いの首謀者は鷹野のはずだ。少なくとも富竹はそうだ、と信じ続けた。

だが、鷹野のこの口ぶりは違う。
もう一人仲間がいる、という問題ではない。まるで直属の上司を紹介するような雰囲気。
やがて辿り着くのは『HIMMEL』と書かれた白い扉。
クスクスクス、と鷹野は笑う。

「まさか……」
「そうよ。この扉……『HIMMEL(ヒンメル)』の向こう側に『名前を呼んではいけないあの人』がいる」
「鷹野さん、首謀者は君じゃなかったのか……?」
「ええ。私はただの執行者……そして、この祭りの主催者は別の人よ。……いえ、人じゃなかったわね」

意味深な台詞も耳に入らない。
富竹は鷹野さえ止められれば、この殺し合いを終結させることも可能だと思っていた。
いや、それすらも容易ではないが……それでも、そこに一縷の望みを賭けていたのだ。

「ここはパスワードで開く仕様になってるわ。
 知っているのは私と、あと数人ほど。まあ、実際に指揮を取る人たちだけの機密ってやつね。
 ジロウさんにも、また後で教えてあげるわね……ふふ、ふふふふふ」

もしや、自分の選択は早計だったのだろうか。
なにか得体の知れない不安が、自分の心に這い上がってくる感覚を富竹は感じた。
長い投獄生活だった、とまではいかない。
それでも自分には一切の情報が伝えられていなかった。だから、首謀者の正体でさえ知らなかった。

488 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:34:37 ID:UpfnjWgM
  

489 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:35:07 ID:x6M4ZGDf
あの選択は最善だった、と思う。
だが、結局はどちらも不幸の道だったのではないだろうか。

そんな不安を他所に、鷹野は彼の耳元に囁きかける。
息の吐く音さえ聞こえる距離、逢引にも似た一方的な宣告に、富竹の肩が震えた。

「それじゃ……いってらっしゃい」

パァンッ!!

「ぐっ……あ……?」

言葉と同時に、わき腹に激痛が走った。
銃声が唸り声を上げたことを、富竹は確かに聞いて……そして、撃たれたのだ、と痛感した。
何故、撃たれたのかも分からないまま。
彼は真実へと続く白い扉の前で、鮮血を撒きながら仮死状態へと陥った。


     ◇     ◇     ◇     ◇


『うっ……ぐっ……ここは……?』

次に目が覚めたとき、僕は夢の世界にいた。
身体中が軋みをあげるのにも関わらず、僕は辺りを見渡した。
そこには何もなかった。
ただ広大で広い空間の中に、僕が……『富竹』という存在だけが存在していた。

490 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:36:46 ID:UpfnjWgM
  

491 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:36:54 ID:x6M4ZGDf

「汝が新たに契約を望む者か」

そしてもう一人、背中に白い翼を生やした精悍な男が立っていた。
無感動な表情、そして色の灯らない瞳。
間違いない。彼が……彼こそが、この殺し合いの首謀者。僕は自然と彼を睨み付ける。

『貴方が……この殺し合いの黒幕か?』
「いかにも。我が名はディー……契約者の求めに答え、この地に降り立った者だ」
『どうして、こんなことを仕出かした……?』
「汝が知る必要はない。だが、我にとっては価値のあるものだ、とだけ答えておこう」

なんだ、この威圧感は。
背中の羽を除けば人と変わらないはずの風貌だが、自分が矮小に見えるほどの存在感を感じる。
天使、というのはこんな存在なのだろうか。
人ではない、と鷹野さんは言った。ならば目の前でディーと名乗った男は……天使か、それとも悪魔か。

「我が契約者から話を聞いている。汝は我が契約者の味方となった……間違いないか?」
『それは……間違いでは、ないけど』
「ならば、正しき契約を我と結べ。それが仮死状態である汝が生を掴む条件……ひいては、鈴凛という名の契約者を救う術だ」

厳かにディーは言う。
詳しい言葉は分からないけど、言いたい言葉はよく分かった。
今、僕は死にかけている。自分の命と鈴凛くんを救うためには契約をしろ、というらしい。

492 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:37:40 ID:UpfnjWgM
  

493 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:38:25 ID:x6M4ZGDf

『契約……とは、何のことなんだい?』
「我に全てを捧げる、と誓え。髪の毛一本から血の一滴に至るまで。魂までも我に捧げる、と」

ディーは説明し始める。
とは言っても口では説明しない。直接、僕の頭の中に知識を叩き込む。
そんな出鱈目な説明を受けながら、頭が割れるような痛みと共に理解していく。

それは絶対服従の証。
契約内容を履行しなければ、内側から弾け飛ぶという悲惨な映像が頭に叩き込まれた。

「もはや歯車は狂ったが……我はまだ、この戦いに価値があると考えている」

故に、と。


「汝は参加者たちの壁となれ。汝が味方になると言った契約者、鷹野三四に絶対服従せよ。
 我自身は汝の固体にも興味はないが、契約者の強い願いでな。

 その上で我は鑑賞し、検分する。
 我が子らが困難を前にして、まだ我を驚かせることができるかどうかを。
 あの魔法使いの言葉が何を意味するか、という些細な謎を。空蝉が生を拒んだ、その理由を」


ディーの言葉を聴いて、僕はただ苦悩する。
その契約を結んではいけない。
結んだ瞬間、僕は助けるべき人たちに牙を向けることになる。それが明白だからこそ。

だけど、それはつまり、鈴凛くんを見捨てるということだ。
冷静に考えれば参加者たちを救うために、これは断るべきなんだろう。
それは分かっている。十分に分かっている。どちらが最善の選択か、だなんて……そんなことは分かっている。

494 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:40:17 ID:UpfnjWgM
  

495 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:40:24 ID:x6M4ZGDf
だけど。

『誓えば、いいんだね』

契約で質に入れるのは『自分の命』だけだ。
そう考えれば、答えも出せる。
この契約を恐れるのは死ぬことが怖いから。死にたくないから、裏切らないというのなら。

「では、誓うか?」
『それで……いいのなら』

どれほどの闇があろうとも、過酷があろうとも。
このまま死ぬだけでは鷹野さんを止めることはできない。
なら、契約を結んででも生き長らえなければ。まだここで鈴凛くん共々、犬死するわけにはいかない。
 

「契約は交わされた」



     ◇     ◇     ◇     ◇



「ふふふふふふ……お帰りなさい」

次に僕が目覚めたとき、鷹野さんの顔が目の前にあった。
その瞳は狂気のそれでもなく、悪魔のような笑みでもなく……純粋に、その事実を喜んでいる子供のようだった。
まだ、そんな顔が出来たんだ。
鷹野さんの笑顔は僕が好きになった、あの微笑そのもので……だけど、それは一面に過ぎないと気づいた。

496 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:41:09 ID:UpfnjWgM
  

497 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:41:25 ID:x6M4ZGDf

「ああ、ただいま。……僕は鷹野さんに絶対服従、なんだってね」
「気にしなくていいわ。私も余程でなければ命令は下さない……簡単なことでジロウさんを失いたくないものね」
「それは、どうも」

鷹野さんの膝枕から起き上がる。
撃たれた脇腹は無傷のまま、何事もなかったかのように。どうやら治療されたらしい。
彼は人ならぬ存在だった、ということは対峙してすぐに分かっていたことだ。
それでも、仮死状態に陥っていた人間をここまで完璧に蘇生させるなんて。末恐ろしいなんてものじゃない。

「まずは情報を確認する必要があるわね。……ああ、それよりも武装を整えたほうがいいかしら?」
「鷹野さん、これで鈴凛くんは許してくれるんだね?」
「あらぁ、私に絶対服従したのに他の女の心配? 妬けるわねぇ、ふふふふふふ」

そんな会話をしながら、僕たちは管制室へと向かっていく。
参加者の生き残りの情報、電波塔防衛の失敗とこちらの戦力などを話しながら。
鈴凛くんについては、簡単な話だ。

「それはあの小娘しだいねぇ……私は赦したし、牢獄の鍵も開けたけど。出てこないように言ったわ」
「……鷹野さん、それはどういう」
「大丈夫よ、ジロウさん……貴方がいてくれれば小娘一匹なんてどうでもいいの。何なら、まだ牢獄にいるか確かめてみる?」

僕は黙って首を振った。
それは最初から鷹野さんと約束している案件だ。
もしも破れば僕がどういう行動に出るか、分からない鷹野さんじゃないはずだ。
変に僕を誤解させて、もしくは騙してまで鈴凛くんを害そうとはしないだろう。そう、自分を納得させた。

498 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:42:47 ID:UpfnjWgM
  

499 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:43:04 ID:x6M4ZGDf

もうすぐ管制室につく。
山狗の何名かが僕の姿を見て驚く。中には僕の拷問を担当した男もいた。
とりあえず苦笑いだけを返すと、慌てて敬礼して走り去っていく。そんな後姿を鷹野さんは笑っていた。

「鷹野さん……聞きたいんだ」

そんな鷹野さんを見て、僕は意を決した。
どうしてこんなことをするのか、まだ聞いていなかった。

「どうして、こんな殺し合いを望んだんだい? それとも強要されているのかい? あの、ディ―――」
「しっ! ダメよぉ、ジロウさん……あの人の名前を呼んじゃ。契約のことは他人に話したらお終いなんですもの」

割と慌てて、それでいて笑みはかろうじて崩さないように鷹野さんは言う。
誰が見ているか分からない場所で名前を言えば、何も知らない隊員に聞かれるかもしれない。
そんなことで死んでも堪らないので、僕は口を噤んだ。

「私はね。この殺し合いを遂行させることを条件に、ある願いを叶えてもらいたいの」
「願い……それは?」

聞くと、鷹野さんは笑った。
この一時間の間に色々な鷹野さんの笑顔を見てきた。
狂気に彩られた壮絶な笑みから、純粋に喜ぶ優しい微笑みまで……様々だった。

だけど。
この鷹野さんはそのどちらでもなかった。


500 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/12/29(土) 20:43:43 ID:UpfnjWgM
  

501 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:44:25 ID:x6M4ZGDf

「私と祖父をね、神にしてほしいの。永遠に名前を歴史に刻まれる存在にしてほしいの」


そんな夢を語る鷹野さんは。
ゾッとするほど高揚した笑みだった。まるで熱に浮かされる様な病的な微笑み。

様々な意味のこもった『ワライ』を僕はただ呆然と見つめていた。



【LeMU 地下三階『ドリット・シュトック』管制室/二日目 夜中】

【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に 祭】
【装備:不明(銃)】
【所持品:不明】
【状態:健康、軽い高揚感、契約中】
【思考・行動】
1:管制室で富竹と共に侵入者を迎え撃つ。
2:この祭を完全に遂行し、その報いに自分と祖父を神の座へと押し上げる。



【富竹ジロウ@ひぐらしのなく頃に 祭】
【装備:不明】
【所持品:不明】
【状態:健康、強い決意、契約中】
【思考・行動】
1:鷹野を止め、この殺し合いを終わらせる。

502 :ワライ ◆0Ni2nXIjdw :2007/12/29(土) 20:44:54 ID:x6M4ZGDf
2:時節が来るまでは鷹野に絶対服従。
3:鈴凛の身が心配。
4:参加者たちのことや、戦力のことなどを情報収集。


【備考】
※契約内容は『鷹野三四に絶対服従』です。



【???/二日目 夜中】

【ディー @うたわれるもの】
【状態:????】
【思考・行動】
基本思考:ゲームの終了を待つ
1:どんな形でゲームが終わるのかに興味。
2:ハクオロや魔法使いの言葉について、参加者たちの戦いを鑑賞する。


【備考】
※ディーは『HIMMEL』の扉の向こう側に待機しています。
※ディーとの契約について
 契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)





503 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:06:25 ID:Ij5guqKW
Scene1:7人が集う〜武・きぬ・瑞穂・アセリア・梨花・あゆ・沙羅〜

神社外周にて。
ことみの死を最後に終結した争いの後、瑞穂たちは神社に向かい武たちとの合流を果たし、
ここまでの過程で各々が得た情報を交換していた。

「ディー……それが黒幕の名前……」
「黒幕が神とはね……非常識にも限度ってのがあるんじゃないかね……。でも、今なら信じられるさ」
「そのディーが武さんときぬさんの前に姿を見せたということは、つまり……」
「主催者側もこの殺人ゲームが破綻しつつあることを認識しているということだろう」
「そういえば、ディーの奴言っていたっけ『歯車はもう狂っている』って」

きぬの言葉はその場にいた7人全員に鷹野の目的が頓挫しつつある事を認識させ、自分達の脅威は未だゲームに
乗っている川澄舞を除けば主催者のみである事を再認識させる。
互いの身に起こった出来事の非常識さや、黒幕が本物の神であることを一笑に付す者などだれもいない……。

さて、ここで彼らが合流するまでの経緯を簡単に記す。
電波塔の破壊後、あゆの誤解を始まりとして生じた争いは一ノ瀬ことみの死により終結したのは先に書いた通りである。
それから、暫らくの休憩をとった瑞穂、アセリア、梨花、あゆ、沙羅の5人はあゆと沙羅の乗ってきた車を使い
神社へ向かった武たちとの合流を目指すこととした。
最初は行き違いになる心配もあったがそれは杞憂に終わる。
車が当初の合流予定地点である山頂を抜けて神社近くまで来たとき、丁度徒歩で鉄塔への援護に向かおうと
していた武ときぬの姿を発見しそのまま合流となったからだ。

合流した7人は、互いの再会や電波塔の破壊と「桜」を枯らせることに成功した事を喜ぶよりも先に
それぞれことみ、智代という貴重な仲間を喪った事実を悲しんだ。
その後更にことみの残したメモを元に梨花と沙羅が武ときぬの首輪をそれぞれ解除
(あゆと沙羅の首輪は鉄塔前での休憩中に解除した)し現在に到るというわけだ。



504 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:07:01 ID:Ij5guqKW
それぞれが交換した情報はここに集った7人を驚かせるに十分だった。
武ときぬは、首輪の解除が成功した事をはじめとして、羽入の存在と封印の解除方法、主催者の本拠地への
移動方法、主催者も決して一枚岩ではないことに。
一方で瑞穂たちは、参加者の一人である月宮あゆがどこで手に入れたのか鉄塔でアセリアが戦ったものと同じ
人型兵器で武たちに挑んできたこと、「桜」の正体が朝倉純一の祖母であったこと、
鈴凛から聞いていた黒幕であるディーが武ときぬの前に姿を見せたことに驚かされた。

もっとも、これらの情報を前にして一番驚いていたのはそれらの事象に遭遇してこなかったあゆと沙羅だったのだが。

「それにしても、よくコイツを撃破できたものさ。アセリアですらこのデカブツを撃破するのに苦戦を強いられたのに」

遠巻きに見ていたアセリアとハウエンクアの駆るアヴ・カムゥの戦いを思い出しながら、あゆは神社の境内で仰向けに
倒れたままのアヴ・カムゥに近付きその装甲を軽く叩く。

「ああ、月宮がうっかりこれの弱点を口にしなければ智代の協力があっても多分撃破するのは難しかった」
「これに月宮の奴が乗っていたってことは、あいつ主催者と取引でもしやがったのかね?ま、私等を騙した上に
こんな代物持ち出してそれでも負けたって事は所詮あいつも糞虫だったってことかい……で、弱点ってどこなのさ?」
「脇腹だ。そこを攻撃すればこれの動きはひどく鈍くなる。それが分かったのは偶然だけどな」
「脇腹ねぇ……」

そこで武は一旦言葉を切り、話題を変える。

「これからどうする?もう禁止エリアを気にすることなく移動できる。鷹野たちの本拠地へ行く方法も分かった。あとはもう実行に移すだけだ」
「そうね。確かに武の言うとおりよ。私も出来ることならすぐにでも羽入の封印を解きたい。でもね……」

武の発言に対して梨花は言葉を返しながら瑞穂やアセリアの方を見る。
その様子を見て武も梨花が何を言わんとしているかすぐ察した。


505 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:07:29 ID:vK0hpafD


506 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:07:31 ID:Ij5guqKW
皆あまりにも酷く傷つき、疲弊している――

そう、ここまでの度重なる戦いでここに集った7人は肉体、精神共に疲労の限界に達しており、唯一きぬを
除けば大なり小なり体に傷を負っている。
制限の外れたキュレイによって常人より遥かに早いスピードで負傷が治癒しつつある武を例外とすれば、
全員の傷が癒えるにはそれなりの時間が必要なのは明らかであり、今すぐ主催者の本拠地へ乗り込んでもむざむざ全滅するのは明らかだった。

「そのことなんだけど」

どうしたものかと武が思った時、沙羅が口を開く。

「実はここまでの移動中に話し合って『合流したらホテルに向かう』って決めているの。あそこ休憩するにはうってつけの場所だから」
「ホテルか……。場所的には悪くないと思うが、こちらが休養している間に連中がホテルを包囲する可能性もあるんじゃないのか?」
「その可能性は低いと思うのよね」
「どういうことだ?」

武の疑問に沙羅はそのまま言葉を続ける。

「根拠は、電波塔が破壊され私達も首輪を解除したことで、鷹野たちがこっちの動きを把握する手段がなくなった上
こちらは本拠地への移動方法を知っていること。これが一つ目。
二つ目は主催も一枚岩じゃないこと。事実、首輪解除に必要な最後の状況を整えたのは主催者側の人間だったそうじゃない。
この段階で裏切り者が出たなら、鷹野がまだ『裏切り者』がいると考えるのが普通と思わない?」
「つまり、大人数で俺たちがどこいるか探すより内部の裏切り者を排除した上で本拠地の守りを固めるほうがいいということか……」
「こっちにすれば鷹野の本拠地に乗り込む以外道は残されてないわ。それなら守りを固める方が鷹野にとっても簡単だわ」

沙羅の言葉を聞いて武と梨花はうなずいてみせる。

「それに、あんなものを使ってまでして電波塔を守りきれなかったんだから、今頃連中は相当混乱しているはず。
こちらが休むぐらいの時間は稼げると思うけど違う?」

507 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:08:03 ID:Ij5guqKW

沙羅の視線の先には、もはや動かなくなったアヴ・カムゥの残骸があった。
武の話から、その操縦者が瑛理子の命を奪った月宮あゆであったことも彼女は知っている。
話によるとそのあゆの死体は武の眼前で消えてなくなってしまったそうだが、今の沙羅とってはどうでもいいことだった。

「そうだな。だけど、どうしてまたホテルなんだ?休養するならここで……」
「それについては私が説明させてもらうさ」

ホテルより神社の方が目指すべき廃坑に近いんじゃないかと言おうとした時、それは別方向からの声により遮られる。
武が振り返ると、そこには暫らく場を離れていたあゆときぬの姿があった。

二人は神社の敷地から智代の遺体を運んできたのだ。

「仲間を放って置くことはできないさ、ちゃんと埋葬してやらんとな……で、ホテル行きの件だがね。あそこは建物も広いし
休める場所も物も豊富にある。万一連中が攻めてきてもある程度は戦えるからな」
「確かにな……」
「それにさ倉成、あんたもその服なんとかした方がいいんじゃないかい?その格好で鷹野のもとへ乗り込んでもお笑いにしかならないよ」
「うっ(既に自覚していたとはいえ、改めて突っ込まれると……)」

あゆに自分の女装モードを指摘された武は思わずうめく。
同時に一緒にいた皆からも少しだけ笑みがこぼれた。

「それに……、あそこでないと出来ないこともあるからさ……」

皆が笑う中、自分達が乗ってきた車の方を見てあゆは呟く。
車の後部座席には自分の手で殺めたことみの遺体が置かれているのだ。

そもそも、ホテルに行くことを最初に言い出したのはあゆだった。
電波塔近くで休養後にことみを埋葬しようとした瑞穂たちに「どうせ埋葬するなら一ノ瀬の仲間と一緒に弔いたい」と申し出たのだ。
あゆにすれば半ば自己満足みたいなものだったが、それはすんなりと受け入れられ、結果としてことみの遺体は車で運ぶこととなったのである。


508 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:08:08 ID:BKCV33Qz
 

509 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:08:17 ID:vK0hpafD


510 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:08:36 ID:Ij5guqKW
「そうか、ならば行くか。ホテルに」
「ああ、時間が惜しいからな。もう行こうかね」
「あ、それならちょっと待っちくり!」

誰もが車に乗り込もうとした時、メンバーの中で唯一無傷であるきぬが声をあげた。

「カニ?どうしたのさ??」
「いっそのことここでパーッと皆の怪我治しちまおうぜ。実は丁度いいものがあるんだ。それに、瑞穂なんてホテルまで移動するもの辛そうじゃないか」

言われてみればそうだ。
情報交換のあと、横になっている瑞穂など歩くのがやっとという状態である。
ホテルまで車で移動するとはいえ体にかかる負担は少なくないはずだ。
それが治るというのならこれほどありがたいものもない。

「もしかして、魔法でも使うのかい?」

亜沙の魔法により傷を治癒された経験のあるあゆはきぬの言い方から彼女が何をするのか大方予想はついていた。

「そのとおり。そういう事でこれの出番。頼むぞ“献身”」

そう言って自分のディパックから取り出した槍を手にするきぬ。
純一の残してくれたボタンに宿る魔力のおかげで手にする槍の名前が永遠神剣第七位“献身”であること、そしてこの槍を通じて魔法が使えることも分かる。
だからこそ、今この魔法を使うときだと思う。

(純一、おばあさん……残してくれたこの魔力、皆のために使わせてうからな)

精神を集中し“献身”とボタンを手にする。そして――

「皆の傷を癒してくれ、『ハーベスト』!!」

きぬが魔法を唱えた直後、皆のいる「場」のマナが活性化されその傷を癒し、痛みを取り除いていていく。
桜による制限がなくなった事で傷が癒えるだけではなく肉体的な疲労も取り除かれつつあった。

511 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:09:01 ID:Ij5guqKW
その効果に対する反応も皆様々だった。

「これが回復魔法の力なんだ……」
「体から痛みが引いていく……、確かにこれはありがたいな」
「予想以上ね。これは驚きだわ」

初めて回復魔法を体験する沙羅、武、梨花はその効果を前に単純に驚き――

「時雨が魔法を使ったときは驚くばかりだったけどさ、改めてこうやって見ると便利なものさ」

あゆは魔法の効果よりも魔法そのものの便利さに感心し――

「アセリアさん、ありがとう。もう私は大丈夫みたいですから」
「ん……ミズホが起き上がれるようになってよかった……」

アセリアは瑞穂が上体を起こし、それまでとはうって変わって元気そうな表情を見せたことに安心していた――

きぬの回復魔法は、全員の傷の治療と疲労の回復にかかる時間を大きく短縮することに貢献した。
そうなると残るは本拠地へ乗り込む前の最後の準備である。
誰もがそれを察していたのだろう、程なくして全員が車に(すし詰めになりながらも)乗り込みホテルへ目指し出発していた。


512 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:09:20 ID:vK0hpafD


513 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:09:28 ID:mOr46SHu


514 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:10:06 ID:vK0hpafD


515 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:10:14 ID:Ij5guqKW
Scene2:探偵助手の視点〜沙羅、きぬ〜

あれからすぐ私たちはホテルに到着し、鷹野たちの本拠地へ乗り込む前の準備にとりかかった。
全員の役割は車の中で予め決めていたから全員が到着後すぐ動いてそれぞれ動いている。

武は地下のテナントエリアで着替えたあと、羽入という人が封印されているという廃坑の地図が写っているフィルムの現像に。
あゆと瑞穂と梨花はホテルの外でことみと智代、そしてあゆの仲間だった亜沙という人の埋葬を。
アセリアは同じく外で三人の護衛と見張りを。

そしてカニとこの私、白鐘沙羅はホテル1Fの一角――フロント事務所――で全員分の武器の配分と銃器のメンテをしているというわけ。
もっとも武器の配分はもっぱらカニがやっていて、私は銃器のメンテなんだけどね。

最初は全ての支給品を均等に分配しようかと思ったけど、時間がないからそれはやめて武器だけ出来るだけ全員へ行き渡るようにした。
一応どんなものがあるのか把握だけはしようと中身の確認だけはしているけどさ。

だけど、全員の所持品を見て改めて本当に色々なものが支給されていたのが分かった。
パワーショベルが入っているのを見つけたときはカニと二人そろってのけぞってしまったし(ディパックの外に出すことはしなかったけど)。
でも、今の私はそれよりもかなりの難題に直面していた。

(まいったな……)

そう、ここに来てわかったんだけどオートマチック銃の予備マガジンが少なすぎるのだ。
武の荷物に予備弾丸のセットがあったおかげで弾薬不足という問題からは解消されそうだったけど、それは言葉通り「弾丸」の形で入っていたのよね。
そりゃ中にはマガジンの形で入っていたものもあったけど殆どは銃弾だったし。

おかげで「弾はあってもマガジンがないから使えない」ということにもなりかねない。
とりあえず、本拠地へ突入する前に「マガジンは捨てずに回収して予備の弾丸を詰めるようにして欲しい」と皆へ伝えておこうと思う。

(それでも弾が無くなったら、敵の武器を奪うのが一番ね……。これも皆に言っておこう)


516 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:10:57 ID:Ij5guqKW
そこまで考えて、私は頭を切り替え車の中での武との会話を思い出す。

移動中、私は武の助手席に座っていたんだけど、その際に電波塔の近くで出会った主催者側の男から頼まれた伝言を武へ伝えた。

「レムリア遺跡で待つ」
「恐らく、全ての答えは17年前と同じ場所に……『HIMMEL』の先にある」

この言葉を。

その時、武の見せたひどく驚いた表情が忘れられない。
武はその後黙り込んでしまって私があの伝言がなんだったのかと聞いても「いずれ話す」と言って教えてくれなかった。

これは私の推理だけど、多分あの男は武の知り合い、それもかなり前からの。
きっと過去になんらかの因縁があるに違いないと思う。
武が黙り込んでしまったのは、きっと自分の知り合いが主催者側の人間だったからに違いない。

(だけど、あの言葉にどういう意味があったの?)

あの男の伝言にあった中で引っかかったいくつかの単語。

「レムリア遺跡」
「17年前と同じ場所」
「HIMMMEL」

これらが武とあの男にとって何か重要な意味を持つのは確か。
でも、武の過去を知らない私にはそれ以上の事はわからない。

私は、この殺し合いで知り合って今も仲間として行動している人の過去を自分から積極的に知ろうと思わなかった。
違う、そんなこと考える暇なんか無かったという方が正しい。
せいぜい圭一から鷹野の素性について聞いてみたぐらい。


517 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:11:15 ID:vK0hpafD


518 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:12:15 ID:Ij5guqKW
でも、ここに来て私は初めて武の過去というものを知りたいと感じた。
人の過去を詮索するのが良くないのはわかっている。
だけど、生きて帰れたら武に過去のことを聞いてみたいと思う。
あんな表情をするなんて、きっとそれだけのことが過去にあったんだろうし。

まぁ、別に知ってどうするというわけじゃないけど、一度湧いた疑問はスッキリさせたいというところかな。

「沙羅、ちょっといいかな?」

そんなことを考えているとカニが私に声をかけてきた。

「あ、何かな?」
「ボクの方は皆のディパックに武器をわけたんだけどさ、ボクにも銃の使い方教えてくれないかな?」
「うん、いいけどちょっと待って」

とりあえず武のことを考えるのをやめて私はカニに銃の使い方を教えることにした。
カニは銃について初心者みたいだから……。

そう考えた私は初心者でも扱いやすい銃であるショットガン――ベネリM3――を手に取った。

519 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:12:46 ID:Ij5guqKW
Scene3:Requiescat in Pace(安らかに眠れ)〜あゆ、瑞穂、梨花、アセリア、武〜

「こんなものかね」
「ええ、これなら二人とも一緒に埋葬できるわ」
「こっちも終わりましたよ」

沙羅がカニにベネリの使い方を教えていたころ、あゆは梨花と共にホテルの敷地の一角にことみと亜沙を埋葬する為の墓穴を掘っていた。
その横では戦闘でボロボロになった服から着替え終わった瑞穂がことみ、亜沙、智代の遺体へ施した死化粧をようやく終えていた。
更に少し離れたところではアセリアが“求め”を手に周囲を警戒している。

ちなみに、今のアセリアの“求め”を持つ反対側の腕にはことみの所持品だった熊のぬいぐるみが抱かれていたりする。

ホテルに到着後、あゆはまず亜沙の遺体がある4Fを目指した。
瑞穂や梨花はてっきりことみと智代を埋葬するものと思っていたのでその行動に疑問を持ったが、それはあゆが
亜沙の遺体を抱きかかえてホテルから出てくるのを見た時解消した。
そしてこの時なぜあゆがホテル向かうことにあれほど拘ったのかを理解したのだ。

(時雨、あの時最後の別れを告げたはずだったのに私は戻ってきちまったよ……でもさ、これでホントのホントに最後の別れさ)

そんなことを思いながらもあゆは、掘り終えた墓穴にことみと亜沙の遺体を墓穴へと納めていく。
智代の遺体は彼女の遺言を武から聞かされていたので、埋葬せずことみと亜沙の埋葬場所の隣に安置することにした。

(ようやく、心残りを清算できそうさ時雨。そして一ノ瀬……)

先に亜沙の遺体を納め、次にことみの遺体を墓穴へ運びながらあゆは二人の死に顔を交互に見る。
二人とも穏やかで、まるで眠るかのような死に顔。

亜沙は二度目にホテルへ立ち寄ったときに見たときと同じ表情で。
ことみは瑞穂に抱きしめられて逝った時と同じ顔のままで。
二人とも安らかな顔のまま。

520 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:13:01 ID:vK0hpafD


521 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:14:35 ID:Ij5guqKW
「一ノ瀬……私はようやく分かったよ……。お前が時雨と同じ人間だったって事にさ……」

ことみを撃った時の事を思い出しながらあゆは呟く。
忘れはしない、いや忘れてはいけないあの光景を脳裏に浮かべて。

「他人を思いやることができるタイプの人間だってこと。そして、仲間の為に命を張れる人間ってことを……
あの時もっと早くお前の優しさに気づいてたらさ、こんなことにならなかったって思うんだ……」

そう、二人ともそうだった。
亜沙もことみも最後の最後まで泣き言一つ口にせず、仲間のことを気遣っていた。

「お前は時雨と同じさ……二人は良く似ている……。心の底からそう思えるよ……」

だから、亜沙がことみの事を心配していたのだろう。
今はそう思える。

最後にことみの右手を握り、胸の上に組まれた亜沙の手の上に重ねてやった。

「二人とも仲良くな。私が言えた義理じゃないけどさ……」

そこまで言ってあゆは瑞穂と梨花の方に向く。




522 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:15:06 ID:Ij5guqKW
「ありがとうな。わざわざ時雨や坂上の分まで化粧をしてくれてさ」
「いいえ、お二人ともあゆさんにとっては大事な仲間だったのでしょう。それなら、なおさら放って置くことは出来ませんから」
「そうかい、済まないね。宮小路」

瑞穂の言葉にあゆは静かに笑ってみせる。
そして、再び墓穴に横たわる二人の方を見ながら呟く。

「でも、これで心残りを清算できたって気分さ」
「あゆさん……」
「私はさ、時雨の最後を看取ってやれなかったんだ。だから、できることなら弔ってやりたかった」

そう、決して忘れることの出来ない亜沙と交わした最後の会話。
命と引き換えに自分の傷を癒してくれた亜沙の優しさに対して自分は礼の一つも出来なかったとあゆは思う。

それだけならまだマシだったのかもしれない。

その後、自分の思い込みからことみと佐藤良美が手を結んで亜沙を殺したと誤解し、結果ことみを殺してしまった。

「時雨はな、途中で離れ離れになった一ノ瀬のことをずっと心配していたのさ。だからせめて同じ墓に入れてやりたいと思ってたんだ」
「その為にわざわざここで埋葬させて欲しいってあの時……」
「ああ、そういうこと。でも私は思うのさ、もっと早く一ノ瀬のこと信じてやっていればってね……」

どんなに後悔しても死者は還ってこない。
それは亜沙が死んだ時既に分かっていたこと。
だけど、自らの過ちでことみを死なせたあゆはそれでも後悔せずにはいられなかった。


523 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:15:37 ID:Ij5guqKW
だが、そこで今一度ことみが最後に残した言葉を思い出す。


『大空寺さんも……お願い。私の事はもう良いから……二度と同じ間違いを犯さないで。
 私の仲間を……傷付けないで』


あの言葉はことみの遺言。
そして自分もまたその言葉に約束してみせた。

ならば自分はことみの想いに応えなければならないとあゆは決意を新たにする。

「だからさ、私も二人と同じことをするよ。時雨が私を逃がしてくれた様に、一ノ瀬が古手をかばったみたいに命を張って皆を守るさ」
「あゆさん……」
「もっとも、二人と違って私は地獄行きだろうがね……」
「それは違うわ、あゆ」
「アユ、コトミはそんなこと望んでいない」

その呟きを遮ったのは梨花とこちらに戻ってきたアセリアだった。

「ことみがあなたと沙羅を許したのは生きて帰って欲しいと思ったからよ。こんな場所で死ぬ為じゃないわ」
「私も、リカと同じだから……アユがここで死んだらきっとコトミは悲しむ。だから、そんな風に考えないで欲しい……」
「古手……それにアセリア……」
「そう思ってくれることには感謝するわ。だからって死んだら元も子も無いじゃない。だから、安易に死ぬなんてことは考えないで」

梨花の言葉はあゆの心に響いた。
あの時、ことみは梨花をかばった結果あゆに撃たれて死んだのだから当然恨み言の一つも言いたい筈だろう。アセリアもきっと同じはずだ。


524 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:17:58 ID:Ij5guqKW
だが、彼女達もまたあゆを許した。
それは、ことみが生き残り自分達が死んだとしてもきっと同じ事をしただろうと思ったからに他ならない。

「悪ぃ……返す言葉がないさ」
「それに……あゆさんも同じように言いたいことはあるでしょうし」
「孝之のことかい?それはもう言うなや宮小路。あいつの事はもう済んだことさ」

思わず苦笑してあゆは瑞穂に向かって首を横に振る。
その様子を見て、瑞穂は車で神社へ移動する前に電波塔近くで交わした会話を思い出す。

あの戦いの後、休憩中に瑞穂はあゆへ自分が彼女の知人である鳴海孝之を殺した事実を告げた。
梨花の持っていたノートパソコンの「殺害者ランキング」を一通り見たあゆが瑞穂に事実を問いただしたとき、隠すことなく真実を告げたのだ。

あれだけの事が起きた後だったから、瑞穂がその気ならば「知らぬ存ぜぬ」の一点張りでも押し通すことも出来たのだが、あえてそうはしなかった。

この時、他の者は新たな遺恨が生まれるのではないかと思いその場に緊張が走ったが、意外なことにあゆは激昂する様子も見せずただ一言「ありがとうな」と言うにとどまった。
そしてこう続けたのだ。

「少し前の私ならさ、この場で宮小路を撃ち殺したかもしれない。でもな、一ノ瀬が命を張って守った仲間を守るって約束したんだ。
一ノ瀬との約束を破る気なんてないさ。それに、本当のことをつつみ隠さず言ってくれただけで私は十分満足だよ」

そう言ったあゆの表情は憑き物が落ちたような顔だった。
更にこう続けた。

「そんなことよりも私はあいつが二人も殺していたことの方がショックだったさ。あの糞虫が、人様に迷惑かけたままくたばりやがってさ……」

そんなあゆを見て瑞穂もまた彼女を許そうと思ったのだ……。



525 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:19:13 ID:Ij5guqKW
そうやってどれだけ仲間を、その思いを尊重し大切にしたかを再確認し、四人は埋葬を再開した。

ホテルの倉庫から持ってきたシャベルを使って足元から徐々に土を被せていく。
そして、二人の腰辺りまで土が被さったところであゆが手を止め「ちょっと待ってくれないかね」と言ったあと二人の遺体へと近づき何かを
手に取ったあと、その隣に横たわる智代の遺体へ近づいて同じように何かを手に取った。

暫らくして、あゆは三人の前に来ると手を差し出した。
その手の中には亜沙の黒いリボンとことみの髪留め、そして智代のヘアバンドがあった。

「せめて、魂だけでも連れて帰ってやろう。違うかい?」

あゆの言葉に思わず三人はうなずく。
そして、瑞穂と梨花はことみの髪留めを一つずつ手に取った。

「アセリアはいいのかい?」
「ん、私にはこれがあるからかまわない」

アセリアはそう言うと熊のぬいぐるみをあゆへ差し出して見せた。

「それなら、時雨のリボンは私が貰っておくよ。このヘアバンドは倉成に渡してやるかね」

あゆは亜沙の形見というべきリボンを強く握り締める。

(最後まで見守ってくれるよな、時雨……)

そう心の中で呟きながら。

最後に盛り土の上へ同じ敷地内から摘んできた花を置いて備え、四人で黙祷をささげてようやく弔いを終えた。

526 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:20:13 ID:Ij5guqKW
「なら、ホテルに戻るとしましょうか」
「そうするか。なら私は沙羅のところにも顔を出しにいくかね……それにしてもさ、宮小路……」
「なんですか、あゆさん?」
「いやさ、着替えたのはいいとしてその格好どうにかならなかったのかね?あー……、別にそういうのが趣味ならいいんだけどさ……」

ホテルに戻る途中、あゆは瑞穂の格好を見て吹き出しそうになるのをこらえながら言う。
もっとも、彼女が吹き出しそうになるのも無理は無い。

瑞穂が身に着けているのは思いっきり場違いで、おおよそこれから主催者の本拠地に乗り込むとは思えない――

527 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:21:20 ID:Ij5guqKW
そう、今の瑞穂の格好は「チャイナ服」姿なのである。
しかもご丁寧なことに赤い星のついた中国風の帽子まで被っているという完璧さだ。

「し、仕方がないじゃないですか。武さんから受け取ったディパックに入っていた服で一番最初に目に付いたのがこれだったんですから!」
「そう怒るなや、あんたみたいな美人なら何着ても似あうんだからさ」

なぜか、赤くなって反論する瑞穂の様子をみてあゆは笑って返す。

(瑞穂……完全にあゆにからかわれているのですよ。だから最初に言ったのです。ホテルの地下でマシな服を選ぶべきだったんじゃないかって)
(ミズホの格好、変……?)

一方、二人のやりとりを見ていた梨花はジト目で、アセリアはきょとんとした表情で見ていた。

「大体、あゆさんも埋葬している間は何も言わなかったじゃないですか、それを今になって……」
「まぁ、だからそう言うなって」

吹き出すのをこらえながらも瑞穂とのやり取りの中で、まともな服が欲しいと移動中の車内で言っていたもう一人の人物をあゆは思い出す。

(そういえば、倉成もここに来るまで女装していたな。はたしてまともな服がみつけられたのかね?)

そこまで思ってホテルの正面玄関をくぐり、ロビーに入っていく四人。

「今戻ったのか。意外と早かったんだな」

その時、武の声が聞こえて思わずそっちの方を振り向いた。

528 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:21:49 ID:DOuVti3r
   

529 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:21:51 ID:Ij5guqKW
「武さん、その服……」
「ああ、地下のテナントエリアで見つけたんだ。どうした?」

その格好――どう見ても、香港映画の主人公役である拳法家が来ているようなカンフー服――が目に入った瞬間。



「ぶわっははははははははっ!」
「「笑うなーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」


我慢の堤防が決壊し、あゆは思わず爆笑してしまった。

直後にゲンコツの音が二発ほど響いたのはいうまでも無い。





530 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:22:24 ID:DOuVti3r
    

531 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:22:30 ID:Ij5guqKW
Scene4:目指すもの、追うもの〜〜武・きぬ・瑞穂・アセリア・梨花・あゆ・沙羅・舞〜

闇夜の森を一台の車がライトも点けず走り続ける。
その車内にはホテルを発った7人が乗り込んでいた。

「廃坑の北口……確かに地図には無い秘密の入口だわ。そしてここから羽入の封印を解く『ある場所』へ行ける……」
「俺だって意外だった。まさか地図には記されてない場所からそんな所へ行けるとは。その写真のことを聞かなかったら反対側の南口に行っているところだったさ」

武が運転する車の助手席で引き伸ばされた写真――写っているのは、隠し入口であり参加者の地図には記されてない廃坑の北口を記した詳細図――を手にしながらつぶやくのは梨花である。
一方で運転席の武は、地図と写真を見比べながら進路方向の指示を出す梨花の言うままにハンドルを切っている。

あの後、ロビーに集結した7人はそれぞれが沙羅ときぬの手で武器が再分配されたディパックと何が入っているのかを記したメモを手にし、ホテルを出発した。
車の方も地下駐車場にあったもっとも大きいものを選んだため、ホテル到着時とはことなり全員が余裕を持って乗り込んでいる。

ちなみに、出発にあたって沙羅ときぬは車に少しだけ準備を施しておいた。
正面の窓ガラスを外し、万一の戦闘に備えてすぐ発砲できるようにした上、サンルーフ上に九七式自動砲を据え付けた(といってもロープで固定しただけだが)のだ。

その為、助手席の梨花は沙羅から渡されていたコルトパイソン――電波塔の戦闘後にめざとく見つけた沙羅が回収しておいた――をディパックから取り出して準備しており、
後部座席ではあゆが暗視ゴーグルを装備し、九七式自動砲のグリップを握りしめていつでも撃てる準備をしていた。

(妨害がないという事は、やはり沙羅の推理したとおり主催者側も混乱しているのか?どっちにしても今sの状況は好都合だ)

ここまで、自分達が妨害をまったく受けずにいることから武はアクセルをさらに踏み込む。
エンジンの回転音が大きくなりスピードが増していく。


532 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:22:54 ID:Ij5guqKW
(見つけた……)

だが、その動きを捉えているものがいた。

既にあちこちが返り血と己の血、そして泥土や草木の汁で汚れた隻眼の少女、川澄舞。

公園での戦いの後、博物館で休養を取った彼女は博物館で武器になるものを探し、更にその後廃坑を探索するべく森に入ったところだった。
未だに疲労が完全には抜け切らない中で、地図にある廃坑の入り口を目指していたとき此方へ向かってくる車の音を聞きその姿を認めたのだ。

(どこを目指すつもり……? 少なくとも廃坑の方じゃない)

もっとも、その車へ不用意に近づくような真似をする彼女ではない。
自分がどう対処するかは車がどこに向かうのか様子を伺ってからだ。

(北……?その方向に何がある?)

こっちに気づくことなく走り去った車はライトを点けてなかった為、具体的に誰が乗っているのかまでは分からなかったが、結構な人数が乗っていることまでは分かった。
あれだけの人数が固まって移動するということはそれだけのものがあるということだろう。

どうするか?
あの車を追うのか、それともこのまま廃坑を目指すか?

遠ざかっていく車を見送りながら舞の下した結論は前者だった。

(私は、あなた達とは違う道を行く……)

隠れていた茂みから立ち上がった舞はその足で地図上に記された廃坑の入口を目指し歩き出す

533 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:23:31 ID:DOuVti3r
    

534 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:24:05 ID:Ij5guqKW
一方、舞に発見されていたことも知らず目的地たる廃坑の北口近くに到着した七人は車を降り、
注意しなければ思わず素通りしそうな位置にあった入口から内部へ進入した。
各々が手に手にランタンや懐中電灯を持ち、警戒しつつ奥へ奥へと進む。
廃坑内は途中で複数の坑道に枝分かれしてしたが、この時は隠された入口の詳細図が写されたのと同じ
フィルム内にあった坑内の道筋を記した図面があったため目的の場所へたどり着くのにそう時間はかからなかった。

「ここね……」
「思いっきりそれらしいものもあるしね。あれ……」

沙羅が指差す方向に他の全員が注目する。
そこは、岩を削って作った祭壇のようなもので、その最上段は何かを置く為の台座状になっている。

「ああ、いかにもな感じだな。あそこへ『三種の神器』を置けばいいということか」
「ですね。その『三種の神器』というがアセリアさんの持っている『国崎最高ボタン』」
「俺の持つ『天使の人形』。そして……」
「この『オオアリクイのヌイグルミ』ってことさ」
「まるで子供向けのなぞなぞね。暗号の答えがこんなに単純なものだったなんて」
「でもさ、普通気が付かないものだろ?このぬいぐるみも人形もどう見たってハズレにしか見えないじゃん」
「あるいは、それが支給品にこれらのアイテムを加えた人間の意図かもしれない。あからさまに『脱出アイテムでござい』というモノじゃ主催者が排除してしまうから」
「……とりあえず、あの祭壇へこれらを置きましょう。羽入さんの封印を解く為にも」

ことのほか早く目的地にたどり着いた一同は封印解除を前にしてそれぞれの思った事を口に出していたが、
それは『国崎最高ボタン』をじーっと見つめながら今にもそれを押しはじめそうなアセリアの様子を見た瑞穂の一言で終わることとなる。

まず武が祭壇の台座左側に『天使の人形』を置き、次にあゆが台座右側へ『オオアリクイのヌイグルミ』を置く。
そして、瑞穂に促されたアセリアが名残惜しそうに『国崎最高ボタン』を台座の真ん中へと置いた。

535 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:24:56 ID:DOuVti3r
    

536 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:26:57 ID:Ij5guqKW
誰もが――特に梨花は――これで羽入の封印が解けたと考え、あるいはこれからまだ何か起こるのではないかと期待する。

だが、何も起こる気配がない……。

「もしかして三種の神器を置いた時点で封印は解けたんじゃないのか?」と誰もがそう考え、その場を離れようとしたときアセリアが祭壇の方へ近づいた。

「アセリアさん、こんなときに……」
「ん、最後にもう一度だけ」

アセリアの様子を見て瑞穂は少々あきれ気味になるもののこれで最後ならと止めようとはしない。
そんな瑞穂達を置いといて祭壇の台座前に来たアセリアは、国崎最高ボタンを「ぽちっ」と押す。

直後




537 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:27:04 ID:DOuVti3r
    

538 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:27:44 ID:Ij5guqKW


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という声が響き、初めてそれを聞く者は脱力あるいは苦笑する。

539 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:28:30 ID:DOuVti3r
    

540 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:28:46 ID:Ij5guqKW
だが、今回は今までと何かが違った。
あの声が終わったかと思うと、ボタンが輝き始めたのだ。

同時にズズズズズズ……と坑内に重い音が響く。

その音が止んだ後、だれも予想していなかったことが起きた。

なんと、「国崎最高ボタン」の名に引っ掛けた洒落のつもりか、祭壇の背後の壁が二つに裂けたかと思うとそこに更なる地下へ続く道が出来たのである。
国崎最高ボタンをはじめとする三種の神器全てが光り輝き、まるで彼等の進む道を指し示しているかのようにも見える。

「これって、封印が解けたってこと……?それにこの道って一体??」
「封印が解けたのは間違いないだろう、多分この道はその封印されているという羽入って人がいる場所に通じているんじゃないのか」
「おそらく、じゃなくてこの場合は確実じゃないのかね?ここまであからさまだと冗談にしか思えないがね」
「で、どうするのさ。このまま行くんだろみんな?」

新たな道はフィルムにあった坑道の図面にもない所謂「隠し通路」だった。
それも、この道が一直線に伸びているとすれば他のどのルートを通るよりも廃坑の最深部(最果てのことだ)にたどり着けるのは間違いない。

「蟹沢の言うとおり行くしかないみたいだな。いや、あたかもこの道が一番正しいと言わんばかりだ。皆はどうする?」

武の言葉に首を横に振る者は誰もいない。
そして七人は、誰が言い出すでもなく新たな坑道に向けて歩き出した。

「ん、ここは……思ったより広い」
「まるでこの時の為に用意されていたかのようですね」
「さっきの仕掛けといい、こうやって見るとまるでゲームのダンジョンね」
「なら、俺達はさしずめラスボスを倒しに行く勇者ってところか?」
「倉成の言うことは間違ってないかもしれないな。まったくふざけた仕掛けを施しやがって」

541 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:29:07 ID:DOuVti3r
    

542 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:29:23 ID:Ij5guqKW
新たな坑道は、それまでの岩肌がむき出しだったそれとはことなりある程度その形を整えたものになっていた。
漂う雰囲気も流れる空気もどこかしら別のものに思える。

そのことが坑道の最果てへと降りていく七人に「この道が最果てへの最短ルートだ」と確信させていた。

「だけど、ずいぶん長いな。とりあえず移動しながらそれぞれが皆に言っておきたいことを話しておくべきじゃないかと思うがどうだ?」
「あ、それなら私から言わせてもらえない?」

待ってましたとばかりに沙羅が口を開く。

「皆に渡した武器のことだけど、予めメモには目を通してくれてるわよね?」
「ああ、それぞれの武器と銃弾の数。あとは支給品についてだけどこれがどうかしたかね沙羅?」
「そのことだけど、実は銃については少し困ったことになっているのよ」
「もしかして、図書館で話していた『暴発の危険性』についてですか?」

手にしたメモを見ながら沙羅の言葉にあゆと瑞穂が返事する。

「暴発の危険性については大丈夫よ。ホテルにいるとき全部分解して総点検しているから。むしろ問題なのは弾の方なのよね」
「どうことだ沙羅?まさか弾数が足りないとか言うのか?」
「弾の数については皆に行き渡るように配分したわ。足りないかどうかは、主催者の本拠地にどれぐらいの戦力が集まっているか次第ね」
「なぁ、もったいつけずに言ってくれよ沙羅ー」
「とりあえず、かいつまんで言うとオートマチック銃の予備マガジンが圧倒的に不足しているの」
「なるほどな……」

それが何を示すのか武にはすぐわかったみたいだが、他のメンバーは今ひとつ良く分からない顔をしている。


543 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:29:56 ID:Ij5guqKW
「くわしく言うけど、リボルバーについては銃本体に弾を装填すればいいんだけど、オートマチックは予めカートリッジに弾を詰めておく必要があるから」
「つまり、予備がないと言う事は撃ち尽くしたらマガジンを抜いていちいち弾を込めていかなきゃならんということかね?」
「当たり……。とりあえず、オートマチック銃は弾を撃ちつくしてもマガジンは捨てないようにして欲しいの。できれば誰かが撃っている間に他の誰かが弾を込めるという役割分担ぐらいはできるといいだけどね……」
「わかった。そのことはちゃんと覚えておくことにするわ」
「それとこれは予想されることだけど、私達にこれだけの銃器を支給する主催者がこちら側より弱い武器を持っているとは思えないから早い段階で連中から武器弾薬を奪えるならどんどん分捕っておいて。
連中の武器庫や弾薬庫をおさえることができればいいんだけどね……私からはこれだけよ」
「なるほど、覚えておこう。 それなら次は俺から言わせて貰う」

続いて発言したのは発起人たる武だった。

「神社で俺達が、そして電波塔で瑞穂達が戦ったあのデカブツ――月宮は“アヴ・カムゥ”と言っていたけどな――は一見すると圧倒されそうだけど実は弱点があるんだ」
「それってどこなのさ武?ボクも近くで見たけど弱点なんてなさそうだったのに」
「大空寺には話してあるんだが、奴の弱点は脇腹なんだ。そこを攻撃すれば奴の動きは一気に鈍くなる。もっともそこまでが大変だけどな……」
「それなら、これが使えない?」

何かを思い出したのか、沙羅が自分のディパックからあるものを取り出す。
それは、小型のケース状の物体だった。

「これは?」
「私の首輪から爆薬を取り出したものよ。爆薬と信管を切り離すのに時間がかかって準備できたのはこれ一つだから一度切りしか使えないけど」
「それよかったらボクに譲ってくれないか?」
「いいけど扱いに気をつけてね。信管が外してあっても何の拍子で爆発するかわからないから」

沙羅から爆薬を受け取ったきぬは大丈夫だって、といいながらそれをディパックにしまいこんだ。
そんな二人のやりとりを見ながら武は神社での戦いを思い出す。


544 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:29:59 ID:DOuVti3r
    

545 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:30:23 ID:Ij5guqKW
(そういえばあの時は貴子の首輪を爆弾代わりにしたんだよな。もっともそのおかげで俺は月宮を倒すことができたんだ……)

そこまで考えて武は自分の右手首から貴子のリボンをほどき、隣を歩く瑞穂に手を差し出す。

「武さん、これは……」
「貴子のリボンだ。ずっと俺を守ってくれた。大事な形見だから、これからは瑞穂が持っていてくれ」
「貴子さん……」

リボンを受け取った瑞穂はそれを握り締め、目を閉じる。
その表情はようやく離れ離れになっていた大切な人とようやく、そしてあまりにも悲しい再会を果たしたという想いがにじみ出ていた。

「倉成、私もあんたに渡しておくよ」

瑞穂の様子を横目で見る武に後ろからあゆが声をかけたのはそのときだ。

「あゆ?何をだ?」
「こいつさ、坂上の形見」

あゆの手に握られていたのは智代のヘアバンド――

「坂上の最後、看取ってやったんだろ。あんたが持ってたらきっと喜んでくれるさ」
「わざわざすまないな……」

武も瑞穂がそうしたように、一度ヘアバンドを己の胸に抱くと、そのヘアバンドをディパックへと入れたのだった。

「ねぇ、坑道が途切れるわ……」
「ここが……終着点ってこと?」
「ん、階段もここで終わっている」

そうやっているうちに隠されていた坑道が終わり、周囲は再び岩盤をくりぬいた荒削りな状況に変わっていた。
そこは幾つかの横穴が一点に集中するかのような大広間みたいになっている。
真っ先に周囲を見渡す梨花。

546 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:30:37 ID:DOuVti3r
    

547 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:31:18 ID:Ij5guqKW
そして、その一角に彼女が探していた人が確かにいた。

「待っていたのです梨花。そして瑞穂、アセリア……。此処まで来てくれた皆さん……」
「羽入!封印が解けたのね!」
「もうボクは大丈夫、本当に助かったのです。梨花、心配をかけました」
「よかった……」

役場の一件で羽入が梨花にしか見えないことを知っている瑞穂やアセリアはともかく、H173から全快した武やあゆ、沙羅、きぬの目に羽入の姿は当然見えない為傍目には
梨花が夢遊病者のようにしか見えない。
だが、その場で瑞穂がすぐにフォローを入れたので全員すんなりと納得した。
もっともここにいる全員がこの島につれて来られてから非常識なものばかり見ていたこともすぐに納得した大きな理由かもしれない。

「再会を喜ぶのはあとよ。羽入、お願いすぐに私達を鷹野のいる本拠地に行く方法を教えて」
「もちろんです。すぐにボクが皆を移動させます。でも、実は問題がありまして……」
「それはどういうことなの羽入?もしかしてまだ何か必要なものでもあるということなの?」
「あぅあぅ……そうではないのです。実は、本拠地に移動させることはできますけど全員が同じ場所に到着するとは限らないのです」



548 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:31:37 ID:DOuVti3r
    

549 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:32:09 ID:Ij5guqKW
梨花を通じて全員に伝えられた羽入の言う「問題」とは以下のようなものだった。

ここにいる全員を鷹野のいる本拠地に移動させることはできる。
しかし、彼女の封印が解けたといえど本拠地を含めてこの島の支配者、絶対的上位者は黒幕たるディーである。
加えて休眠していたディーは現在目覚めているという事実。

このことが全員を本拠地を移動させる上で最大の障害となるのだ。
確かに羽入の力を以ってすれば本拠地への移動は可能だが、現在その本拠地は丁度ディーの力による防壁とでも言うべきものが本拠地には張り巡らされているような格好になっている……。

「本拠地へ行くことができても、向こうで全員がバラバラの場所へ到着することになりかねないのですね?」
「最悪そういうことになるわ……」

梨花のつぶやきに誰もが戸惑いの表情を浮かべる。

最悪、各個撃破されてそこで終わりということになれば、ここまでの努力は水泡に帰するのだから。
時間にして数分だが、重苦しい沈黙がその場を支配した。

当人たちにとってそれは数時間の長さにすら思えただろう。



だが、やがて最初の一人が声を挙げる――


550 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:32:19 ID:DOuVti3r
    

551 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:33:16 ID:Ij5guqKW
「それぐらいのこと、気にしないさ」

その沈黙を破ったのは、意外にもあゆだった。

「大体羽入ってのが言っていることだって確率論さ、それにこちらから乗り込まなくてもいずれは連中のほうからやってくるのは確実。ならこっちから乗り込んでやる……たとえ私一人でもな」

彼女の一言は、やはり彼女らしく乱暴なところがあったが、一方で他の全員に決意を促すだけの気迫というものがあった。

「あゆ、随分むちゃくちゃ言うものね。でも、そういうのって悪くないって思うよ」
「それならボクも行くぞ!ボクの隣にはいつだって純一やレオ達いてくれているんだ!ここで怖気付いてたまるかってんだよ!」

あゆの言葉に沙羅が、きぬが奮い立つようにして応える。
彼女達は強い絆で結ばれた仲である、そこに出会ってから今まで過ごした時間の長短は関係ない。

「私も同じ……きっとアルルゥが、アカネが、コトミが、そしてユートが見守ってくれる……それに今も皆が一緒にいる……だから、戦う」
「皆同じ意見みたいだな。そうさ、こんなところで諦められるか。俺だってここで諦めるつもりなど毛頭ないからな」
「羽入さん、私達を連れて行ってください」

結局のところ全員が同じ結論にたどり着いていたということだ。
仮にあゆがその沈黙を破らずとも他の誰かが同じ様に沈黙を破り、それに皆が続いたのは間違いない。

「私からもお願いするわ羽入。皆を鷹野のいる本拠地へ連れて行って」
「そこまで皆が言うならボクも覚悟を決めます。ならば、ボクの力で皆を本拠地へ連れて行きます。もちろんボクも一緒に」
「ありがとう、羽入」

そして、羽入は梨花を通じて皆に円陣を組むように言うと、その中心へと入りいよいよ本拠地へ移動するべく体勢に入った。

552 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:33:30 ID:DOuVti3r
    

553 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:33:52 ID:Ij5guqKW
「では、これより皆を本拠地に送る為の『道』を開きます。その場から動かないで精神を集中してください」

精神の集中は、できる限り心の乱れをなくす事で全員が同一の場所ないし極めて近い場所へと移動するための準備ともいえる。
もっともディーの力による妨害があるのは確実である以上どこまで効果があるか分からないが。

だが、全員にこれで本拠地へ乗り込むことができる、主催者を打倒しこのゲームにピリオドを打てるという希望が生まれているのも事実だった。

全員の精神の集中と羽入による力によってその場にいる全員の姿が徐々に地面へと吸い込まれるように沈んでいく。
だが、当の本人達は自分の体がどうなっているのか認識している様子がない。

しかし、ここにいる全員が大事なことを忘れていた。
いや、忘れていて当然だった。

最後のマーダーと言うべき川澄舞がこの場に出現する可能性を――

554 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:34:21 ID:DOuVti3r
    

555 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:34:21 ID:Ij5guqKW
Scene5:そして、そこから誰もいなくなった


(なぜここにいる!?)

その様子を見て一番驚いたのは恐らく彼女――川澄舞――であろう。

廃坑に進入後の彼女は、先に到着した7人と異なり廃坑の地図といったものを持ち合わせていなかった為に廃坑の最果てにたどり着くまで時間をかけすぎた。
それゆえ、博物館で休息して回復させた体力もかなり消耗した状態にある。

にもかかわらず彼女がここにたどり着けたのはひとえに倉田佐祐理への純粋な想い故。
それ以上のなんでもない。

あの男の言葉から、廃坑から本拠地に行けるというのは分かった。
だが、その廃坑の最深部にたどり着いたと思ったら先客がいたのには驚かされた。

よく見ると、先客にはなんども戦ったアセリアや自分を説得しようとした瑞穂の姿もあった。
それだけではない、自分が殺した少年と一緒にいた二人も自分相手に得意な得物で挑んできた少女も。
自分が致命傷を負わせたと思っていた少女がピンピンしているのには思わず驚愕のあまり声が出そうになったが。

つくづく縁があるものだと思ったりする。

そして、その一人が空に向かってしきりに話しかけているのが見えた。

556 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:35:01 ID:Ij5guqKW
(何を言っている……?ハニュウ……?……本拠地へ移動……?どうやって??)

坑道の一本の物陰に隠れてその様子を伺う舞。
言っている言葉の意味全てが分かるはずも無かったが、おそらくこれからあの場にいる人間が鷹野達のところに向かうのは間違いないように思えた。

(多分、今姿を見せても私を連れて行ってはくれない)

一瞬、ここで姿を見せて自分も連れて行って欲しいとお願いする自分の姿が浮かんだ。
だがそれはすぐに否定した。

自分が殺した人間の知り合いもいる以上彼がそれを諾とするはずはないだろう。
今の間だけ主催者に敵対すると言ったところで信じてはもらえまい。

要するに自分は恨みを買いすぎているということだ。

(それなら、移動する時を狙って飛び込むしかない……)

それが彼女の導き出した結論。

(ッ!……また……)

そこまで考えたとき、体を痛みが襲う。
被弾や刺され斬られてきたことによる痛みがここに来てぶり返しているのだ。
それは、満足な処置をせず応急処置で切り抜け、動き続けてきたことによる反動でもあった。


557 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:35:10 ID:DOuVti3r
    

558 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:35:53 ID:Ij5guqKW
だが、舞はそれでも痛みに顔をしかめながらディパックに手を突っ込む。
中から取り出したのは怪しげな錠剤の入った小瓶。

その瓶から錠剤を何粒か手のひらの上に取り出し嚥下する。

その場にじっとして話の聞き耳をたてているうちに痛みが徐々に引いていくのがわかった。
舞が口にした錠剤、それは博物館に陳列されていた展示物だった。

休息のあと、博物館にて自分の武器になるようなものはないかと館内を物色した舞だったが、武器になるようなものはなく不首尾になるかと思ったとき、
見つけたのが陳列ケースの中にあった何種類もの薬物――それも先ほど口にした鎮痛剤だけではなく、一種の興奮剤や強壮剤、筋肉増強剤に加えて果ては覚醒剤らしき代物――だったのだ。

そもそも、博物館に展示されていたのが『現代生物〜闘争と進化の歴史』などという催し物だ。
武器でなくても人間の闘争本能を煽る薬のようなものが展示されていてもおかしくはなく、そこにあったのはまさしく「そういうモノ」だったのだ。

つまり、舞は武器がなければとおおよそこれからの戦いで自分にとってプラスになるだろうと思われるものとしてそれらの薬物を手にしたのである。
今の舞は薬物により痛みを飛ばし、生み出した魔物が倒されることによる生命力の減少への精神的苦痛すら吹き飛ばして強引にブーストしている状態と言っても過言ではない。

使える武器は永遠神剣“存在”とハンドアックスという近接武器のみ。
これだけでどこまで戦えるか分からないし、薬物も使い続ければ耐性がついてしまいいずれは用を成さなくなるだろう。
だが、今はそれすらどうでもよくなりつつあった。

本拠地へ乗り込み、鷹野と相対する。
場合によっては他の参加者を皆殺しにすることも辞さない。

それだけの、僅かな時間のあいださえ体が保ってくれればいいのだから。

559 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:35:59 ID:DOuVti3r
    

560 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:36:14 ID:Ij5guqKW
そんな事を考えているうちに先客の様子がおかしいことに気づいた。
あの場にいる参加者が円陣を組んでいる以外特に変わったことは無いのに。

「――――違う!」

その様子をよく見て舞は驚いた。

あの場にいる七人の体が徐々に沈んでゆく――

まるで足下の地面に水がしみこむかのように――

(もしかして、あれが本拠地に移動する手段!?だったらすぐに!)

もしあれが鷹野達のいる本拠地への移動ならばここであの中に飛び込むしかない。

つまりは、完全な飛び入り、乱入の類だ。

先客が本当に本拠地へ移動するのかわからないがその可能性は高いだろう。

(飛び出すしかない――!)

ここからあの場所まで直線距離で10メートル有るかないか、そうしている間にもあの七人の移動が終わってしまうだろう。

だから、舞は次の瞬間駆け出し、そして

561 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:36:46 ID:Ij5guqKW
跳んでいた――


体の痛みを堪えて一気に跳躍し、七人の円陣の中心――より正確には羽入の丁度隣辺り――へと着地する。

果たして、それに気づいたものはいなかった。
いや、いたとしても彼女の動きに対して即座に反応できたものはいなかっただろう。

なぜなら、先にそこへたどり着いていた七人――正しくは羽入を含めた八人――は薄れ行く肉体と精神が本拠地への移動を開始していたのだから。

最後の最後、とんだ乱入者である舞すら巻き込んでその移動が完了する。

あとには誰もいないただの坑道が残るのみ。

だが、それは単に戦いの舞台が地上ではなくなるだけのことに過ぎない。

まだ戦いは終わらない……。

562 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:36:47 ID:DOuVti3r
    

563 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:37:26 ID:Ij5guqKW
【?-? 廃坑、最果て/二日目 深夜】

【対主催チーム】

【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-、IMI デザートイーグル 10/10+1】
【所持品1:IMI デザートイーグル の予備マガジン6本 デザートイーグルの予備弾(.357マグナム弾)185発、
      九十七式自動砲 弾数7/7 九十七式自動砲の予備弾(20ミリ弾)85発、コルトM1917(残り6/6発)、コルトM1917の予備弾(.45ACP弾)119発
      智代のヘアバンド@CLANNAD、装備品を記したメモ】
【所持品2:支給品一式x24、C120入りのアンプル×5と注射器@ひぐらしのなく頃に、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、
      大石のノート、情報を纏めた紙×9、ゴルフクラブ、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、バナナ(台湾産)(3房)】
【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』】
【所持品5:銃火器予備弾セット各100発(現在の内訳は別表参照)、 バナナ(フィリピン産)(5房)】
【所持品6:包丁、救急箱、エリーの人形@つよきす -Mighty Heart-、スクール水着@ひぐらしのなく頃に 祭、
      顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)、永遠神剣第六位冥加の鞘@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品7:多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)】
【所持品8:トランシーバー、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン】
【状態:体力全快状態、上半身カンフー服着用、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本方針:仲間と力を合わせ、ゲームを終わらせる
1:本拠地に突入し、鷹野とディーを倒す
2:伝言をした人物が誰なのか
3:自分で自分が許せるようになるまで、誰にも許されようとは思わない


【備考】
※制限が解かれたことにより雛見沢症候群は完治しました。
※永遠神剣第三位"時詠"は、黒く染まった『求め』の形状になっています。
※海の家のトロッコについて、知りました。
※ipodに隠されたメッセージについて、知りました。
※瑞穂達から電波塔での一連の出来事を聞きました。
※武器の配分をしました。

564 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:37:38 ID:DOuVti3r
    

565 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:38:03 ID:Ij5guqKW
※以下、予備弾セットとしてまとめて保管状態
麻酔銃(IMI ジェリコ941型)の注射器100本(注射器の中身は後続の書き手さん任せ)
FN ブローニング M1910の予備弾(.380ACP弾)100発
FN P90の予備マガジン(5.7ミリx28弾50発)3本→注、瑞穂の所持品との合計数。
ブラウニング M2“キャリバー.50” の予備弾(12.7mm×99弾50発)



【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:純一の第2ボタン、永遠神剣第七位"献身" S&W M37エアーウェイト弾数5/5】
【所持品1:S&W M37エアーウェイトの予備弾(.38スペシャル)84発、ベネリM3(7/7)、12ゲージショットシェル48発、
      トカレフTT33の予備マガジン(.30トカレフ)10本、トカレフTT33の予備弾(.30トカレフ)92発、
      コンバットナイフ、首輪から取り出した爆薬、タロットカード@Sister Princess、出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭、装備品を記したメモ】
【所持品2:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス 釘撃ち機(10/20)、トランシーバー】
【所持品3:食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)、ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【所持品4:可憐のロケット@Sister Princess、 朝倉音夢の制服、桜の花びら、コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品5:ライター】
【状態:強い決意、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出 、ただし乗っている相手はぶっ潰す。
1:本拠地へ突入し、鷹野達をぶっ潰す。
2:戦う決意。
3:純一の遺志を継ぐ
4:ゲームをぶっ潰す。
5:殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出


566 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:38:28 ID:DOuVti3r
    

567 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:38:47 ID:Ij5guqKW
【備考】
※純一の死を乗り越えました。
※純一の第2ボタンは桃色の光を放っており多少の魔力があるようです。
※武器の配分をしました。
※沙羅から銃器の使い方について教わりました
※所持品のトランシーバーは武のトランシーバーとセットです




【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:ワルサー P99 (16/16)、ミニウージー(25/25)】
【所持品1:ワルサーP99の予備マガジン(9ミリパラベラム弾16発入り)1 、ワルサーP99&ミニウージーの予備弾(9ミリパラベラム弾)171発、サバイバルナイフ、
      カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、双眼鏡、医薬品、装備品を記したメモ】
【所持品2:支給品一式×2、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE、往人の人形】
【所持品3:『バトル・ロワイアル』という題名の本、、映画館にあったメモ、家庭用工具セット、情報を纏めた紙×12、ロープ】
【状態:深い罪悪感、強い決意、若干の血の汚れ、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
0:本拠地へ突入し、主催者を倒す
1:仲間を守る
2:可能なら主催者側の武器庫、弾薬庫をおさえたい
3:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす
4:武の過去の出来事に少しだけ興味
【備考】
※きぬを完全に信頼。
※あゆを完全に信頼。
※武の復活を確認。
※フロッピーディスク二枚は破壊。地獄蝶々@つよきすは刀の部分だけ谷底の川に流されました。
 エスペリアの首輪、地獄蝶々の鞘はC-6に放置。


568 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:39:11 ID:DOuVti3r
    

569 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:39:11 ID:Ij5guqKW
【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10(6/6)、防弾チョッキ 生理用品、洋服】
【所持品1:支給品一式x9、S&W M10の予備弾(.38スペシャル)95発、ベレッタ M93R(10/20+1)、ベレッタ M93Rの予備マガジン(9ミリパラベラム弾20発)5本、
      ベレッタ M93Rの予備弾丸(9ミリパラベラム弾)47発、斧、暗視ゴーグル、亜沙のリボン@SHUFFLE! ON THE STAGE、装備品を記したメモ】
【所持品2:ヘルメット、ツルハシ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄 虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-】
【所持品3:ホテル最上階の客室キー(全室分) ライター 懐中電灯、食料(パン等食べやすいもの)、大型レンチ】
【所持品4:ビニール傘、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル、i-pod、 分解された衛の首輪(NO.35)、情報を纏めた紙】
【所持品5:ローラースケート@Sister Princess、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:深い罪悪感、強固な意志】
【思考・行動】
行動方針:殺し合いに乗るつもりは無い。
1−1:主催者の本拠地に乗り込み、叩き潰す。
1−2:何があっても、ことみの仲間達(瑞穂、梨花、アセリア)を守り切る
2:殺し合いを強制させた鷹野を殺す
3:甘い人間を助けたい
4:川澄舞に対する憎しみ
【備考】
※支給品一式はランタンが欠品 。
※きぬを完全に信頼。
※沙羅を完全に信頼。
※瑞穂から孝之の件について知らされました(瑞穂のことは許す気でいます)。


570 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:39:47 ID:DOuVti3r
    

571 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:40:08 ID:Ij5guqKW
【アセリア@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式、カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、投げナイフ5本、鉄串(短)x1、鉄パイプ、フック付きワイヤーロープ(5メートル型)
     高嶺悠人の首輪、、クマのぬいぐるみ@CLANNAD、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、情報を纏めた紙×2、装備品を記したメモ】
【状態:魔力回復途中、左肩と右わき腹の鎧の該当部位損失、右耳損失(止血済み、回復魔法により痛みなし)、首輪解除済み、「求め」と契約】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない、仲間を守る
0:主催者の本拠地に向かい、主催者を倒す
1:ミズホとリカを守る
2:無闇に人を殺さない(殺し合いに乗った襲撃者は殺す)
3:存在を探す
4:鈴凛を助けたい
5:川澄舞を強く警戒
6:沙羅とあゆに対する複雑な思いと信頼
7:瑞穂に対する罪悪感
【備考】
※アセリアがオーラフォトンを操れたのは、「求め」の力によるものです
※制限の低下によって、「求め」と契約しました。 これにより全体的に能力が上昇しています。
※神剣との同調率は多少回復しましたが、マナが無い所為でスキルは使えませんし、身体能力も強化不可能です
※オーラフォトンブレイクについて
 「世界」のサポートスキル、広範囲に破壊を巻き起こし、相手の行動を封じる力を持つ。
※永遠神剣第二位「世界」について
 「求め」が、「誓い」のマナを吸収したことによって、本来の「世界」へと変化しました。
 しかし、覚醒直後に大量のマナを消費した事と、僅かに残っていた制限が加わって、現在は「求め」の姿に戻っています。
 それに伴い、「世界」の一部である青い刃が六本、アヴ・カムゥの残骸の傍に刺さっています。
 再び接触した際に変化が起こるかは不明です。
※制限がなくなったことで魔力が制限前より早い速度で回復しつつあります
※ことみを埋葬したことであゆや沙羅のことは信頼しつつあります


572 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:40:14 ID:DOuVti3r
    

573 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:40:32 ID:Ij5guqKW
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、チャイナ服、中国帽、豊胸パットx2、貴子のリボン、ことみの髪留め@CLANNAD】
【所持品1:支給品一式×9、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、ベレッタM92Fの予備弾(9ミリパラベラム弾)277発、
      S&W M36(5/5)、S&W M36の予備弾(.38スペシャル)98発、フック付きワイヤーロープ(10メートル型)、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、
      レザーソー、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2〜3割ほど完成)、情報を纏めた紙、装備品を記したメモ】
【所持品2:洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数、バニラアイス@Kanon(残り6/10)、電話帳】
【所持品3:竹刀、懐中電灯】
【所持品4:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)】
【所持品5:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品6:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】
【状態:強い決意、首輪解除済み】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0:本拠地に乗り込み、主催者を倒す
1:アセリアと梨花を守る
2:鈴凛を助けたい
3:川澄舞を警戒
4:沙羅とあゆに対する複雑な思いと信頼
【備考】
※アセリアと梨花に性別のことがバレました。
※他の参加者にどうするかはお任せします。
※この島が人工島かもしれない事を知りました。
※ことみを埋葬したことであゆや沙羅のことは信頼しつつあります
※バーベナ学園の制服からチャイナ服&中国帽に着替えました

574 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:40:41 ID:DOuVti3r
    

575 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:41:15 ID:Ij5guqKW
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、クロスボウ(ボルト残30/30)、ヒムカミの指輪(残り0回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄、ことみの髪留め@CLANNAD】
【所持品1:Mk.22(8/8)、予備マガジン(9ミリパラベラム弾8発)、Mk.22の予備弾(9ミリパラベラム弾)142発、
      コルトパイソン(.357マグナム弾6/6)、コルトパイソンの予備弾(.357マグナム弾)196発、トウカの刀@うたわれるもの、装備品を記したメモ】
【所持品2:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの、富竹のカメラのフィルムを現像した廃坑関係の写真複数】
【所持品3:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、
     ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、首輪の解除手順に記したメモ、
     食料品、ドライバーやペンチなどの工具、治療用具一式、他百貨店で見つけたもの 、首輪探知レーダー(現在使用不能)、車の鍵】
【状態:強い決意、首輪解除済み】
【思考・行動】
基本:潤と風子、ことみの願いを継ぐ。
0:本拠地に乗り込み、鷹野を倒す
1:瑞穂とアセリアを守る
2:鈴凛を助けたい
3:沙羅とあゆに対する複雑な思いと信頼
【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※梨花の服は風子の血で染まっています
※レーダーは現在電池切れ、 電池(単二)が何本必要かなどは後続の書き手に任せます
※ノートパソコンの微粒電磁波装置や現在地検索機能、レーダーは使用不可能(電波塔の半壊が原因)
※ノートパソコンの『殺害者ランキング』は、鷹野によって情報を改竄されました
※ことみを埋葬したことであゆや沙羅のことは信頼しつつあります


576 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/05(土) 21:41:28 ID:DOuVti3r
    

577 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:41:50 ID:Ij5guqKW
【ここまでの7人共通の情報】
1:アヴ・カムゥの弱点が脇腹であり、ここを攻撃するとアヴ・カムゥの動きが鈍重になること。アヴ・カムゥの武器が剣とかぎ爪、その巨体であること(武の情報)。
2:オートマチック銃については弾があるけど予備マガジンが足りないから極力空のマガジンは捨てずに回収して使って欲しい。また、主催者側が強力な武器を持っていたら奪い取って使うようにしたほうがいい(沙羅の情報)。
3:沙羅が書いた「装備品を記したメモ」によってそれぞれが何を持っているのか互いに把握。(道具を互いが融通しあうことも可能です)



【羽入@ひぐらしのなく頃に 祭】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:封印解除】
【思考・行動】
1:皆を主催者の本拠地へと連れて行く。
2:本拠地到着後は梨花と行動を共にする。
【備考】
※『大神への道』の3つの道具を集めて、廃鉱の最果てに持っていく事で羽入がLeMUへの道を開きます。
※ディーの力の影響を受けているため、雛見沢症候群の感染者ではなくても契約者ならば姿を見る事が出来ます。


578 :We Survive ◆/P.KoBaieg :2008/01/05(土) 21:42:33 ID:Ij5guqKW
【牢獄の剣士】

【川澄舞@Kanon】
【装備:永遠神剣第七位"存在"@永遠のアセリア−この大地の果てで−、学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾0)、ハンドアックス(長さは40cmほど)、
     草刈り鎌、ニューナンブM60(.38スペシャル弾0/5)、美凪のハンカチ、博物館の展示品だった各種薬物】
【状態:決意、疲労度中、右目喪失(止血済み)、肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。鎮痛剤で現在痛み無し)、
    太腿に切り傷(止血済。鎮痛剤で現在痛み無し)、脇腹に被弾、"痣"の浸食(現在身体の40%)、魔力残量25%、鎮痛剤服用】
【思考・行動】
基本方針:鷹野の本拠地へと移動する。 。
1:このまま鷹野の本距離に向かう。
2:佐祐理を救う算段が立つまでの間、主催者を敵と見なして戦う。
3:他の参加者と協力する気はないし、襲ってくるなら応戦する。
4:鷹野と直接会うまでは、説得に応じない。


【備考】
※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。舞は神剣の力を使用可能。
 アイスバニッシャー…氷の牢獄を展開させ、相手を数秒間閉じ込める。人が対象ならさらに短くなる。
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。
 他のスキルの運用については不明。
※永遠神剣の反応を探る範囲はネリネより大分狭いです。同じエリアにいればもしかしたら、程度。
※<<魔物>>
 制限によって禁止されていた魔物を生み出す力が、枯れない桜の力の減少によって使用可能になっています。
 呼び出す対価として魔物がやられる度に舞は生命力を失います。
※博物館で入手した薬物は複数の種類があります(内一種類は鎮痛剤。他は次の書き手さん任せ)
※鎮痛剤の服用によって痛みが和らいでます。
※他の薬物を同時に服用した場合の効果、副作用、効き目が切れたときの反動は次の書き手さん任せ 


579 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:01:49 ID:2TZPJ+3e
「此処が……LeMU?」

ピンク色の可憐な唇から、女性のような声が紡ぎ出される。
中国風の服装を身に纏い、澄んだ瞳で周囲を見渡す者の名は、宮小路瑞穂。

意識が戻った時にはもう、鷹野達の本拠地『LeMU』内部に飛ばされていた。
四方を壁に囲まれた細長い通路は、黄泉へと通じる道のようにも見える。
未だ敵の姿は見受けられないが、遠くから時折聞こえてくる銃声が、何処かで争いが起こっている事を証明している。
今自分が居る場所は間違い無く決戦の地であり、後数時間もしない内に全ての決着が付くだろう。
瑞穂は自身の手首へと視線を移し、巻かれているリボンにそっと手を添えた。

「貴子さん……僕は…………」

彼女の笑顔が好きだった、彼女の仕草一つ一つが好きだった、彼女の何もかもが好きだった。
一生を賭けて愛すると誓った女性――厳島貴子。
愛しくて、守りたくて、だけど気付いた時には何もかもが手遅れだった。
一時的に別行動を取った事が仇となって、彼女は二度と帰らぬ人になってしまったのだ。

「僕は貴子さんを守れなかった……。僕は貴子さんの意思を穢してしまった……。
 でも、何よりも大切な事に気付けたから――」

貴子を守れなかった自分は、鷹野三四の甘言に惑わされて悪鬼と化してしまった。
自分勝手な感情に流されて、決して貴子が望まぬであろう修羅の道を歩んでしまったのだ。
だけど、もう絶対に過ちは犯さない。
自分がこの島で生きて来れたのは、貴子を失っても尚立ち上がれたのは、誰のお陰か。

「アルルゥちゃん、茜さん、ことみさん……貴女達の分も、僕は戦い抜いて見せます。
 アセリアさん……梨花さん……皆、絶対に生きて帰りましょうね」


580 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:02:59 ID:NI9T72YZ
    

581 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:03:06 ID:elQKa5cY
 

582 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:05:31 ID:EvmZ9fQr


583 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:05:49 ID:elQKa5cY
 

584 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:09:19 ID:2TZPJ+3e
そう呟いたのを最後に、鏑木瑞穂は思考を中断して、エルダー・シスター宮小路瑞穂として歩き始めた。
今の所敵と遭遇してはいないが、決して油断は出来ない。
此処は敵の本拠地であり、自分にとっては正真正銘の死地なのだ。
安易に集中力を絶やしてしまえば、それが即座に死へと直結する。
散っていった仲間達の想いを背負う自分が、そのような無様を晒す訳にはいかない。

何時でもベレッタM92Fを撃ち放てるような姿勢のまま、瑞穂は注意深く辺りを観察する。
慎重に慎重を期して進んでゆくと、やがて右手に一つの扉が見えた。

「これは……倉庫?」

扉の上部には、『倉庫』と書かれたプレートが備え付けられている。
本来ならば、此処は瑞穂にとって関係の無い場所。
鈴凛から得られた情報によると、敵の重要施設は地下三階に揃っている筈。
今自分が何階に居るかは分からないが、普通に考えればまずは階段を探してみるべきだろう。
しかし沙羅の云っていた言葉が、頭の何処かで引っ掛かっていた。

――『連中の武器庫や弾薬庫をおさえることができればいいんだけどね……』

自分や仲間達は、こと弾薬に関して余裕のある状況では無い。
出来れば決戦を行う前に、強力な装備や弾薬を揃えておきたい所。
そして倉庫ならば、武器が置いてある可能性も十分考えられるのでは無いか。
そう判断した瑞穂は、扉を開けて倉庫の中へと侵入していった。

「思っていたよりもずっと広いわね……。使える物が有れば良いのだけれど」

倉庫は大きさにして縦三十メートル、横二十メートルと云った所だろうか。
そこら中に金属製のコンテナが散乱しており、天井では幾つかの蛍光灯が煌いている。
素早い足取りで、倉庫の中を一周程してみたが、目ぼしいモノは何も見付からなかった。
こうしてる間にも仲間達は戦っているだろうし、余り悠長にしていられる時間は無い。
瑞穂は倉庫を出る前に、もう一度だけ全体を見渡そうとして――そこで、後ろから扉の開く音が聞こえて来た。

585 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:10:59 ID:NI9T72YZ
    

586 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:11:06 ID:2TZPJ+3e
「――そこまでよ。此処から先は行かせない」
「…………ッ!?」

心臓が激しく跳ね上がり、全身へと血潮を巡らせる。
瑞穂が驚愕と共に振り返ると、扉の前に白衣の女性が屹立していた。
すらりと整った顔立ちに、長い髪を靡かせた女性は、極めて知的な雰囲気を纏っている。
パッと見た感じ、年齢的には自分より少し上と云った所だろうか。

「貴女は…………優さん?」

ぼそりと、瑞穂が呟いた。
直接の面識こそ無いものの、外見的特徴から判断するに、恐らくはそれで正解の筈だった。
優は表情一つ変えぬまま、静かに首を縦へと振った。

「……私の事を知っているのね、宮小路瑞穂さん。鈴凛から聞いたのかしら?」
「ええ、鈴凛さんから色々なお話を聞かせて頂きました。
 貴女が鷹野三四に協力しているという事も――そして本当はこの殺し合いの所為で、酷く心を痛めているという事も」

瑞穂がそう云うと、優の眉が僅かながら持ち上げられた。
田中優美清春香菜――此度の殺人遊戯に深く関わっている、極めて優秀な科学者。
今は鷹野側の人間であるものの、鈴凛から聞いた話によれば、説得の余地があるという事だった。
故に瑞穂はいきなり武器を向けたりせずに、まずは説得を試みる。

「単刀直入に云います。優さん……私達に協力して頂けませんか?」
「……私は間違いを犯した人間なのよ。私が鷹野に協力しなければ、犠牲者はもっと少数で済んだかも知れない。
 そんな私の事を許して、仲間に迎え入れようって云うの?」


587 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:12:23 ID:NI9T72YZ
    

588 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:12:27 ID:2TZPJ+3e
答える優の言葉は冷静を装ったものだが、その奥底には悲痛な響きが確かに存在していた。
それも無理は無いだろう。
此度の殺人遊戯では、もう余りにも多くの人間が命を落としてしまった。
その中には、優の仲間であった小町つぐみも含まれているのだ。
優が犯してしまった罪は、間違い無く許されざる大罪。
しかし瑞穂は悩む素振りすらも見せず、揺るぎ無い視線を優へと向けた。

「……私自身、嘗て間違いを犯してしまった人間です。
 それでも私が今此処に居るのは、間違いを犯してしまっても、きっとやり直せると信じているからです」

嘗て倉成武が口にした台詞と、ほぼ同意義の言葉。
過程こそ違えども、道を踏み外した事があるのは瑞穂も同じ。
だけど――間違ったならやり直せばいい。
罪を犯したのならば、償えば良い。
それが武と瑞穂に共通した信念だった。

「過去の遺恨に囚われていても、誰も救われません。今こそ皆で手を取り合って、この悲しい戦いを終わらせましょう」

差し伸べられた手。
それは優にとって、余りにも魅惑的な提案であったに違いない。
武や他の参加者達と協力して戦えれば、どんなに良い事か。
自分の罪を少しずつでも償ってゆければ、どんなに心が救われる事か。
けれど――優はゆっくりと首を横に振った。

「悪いけど、貴女の提案には乗れないわ。私が置かれている立場は、貴方のソレと大きく異なるのだから」
「……どういう事ですか?」

明確な否定の言葉に、瑞穂が訝しげな表情を浮かべる。
優の凍り付いた眼差しが、一直線に瑞穂を射抜いた。


589 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:13:07 ID:NI9T72YZ


590 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:14:40 ID:2TZPJ+3e
「貴方が褒美目当てで一度殺し合いに乗ったように、私も自分の目的を果たす為、鷹野と取引を行っているのよ。
 この殺し合いに、私の仲間達――倉成やつぐみが参加させられているにも関わらずね」
「――――ッ!?」

瑞穂の目が、驚愕に大きく見開かれた。
ようやく、全ての糸が繋がった。
優は倉成武の旧友である筈だし、鈴凛に僅かながら助力してくれた事もあるらしい。
そんな彼女が敵に回ったのは、鷹野の手によるものだったのだ。
優は呆然とする瑞穂の様子に構う事無く、次々と言葉を並べ連ねてゆく。

「最初はね、私だって一生懸命皆を救おうとしたわ。自分の命を引き換えにしてでも、大切な仲間達を守ろうとしたわ。
 でも駄目だった。どれだけ抵抗しても、どれだけ懇願しても、鷹野はまるで聞き入れてくれなかった。
 だから、一番大切なモノ――娘以外の命を切り捨てた。鷹野に協力するのを条件として、娘の安全だけは保障して貰ったの」

優を縛っているのは、鷹野と交わした最悪の取引。
逃れられない破滅ならば、せめて一番大事なものだけでも護りたい。
優は最愛の娘を守る為に、自ら悪魔の役割を買って出たのだ。

「もし私が妙な行動を取れば、娘の身にまで危害が及ぶ……。だから私情を捨てて、鷹野の手となり足となり働き続けたわ。
 犠牲になった人々の嘆きになんて、一切耳を貸さずにね。嘗ての仲間が殺される瞬間ですら、何も行動を起こさなかった」
「…………」

瑞穂は言葉を失ったまま、優の話に聞き入っている。
今瑞穂が耳にしているのは、娘の為に全てを捧げた女性の悲痛な独白だ。
下手な言葉など、挟める筈も無い。

「どれだけ恨まれようとも、私は決して自分の道を曲げない。
 全てを失ってしまった貴方と違って、私には未だ守るべき物が残されているのだから」

591 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:14:47 ID:NI9T72YZ


592 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 18:16:23 ID:2TZPJ+3e
許しも要らない。
理解も要らない。
娘さえ無事で居てくれれば、他には何も求めない。
娘を守りたいという絶対の意思が、優を悪魔へと変貌させる。
優は鞄へと手を伸ばし、右手にS&W M500を、左手にベレッタM1951を握り締めた。
白衣を纏いし科学者の瞳に、凄まじいまでの殺気が宿る。

「お喋りが過ぎたわね。私は侵入者を排除しなければいけないし、貴方は私達を倒さなければいけない。
 お互い悠長にしている時間なんて無い筈よ――始めましょう」
「……分かりました」

優がそう告げると、瑞穂は直ぐにベレッタM92Fを構えた。
何を始めるのか、とは聞かない。
そんなモノ、わざわざ尋ねるまでも無い。
相容れぬ目的を持つ者同士が戦場で対峙した際、やるべき事など一つしか存在しない。

「優さん……貴女は一番大切なモノを守る為に、嘗ての仲間を切り捨てたと云いましたね。
 だったら私は、絶対に貴女を認めない。嘗て同じ間違いを犯した私だからこそ、認める訳にはいかない」

厳島貴子の為に理想を棄てるか、仲間達の想いに応えるか。
想像を絶する程の苦悩の末に瑞穂が選び取ったのは、仲間と手を取り合って生きてゆく道。
だからこそ瑞穂には、今の優を認める事など出来なかった。

恋人を生き返らせる為に一度は悪魔と化した、宮小路瑞穂。
娘を守る為に仲間すらも切り捨てた悪魔、田中優美清春香菜。
静まり返った倉庫の中で、二人の悪魔が睨み合う。
そして――先手を打ったのは優の方だった。

593 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:16:33 ID:h4fM8hXg
 


594 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:17:51 ID:NI9T72YZ


595 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:18:01 ID:h4fM8hXg



596 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:18:30 ID:h4fM8hXg



597 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:35:22 ID:lK7RPEp2


598 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 18:44:54 ID:EvmZ9fQr


599 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 19:16:52 ID:SRC/LO52
   

600 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 19:19:00 ID:jXpoWziq


601 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 19:19:17 ID:2TZPJ+3e
 

602 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 19:23:34 ID:EvmZ9fQr


603 : ◆guAWf4RW62 :2008/01/14(月) 19:24:52 ID:2TZPJ+3e
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1190239941/l50
こちらで自分の作品が投下完了して、現在はTF氏が作品投下中です

604 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/01/14(月) 21:21:25 ID:1LwiQ/hj
気が付けば、目の前には見たことの無い風景があった。

鉄製というわけでもなさそうだけど、鈍い色を放つ壁。
…木でもコンクリートでもなさそう
何個も存在する大きなテレビ……モニター?
…よく解らない映像が映し出されている
壁に直接付けられている机と椅子。
その上の、用途の解らない様々な……多分、機械。
…あのパソコンに似た代物なのかしら

全てが、私にとって不可解な物質で占められた空間。
ここが、
ここに…
「鷹野達が……いるの?」
「そう、なんかね?」
答えた声は、あゆのものだ。
声のした方向を向いて、私は漸く、他のみんなの姿が無い事に気が付いた。

「……どうやら、逸れちまったみたいさね」
辺りを見回しながら、あゆが答える。
ここは…何らかの部屋の中だ。
大体、教室の倍程度の広さ。
見回してみても、他に人影は無い。
他のみんなの姿も、敵の姿さえも無い。

605 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:22:50 ID:2TZPJ+3e
 

606 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:23:21 ID:elQKa5cY
 

607 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:23:25 ID:b4CFCifK
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608 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:23:54 ID:b4CFCifK
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609 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:23:59 ID:2EIg9RKv
.

610 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 21:24:23 ID:94f92ois


611 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/14(月) 22:57:42 ID:lK7RPEp2


612 :三人でいたい:2008/01/15(火) 00:25:49 ID:k3zMc7pm
《LeMU第二層「ツヴァイト・シュトック」ファンタジーランド(第四区画)――アリス・イン・ナイトメア》

ひたり、
ひたり、
ひたり、

血が落ちる。クリーム色の歩道を赤い斑点が汚した。
被弾した脇腹に応急処置は施したが、もはや純白の包帯は赤く染まり用を為さなくなっていた。

ひたり、
ひたり、
ひたり、

血が落ちる。ゆっくりと、掻き消えるように意識が虚無へと向かう。


少女が持っている武器は一本の剣だけだった。
拳銃は遊戯を通して百発以上の弾丸を全て撃ち尽くし、ただのガラクタとなった。
最強の武器として島に殺戮の雨を振りまいた重機関銃の弾も一発だって残っていない。
小さな手斧も鎌もとっくに向かってきた兵士に投擲してしまった。

永遠神剣第七位「存在」――幾人もの人の血を啜りながら、未だ美麗な刀身を維持し続ける神如き剣。

幽鬼のように、一歩一歩確実に。
少女は基地の奥を目指す。


「――ッ!? 川澄舞、見つけたぞ!」

また一人、死角から男が飛び出してきた。
男はその手に小さな機関銃を握り締めている。
圧倒的な速度で鉛玉をばら撒く殺人兵器。この島の兵士達が標準的に装備している武装だ。

613 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/15(火) 00:26:34 ID:Geu+DO+a


614 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/15(火) 00:27:19 ID:YMMWLKcc
  

615 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:13:27 ID:Yvw12RCW
【episode1:いとしいきもち act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、  〜武〜】

この島に連れてこられ殺し合いを強要されてから約3日間。
俺達は必死に抗って遂にはあのディーを倒した。
アセリアの命と引き換えに。
アセリアだけじゃない。あゆも優も失った。

「アセリアさん……アセ……リアさん……馬鹿です……勝手に決めちゃって……」
瑞穂の声が悲しく響く。
声が出ない。
何をいえば云いかなんかよく解らなかった。

瑞穂とアセリアにはきっと誰にも分からないほどの絆があったと思う。
そんな瑞穂だからこそここまで悲しんでると思った。

でもこのまま泣いていられる訳には行かない。
失った命は二度戻ってこない。
だけどその人達の思いは残された者に残るから。
圭一、智代の思いが俺に継がれたように。

だから俺は瑞穂に声かけなきゃならない。そのことを伝える為に。
いますぐ立ち直れなんかいわない。
でも今は前を向いて欲しいんだ。
「瑞穂……お前はアセリアの事は好きか?」
「え……?」
「いや難しい事じゃない……ただ単純にアセリアの事さ」

瑞穂は驚きながらも直ぐに答えた。
涙で顔を濡らせて。


616 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:13:38 ID:ztdMplUT
 

617 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:13:44 ID:VPfUjoB1
 

618 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:15:05 ID:QNQndAkS
 

619 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:15:35 ID:Yvw12RCW
「……はい……もちろんです……好きです! 大好きだった! 最後まで一緒にいたかった!」

瑞穂の大きな叫び。
それは瑞穂が本当にアセリアの事が好きだったことを示していた。
なら簡単な事だ。

「なら……いつまでも泣いてられないだろ? 瑞穂」
「どうして……ですか?」
「アセリアは最後になんて言ってたか憶えてるか? お前が大好きだって、生きて欲しいって」
「あ……?」
「アセリアはお前が好きだからこそ命を懸けた……ただ生きて欲しいから……何よりも大好きなお前の為に
 そんなアセリアの事好きなんだったらいつまでも泣いていられないだろ? アセリアはそんな瑞穂は見たくないと思うぞ」

そう……俺も同じだ。
つぐみは俺の事が好きだった。
だから全力で俺を治した、命を懸けて。
俺もつぐみが大好きだ、それは一生変わらない。
なら俺は全力で生き続けなければならない。
つぐみはそれをきっと望むのだから。

「そうだぜ! 瑞穂。ボクもそうだぜ。大切な……大好きな人を失った……でも僕は泣いてられないんだ……純一はそんな事きっと望まないから」

きぬもそう俺に続く。
そうか……きぬはこの島で大切な人を作って、そして失ってたのだった。
きぬはそれでも進み続けた。
生き続けるために。


620 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:16:45 ID:ztdMplUT
 

621 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:17:26 ID:Yvw12RCW
それはきぬにだけじゃない。
「そうよ。瑞穂。こんなとこで泣きじゃくっているのは貴方らしくないわよ? 私も生き続ける……潤も風子も望んでいるのだから……」
「瑞穂……きっとアセリアも望んでいるに決まってじゃない。生きることを。皆、そう。アセリアも恋太郎も双樹も」

梨花も沙羅も生き残ってきた者、全員。

俺達はそう進まなきゃいけないから。
それが義務でもあるんだ。
だから生きる。
どんなに辛くても。

「皆……ずるいじゃないですか……そんな事をいわれたら私がアセリアさんを裏切ってるみたいじゃないですか……」

瑞穂がポツリとそう呟いた。
嗚咽を漏らしながらも。

「私はアセリアさんを裏切るわけにいかないんです……だから私は……」

前を向く。
涙をたっぷりためながらも。

「生きていかなきゃならないんですね。私は最後まで……どんなに悲しくても……それを乗り越えて……生きなきゃいけないんですね」

そして笑った。
屈託のない顔で。

「私は生き続けます。アセリアさんの思いなんだから。私は……アセリアさんが大好きです、だからこのいとしいきもちを忘れずに生きて生きたいと思います」

そう瑞穂は宣言する。
今度こそ迷いない顔で。
絶対の意志を持って。


622 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:17:36 ID:ztdMplUT
 

623 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:18:14 ID:ztdMplUT
 

624 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:18:56 ID:Yvw12RCW
「そうだ。だから行こう。もう立ち止まるわけにはいかないもんな」
ならもう俺たちがここに留まっている理由はない。
ここに居ても何も始まらないから。
俺達は進み続けるべきだから。
「ええ行きましょう」
仲間達が答え、出口の方に向かっていった。
俺は大切なのをかかえて俺も向かう。
それは
「優……ゆっくり休めよ」
優の亡骸。
せめて埋葬して安らかに眠ってほしい。
これが優にできる事。
そう思ったから。

「じゃあ行くか」
そして俺達出口に立つ。
未来に進む為に。

その時、何故だかアセリアの声が聞こえてきた気がした。
本当に気のせいかもしれないけど。

でも聞こえた気がした。
あの無垢な笑顔で。

俺達の事を祝福する声が聞こえた気がした。



625 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:19:31 ID:ztdMplUT
 

626 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:20:34 ID:FvBUGFX6


627 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:20:43 ID:QNQndAkS
 

628 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:20:56 ID:Yvw12RCW
【episode2: hallelujah act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛 〜梨花〜】


私達はディーと戦った場所を去りヒンメルの扉をくぐり、Lemuに戻ってきていた。
瑞穂も先ほどから比べると随分元気なっていて私も何故だか少し落ち着いた気分になる。
後は鈴凛とあゆと合流するだけ。
「羽入、ここは脱出する分の力は残ってるのよね?」
「はい、それぐらいなら大丈夫なのです」
羽入はそう頷く。
そう、なら安心ね。
あ、そういえば
「羽入、貴方がここにいるのならあゆは大丈夫だったのね?」
「……それは」

羽入はお茶を濁すように視線をそむけた。
私は予想と違う反応され驚いた。
あれ、おかしい。
武がまで悲しそうな顔をしてる。
まさか……まさか。
私は急に嫌な予感に襲われた。
それは最悪な予感。
起きてはならない事。
アセリアに続いて、何てなっちゃいけない。
嫌だ、もう。
もう仲間を失って欲しくない。
怖い。

私はその恐怖を追いはらうように羽入に問いかける。
「ねえ……あゆは!」
お願い! 大丈夫だっていって!
お願いだから……

629 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:21:25 ID:ZaWsgsxI
 

630 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:21:39 ID:ztdMplUT
 

631 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:22:10 ID:ZaWsgsxI
 

632 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:22:30 ID:FvBUGFX6



633 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:23:41 ID:ZaWsgsxI
 

634 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:24:05 ID:Yvw12RCW
羽入が口を開こうとするその時

『あー聞こえてる? 倉成? 鈴凛よ』
「うおい!? びっくりしたじゃねーか!?」

唐突に鈴凛の声が聞こえてくる。
え? どこから?

「あーこちら、蟹沢きぬ! いきなりビックリしたじゃねーか!?」
『そんな事言われたって……倉成に変わってもらえる?』
「まあ……いいけどよ」

きぬが何か機械を取り出して話しかける。
あれはトランシーバー?
そういえばきぬと武で分け合っていたっけ。
どうして鈴凛が?
武から貰ったのかしら。
それにしても音がでかいトランシーバーね、音がこっちまで聞こえるわ。意味ないじゃない。

だけどそのお陰で私は羽入から聞くチャンスを失ってしまった。
そのせいで私の心はざらついたまま。
どこかまだ不安だった。

武がきぬからトランシーバー受けとり
「鈴凛? 武だ」
『倉成……決着は?』
「終らせた。全部。そう……全て、だ」
そう言った。
その一言は凄く深くそして重いもの。
倉成武というこの島で地獄を見て、そして修羅に落ち、再び舞い戻った男の言葉だった。



635 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:25:07 ID:ZaWsgsxI
 

636 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:25:12 ID:pPJYjWrF
 

637 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:25:59 ID:ztdMplUT
 

638 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:27:00 ID:QNQndAkS
 

639 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:27:23 ID:Yvw12RCW
『そう……終わったんだ……こっちも終わったよ……脱出の手段が整ったわ』
「「本当か!?」」
その言葉に武のみならずここにいる全ての人間が反応した。
そうだった、ディーは倒したものの脱出する手段が見つかってはいなかったのだ。
鈴凛はそれを探していたのね。
これは本当に朗報だ。
『ええ……そのためには一旦地上に戻らなきゃいけないんだけど……大丈夫?』
「ああ……羽入がしてくれるそうだ。」
傍にいる羽入がコクンと頷いた。
羽入もあの時力を大部分使って辛いだろうに、それでも気丈に笑っている。

『じゃあ何処で待ち合わせしょうか?』
「そうだな……ドリットシュトックの司令室でどうだ? そこに仲間がいるんだ」
『解ったわ』

あ、やっぱあゆは無事なのね。
ならあゆを向かいに行かなきゃ。
途端、私は安心した。
不安は直ぐに無くなっていた。

『じゃあ……そこで会いましょう。それじ……』
「あー! ちょっと待って!」
鈴凛が通信を切ろうとした時沙羅が突然大声をあげた。
そして武の通信機をぶんどり
「聞こえてる? こちら沙羅」
『……え、ええ……どうしたの?』
「お願いがあるのよ」
『お願い?』
沙羅はそっと目を閉じて胸に手を当てそのお願いに口にする。
まるで懐かしい思いで語るように。


640 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:28:14 ID:16ohdewv



641 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:29:25 ID:ztdMplUT


642 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:29:56 ID:Yvw12RCW
「ツヴァイト・シュトックに川澄舞の遺体があるんだけど……連れてきてくれない?」
『……どうして?』
「埋めてあげたいのよ……私達の仲間と一緒に。色々あったけど……それでも。舞は言葉通り命の恩人だから」
『……解ったわ、場所……』
『それは私がわかります。マスター』
「メカ鈴凛! 合流できたのね!」

メカ? 
何よ……それ?
鈴凛って何か関係するのかしら?

『白鐘沙羅、お任せください。川澄舞は必ず』
「お願いね……」
「なら、ボクもお願いするな」
きぬが沙羅からまた通信機を奪う。
元々彼女のものだけど。
きぬも少し悲しそうに言葉を呟く
「ヒエン知ってるか? あいつの遺体も一階にある。一緒にお願いできるか?」
『かまわないけど……ヒエンとなんかあったの?』
「まあ、色々とな」
そう呟いたきぬは笑顔だったけど悲しそうだった。
きぬも何かあったのかな?
私にはわかんないけど、でもきっときぬにとっては大切な事なんだろう。
それはきぬにしか分からない大切な事なんだ。


643 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:31:10 ID:ztdMplUT


644 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:31:47 ID:ZaWsgsxI
 

645 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:33:17 ID:Yvw12RCW
『解ったわ……メカ鈴凛お願いできる?』
『はい、マスター』
「頼んだぜ」
『最後に倉成に変わって』
きぬはそれに頷き、武に渡した。
『倉成、聞きたいんだけど……そちらで最終的に生き残った者は?』
その問いに武の表情が強張った。
私のほうを向いて。
何か伝えたくないという風に。
そんな武の表情に私の心が揺れる。
どうしてそんな顔をするの? やめて、そんな顔をしないで。
私はまたあの不安が戻ってきた。

そしてその不安は的中した。

「こちらの生き残りは……倉成武、宮小路瑞穂、蟹沢きぬ、白銀沙羅、古手梨花、羽入……以上だ……」

ああ……嘘よ。
そんなの。
どうしてあゆの名前が呼ばれてないのよ。
ねえ武!

「おい……ちょっとまてや、武。あゆどうしたんだよ」
「そうよ、何であゆが……まさか」
沙羅ときぬも口を出す。
彼女達もあゆとはすごく仲が良かった筈だ。
『……了解。では合流場所で会いましょう』
「ああ」
そこで鈴凛との通信は終わった。


646 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:34:26 ID:ztdMplUT
 

647 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:36:28 ID:Yvw12RCW
通信を終えた武がこちらを向く。
武は辛そうに言葉を語る。
一字一句確かに。
「あゆは……逝った……黙っててすまない」
その言葉を聞いた瞬間皆は押し黙った。
仲間が死んだのだ、辛くないわけがない。

しかし何で武だけがそれを知ってるのだろう、そう思った時私は羽入の方を見る。
羽入は私の眼を見ずに避けた。
ああ、そういう事か。

羽入が伝えたのだ、武に。
恐らくディーと戦っていた時に。
そう思った途端唐突に怒りと悲しみが込みあがってくる。

「どうして! 直ぐに教えてくれなかったのよ! 羽入! 貴方解っていたんでしょ!」

羽入へ言葉をぶつける。
こんなことしてもあゆが帰ってくるわけではないのに。
でも何故だが悔しくて。
あの時知ってればもしかしたら悲しいほど淡い気持ちが溢れてきて止まらない。

「どうして黙ってたのよ……どう……して」
「……梨花、ごめんなさいです」



648 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:38:42 ID:ztdMplUT
 

649 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:39:00 ID:ZaWsgsxI
 

650 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:39:04 ID:Yvw12RCW
それはただ単純に私の心を映す。
羽入を責めたってなにもならない。
わかってる、わかっているのに。
もう守っていてくれたあゆがいないと考えるだけでただ悔しくて、悲しくて。

「どうして……どうして」

もうそれは嗚咽にしかならなくて。
どうして、という言葉は羽入に言ってるのか、それともあゆに言ってるのかもう解らなかった。
そしてただ私はそういい続ける。
答えを求めるわけではなく、ただくりかえす。

「もう……責めんなよ、羽入をさ……梨花」
そんな私に声をかけたのはきぬ。
きぬも目じりに涙を溜めていた。

「あの時、梨花のその事を伝えたらどうなっていたか解るだろ?」
「それは……」

そんなのわかってる。あの時伝えてたらディーに集中なんて出来はしない。
でも、それでも。
それを認めたくなくなんかなかった。
私の意固地になってそれを否定する。

「意固地なるなんなよ。解ってるんだよ。なあ皆」
そのきぬの言葉に皆が頷く。
きぬは私に諭すように
「文句あるなら、あゆにいようぜ。ボクも一杯いってやるからさ、だから今は羽入に言わないでおこうぜ」
そう言った。


651 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:39:46 ID:FvBUGFX6


652 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:40:25 ID:ztdMplUT
 

653 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:40:40 ID:Yvw12RCW
なによ、ひどいじゃない。
皆悲しいのに、耐えて。
私だけが泣いてるなんて子供みたいじゃない。

いいわ、解ったわよ。
「あゆの所にいきましょう。文句沢山言ってやろうじゃない……それと羽入……ごめんなさい」
「いえ……いいのです……梨花の気持ちは伝わったから」
その私の言葉に皆が頷いた。
文句沢山言ってやるんだから、あゆ。
今は少しだけ気持ちを抑えて。

そして誰からか分からないけど歩き出す。

あゆの眠る所に。
沢山の文句を言いに。






654 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:41:36 ID:ZaWsgsxI
 

655 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:41:56 ID:ztdMplUT
 

656 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:42:31 ID:Yvw12RCW
ここらBGMを
http://jp.youtube.com/watch?v=W8AJsgOmQDU
出来れば繰り返して聞いてください。

657 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:43:55 ID:ztdMplUT
 

658 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:44:05 ID:VPfUjoB1


659 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:44:49 ID:Yvw12RCW
そして辿り着いた。
あゆがいる場所に。
あゆは寝ているように横たわっていた。
でもそれは寝ているのではない。
紛れも無い死。
何度も目にした死だった。
あゆはそれでも安らかそうに今に起き出しそうで。でもそれは永遠に無く。
そう、亡くなっていた。

「あ……ゆ……そ……う……なのね」

私は自然にまた泣き出してしまった。
あゆは最後に何を思っていたのだろう。
独りで静かに逝って。

「私、約束守れなかった。アセリア失っちゃった……でも帰ってこれた……貴方の元に。運命を変えて……でも……でもね」

あゆとの約束少し守れなかった。
アセリアを失ってしまったから。でも帰ってくる事ができたよ。
なのに、なのに。

「どうして……貴方が逝っちゃうのよ……私を泣かしてよ……アセリアを守れなかった事を」

どうして……。
悲しみ、怒りが同居してなんだか分からない。

660 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:45:52 ID:ZaWsgsxI
 

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:46:11 ID:ztdMplUT
 

662 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:47:30 ID:Yvw12RCW
ただあゆに言えることが一つがある。

「馬鹿……貴方馬鹿よ……本当に! もっと生きなさいよ! 私たちが帰ってきたんだから笑って出迎える様にしなきゃ駄目じゃない!」

馬鹿、本当に馬鹿。
こんなところで逝っちゃうなんて。
なんて馬鹿。
私を怒ってよ。
でももう怒る事も泣く、罵声を言う事もなくただ動かない。

「梨花……あゆは仲間を守ったんです。命を懸けて……そんなに強く言わないでください」
羽入の慰める声が聞こえる。
仲間を守った?
確かにそうね、でもね。
そうでもね、私だって

「私だってあゆの仲間なのよ! 私はあゆを守りたかった! だってあゆは仲間なんだから! 私は悔しい! 守れなかった! 大切な仲間を、また!」

そうあゆは大切な仲間。私の大事な仲間。
そうなのだ、私は悲しいとか怒りだけじゃない。
悔しいのだ、守れなくて。
あゆを守れなくて。
私を信じてくれたあゆを。
あの時、私がしっかりしてれば仲間を守れた。
悔しい。
悔しくて、悔しくて。
私はまた生かされ続けて。


663 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:48:27 ID:ztdMplUT
 

664 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:49:07 ID:Yvw12RCW
「馬鹿、あゆの馬鹿……私の馬鹿……もっとしっかりしなさいよ……ばかああああああ……うわあああああああ」

もう言葉はいらない。
私は泣き続けた。
ただ感情に任せて。
たった独りで逝ったあゆの為に。
私はただ泣きあゆに縋った。

「おい……おめー……なに死んでんだよ……おめーはボクに生きろっていっただろ……ボク達と一緒に脱出するって言ったじゃんか……それなのに何勝手に死んでんだよ
 人を散々励ましてさ……ボクを生かしてさ……それなのに勝手に死ぬんじゃねーよ……この馬鹿野郎……この大馬鹿野郎!」
「そうよ……あゆ。私達3人であの時生きようって約束したじゃない……私たちの事、お人好しとか言って……あんたも結局そうじゃない
 一人でかっこつけて……馬鹿みたい……本当に馬鹿! この馬鹿ああああ!!」

きぬも沙羅もあゆに追い縋り泣いていた。
彼女達は短い間でもあゆと確かな絆を築いてた。
その彼女たちも泣いてる、あゆを思って。


665 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:49:08 ID:16ohdewv



666 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:50:43 ID:VPfUjoB1


667 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:50:49 ID:Yvw12RCW
「ほんと……馬鹿なんだから……」

私達はそのまましばらく泣き続けた。
あゆの為に。
最後まで仲間のことを思ってくれたあゆの為に。

この部屋に響くのは私たちのなき声だけ。

あゆがどうか安らかにいられる様にと。

なき続けた。







668 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:50:53 ID:QNQndAkS
 

669 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:51:11 ID:ztdMplUT
 

670 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:52:50 ID:6xxUbTNU


671 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:53:02 ID:6xxUbTNU


672 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:53:26 ID:Yvw12RCW
「倉成、ただいま」
程なくして鈴凛がこの部屋にやって来た。
後ろには鈴凛に似た人が。
恐らくアレがメカ鈴凛なのだろう。
メカ鈴凛は2人の遺体を持ってきていた。
あれがカニと沙羅が言っていた二人なのだろう。

私達はやっと泣きやんでいた。
まだ、悲しいけど。
大丈夫、いつまでも泣いてられない。
私達ができる事は生き続けることだから泣いてられないのだ。
だから、うん、もう大丈夫。

「終わったのね……倉成」
「ああ……終わったんだ」
「そう……」
鈴凛と武の短いやり取り。
でもこれで十分だった。
もう凄惨な殺戮遊戯は終わったのだ。
そしてその生き残りここにいるメンバーだけ。
ただ、それだけなのだ。
私達は後は脱出するのみ。

「じゃあ……脱出方法を教えるよ。誰か港でクルーザーを見た人いると思うんだけど?」
「ええ……私が見たわ……もしかしてそれで?」

沙羅が名乗り出る。
港にクルーザー? そんなのあったのね。


673 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:53:31 ID:ZaWsgsxI
 

674 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:54:48 ID:Yvw12RCW
「そう……アレは本来トラップなんだけど、そのトラップを解除できれば普通に使えるわ。聞いた話なんだけど島の外に出れば脱出できるらしいわ」
「本当なのかよ……それ?」
「わからないわ……でもそれしか頼るものはないわ」

本当かしら?
でも確かにそれしか頼るものないのだ。なら

「いいわ。それでいきましょう。それしかないのなら仕方ないわ」
「そうだな。それで行こう」

皆が賛同した。
生き残るのならここにはいられないから。
そんな皆に鈴凛は
「解ったわ……じゃあ羽入お願いできる?」
「お任せくださいなのです。取り敢えず何処にでましょうか?」
「ホテルがいいわ。あゆを埋葬したいもの」
そう、あゆを埋葬してあげたい。
ことみとあゆの大切な友人、亜沙の隣に。
できれば3人で手を取り合って笑って欲しいのだ。
私のエゴでしかないけど、きっとできるはず。
そう思って。

「じゃあいきます……」
羽入がそういうと私達は目を瞑り精神を集中させた。
次第に地面に解けていくような感覚に襲われる。
そして意識を失う瞬間、瑞穂の言葉が聞こえた。


675 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:55:28 ID:ztdMplUT
 

676 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:55:50 ID:Yvw12RCW
「さよなら、LeMU。さよならアセリアさん。私達、笑顔で生きてきます」

そうして私達は戦いの舞台となった海底の孤島LeMUから去った。

それぞれ失ったもの、得たものを思って。





【episode3:オルタネイティブ act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛 〜沙羅〜】





私達は気付くとホテルの前にいた。
驚くぐらい本当にあっという間だった。


677 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:56:16 ID:ztdMplUT
 

678 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:56:42 ID:ZaWsgsxI
 

679 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:56:52 ID:VPfUjoB1


680 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:57:35 ID:Yvw12RCW
「戻ってきましたね……またここに」
「ええ…あゆ達を埋葬しましょう」
「白鐘沙羅、蟹沢きぬ、川澄舞とヒエンです、どうぞ」
「ありがとう」
「おうサンキューな」
私はメカ鈴凛から舞の遺体を受け取った。
舞はあの時はかわらず安らかに眠っていた。
舞が犯した罪は赦されるものではないかもしれない。
でもそれでも埋葬したい。
それが助けてもらったお礼になるんだから。

「じゃあ最初に埋葬しましょうか」
「ええ、あゆ、ことみ達と仲良く、ね」

私達はまず仲間達を埋葬する事にした。
まず最初はあゆ。
皆疲れてはいたけど穴を掘る手を決して止めようとはしなかった。
ことみ、亜沙、智代と並んでいる所に一緒埋める。
少しずつあゆの顔に土が被る。
そして見えなくなった時にはまた私はなきそうになっていた。
本当、馬鹿みたい。

「じゃあな……ヒエン……ボク生きるからな」
次はヒエンという者。
私はよく分からないけど主催者の仲間なのにきぬを助けた人。
きぬはヒエン見てる時は悲しそうに刀を握り締めていた。
きぬも強くなったな。私とであった時に比べて。


681 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:57:41 ID:ZaWsgsxI
 

682 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:57:45 ID:UUY03MDS


683 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:57:55 ID:6xxUbTNU


684 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:58:43 ID:ztdMplUT
 

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:58:48 ID:6xxUbTNU


686 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 00:59:13 ID:IGGoRNtq
 

687 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 00:59:27 ID:Yvw12RCW
「優……秋香菜は任せろ」

次は優という人。
武の前からの知り合いだったみたい。
辛そうだ、武も。
武はやっぱりどんな過去を送ってきたんだろ。
聞いてみたいな。

「最後は……舞ね」
「あ、ちょっと待ってお願いがあるの」
「どうした、沙羅?」
そう最後は舞の番だ。
でも私は躊躇い一つのお願いがある。
それは舞に出来る恩返し。
自己満足にしかならないけど。

「舞はね……佐佑理って人の傍に埋めてあげたいの。きっと喜ぶから……確か公園にいるはず……お願い」
「……そう、わかったわ」
私の提案に皆乗ってくれた。
梨花やきぬは仲間を殺されたのにそれでもそれを赦してくれた、
本当に素晴らしい仲間に囲まれたな。
そのことがとても嬉しい。

「じゃあ……これでひとまず終わりか」
「待ってください」
武の言葉に瑞穂が止める。
何かしら?
瑞穂何処からかとってきた花を持っていた。
それをみんなの墓の近くに置き
「アセリアさん……安らかに眠ってください」
手を組み祈った。

688 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:00:15 ID:ZaWsgsxI
 

689 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:00:18 ID:IGGoRNtq
 

690 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:00:29 ID:ztdMplUT
 

691 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:00:33 ID:Yvw12RCW
そうか、そうね。
アセリアも必要だよね。
そしてこの祈りが届くようにと。
私たち誰からとも祈りはじめた。
アセリアと皆の冥福を祈って。





「じゃあ……港で会いましょう」
「ええ、直ぐに戻ってくるから」
埋葬が終わった後私達は準備を始めた。
長い旅になるかもしれないから食料とかを多めに持った、何があるか分からないしね。

そしてあらからの準備が終わり出発することになり私は一時別れて舞を埋葬する為だ。
一人でもいいって言ったんだけど武もついて来る事になった、一応用心の為だそうで。
そうして鈴凛たちはメカ鈴凛があやつる車で向かっていった。
……相変わらず機械が機械を運転するのは不思議でならない。

「じゃあ俺達もいくか」
「……ええ」
私達も武の運転で向かう事にした。
幸い他に車があって本当よかった。
車で向かえば早く着く筈。


692 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:01:06 ID:IGGoRNtq
 

693 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:01:36 ID:VPfUjoB1


694 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:01:45 ID:ztdMplUT
 

695 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:01:51 ID:6xxUbTNU


696 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:02:19 ID:Yvw12RCW
「それにしても……お前のその格好、くくっ」
「うるさいわね!」
武が私の格好を見て笑う。
さっきホテルで服を変えたんだけどまともなのがなかったのだ。
本当は着たくない。でも血まみれの服はきたくはなかったので仕方なく。
動きにくいし。
その服は

「お前にナース姿とか……どんな悪い冗談だよ」
「うるさーーーい!!! こんなの着たくないわあ! これしかなかったのよお」
「いってえ! なぐんな! 運転が!」

ああ、もう最悪。
どう間違えてホテルにナース服があるって言うのよ。
これは何かの陰謀か?
虐めでしかない。
ああ、そんなに笑うなあああ! 武!



そんな感じで終始馬鹿にされながら公園に辿り着いた。
公園には二つの遺体が曝け出されておりたぶんこれが佐佑理って人もいるんだろうと思った。
「……埋めてやろう、このままじゃ可哀想だ」
「ええ、舞も一緒に」
私達はそのまま舞も地面に置き、墓を掘り始める。
元々ほられたせいかとても早くできた。

私は舞を真ん中に2人の少女を手をつながせ墓に埋め始める。
どうか、舞が佐佑理と幸せでいられるようにと。
そのつないだ手を離さないように。
ただ、それだけを願った。

697 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:02:22 ID:6xxUbTNU


698 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:03:04 ID:ztdMplUT
 

699 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:03:12 ID:6xxUbTNU


700 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:03:29 ID:IGGoRNtq
 

701 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:03:58 ID:Yvw12RCW
「これで終わり……舞。どうかやすらかに……そしてありがとう」
そして土をかけ始める。
ただ思うのは命を救ってくれた感謝。
もし舞が地獄に落ちようとも佐佑理が傍にいられるように。
ずっと支えてくれるようにと。
手を合わせ願っていた。

「じゃあ……いくか」
「そうね……鈴凛達も待ってる筈だわ」
少し時間が経った後わたしたちはそのまま車に乗り込んだ。
私は最後にもう一度だけ振り返り
「ありがとう、舞」
最後にそれだけ言った。
もう振り返らない。
私はこれからも生き続けるんだから。舞の分まで。




「ねえ……武。聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「貴方、どんな過去の持ち主なのよ? 気になって」
私は帰りの車の中でずっと気なっていたことを聞いてみた。
それは武の過去。
いったいどんな生活をしてきたのかと。
「そうだな……俺、何歳だと思う?」
「20歳ぐらいじゃないの?」
武はその返答に笑いながら
「違う……37歳の子持ちだ」
「嘘!?」
「本当だ。何でかというとな……」


702 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:04:08 ID:ZaWsgsxI
 

703 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:04:57 ID:Yvw12RCW
そこから武の過去話が始まった。
正直凄まじい。
愛しい人を助けてたら17年寝ていてそれでいつの間にか子持ちとは。
信じられない。
でも最後はハッピーエンド。
その筈だったのに。

「こんなのに巻き込まれちゃうなんて可哀想だよ……こんなに苦労したのに」
私は悲しくなってしまった
武のあまりにも悲しすぎる結末に。
その運命に。
「確かに……つぐみも失った……でもな、それだけじゃない」
「え?」
「俺はいろんな人から教えてもらったこの島で。それはきっとこれからもきっと役に立つし素晴らしいものだと思う……それに」
「それに?」
「生きてれば何とかなるさ」

武のその言葉はとてもわかりやすく、でも武そのもの表してると思う。
これが倉成武のいき方。
倉成武って人間なんだなと思えた。
つくづく凄い、この人は。

「それで……お前帰ったらどうするんだ……一人なんだろ」
「そうね……」
武の言葉に少し気が重たくなる。
恋太郎もいないし双樹も居ない。
どうなるなんか私にも分からない。

「もしよかったら家にこないか?」
「ええ!?」
「いや……ひとりならさ。皆でいたほうが楽しいだろ」
武のその誘いに驚く。

704 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:05:02 ID:ZaWsgsxI
 

705 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:05:07 ID:6xxUbTNU


706 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:05:34 ID:ztdMplUT
 

707 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:05:57 ID:Yvw12RCW
確かに少し魅惑的な選択肢のひとつ。
でもね、私が選ぶ選択肢はとっくに決まってる。

「お断りするわ。私の帰る場所はやっぱりあの小さいけど温かい場所なの。そう双葉探偵事務所なのよ……私は助手だけど探偵不在の時はしっかり守らなきゃ」
「……そうか」
「ええ。ごめんなさい」

そう私はどんな時でも同じ。
私は双葉探偵事務所の助手。
いつまでも、恋太郎がいなくても。
どんな時でも変わらないんだから。
だからあの大切な場所は私が守る。
いつまでも。

きっと喜んでくれるよね? 恋太郎、双樹。





私たちが港に辿り着いた時にはもう鈴凛たちは準備が出来ていた。
クルーザーに荷物を積み込み、私達が乗るのを待ってるだけ。
「お帰り、直ぐに出発するわよ」
「ええ、でも誰が運転するの?」
「それは私です。白鐘沙羅」


708 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:06:10 ID:6xxUbTNU


709 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:06:17 ID:ztdMplUT
 

710 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:06:51 ID:6xxUbTNU


711 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:07:18 ID:IGGoRNtq
 

712 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:07:28 ID:Yvw12RCW
またお前か。
なんか機械が機械を……ってもういいや。
きっと触れてはいけない点だろう。
そう自己完結して船に乗り込んだんだけど
「せ、せまい」
「仕方ないわよ……そこまで大きくないんだし」
梨花の怒声が響く。
いやわかってるけどさ。
でもせまいのよ。

「それでは出発します」
メカ鈴凛のかけ声とともに動き出す。
私はかろうじて窓から見える風景を見て思う事。

「終わったわね……やっと」
そうやっと終わったその殺し合いの舞台をみて。
私はこれからもいき続けることを誓った。

そうして私達を乗せたクルーザーは大海に向かって進み始めた。


713 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:08:07 ID:IGGoRNtq
 

714 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:08:18 ID:Yvw12RCW
【episode4:まどろみの輪廻 act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛、? 〜瑞穂〜】


私達が島を離れて1時間ぐらいたった後だろうか。
「なー! あれ陸じゃねーのか!?」
「え、本当!?」
きぬさんの声に皆がいっせいに窓の方を向いた。
でも元々狭いのにそんなに集まったら
「痛いよ! 倉成!」
「わ、悪い!」
押されて凄く痛い。

「はい、陸が見えたのでそちらに向かいます」
メカ鈴凛さんの声が響く。
そうか、やっと戻れるのか。
やっと終わりなんですね。
私は誰にも気付かれるの事なく安堵の息を吐いた。
なんか疲れがどっと出た。
早く着かないかな。


「着岸します!」
その声が聞こえた瞬間大きな衝撃が私の体を襲う。
「きゃああ!!」
「が! 何て荒い着岸だよ」
どうやらそのまま乗りあがったらしい。
……機械なのに乱暴ですね。
私達はそのまま陸に上がっって周りを見渡す。
あれ? どこかで見たことが?

715 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:08:19 ID:VPfUjoB1


716 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:08:26 ID:6xxUbTNU


717 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:08:59 ID:IGGoRNtq
 

718 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:09:00 ID:ztdMplUT
 

719 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:09:06 ID:6xxUbTNU


720 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:09:28 ID:Yvw12RCW
なんか凄いデジャブに襲われる。
目の前には灯台が。

「え……おい……まさか?」
きぬさんが慌てて灯台のほうに近づく。
何をそんなに焦ってるのだろう?
その答えは私達を絶望させるのに十分な答えだった。
「ここ……元の島だ……間違えないぜ」
「そんな……嘘でしょ」
「嘘じゃないやい……だってこの灯台、純一と一緒に上ってたんだ……間違いない」

そんな、まさかあのデジャブは。
ここが同じ島だったから?
結局意味なかったの?
私達が抗ったのは。
違う、この島はあの島と違うんだ。
そう思い込もうとする。

でも梨花が悔しそう様に
「どうやら……その様よ。羽入もそういってる……どうやらディーの作った世界と全く変わらないそうよ……恐らく私たちはループしてまた戻ってきたみたい」
「それって?」
「端と端が繋がってるみたいなのよ……そうここはディーの作った空間の狭間。私たちの力じゃどうにもならないのよ」

ああ、そうなんですか。
私達はもうここから出られないんですか。
永久に。
なんか何も考えられない。


721 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:09:36 ID:6xxUbTNU


722 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:09:39 ID:ZaWsgsxI
 

723 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:09:56 ID:IGGoRNtq
 

724 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:10:08 ID:6xxUbTNU


725 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:10:42 ID:Yvw12RCW
私達は何も喋らない。
皆ただ黙って。
何を考えてるか分からないけどただ解るのは絶望。
ただ押し黙っていた。

だけど暫くたった時、武さんが不意に言葉を発する
「じゃあ……ここで生きていこうぜ……皆でさ」
「はあ……何いってんのよ! 食料もそんなにないのよ」
「なんか野菜でも育てればいい……幸いここは何でも揃ってる……それくらいはできる筈だ」
「そんな事言っても!」

ここで生きていく?
そんな事できるのだろうか。
なんか考えられない。
きっと無理だ。
皆も反論してる。

「じゃあ……生かされた命無駄にするのかよ! 俺はそんな事絶対しないし許しはしない! どんな所でも与えられた命の分まで生き延びてみせる!
 圭一やつぐみ達が生かした命無駄に出来るかよ! どんな時でも俺は生きる!」

武さんの叫び。
そうか、私の命は一人のものじゃないんですね。
アセリアさん、茜さん、アルルゥさん。
沢山の人が願って生きている事を。
無駄にしたくない。
生きたい。
ただそう思って。


726 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:10:44 ID:VPfUjoB1


727 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:11:08 ID:IGGoRNtq
 

728 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:11:33 ID:6xxUbTNU


729 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:12:02 ID:Yvw12RCW
「そうですね……無駄にしたくありませんね……どんな所でも生きなきゃいけないんですよね……生きましょうここで」
私は武さんの意見に賛成した。
どうなるかは分からないけど。
命を無駄にしたくはない。

「……そうだな……ボクも純一から貰った命無駄にしたくない」
「そうね……そうよね」
きぬさんから順に皆賛同し始める。
そして全員がその話に乗った。
ただ、いきたいと思って。
先は見えないけど多分その先に見えるのは希望だと思って。
私達は生きることに決めた。




それで現在に至り私は温泉の前にいた。

そして私は現在最大のピンチを迎えている。

何のピンチだって?

変態かつ悲惨な目にになりそうんですよ!




730 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:12:16 ID:6xxUbTNU


731 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:12:45 ID:ZaWsgsxI
 

732 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:13:43 ID:Yvw12RCW
何故そうなったかというと、皆、肩の荷が下りたのか一斉に疲れだした。
そして私と武さん以外はうら若き乙女である。
殺し合いをする必要がなくなったので皆、自分の髪やら体を気にしだしました。
当然ですもんね、3日も風呂に入らなきゃ普通の女の子は失神してしまいます。
そこで空気を読んだ武さんが近くにある温泉に行かないかと提案しました。
皆当然の如く賛成しました。

そして温泉に着いた時、私は気付いたんです。
私、性別偽ってる事言ってないって。
いやあ焦りました。
不味いって。

これから生きていく以上隠したままではいられません。
ですが……今言った瞬間、変態扱いでしょう。
今更ですが。

それでまずは女性が入る事になりました。
武さんが私に当然の如くいって来いって笑顔で言うんです。
素晴らしい笑顔で。
ああ、笑顔が痛い。


733 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:14:20 ID:IGGoRNtq
 

734 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:14:24 ID:ZaWsgsxI
 

735 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:14:45 ID:VPfUjoB1


736 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:14:56 ID:6xxUbTNU


737 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:15:25 ID:Yvw12RCW
私は遠慮しようと思ったんですが、きぬさん、沙羅さんが私の手を引っ張るんです。
よほど風呂にはいりったんでしょう。
そして現在に至り、脱衣所に。
そしたら皆はなんの遠慮せず服を脱ぎ始めました。
あっという間に全裸に。
惜しげもなく裸体をさらす。
ああ、やめて。
僕が反応してしまう。

もっとも皆大して胸もないんですが。
一番あるのがきぬさんって。
なんというか少し哀れみの目を。
特に沙羅さんに。

きぬさんより身長あるのに胸がないとは。
本人は気にしてないのだろうか?
ちょっと可哀想。

きぬさんも普通に比べれると小さい。
きぬさんは身長も低いのでこれから成長するかもしれません。
もっとも成長するかも解りませんが。
まあ沙羅さんよりいいでしょう。

梨花さんはまだ幼女なので仕方ありません。
これからに期待じゃないでしょうか?

鈴凛さんも……って僕はなにやってるんだ!
まるで変態じゃないか。
落ち着け……こんなことしてる場合じゃない。
戦略的撤退を。
このままで僕の立場が底辺に。


738 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:16:00 ID:IGGoRNtq
 

739 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:16:32 ID:VPfUjoB1


740 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:16:35 ID:6xxUbTNU


741 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:16:48 ID:ZaWsgsxI
 

742 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:16:51 ID:pPJYjWrF
 

743 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:17:20 ID:Yvw12RCW
「瑞穂も早く脱ぎなさいよ」
沙羅さんがせかす。
あ、まずい。
このままじゃ……。
脱ぐとばれる。
それに微妙に反応してる僕が不味い。

「えっと……ですね」
何かいいわけを。
早くしないと。
非常に不味い。

「あーもう。さっさとしろよ……ボクが脱がしちゃうぞ」

ってきぬさん!?
もう僕の服に手をかけてる!?
まずい! まずい!

「……あ。そういえば……きゃああああああああああああ!!!!」
鈴凛さんが急に悲鳴あげ、体をタオルで隠した。
顔を真っ赤にして、僕のほうを向いて。
……うん? そういえば鈴凛さんって主催側だったよね。
性別知ってるんじゃ。

……ああああああ!!
多分今思いだしたんだ!
しまった。どうすれば。


744 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:17:58 ID:6xxUbTNU


745 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:18:30 ID:ztdMplUT
 

746 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:18:33 ID:IGGoRNtq
 

747 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:18:56 ID:6xxUbTNU


748 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:19:18 ID:Yvw12RCW
だがちょうどその時きぬさんが
「まったく……世話かけて……おろ?」
上着を脱がして。

ボトっと豊胸パットが落ちて。

そして下着も半分脱ぎかかっていて。

その結果。

「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」」」」


可愛い悲鳴が4つ響き渡った。


……終わった。


749 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:19:26 ID:ZaWsgsxI
 

750 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:20:01 ID:IGGoRNtq
 

751 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:20:13 ID:Yvw12RCW
変態だよ……僕。

あはは。

……はあ。


その後、僕がどうなったかご想像にお任せします。
ただ解かる事は僕はとてつもなく不名誉な烙印をおされただけです。

……はあ。


「男だったとは……」
武さん、僕に変な顔向けないでください。
立ち直れないです……。







752 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:20:34 ID:ZaWsgsxI
 

753 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:20:51 ID:IGGoRNtq
 

754 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:20:57 ID:ztdMplUT
 

755 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:21:31 ID:aBVYPGn8


756 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:21:34 ID:pPJYjWrF
 

757 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:21:36 ID:VPfUjoB1


758 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:22:35 ID:Yvw12RCW
あの後、女性陣があがって皆で食事とる事にした。
ただ何となく女性陣が僕を避けてる気がして。
……へこむなあ。

「さて……何処を住居にするかだな……ぶっちゃけ広すぎて収集がつかんが」
「……そうね」
ここで暮らす事が決まってからも難題が沢山だ。
正直気がめいってしまいそう。

「……でも、頑張っていきましょうね」
「……ええ」
そう頑張って生きてくしかないのだ。
だから少し元気を出す。

その時だった。

「貴方たちはそれでいいのですか?」

どこから声が聞こえてきた。

「え?」
「だから……貴方達はもとの世界に帰りたくないですか?」

その声がどこから聞こえるかまだ分からないけどしっかりと聞こえてくる。
帰れる?
できるのなら
「帰りたいです……勿論! でもそんな奇跡なんか起きる訳……」
「知ってますか? 奇跡って起きるから奇跡っていうのですよ……もちろん起こす為の力があるのなら」


759 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:22:39 ID:ZaWsgsxI
 

760 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:23:06 ID:6xxUbTNU


761 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:23:28 ID:VPfUjoB1


762 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:23:44 ID:ztdMplUT
 

763 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:24:39 ID:Yvw12RCW
そう言ってその少女は現れた。
何処からともなくで当然のように。
「私にはその力がある……だから起こして見ましょうか? 貴方達の為に……それが贖罪になりえるのなら」
その少女は巫女服を纏い微笑みながらやってきた。
「誰だ!」
武は警戒し時詠をその少女に向けた。
だけど少女はその微笑を崩さず
「大丈夫です……味方です……そして」
「なんだ時詠が!?」
時詠がその少女に反応していた。

そしてその名を告げる
「時詠……お久しぶりですね、私は倉橋時深。そう時詠みの時深……その剣の持ち主」
「なっ……どうしてここにこれた?」
「それはウィツアルミネティアが消滅したから。この世界に入ってこれたのです」
そして時深さんの武さんの時詠を持った瞬間
「なっ!?」
元の短剣の姿に戻った。
永遠神剣は持ち主にあった姿に変わるって話はあの時見た。
じゃあその通りなのか
「納得してくれましたか?」
「あ……ああ」
皆一斉に頷いた。
まだ納得できない事は多いけどでもそう思わせる感じが時深さんにはある。
「どうして……今になって?」
梨花さんがそう聞く。
それは気になっていた。何故今更。

764 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:24:43 ID:IGGoRNtq
 

765 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:25:27 ID:6xxUbTNU


766 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:25:38 ID:ZaWsgsxI
 

767 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:26:03 ID:Yvw12RCW
時深さんは悲しそうに
「それは……今から話さなければなりません……聞いてください」
そして語りだす。
とても悲しそうに
「私はウィツアルミネティアの蛮行に気付いたのは彼が人間を集めていた事、そして私の関わりのある人間を集めようとしていた時です。
 私は、こんな殺し合いを許すことが出来なかった……そして彼と戦った……でもムツミと名乗るものも現れムツミは倒しましたが連戦になり……力及ばず負けてしまった
 そして時詠さえも奪われ、私は……こんなものを止める事ができなかった!」
そういった彼女はとても悔しそうに拳を握っていた。
ああ、とても悔しかったのだ、彼女はこの殺し合いを止める事が出来なくて。
そう思った瞬間何故か嬉しかった、そう止める為に頑張ってくれた人がいて。
「その後、私は力を回復する為、暫くは動く事ができませんでした……そして始まってしまった……大部分回復しました後……そしてウィツアルミネティアが死んだ事を知って
 今、ここへ来る事が出来ました……ですが、悠人さんは亡くなってしまったのですね……そして今私ができる事が一つあります。
 それは殺し合い止められなかった私が出来る贖罪、そう生き残った貴方達を帰す事です」

時深さんはそう言い切った。
悠人さんといったから悠人さんの知り合いかな。
悠人さんって言った時何故か凄く悲しい顔をしていた。
きっと大切な人だったのだろう。
「本当は無かった事もできるのですが……力が回復してないし、きっと望まないでしょう……貴方達が。後教えてください、どうやってウィツアルミネティアをたおしたかを」
「ああ……それは」
武さんが話し始める。
時深さんが黙って聞いていていて
「驚きました……そんな事が。すいません「求め」みせてもらっていいですか」
僕は永遠神剣を渡し時深さんが驚き
「これは……すいません。これは私が持っていっていきます……理由は話せませんが」
そう言った。
え……?

768 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:26:09 ID:ZaWsgsxI
 

769 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:27:24 ID:VPfUjoB1


770 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:27:30 ID:ztdMplUT
 

771 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:28:39 ID:6xxUbTNU


772 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:28:51 ID:Yvw12RCW
アセリアさんの形見だけど。
でも……これは悠人さんが元々もっていたと聞いたし悠人さんの形見でもある。
何より時深さんの目が真剣だ。
だから
「どうぞ……あの「存在」はもって言ってもいいですか? アセリアさんの形見なんです」
「……位は低いですし……影響はないか……ええいいですよ」
何かを呟いてが直ぐに了承してくれた。
やった。
アセリアさんの形見を持っていける。
嬉しくなってついその剣を握り締める。

「では……貴方達は勿論帰りますよね」
時深さんの問いにみんなが一斉に頷いた。
それは変わらない……どんな時でも。
時深さんは笑顔で
「解りました……ですがもう少し時間をください。またここで。力を溜めたいので……貴方達は帰ったら二度と会えないでしょう。今のうちにお別れを」
そういった瞬間時深さんはいなくなっていた。

そうか、帰られるのか。
なんともいえない感情が僕を襲う。
でもそれと同時に悲しみが襲う。
もう会えないのだ、この仲間達と。
皆もそれを思い
「そうか……会えなくなっちまうのか」
「そうよね……元の世界に戻るのだもの」
なんともいえない喪失感に襲われる。
何か残しておきたい。
何か記念になる物。
そうだ!


773 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:29:51 ID:ZaWsgsxI
 

774 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:30:30 ID:6xxUbTNU


775 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:31:00 ID:IGGoRNtq
 

776 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:31:18 ID:VPfUjoB1


777 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:32:05 ID:Yvw12RCW
「写真を撮りましょう。カメラとフィルムがありますし」
そう写真。
みんなの思い出を残せる手段の一つ。
きっとそれは記念になるから。

「そうだな。それはいい」
「おう、楽しそうだぜ」
皆同意してくれた。
なんか嬉しい。

「じゃあ私が取りましょう。皆さん集まってください」
メカ鈴凛さんがやってくれるみたい。
その掛け声に皆が集まる。

中心は武さん。
その左右にきぬさん、僕。
武さんの後ろから顔を出しているのは鈴凛さんと沙羅さん。
そして梨花さんは武さんの前に。
皆笑ってた。
素晴らしい笑顔で。



778 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:32:32 ID:IGGoRNtq
 

779 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:32:48 ID:ZaWsgsxI
 

780 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:33:00 ID:Yvw12RCW
「じゃあとります、はい、チーズ!」

パシャと音が聞こえた。

これ大丈夫。

皆の事忘れない。

絶対忘れて溜まるもんか。

だってこんなに笑ってる仲間忘れたくない。
絶対に。


【episode5:karrma act:武 〜武〜】

781 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:33:42 ID:ztdMplUT
 

782 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:33:51 ID:O4e5FpW7




783 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:33:54 ID:ZaWsgsxI
 

784 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:33:58 ID:VPfUjoB1


785 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:34:30 ID:IGGoRNtq
 

786 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:34:39 ID:Yvw12RCW
俺はあの後、現像する為にホテルに向かった。
時間は沢山あったのでゆっくりとしっかり現像した。
人数分しっかりでき、写真は完璧。

終わった後、俺はちょっと寄り道する事にした。
つぐみの所に。
全て終わった事を伝える為に。

そしてつぐみの眠っている所につく。
思えば俺は随分と罪を犯してきた。
でも、それは償っていかなきゃならないものだと知っている。

俺はこれからも永遠にいき続けなければならない。
その中で償っていこうと思う。

それが俺のカルマ。
業だ。

だからつぐみに誓う。

「俺は生きていく……これからずっと。罪を忘れず、死んでってたものを忘れずこれからも……だから安心して眠ってろ。ホクト達は17年間寝てたぶんしっかり見てやるから」

そう誓って俺は仲間たちの元に戻る。
もう会う事もないけどこれは永遠に忘れない。

だから俺は生きる。



787 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:35:14 ID:ZaWsgsxI
 

788 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:35:29 ID:ztdMplUT
 

789 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:35:35 ID:Yvw12RCW
【episode6:Dream  act:きぬ 〜きぬ〜】

本当に色々あったなー。
ボクはずっと生かされ続けていった。
これからもずっと。

そして出来た大切な人。
純一。
純一の意志継ぐ事ができたかな。
ヒエンを助けられたし、純一に誇る事ができる。

僕はこれから一人で生きてく。
でも辛い事じゃない。
きっと諦めずに進んでいけると思うんだ。
純一のように。

だってこんなにも素晴らしい思い出がある。
だから楽しくいきる事ができる。

それに夢ができた。
純一の諦めずに進んでいく生き方を誰かに教えたいという夢。
ボクはそれに救われた。

だから諦めず生きて教えていきたい。
これからも。


790 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:35:38 ID:IGGoRNtq
 

791 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:35:48 ID:VPfUjoB1


792 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:35:55 ID:O4e5FpW7




793 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:36:15 ID:ztdMplUT
 

794 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:36:18 ID:Yvw12RCW
【episode7:New World act:沙羅、〜沙羅〜】

やっと戻る事ができる。
長かったけどこれで終わり。

これから忙しくなるぞー。
だってあの事務所を一人で切り盛りしてくんだ。
大変だと思う。

でも私は苦しくはない。
だってそれが私がやりたい事なんだから。

時に悲しくなる時もあると思う。
恋太郎達がいなくて。
でも大丈夫。

私には素晴らしい仲間がいた。
これからも、ずっと先も。

心は一つじゃないと思うから。

だからいける、新しい未来へ。


795 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:36:37 ID:IGGoRNtq
 

796 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:36:39 ID:ZaWsgsxI
 

797 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:37:07 ID:Yvw12RCW
【episode8:翼 act:鈴凛、 〜鈴凛〜】

結局生き残ってしまった。
姉妹の中でわたしだけ。

でもその事で悲しんでる暇は無い。
私はその分まで生きなきゃならない。
倉成はそういったから。

生きてれば償えると。
だから精一杯いきてく。

倉成についてくかは未だ決めていない。
でもどっちにしろ私は諦めない。

だって私に羽ばたく翼があるから。

見ててよ
千影、咲耶、衛、四葉。


798 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:37:12 ID:O4e5FpW7




799 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:37:51 ID:IGGoRNtq
 

800 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:37:56 ID:Yvw12RCW
【episode9:Again act:瑞穂、〜瑞穂〜】

僕が帰る先にはいろんな人かこまれている。
皆と違って。

でも貴子さんはいない。
それでも僕は悲観しない。

前の僕はそうしてたと思うけど。
今の僕は違う。

僕はこれからもくじける事があると思う。
でももう一度、何度でも。

立ち上がっていくんだ。
自分の行く道を自分で作って。


801 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:38:19 ID:ZaWsgsxI
 

802 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:38:36 ID:IGGoRNtq
 

803 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:38:42 ID:O4e5FpW7




804 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:38:43 ID:Yvw12RCW
【episode10:WHEEL OF FORTUNE act:梨花、 〜梨花〜】

私は如何するべきか悩んでいる。
わからないのだ。
自分帰った先の雛見沢が。

実は瑞穂から誘いを受けた。
瑞穂の世界に来ないかって。

それもいいかもしれない。
羽入も好きなほうを選んでいいといった。

でもどっち選んでも決めた事がある。

私が定められた運命の輪から逆らって生きていくって。
どんな時でも生きて。

そして抗って自らの運命を変えてみせる。

潤や風子が応援してくれる。
だから私は進み続ける。
どんな時でも。


805 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:38:58 ID:IGGoRNtq
 

806 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:39:51 ID:VPfUjoB1


807 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:39:54 ID:O4e5FpW7




808 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:40:19 ID:ztdMplUT
 

809 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:40:54 ID:Yvw12RCW
http://jp.youtube.com/watch?v=FuzVdN_PK1Q
さいごにBGMどうぞ。

810 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:42:18 ID:Yvw12RCW
【lastepisode:そらのむこう  act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛、時深 〜きぬ〜】

遂にこの時がやってきた。
「全員お揃いのようですね……それでは始めます」
元の世界に戻る時が。
時深がなにやら準備を始める。

さっき武から写真をもらった。
皆、素晴らしい笑顔で。

「皆、これからも生き続けような……ずっとその先まで」
武の言葉に皆が頷く。
そうだ、どんな時でも諦めたりはしない。
ずっと生きていく。


811 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:42:39 ID:ZaWsgsxI
 

812 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:42:49 ID:ztdMplUT
 

813 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:43:17 ID:Yvw12RCW
「空……きれい」
瑞穂がそう呟く。
ちょうど夕空で。

光が差し込んで。

そしてボク達は自然に手をつなぎ始めた。

言葉はいらない。

そらのむこう。
その先には優しい世界が広がってるはず。

きっと光にみちていて。

皆のこと信じてるって。

皆がいたから生きていけた。



814 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:43:18 ID:VPfUjoB1


815 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:43:25 ID:ZaWsgsxI
 

816 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:43:43 ID:ztdMplUT
 

817 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:44:02 ID:pPJYjWrF
 

818 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:44:03 ID:IGGoRNtq
 

819 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:44:06 ID:Yvw12RCW
不意に瑞穂が歌い始める。
「これアセリアさんが歌ってたんです……どうか死んでった人達の為に」
そして歌い続けた。

ボク達ももそれに続く。

どうか安らかに。

全てに送る子守唄。

もうみんなの姿が見えなくなってきた。

でもこの手のぬくもりだけは確かに伝わってる。

温かい。

とても、とても。

その温もり絶対忘れない。

さよなら。

戻ろう、皆で。

ありがとう。

ずっといき続けよう。



820 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:44:30 ID:IGGoRNtq
 

821 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:44:47 ID:VPfUjoB1


822 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:45:14 ID:ztdMplUT
 

823 : ◆UcWYhusQhw :2008/01/29(火) 01:46:29 ID:Yvw12RCW
きっと進む先には幸せが訪れると信じて。
みんなの思いを継いで生きれるって思って。

だから、生きる。

生き続ける。



そう、ボクらの行く先は温かい光に満ちてるんだから。

ずっと、ずっと。

いつまでも。



【倉成武@Ever17 -the out of infinity- 生還】
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる 生還】
【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart- 生還】
【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン 生還】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭 生還】
【羽入@ひぐらしのなく頃に祭 生還】
【鈴凛@Sister Princess 生還】
【メカ鈴凛@Sister Princess 生還】


【ギャルゲロワイヤル END】

824 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/29(火) 01:46:44 ID:ZaWsgsxI
 

825 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:45:21 ID:3ZVERrpP
「旅行?」
私が鸚鵡返しに聞き返すと名雪は小さく頷いた。
「そう、私と祐一とあゆちゃんに北川君、それと祐一の知り合いの先輩二人と行こうって話になったんだ」
「そうなの……、 でも大丈夫? 今の話だと大人が一人も居ないみたいだけど……」
名雪もだいぶしっかりしてきたし、祐一さんや年上の先輩も居るようなので多分大丈夫だろうとは思ったけど大人が誰一人としていないのはやっぱり親として不安になる。
「私がついて行きましょうか? やっぱり保護者は居た方がいいと思うの」
「!?」
私がそう言うと名雪の表情が一変した。
明らかに不味いと言いたげなその表情に私が疑問の声を洩らすよりも先に名雪がいくぶんか慌てた様子で口を開く。
「だ、大丈夫だよ。付き添いなんてしなくても…、本当に私たちだけで大丈夫だから」
「でも……」
「あっ、荷物の準備しなくちゃ……お母さん、私ちょっと買い物行ってくるね…」
「……」
いつになく頑なな態度を見せる名雪に私は妙な違和感を感じたが、結局それがなんなのか私はついに確かめることが出来なかった。


そして旅行当日、私は玄関先で出掛けて行く名雪達を見送っていた。
あの後祐一さんやあゆちゃんにもそれとなく付き添いの話を打診してみたがやっぱり断られてしまっていた。

「あははー、皆さん準備は大丈夫ですかー?」
「……ばっちり」
「私もオッケーだよ」
「もちろんだぜ」
「あっ、おやつのタイヤキ持つのを……」
「それは現地で買え」
「うぐぅ……」

みんな思い思いと言った感じで談笑を楽しんでいるようだった。

826 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:47:01 ID:3ZVERrpP
いつもと変わらぬ光景。
どう見てもそのようにしか見えないのに私は違和感を覚えずには居られなかった。そしてそれはだんだん大きくなってきている。
「? どうかしました? 秋子さん……」
私の様子がおかしいことに気が付いたのか、祐一さんが声を掛けてくる。
違和感がなんなのかまだはっきりとしていなかったが私は思い切ってその言葉を言うことにした。
この言葉を言える最後のチャンスのような気がしたからだ。
「……祐一さんやっぱりこの旅こ……」
「おーい相沢! 何やってるんだよ? 置いてくぞー!」
「あっ、悪い……」
言え、なかった。
祐一さんはくるりと踵を反すと荷物を肩にかけ歩き始めていたあゆちゃんたちの後を追いはじめていた。
去り行く祐一さんたちの後ろ姿をぼんやりと見ながら私の中の違和感がある言葉に置き変わる。
そう、足りないのだ。 絶対にあるべき筈の何かが足りないのだ。

「それじゃあ秋子さん行ってくるね〜」

聞こえてきたのはあゆちゃんの声。
だけどまだ大して離れてもいないのに、その声はやけに遠くから聞こえるように感じた。

「秋子さん、行ってきます」

そう言えば今日は何日だっけ? そもそも今日は休日だったっけ?
色々な思考が頭の中をぐるぐると巡る。
そうしている間にも名雪達の声はまるで霞みがかかるようにどんどん遠くなっていく。
いや声だけではない、名雪達の姿もいつの間にかぼやけはじめている。

827 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:48:48 ID:3ZVERrpP
妙に現実感のない感覚だな……そう思った私は次の瞬間はっとなった。
そう、この感覚は夢を見ている時とまったく同じソレ。そして私は今まさに……

「じゃあね、お母さん……………………」

その夢から醒めようとしていた……

   ◇   ◇   ◇


夢から目覚めた時、私は病院の病室にいた。
目覚めた直後に見た医師や看護師さん達の驚きを隠せないと言った表情は今でも覚えている。そして後日聞いた三つの事実についても……。

一つは私が交通事故に遭い三日間もの間、生死の境を彷徨っていた事。
さらにその状態から私が奇跡的に意識を回復したこと。
そして……私が事故に遭ったその日から名雪や祐一さん達が行方不明になっている。ということ……

あの日から半年が経過していた。
私は事故の後遺症もなく無事に退院し、今では普通に生活をおくれるようになったが名雪達の行方は今だに分からないままだった。
当初はニュースやワイドショーで散々騒ぎ立てたマスコミからもすっかり取り上げられなくなり、私の周りはやけに寂しいものになってしまった。
警察の方は未だに捜索を続けてくれているが、規模はだいぶ縮小されてきたという。
そんな中で私の時間はあの日から止まったままだった。
仕事はおろか食事すらまともに喉を通らず、体重は見る見るうちに落ちていった。
鏡に映る姿が入院していた頃よりも顔色が悪くなっているように見えるのはきっと勘違いではないと思う。

828 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:50:23 ID:3ZVERrpP
以前は電話がかかってくる度に慌てて受話器を取っていたが、今では電話に出る気力すらなくなりかけていた。

「…………」

窓の外には遠くまで透き通るように晴れ渡った夏の空と、ジリジリと輝く太陽の光で白く照らされた見慣れた街の姿。
そんな明るい世界とは対照的に家の中は真っ暗だった。
電気はもちろん、例年なら使わずにはいられない空調すら使わず私はただぼんやりと窓の外を眺め続けていた。
何も考えられなかった。 今眺めているのは本当にいつもの街なのか、そもそも今自分が起きているのかすら分からなかった。
そんな時だった。 何も無かった私の世界に変化をもたらした音が聞こえたのは……

     …ん

最初は気のせいだと思った。 余りにも久しく聞いていない音だったから……

  …ぽーん

今度はやけに遠くから聞こえたような気がした。 まるでいつか見たあの夢の終わりの時のように……

 ぴんぽーん

三度目になってやっとはっきりと聞こえた。 それは玄関の呼び鈴の音だった。
事件が世間やマスコミから注目されていた時はしょっちゅう聞いていた音だが、最近はめっきり聞かなくなっていた。
近所の人はうちに近寄らなくなったし、新聞も3ヶ月前に取るのを止めている。  警察からの連絡は基本電話がほとんどだ。
最初は出なくても良いやと思った。 今は動きたくすらなかった。

 ぴんぽーん


829 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:52:10 ID:3ZVERrpP
それでも呼び鈴は鳴った。 5回、6回、7回……
決して急かすようにではなく一回一回鳴らすたびに様子を見るように間が空き、それでも私が出ないと呼び鈴がまた鳴った。

 ぴんぽーん

10回目の呼び鈴が聞こえた時、私はようやく身体を起こし立ち上がった。
少しよろよろとしながら玄関まで来ると覗き窓から相手を確認することもせずにまったく無用心に私はドアを開けた。
「…………」
ドアの向こうにいたのは余りにも予想外の相手だった。
予想外すぎて、誰でも良いからとりあえず出よう、ぐらいにしか考えていなかった私は思わず動きを止めた。
そこにいたのは1人の女の子。
短めに切りそろえられた髪と、雪のように白い肌、さらにその身に羽織った季節外れなストール。
私はきっと訝しげな顔をしていたのだろう、女の子は怖ず怖ずとした様子できりだした。

「あの、相沢さん……じゃなくて水瀬さんのお宅はこちらで宜しいでしょうか?」
「そうですけど……貴女は……」
そう言いかけてふと思い出した。
あの事件があった数日前に祐一さんに連れられて家にきた女の子だ。
祐一さんが珍しく家に連れてきた子だったのと、今も羽織っているストールがとても印象的だったので覚えていたのだ。
確か名雪の友達の美坂さんの妹で名前は……
「美坂栞です。以前、一度だけこちらにお邪魔したんですけど……」
「ええ、覚えてるわ。 確か半年前に祐一さんに連れられて……」
「そう、それです。 あの……お久しぶりです」
そう言うと栞ちゃんはぺこりと頭を下げた。
私も軽く会釈をし、それからふと沸いて出た疑問を口にする。
「それで、今日は一体どう言ったご用件かしら? 祐一さん達でしたら今は……」
「いえ、それは分かってます」

830 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:53:42 ID:3ZVERrpP
私が何を言おうとしていたのか分かったのか栞ちゃんは私の言葉を途中で遮った。
「実は……今日は秋子さんにお話があって来たんです」
「私に……?」
あまりにも予想外の言葉に思わず私が聞き返すと栞ちゃんは無言のまま真剣な表情で頷いた。
「……分かったわ。 ここではなんだし、上がってください」
「すいません、お邪魔します」
その様子に何かを感じた私は少しだけ考えた後、栞ちゃんを招き入れた。

   ◇   ◇   ◇

「はい、どうぞ……」
「あっ、すいません」
私が差し出したお茶を栞ちゃんは小さく頭を下げながら受け取ると一口口に含んだ。
私も栞ちゃんの合い向かいの椅子に腰を下ろし、同じようにお茶を口にする。
そう言えばこんな風にお茶を煎れて飲むのも久しぶりだなと思いつつ、私は栞ちゃんに話し掛けた。
「それで、私に話がある、って言うのは一体……」
私の言葉に栞ちゃんは一瞬びくんとなり、次に視線を泳がせ、最後に小さく深呼吸をしてから私の方に向き直った。
「え、えっと……実はちょっと恥ずかしい、と言うかかなりおかしな話なんですけど……」
それでも良いですか? と言うように言葉を区切った栞ちゃんに対し、私は無言で頷く。
「話したいこと、というのは私が半年前に見た夢の話なんです」
「半年前に見た……夢……?」
その言葉に私は思わず反応していた。
普通なら夢の話などたわいもない話だが、今の私には、さらにそれが半年前のあの時期の夢の話となると別格の意味と重さを持つ。
あの日見た、未だにはっきりと記憶に残るあの不思議な夢。 そしてそれが意味することを深く考えまいと忌避している夢。
栞ちゃんの話は続く。
「実は、半年前のあの頃、私はお医者さんからも余命いくばくもないって言われる位の病気を患っていました」
「えっ?」

831 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:55:17 ID:3ZVERrpP
あまりにも意外な言葉に私は思わず栞ちゃんを見つめた。
一目見たときからかなりの色白な肌をしているな、と思ったが、それは病的なものではなくむしろ頬の辺りに僅かにさした赤みと相まって健康そうに見える。
とてもそんな事を宣告された人間には見えない。
するとそんな私の視線に気が付いたのか、栞ちゃんが少し慌てながら補足する。
「あっ、今はもう全然何ともないんですよ。 ただあの頃、祐一さんと出会った頃の私がそうだった。 って言うだけの話ですから」
それから栞ちゃんは祐一さんたちとの出会いからその後の顛末を話してくれた。
街路樹の並ぶ雪道での出会い、その病ゆえに出来てしまった姉妹間の溝、その溝の修復に奔走してくれた祐一さん達、そして訪れた別れの日。
そのいずれにも私の知らない祐一さんや名雪の姿があった。
「私、死にたくなんかなかったです。 でももうこれで終わりなんだ、って諦めてました。 諦め切れなかったけど、諦めたことにしようとしたんです」

「そして、あの日を迎えました。 私の容態が急変して、今夜が峠だろうと言われたあの夜が……」

   ◇   ◇   ◇

あの夜、私は夢を見ました。
夢から覚めて半年も経つのに今でもはっきりと思い出せる……いえ、忘れることが出来ない夢。
その夢の中で私は祐一さんやあゆさんや名雪さん、北川さんやその他たくさんの人と遊んでいました。

例えばそれは雪合戦だったり……、

「痛てぇ!? こらっ栞ッ! 雪玉の中に石は反則だぞ!!」
「えっ? 私は入れてませんよぉ……」
「じゃあ、一体誰が……」
「あはは、ごめんね祐一くん」
「あゆ……、お前なぁ…ふごっ!?」
「わ、当たった、当たったよ! 祐一隙あり過ぎだよ」
「……名雪、お前もか……」


832 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/31(木) 20:55:53 ID:gZZl1QJr
 

833 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:56:52 ID:3ZVERrpP
雪だるま作りだったり……、

「出来た……」
「あははー、大きいのが出来ましたねぇ」
「佐祐理さんたちのは軽く5メートルはありそうだな……よし、北川! そっち持て! 俺たちは10メートルクラスのヤツ作るぞ!!」
「はいよ! って、んなでかいの作れるかッ!!」
「舞、今度は50メートルクラスの鎌倉作りましょうか」
「……まかせて」
「って、そっちもなんか無茶なこと言ってるしー!!?」

とにかく皆さんが笑顔で遊んでいました。
私も終始笑顔で、子犬のように元気に雪の中を駆け回っていました。
あっという間に一日が過ぎていって、夕方になって……、皆で並木道を通って家路につきました。

「うぐぅ、もう終わり? ボク、もうちょっと遊んで居たかったなぁ……」
「あはは、そうですね。 でも今日はもう遅いですから、今度また遊びましょう、今日みたいに皆で集まって……」

私がそう言ったときでした。 今まで絶えなかった皆さんの笑い声がすっと消えたのは……
「…………」
「えっ? あ、あれ? わ、私、何か変なこと言っちゃいましたか?」
「い、いやスマン、あまりに唐突だったんで驚いただけだ」
「そう……ですか?」
軽く笑いながら祐一さんはそう言ってくれましたが、私は妙な違和感を感じずにはいられませんでした。
まるで、私と祐一さん達との間に決定的な違いがあるような、そんな感じがしたんです。
「うぐぅ、でもやっぱり物足りないなぁ……そうだ! ねぇみんな、これからボクの学校に行かない?」
「あゆちゃんの学校……? そういえば、私達とは違う学校に通ってるんだっけ」
名雪さんの言葉にそう言えば確か前にそんな話を聞いたなぁ……と私が思っていると、他の皆さんもその事について話し始めました。

834 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 20:58:31 ID:3ZVERrpP
さっきまで感じていた筈の妙な違和感については何故か忘れていました。
「うちと違う学校? 相沢、どこの学校ことだ?」
「いや、俺に聞くなよ」
「でも今から行って大丈夫かなぁ……」
「ボクの学校、校則ゆるいから大丈夫だよ。 多分……」
「夜の学校ですか……面白そうですねー」
「……コレの出番?」
みんななんだかんだと言いながら最終的にあゆさんの学校に行って見ようか、という話になりました。(何故か舞さんが剣を持ち出してきていましたが……)
それなら、と私も付いて行こうとしたのですが……

「あー、ちょっと待った。 栞はダメだ」

祐一さんが急にそんなことを言いだしたんです。
「ええっ!? 何でですか!?」
「そろそろ帰らないと香里が心配するだろ? って言うか帰さないと俺が香里に殴られる」
「なんですか、その中途半端な理由は……」
祐一さんの言っている事はもっともで正論だったんですが、ちょっぴり悔しくて私は少しだけ意地悪を言いました。
「えぅ〜、でも私だけ仲間外れなんてひどいです。 お姉ちゃんに今の言葉、言っちゃいますよ」
「ちょっと待て栞! それは勘弁してくれ」
「そんなこと言っても遅いです。 もう決めました」

私としては軽い悪ふざけのつもりだったんです。
祐一さんをちょっと困らせて、「冗談です」の言葉を残して帰る。 いつものパターンです。
でも今回は何故かそこに名雪さん達も割り込んできたんです。

「ん〜、でもやっぱり香里を心配させちゃ悪いと思うな。 デリカシーの無い祐一には私が言っとくから栞ちゃんは帰った方が良いよ」
「そうだぜ、美坂をあんまり待たせちゃマズイって」

835 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 21:00:32 ID:3ZVERrpP
「ご家族の方を心配させるのはやっぱりいけないと思います」
「早めに帰ったほうが良い」
「うぐぅ、残念だけど待ってる人が居るんじゃ仕方ないね。 ここでお別れだよ、栞ちゃん」

その時、私は唐突に気が付いたんです。 私が今見ているこの世界がなんなのか、そしてどういう状況におかれているのか……
それと同時に思ったんです。

これ以上私はここに居ちゃいけないんだ。って……

だから私はみんなに言われて仕方なく、という風を装って、 
私が事実に気付いてしまった事を悟られないようにして、
いつもの何の変哲もない日常で終わらせるために……

「分かりました。 それじゃあ一足先に失礼しますね。 あっ、祐一さん、あとであゆさんの学校がどんなだったか、きちんと教えてくださいね」
「ああ、分かった。 それじゃ、行ってくるな」

そう答えた祐一さんはバレバレの作り笑顔で、私も普段通りのつもりで全然不自然な笑顔で、私達は別れました。
私は皆さんが見えなくなるまで見送ろうと思ったんですけど、そこで視界と意識が急に遠くなり始めて……

   ◇   ◇   ◇

「気が付いたらそこは元の病室で、目の前に泣き腫らした顔のお姉ちゃんやお母さんが居ました。
 なんでも三日間くらい生死の境を彷徨っていたらしくて意識が戻っただけでも奇跡的だったそうです」
「…………」
「そのあとからです。 もう治らないって言われていた私の病気が徐々にですけど治りはじめたのは……」
同じだ。 と私は思った。
私は交通事故で、栞ちゃんは難病で……

836 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 21:02:06 ID:3ZVERrpP
どちらも多少の差はあれど祐一さん達の夢を見てから奇跡的な回復を遂げている。
そうなるとやはりあの夢は単なる予感や夢想の類ではなく、別の意味を持った、いうなれば名雪達から私達へのメッセージなのではないだろうか?

「…………」
「…………」

沈黙が部屋を支配した。
考えをまとめる必要があった。 この半年の間、考えないようにしていたツケを払うように、私は考えた。
私達が経験した夢と奇跡、それらに込められた真意について……

「秋子さん、秋子さんは、自分は今、誰かの夢の中に居る。 そんな風に思ったことはありませんか?」

どれ位の時間が過ぎたのだろうか、突然栞ちゃんがそんなことを言い出した。
私は軽く首を横に振りつつ、先を促す。
「私も無かったです」
「無かった……ということは今は違うのね?」
「ええ、そうなんでしょうね」
「続けて頂戴」
きっとこれから話す内容は栞ちゃんなりの回答。
それで私も納得できるかどうかは分からないけど、聞いてみる価値は十二分にあると思った。

「私達の夢を見ている誰かは一つだけ……いえ、その夢の内容を自由に出来るんです。 誰かにとっての理想を体現した夢の世界、それが私達の世界なんです」
「どうしてその誰かは夢の中とはいえ理想を実現できるの?」
「最初から出来た、という訳じゃないんです。 理想を、その願いを、ただ一心に求めて、頑張って、抗って……ずっと諦めずに求め続けたそのご褒美なんです」
「そして、その誰かが願ったこと、それは……」

ああ、何故だろう? 栞ちゃんはまだ結論を言っていないのに、私はその答えが分かったような気がした。

837 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 21:03:39 ID:3ZVERrpP
夢を見ている誰かが願った夢の中だけでも叶えたかった理想、それは……

「みんなの笑顔で満ち溢れた、平穏な日常。 自分達を温かく迎えてくれる還るべき場所」

「そして、それを実現するには誰一人として欠けてはいけなかったんです。 例えその人の命の灯火が消えかける寸前であったとしても……」
そういいながら栞ちゃんは遠くを見るようにすっとその目を細める。
まるで「これであってますか?」と、夢を見ている誰か――名雪や祐一さん達に尋ねるかのように……
「……なんて、ちょっとかっこつけすぎですよね?」
気恥ずかしくなったのかちょっとおどけながらそう言う栞ちゃんに私は首を横に振ってみせた。
「いいえ、そんなことないわ。 私もそうだと思うもの……きっとそうよ」
今なら分かる。 あの夢で名雪達が伝えたかったことは今生の別れなんかじゃない。
そんな悲しくて後ろ向きなことじゃなくて……

   ◇   ◇   ◇

「実は私、さっきの夢の話で、まだ話してないことがあるんです」

栞ちゃんがそんな言葉を漏らしたのは、もう帰るから、と玄関まで出てきた時のことだった。
「話してないこと? 何かしら?」
「はい、夢の終わる直前、去り行く祐一さん達を見送りながら大声で私、尋ねたんです。 『必ず帰ってきてくれますか?』 って……」
「……それで、祐一さん達はなんて?」
私が尋ねると、栞ちゃんはにっこりと微笑んで、

「『絶対帰ってくるから、待ってろ』って…………、そ、それじゃあ失礼しますね。 お邪魔しました!」

そう言うと栞ちゃんは外へと駆け出して行った。
その時の表情は良く見えなかったけど、目尻に光るものがあるのが一瞬だけ見えた気がした。

838 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/31(木) 21:04:40 ID:hvPqKPKW
 

839 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 21:05:13 ID:3ZVERrpP
「絶対帰ってくるから、待ってろ……か」
また、私一人だけになった玄関で、思わず反芻する。
どこかで似たような言葉を聞いたような気がするのは気のせいだろうか?
どこか……そう、あれは確か、あの夢の終わりのほうで……

「あっ……」

その言葉を思い出した時、私は思わず涙していた。
あの夢の最後、本当に最後の目覚める直前に、名雪が私に向かって言った言葉。

「じゃあね、お母さん……、きっと帰ってくるから、待っててね」

どうしてもっと早く気づかなかったのだろう? どうしてもっと早く思い出さなかったのだろう?
名雪はちゃんと伝えたかったことを、言葉を遺していたではないか……
それなのに私はそれに気づかず、この半年間なにをするわけでもなく無駄に浪費しているだけだった。
「私、母親失格ね」
自嘲するようにそう呟きながら私はリビングに戻ろうとして、直後に鳴り響いたチャイムに呼び止められた。

 ぴんぽーん

「はーい?」
私はさっき帰った栞ちゃんが忘れ物でもしたのだろうと思い、特に何も考えずにドアを開けた。
「……あら?」
ドアを開けた先には誰もいなかった。
栞ちゃんも居なければ、通りを歩いている人も居ない。
あるのは夏の日差しに照らされた見慣れた玄関先の光景だけ。
(気のせい……かしら?)

840 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/31(木) 21:06:18 ID:hvPqKPKW


841 :風の還り着く場所 ◆3Dh54So5os :2008/01/31(木) 21:07:00 ID:3ZVERrpP
そう思いつつ、ドアを閉めようとして……、私は足元のそれに気がついた。

「……これは」

玄関先の縁石の上にあったもの――それは六つの綺麗な雪うさぎ――

ジリジリと照らす夏の日差しの下だというのに、まるで降ったばかりの新雪で作ったような真白の雪うさぎ。
それが一体なにを示すのか、私は瞬間的に悟った。
私は雪うさぎの一つを両手ですくい上げると胸元に抱え込んだ。

「おかえりなさい」

私がそう言うと、まるで安心した途端眠りに就く子供のように、六つの雪うさぎは大気に溶け込むようにすっと消えていった。
雪うさぎが完全に姿を消す直前、ひゅうと吹いた風に乗ってあの子たちの声が聞こえたような気がした。


                             『ただいま』


【ギャルゲロワイヤル Kanon's part END】

842 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/01/31(木) 21:08:46 ID:hvPqKPKW


843 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:28:17 ID:zzbrKOSR
和机にうず高く積まれた紙の山。
それは机と言う領域を乗り越え、床の上にまで侵食し、そこに机の上のそれと同等の高さにまで山を築き上げている。
その山の一つが、シャッ、シャッと紙を捲る音と共に、一定の間隔で低くなっていき、その隣に同じ間隔で新しい山が築き上げられる。
その音の発生源は、一人の男。
和机の前に腰を下ろした男が、片方の手で一心不乱に紙の山を減らし、もう片方の手に握った筆で何事かを書きつけ、その横に積み上げる事によって音が奏でられている。

…やがて、一つの山が完全に姿を消し、そこにあった山が隣に同じ大きさの山を築き終わる。
そして、男は間を空けずに、次の山を崩しに掛かる。
男は、その作業を延々と続けていたが、ある時ふと顔を上げた。
ドスドスっという徐々に大きくなる異音が、男の居る部屋へと近づいて来たからである。
その異音、足音の主は部屋の前まで至ると、無遠慮に扉を開いた。
そこに現れたのは、鎧を身に纏った精悍な顔つきの大男。
尖った耳と、顔に刻まれた大きな刀傷が外見を特徴付けている。

「大将、そろそろ時間ですぜ」
大男は、扉を開いた時の無遠慮な態度そのままに、部屋の主に告げる。
「そうですか」
それらの態度には構わず、男は片手に握っていた筆を机に置き、すぐさま立ち上がる。
そうして、僅かにのびをした後、
「行きますよ、クロウ」
とだけ告げて、大男―クロウの返事を待たずに、部屋から出る。
「へいへい」
というクロウの答えが、その後に聞こえた。



844 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:29:27 ID:zzbrKOSR
謁見の間。
国の皇たる相手と会うために使われる大部屋。
その中心に、一人の女性が居た。
その場所に居る以上、この女性こそ今から皇と謁見する相手なのであろう。
長い金の髪、母性の象徴たる豊かな胸、僅かに憂いを秘めた美しい貌。
どれをとっても特徴的ではあるが、それらを差し置いてまず人目を引くのは、女性の背中の、白く美しい翼の存在であろう。
その翼こそ、この大陸において調停者と称される『オンカミヤムカイ国』のオンカミヤリュー族たる証。
そうして、この女性はそのオンカミヤムカイ国の第一皇女、名をウルトリィといった。

女性の表情は険しい。
その表情からでも、この会合は余り友好的なものでは無いと伺える。
その顔は、玉座…ではなく、その横に立つ一人の男へと向けられている。
見ると、本来謁見を行うべき皇の座る筈の玉座には、誰も居ない。
そうして、ウルトリィも、男も、この場にいる全ての人間も、それを当然の事と受け止めている。

「それでは…これでお別れになりますね、ベナウィ様」
長く、意味の無い儀礼が終わり、女性は最後の挨拶を述べる。
そう、『最後』の挨拶。
オンカミヤムカイより大使としてトゥスクルに滞在していたウルトリィ皇女に、帰国の時が訪れたのだ。
「いえ、長きに渡る助力に感謝しております」
男―ベナウィはそう礼を返す。
本来は、皇たるものが返すべき返礼は、ベナウィの口から発せられる。
玉座の傍らに立つベナウィこそ、現在、主不在なトゥスクルをを事実上統べる位置にあるのだ。

ある日、トゥスクル国にて皇たるハクオロ及び重臣数名が失踪。
その中には、ウルトリィの妹であるカミュも含まれていた。
以前に、ウルトリィも含めて数人でナ・トゥンクへと旅立った出来事もあったが、その時とは違い置手紙も存在しておらず、移動手段すら定かでは無い。
懸命の捜索にもかかわらず、手掛りすら掴めていない。


845 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:30:44 ID:80M2/tlW
 

846 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:30:45 ID:zzbrKOSR
原因不明の現象ではあり、続発する気配の無いものではあったが、それでもオンカミヤムカイの皇女が行方不明になったのは事実。
そのような危険な国に、跡継ぎたるウルトリィを滞在させておく訳にはいかないという判断により、彼女に帰国の命が下ったのだ。

公的には、オンカミヤムカイはトゥスクルに対して、調停者としての立場を崩してはいない。
だが、元より二人の皇女が滞在していたという時点で、ある程度の厚遇であった事は事実。
その恩恵が無くなるどころか、カミュの行方不明によってむしろ不利に扱われる可能性すら存在する。
皇が不在なところに追い討ちにしかならない。
が、その事を理解していても、ウルトリィには他に選択できる道は無い。
ウルトリィとて、カミュや親しい友人達の安否が気がかりであったが、それでも皇女という立場では、残る事など出来る筈も無い。
むしろ、今日までの数日間、トゥスクルに残り続けていたことが彼女の出来うる限りの抵抗であったのだろう。

「少しでも早く、皆様の無事が確認できることを祈っています」
そう、話を締める。

(……しらじらしいですね)
顔には出さず、心の中で呟く。
そう、この会話は無意味なモノでしかない。
少なくとも、ウルトリィ、ベナウィ、そしてクロウの三人にとっては。



「失礼…します」
挨拶をして、部屋に入る。
痛いほどの静寂、触れただけで割れてしまいそうなほど透明な空気。
その部屋には、静謐な空気が満ちていた。



847 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:31:16 ID:Bd4Bu8wg
 

848 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:31:41 ID:zzbrKOSR
「ウルトリィ様…」
部屋の中に居た双子の片割れ―ドリィが、訪問者を見て取り、立ち上がる。
それを片手で制して、ウルトリィは部屋の奥、この部屋の主が伏せる寝台へと移動する。
寝台の少し前に座っていたもう一人、グラァがウルトリィの為に場所を空ける。
その動きに、寝台の端で丸くなっていた白い獣が、僅かに顔を挙げ、ヒクヒクと鼻を鳴らし、そうして再び蹲る。
ここ数日、もはやそこが定位置となった獣の動きに、寝台の主が反応する。

「…ウルトリィ…さま」
僅かに、ウルトリィの方に顔を向けたのは、目を瞑ったままの少女。
「お体はどうですか…ユズハさん」
ウルトリィの訪問に対して、体を起こそうとする少女を制しながら、告げた。
…聞く必要など、無い。
誰の目にも明らかな事実。
少女は、もう、長くは無い。
元より、長くは無い身体。
ソレを永らえさせていた薬師は、この国の主達と共に消え、またその身体を蝕む病を抑える方法も、同時に消えた。
最早、彼女の体を長らえる方法は無い。

だが、彼女の体の急激な衰えは、身体的な物だけでは無い。
彼女の心が、急激に生きる力を喪っていった事が、最も大きな要因だろう。
ユズハを包んでいた世界は、壊れた。
彼女を庇護し続けていた兄も、共に過ごした友人達も、密かな想い人も、全ては消えた。
今残っているのは、兄を慕っていた双子と、友人の匂いが残る獣…いや別の友人のみ。
彼らに責は無い。
現に、ユズハの為に、今も傍にあり続けているのだから。
いや、彼らだけでは無く、ベナウィも、クロウも、ウルトリィ本人も、幾度と無く彼女の元に足を運んでは、元気付けようとした。
だが、それはあくまで残滓でしか無い。
彼女に生きる力を与えていたモノは、今はもう無いのだ。


849 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:31:48 ID:Bd4Bu8wg
 

850 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:32:19 ID:80M2/tlW
 

851 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:33:09 ID:zzbrKOSR
「夢を…見ました」
少しして、ユズハが弱い声で喋りだす。
最早、彼女には声に力を込めることすら困難なのだ。
「……夢…ですか?」
少女の意図がわからず、ウルトリィは疑問を返す。
そもそも、今回ウルトリィがユズハの元を訪れたのは、彼女が話したい事があると告げられたからだ。
だから、少女の意図は未だわからない。

「カミュちゃんの、夢を見ました」
「え……」
ウルトリィは僅かに大きな声を出してしまう。
夢を見る。
それは、別段おかしな事では無い。
だが、ユズハがわざわざウルトリィに告げるほどの事柄では無い筈だ。

「ハクオロ様は、亡くなられたそうです」
少ししてユズハは、更に小さい声で告げた。
「!……」



暖かい間隔に、ふと目を開く。
おかしな事だ。
そもそも、わたしは目を開いた事など無いのに。
けど、何故かその時だけは目を開いた。
見える筈なんて無いのに、何故か見える気がしたから。

そうして、目の前には知らない筈の女の子が立っていた。
そもそも、顔を知っている相手など、一人もいないのだけど、その子の事は知らないと理解できた。


852 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:33:20 ID:Bd4Bu8wg
 

853 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:33:30 ID:80M2/tlW
 

854 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:34:46 ID:zzbrKOSR
でも、
「カミュ…ちゃん」
見たことも無い、本人とも思えない相手なのに、何故だか自然と声が出た。
それが、正解なんだって、解った。

「ごめん…ユズハちゃん」
カミュちゃんが謝る
表情は変わらないけど、とてもすまなそうな顔だった。
「お兄さん…もう、帰れないんだ」
声の調子も、とても悲しそうだった。
「おじさまも、アルちゃんも、みんな死んじゃったんだ」
カミュちゃんは続ける。
とてもすまなそうに、
「そして、私ももう、帰れない。
 姉さまに、御免なさいって言って」
悲しそうに、
悔しそうに、
告げた。

そうして、静寂。
なぜだろう、わたしには、それが本当の事なんだろうって理解できた。
…悲しくは、無かった。
何故か、覚悟は出来ていたから。


855 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:34:54 ID:Bd4Bu8wg
 

856 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:35:35 ID:zzbrKOSR
そうやって、少しの間静かに向かい合っていて、
「ただ、一つだけ」
また、カミュちゃんが告げる。
「もう、こんな事は起きないから。
 お父様が…死んじゃったから」

そうして、カミュちゃんは羽を広げる。
黒い羽が、辺りに舞い散る。
「だから、もう、こんな悲しい出来事はお終い。
 何の救いにもならないけど…でも、それだけは確かな事」

そして、飛び立とうとするカミュに
「待って…」
声を掛けた。



「兄様は、亡くなられてしまったのですね…」
言葉を無くすウルトリィに構わず、ユズハは続ける。
「ハクオロ様も、アルルゥちゃんも、エルルゥ様も、カルラ様も、トウカ様も」
傍に控えている双子も、何も言えない。
ただ、少女だけが告げる。
「『御免なさい』と、カミュちゃんは言っていました。
 ウルトリィ様に伝えて欲しいと」

そうして、ユズハの話は終わった。



857 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:35:37 ID:80M2/tlW
 

858 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:36:13 ID:zzbrKOSR
追憶は、ここで終わる。

その数日後、ユズハは亡くなった。
彼女を見取った双子も、既にこの国には居ない。
獣は、既に森へと帰っていった。

ユズハの告げた内容は、何の根拠も無いもの。
だが、それがおそらく事実なのだということが、何故だか理解できてしまった。
その事実は、既にベナウィ達も承知している。
だからこそ、この会話も、現在も続いている捜索も、全ては無意味な行為でしかないのだ。
それでも、国としてはそのような不確かな事実を認めるわけにはいかない。
だからこそ、彼女は自身の欺瞞を強く感じるのだ。


「それでは、ウィツァルネミテアの加護のあらん事を」
そうして、無意味な会話は終わる。
その言葉が、更に自身の心を削る。
加護など、最早望む事は出来ない。
彼女の考えが正しいのならば、ウィツァルネミテアこそがこの国の皇を、彼女の妹を奪ったのだから。

それでも、彼女はオンカミヤムカイの皇女として、責務を履行する。
感情など表に出さず、ただ大使としてこの国での最後の役割を終えた。



859 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:36:33 ID:Bd4Bu8wg
 

860 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:36:51 ID:zzbrKOSR
和机にうず高く積まれた紙の山。
それは机と言う領域を乗り越え、床の上にまで侵食し、そこに机の上のそれと同等の高さにまで山を築き上げている。
その山の一つが、シャッ、シャッと紙を捲る音と共に、一定の間隔で低くなっていき、その隣に同じ間隔で新しい山が築き上げられる。
その音の発生源は、一人の男。
和机の前に腰を下ろした男が、片方の手で一心不乱に紙の山を減らし、もう片方の手に握った筆で何事かを書きつけ、その横に積み上げる事によって音が奏でられている。

…やがて、一つの山が完全に姿を消し、そこにあった山が隣に同じ大きさの山を築き終わる。
そして、男は間を空けずに、次の山を崩しに掛かる。
男は、その作業を延々と続けていたが、ある時ふと顔を上げた。
ドスドスっという徐々に大きくなる異音が、男の居る部屋へと近づいて来たからである。
(そういえば、ここしばらくクロウの足音でしか、執務を中断することはありませんね)
ベナウィはそう思考しながら、副官を、今となっては唯一の友を迎える

「大将!
 西が動いたぜ!!」
開口一番、クロウは告げる。
蹴破らんばかりの勢いで扉を開き、部屋中を満たすほどの大声で叫ぶ。
最も、その勢いとは裏腹に、クロウの態度は平静そのものだ。
「…やはり、ですか」
その声を受けるベナウィも、平静そのものだ。

『エルムイがクンネンカムイへと侵攻』
西方の大国であるクンネンカムイへの、武力侵攻。
小国であるエルムイが、単独でそのような無謀な戦を行うはずが無い。
その背後には間違いなくクンネンカムイに並ぶ大国、ノセシェチカの影がある。
この大陸において、三大強国と呼ばれる内の二つの戦いとなれば、それは当事者だけには留まらない。
間違いなく、最後の一つである、シケリペチムも動くだろう。
そして、その目的は、このトゥスクルである可能性が高い。
シケリペチム皇たるノウェは、ハクオロの失踪により興味を失ったとはいえ、トゥスクルとは戦争状態にあったからである。


861 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:36:56 ID:80M2/tlW
 

862 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:37:42 ID:zzbrKOSR
「直に、軍儀を開かなければなりませんね」
「おう、もう準備は出来ていますぜ!」
立ち上がり移動するベナウィに、クロウが付き従う。
シケリペチムとの戦となれば、トゥスクルの全戦力を動員しなければならないからだ。
そうして急ぐベナウィの背に、
「……大将……」
クロウらしからぬ、弱い声が掛かる。
「その話は何度もした筈です。
 それに、今行っても何の意味もありませんよ」
その目的は解っている。
ベナウィに皇位について欲しいと言う懇願である。
この数ヶ月、何度も繰り返された問答である。
「だけどよ、戦争だぜ!
 今度ばかりは旗印が居ないとよ!!」
クロウの言い分は正しい。
このトゥスクルという国の安定を考えれば、ベナウィが皇位につき、当面の安定を図るべきなのだ。
だが、元より新興国であるトゥスクルは様々な問題を内外に抱えている。
そうして、ベナウィは、元は圧制を行っていた旧支配者の側の人間であり、彼が国を継げば不満が噴出するのは、ほぼ確実と見られていた。
「……今は、そんな問答を繰り返している暇はありません。 急ぎますよ」
立ち止まったクロウには構わず、ベナウィは先に進む。

それを見て、クロウはしばし立ち止まる。
彼とて理解している。
「ああ、そうだよ。
 ……この国の皇は一人しか居ないんだって事ぐらいは解ってるよ」
そう、元よりトゥスクルの皇は一人しか居ないのだ。
ならば
(…皇を失った国は……)
不吉な予感にかぶりを振り、クロウはベナウィの後を追った。



863 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:37:53 ID:Bd4Bu8wg
 

864 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:38:24 ID:80M2/tlW
 

865 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:38:36 ID:zzbrKOSR
ふと、懐かしい匂いを感じた

彼は、目を開く。
空には、大きな月が輝いている。
本来なら、眠りに就いている時刻。
だが、彼は気まぐれに身を起こし、眠気の残る体で、移動し始める。
夜気に、僅かに体を震えさせながらも、歩みは止まらない。
そうして、徐々に加速しながら、匂いを追う。
森を抜け、平地を駆け、かつて居た場所を通り越し、
やがて、彼が偶に足を運ぶ場所。
丘の上の小さな石の傍に足を運ぶ。

懐かしい匂いは、そこにあった。
「……………」
匂いの主は、何事かを告げる。
だが、元より彼には言葉は通じない。
だから、彼は態度で返す。
懐かしさから、歓喜の感情を込め、彼は吼えた。
高く…
高く……
空に、彼方に届くように、高く… 



866 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:39:04 ID:Bd4Bu8wg
 

867 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/02(土) 01:40:51 ID:80M2/tlW
 

868 : ◆/Vb0OgMDJY :2008/02/02(土) 01:41:17 ID:zzbrKOSR
(約束…守れたのかな)
最後に残った友達の声を聞きながら、彼女は思考する。
あの時、彼女に告げられた最後の願い。
(帰ってきて…)
(私たちの元に…帰って来て。
 そして、自分で謝って……。
 心配掛けて、御免なさいって)

それだけを頼りに、残された僅かな力だけで、帰ろうとした。
少しずつ、這うように、懸命に、歯を食いしばって。
そうして、漸く、この場所まで帰りついた。
もう、長くは持たない。
元より、あの時に消え去ってしまう程度の力しかなかったのだから。
約束を果しに行く時間なんて無い。

だけど、
だから、これだけは言わないと。

「…ただいま」


【ギャルゲロワイヤル うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄 了】

869 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:20:23 ID:4hE0kXUO
――――『本日はよろしくお願いします』
(記者、一礼。白鐘沙羅、面倒臭そうな表情のまま記者を一瞥。以降「白鐘沙羅」を対象と表記する)

……っとに暇人よね、アンタらも。
私の所になんか来なくても、もっと他に書くべきことがいくつでもあるでしょうに。
え? 大きなお世話?
いやいや、地域密着型……っていうか、まぁニコスポらしいと思うわ。
三流地方紙っぽいゴシップじゃない? こんな機会でもなきゃ皆も聞きにくいだろうしね。
これでも、あんた達の無神経さと配慮の無さは評価してるもの。
…………一応、褒めてるのよ?

あ、コーヒー飲むわよね、インスタントしかないけど。
ちょっと待ってて。


――――『え、あの……沙羅さ――いえ白鐘さん。お構いなく』
(記者、狼狽。思わず地の呻きが漏れそうになるのを訂正。湧き出る冷や汗。対象、眉を顰める)

何でよ。そりゃあ依頼人……っていうか、まぁアンタは記者だけど。
それでも客に茶ぐらい出すわ。砂糖とミルクは付けてあげるから安心しなさい。
あ、ちなみに紅茶とか緑茶のがいいって要望はパスね。
うちにはコーヒーしか置いてないの。



870 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:21:09 ID:4hE0kXUO
――――『いえ、その、そういう訳ではなくて。正直に申しますと…………危険ではないのか、と』
(記者、対象が致命的な料理下手であると周知故の心の叫び。黒い水の襲来に恐怖。対象、露骨なまでの不快感を表明)

………………は? 何ソレ、お前は厨房に立つなって言いたい訳?
ちょっとちょっと、あれから何ヶ月経ってると思うのよ。
さすがにコーヒーくらい煎れられるって。
そりゃあキッチンで生命の危険を感じたのだって、両手の指に足の指足したって数え切れないのは否定しないわ。
でも、外食とかお惣菜とか。他所で賄うには限度ってもんがあるじゃない?
お金には困らないけど、だからって豪遊してていい訳でもないし。
私だって心身共に日々成長しているもの。


――――『それでは、得意料理なんかもあったりする訳ですか?』
(記者、薄い胸を張り満足げな表情を浮かべる対象に向けて質問)

………………………………………………と……くい……りょう……り?


――――『白鐘さん?』
(ぶるぶると台所で肩を震わせる対象を見て記者、地雷を踏んだことを確信する)

ま、まぁ…………うん、それなりには、ね。女の子だし。えーと、ほら、何だろう。
……そう、スパゲッティとか得意かな。スパゲッティ。
なんだか懐かしい響きじゃない。
それに……そう、お袋の味みたいな。ミートソースとかカルボナーラとか。
お湯の中に買って来たスパゲッティを入れて、ソースを絡めるだけだし。手軽で美味しくて良いこと尽くめ。
料理なんてちょろいもんね。レシピ通りに作れば誰だって同じものが再現出来るんだから。
パッケージの裏に丁寧な作り方まで載ってるんだし。

…………は? 塩? 何で?
馬鹿じゃないの。元からソースがしょっぱいのに、何でもっと塩味をつけなきゃならないの?

871 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:21:35 ID:PDoYgmlp
 

872 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:21:41 ID:4hE0kXUO
 □


――――『……では、始めさせていただきます。
     まず、この度は我がニコタマスポーツのインタビューに応じて下さり、ありがとうございます』
(数分後、記者ようやく着席。対象はパソコンの前へ。コーヒーに角砂糖は入れないようだ)

ん、そんな畏まらなくてもいいわ。
あんなことを言ったけど、何だかんだで私としても誰かに話しておかなくちゃ……って考えはあったのよね。
さすがに私の中だけで完結させちゃうのも悲しいし。
だからって普通に話しても、頭の変な子だと思われるだけじゃない?
明確な証拠は実際ほとんどないんだし。雲を掴むような話な訳よ。ただ事実と結果だけが転がっているだけの、ね。

ぶっちゃけアンタ達みたいな連中に話すのが一番適当だとは思ってた訳。
結構丁度いいタイミングだったかな。


『なるほど。さて、まずは事件の概要を』
(記者、緊張を露に。心なしか対象の表情も固くなる)

うん、どうぞ。


――――『20××年×月×日未明 双葉恋太郎、白鐘沙羅、白鐘双樹の三名が突然失踪。警察は誘拐事件と見て捜査を開始。
     捜査本部はこれを組織絡みの犯行と断定し、捜索を続ける。しかし明確な手掛かりは一切得られず数ヶ月が経過。
     そして、捜査が完全に暗礁に乗り上げた時――×月×日、白鐘沙羅一人だけが帰って来た。
     しかし、彼女は何故か何一つ主要な報道機関に自らに起こったことを語ろうとしない。親しい人達に対しても、です。
     この内容にどこか間違いはありますか?』
(記者、核心へ。対象、僅かな逡巡の後コーヒーを一口嚥下。「苦い」と一言残し、角砂糖を一つ投入)


873 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:22:25 ID:PDoYgmlp
 

874 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:22:32 ID:4hE0kXUO
……ん、ないかな。多分、全部合ってると思う。
っていうかアンタ達の方が私よりその辺は詳しいんじゃない? だって私は居なくなってた本人なんだし。

いやいや、でもなぁ。まさかこんなに時間が経ってるなんて考えもしなかった。
時間の感覚が狂ってた、って訳じゃない筈なんだけどさ。
帰って来て「今日何月何日?」って皆に聞いた時は滅茶苦茶驚いたもん。
んで、同じタイミングで心の中にぶわーっと"理解"みたいなのが広がる訳よ。「ああ、そういうことだったのね」みたいな。
「散々色々この眼で見たけど、結末まで相当にミラクルじゃん?」ってな感じで。
……あ、ゴメン。脱線した。


――――『いえ。しかし曜日の感覚がなかったというのは、やはり警察の発表通りどこかへ拉致監禁されていたということですか?』
(記者の質問に対象、"肯定"と"否定"どちらとも取れる微妙な表情を浮かべる)

拉致監禁……ね。正直、イエスともノーとも言えない質問かも。


――――『と、言いますと?』
(記者、すぐさま記録を開始。有力な証言が聞ける可能性が高い)

いや、拉致されたのは確かなのよ。確かに私達は見知らぬ土地にいたんだからね。
広義の意味で取るならば"監禁"も正解。
だからって私達がイメージするような"監禁"とは大分違うわ。っていうか普通に歩き回ってたし。
猿轡もロープも、ちょっと変態チックにSM的な各種拘束具なんかも全くなし。
あったのは"首輪"だけ、かな。



875 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:22:47 ID:PDoYgmlp
 

876 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:23:20 ID:PDoYgmlp
 

877 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:23:22 ID:4hE0kXUO
――――『く、首輪ですか? それはつまり……その、"飼われていた"ということですか?』
(「首輪」という単語に驚きを隠せない記者。しかし、興奮する記者を尻目に対象は呆れ顔で小さなため息を付いた)

……随分ストレートに聞くわね。んーまぁ近い、かな。
あ、でも言っとくけど。アンタらのご期待に副えるようなエッチな展開とか全然なかったわよ。
……最後の最後で結構なサプライズも一応はあったりしたんだけど。
何ていうか、そう古典的な感じの。えーと、アレよ。《ぽろり》みたいな。


――――『…………白鐘さん。あの、拉致監禁と《ぽろり》がどう関係して来るんですか?』
(飛び出す不可解なワードに困惑を隠せない記者。一方で対象はあっけらかんとした表情を崩さない)

あはは、別に全然関係ないわ。全部終わった後のエピソード的なもんかな。
ちょっとだけ、ね。懐かしくなっちゃって。
アレがもう何ヶ月も前のことなんて考え難くてさ。

……あ、ゴメンゴメン。失踪の真実だったわね。
それじゃあ、懇切丁寧に解説してあげるから一字一句漏らさず頭に叩き込むように。
聞くも涙、語るも涙の大冒険譚。私、白鐘沙羅の獅子奮迅の活躍っぷりをね!



(この後、彼女の口から隠されていた事件の真実が語られる。
 そしてそれは、私の頭がおかしくなってしまったのかと錯覚する程在り得ない話だった。
 記録テープを思わず消去したくなるほど荒唐無稽で波乱万丈な内容に、思わず眩暈がした程だ。
 それでもしばらくの間は真剣に聞いていたのだが「薬物を注射され錯乱し襲い掛かってきた少年」や「天使のような翼が生えた少女」の辺りで私は一つの確信へと至った。
 それは…………)


 □

878 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:23:40 ID:PDoYgmlp
 

879 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:24:01 ID:PDoYgmlp
 

880 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:24:15 ID:LH1jUzw/


881 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:24:23 ID:PDoYgmlp
 

882 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:24:35 ID:4hE0kXUO
「――で、その結果がコレか」
「はい。私は正直やるせない気持ちになりましたよ。
 やっぱり事件が被害者に残した傷痕は計り知れないものだったんです」
「……だな。さすがに紙面に載せる訳にはいかんだろう。
 《巨大ロボットと戦った》やら《塔を爆破した》なんて書く訳にはいかんしなぁ」

寂れたオフィスの一角。記者達の怒号と悲鳴が木霊する密閉空間で二人の男が会話をしている。
一人は白鐘沙羅へのインタビューを行った若い記者。
そしてもう一人は、三流地方紙「ニコタマスポーツ」のデスクだ。
今二人の話題の中心になっているのは、先日記者が取材してきた白鐘沙羅独占インタビューの記録テープを文章に起こしたものである。

「その辺はまだマトモな方ですよ。
 最後なんて《神を滅ぼした》とか《信じられないと思うけど、実は私は一回死んでいる》とまで言い出したんですから」
 
さすがに部下のその台詞にはデスクも眉を顰めた。思わず右手が頭に伸びる。
確かに、これはもはや妄想の域を飛び出してファンタジーの世界の出来事だ。
実際に体験することなど、どう考えても出来る訳がない。つまり、 
  
「……まだ錯乱してるってことか。もしくは、自分で記憶にストッパーを掛けているとか?」
「ああ、担当医の先生も言っていましたよ。
 死ぬほど辛い眼にあった人間が自分に都合の良い記憶を作り出してしまうことがあるって」
「二重人格って奴もそうやって形成されるんだっけな。……辛いよなぁ。帰って来たのは一人だけなんだろ?」
「……はい。本当に、やり切れない事件です」


883 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:25:10 ID:PDoYgmlp
 

884 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:25:10 ID:LH1jUzw/
 


885 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:25:15 ID:4hE0kXUO
そうして二人の男は遠い眼をしながら、窓の外を眺める。
燃えるような夕焼けが広がる空。ビルの足元を流れる二子魂川がキラキラと光っていた。
記事として取り上げる筈だったそのインタビューは二人の意志によって取り下げられた。



……余談ではあるが。
そして《二子魂町探偵一家失踪事件》における被害者の捜索はこの翌日、打ち切られる。
事件発生から約八ヶ月。被害者の一人、白鐘沙羅の生還から約三ヶ月。
警察に対して一切事件について語ろうとしなかった彼女が、突然捜査本部に直接出向いて来て証言したのだ。

――もう二人は帰ってこない、と。


 □


「……載ってないか」

チッと、微妙な舌打ち。散々この日に載せると豪語していた筈なのに。
配達されて来た今日のニコスポには予想通りというか何と言うか、私のインタビューは掲載されていなかった。


886 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:25:50 ID:4hE0kXUO
まぁ当然といえば当然だ。
自分としてもこうなることを全く予想していなかった訳ではない。
それどころか、編集長からストップの声が掛かる可能性も十分に考慮していた。
少し前にも十分過ぎる程、非現実的な事件があった筈なのに。イカとかイカとかイカとか。
あまりにも私の発言内容がエキセントリック過ぎたのだろうか。
嘘は一切言っていないのだけれど。


パソコンのデスクに足を乗っけながら、新聞に眼を通す。
下らないどうでもいいようなニュースばかりだ。本当にこっちは平和だなぁ、と心底思う。

季節は穏やかに過ぎていく。
暑いのか寒いのか正直どっちとも言えないあの島から脱出して三ヶ月が経った。

私――白鐘沙羅は今も基本的に元気だ。
一時期は飢え死にもしくは食中毒、栄養失調など臨死体験なんかにも出くわしたが、一応健康。
商店街の皆も色々気遣って差し入れとかしてくれるし、料理当番も毎日私なんだから微妙に上達はしている。
とりあえず「爆発」と「黒こげ」は克服したつもり。
味付け?それは目下練習中。


とはいえ、探偵事務所は開店休業中だ。
こっちに帰って来る時に思ってた理想的なプランなんてもはや夢のあと。脆くも崩れ去ったという訳。
現実と事実を直視した時、ちっぽけな意識は靄になって消える。

「双葉探偵事務所U」と書かれた看板が微妙に虚しい。
依頼人はまるでやってこない。
そりゃあ冷静になって考えれば、失踪する探偵なんてお笑い種だ。医者の不養生とは言うが、探す立場の人間がいなくなっていては依頼が来ないのも無理はない。

887 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:26:02 ID:PDoYgmlp
 

888 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:26:59 ID:LH1jUzw/


889 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:27:01 ID:PDoYgmlp
 

890 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:27:06 ID:4hE0kXUO
あの失踪事件は意外なことに全国的に報道されていた訳で。名前だけは有名になってしまった。
そんなもんだから、私がこっちに帰って来た時に幾つか冷やかしの依頼はあった。
とはいえ、最近は電話がリンリンと鳴り響くこともなくなっていた。


キーボードの隣に置いてあったコーヒーを一口。冷めてる。不味い。
もう一度煎れ直そうかとも思ったが、面倒なのでパス。
お手伝いさんなんていない。炊事洗濯掃除、全部一人でこなさなければならない。

環境は色々と変わっていないようで変わった。
住んでいる場所は同じ。双葉探偵事務所で一人でぶらりと悠々気ままに。
一時期、実家の豪邸の方に帰っていた時期もあったがすぐに戻って来た。あそこは長居する場所じゃない。

気になることも多い。
買い置きの角砂糖の減りが遅い――とか、
一人で暮らすにはここは広すぎる――とか、
飯が不味い――とか、

一人じゃつまらない――とか。

色々と、文句をつけたいことはある。
例えばしばらく学校に行ってなかったせいで、既に進級の単位が足らないこともそうだ。つまり留年してしまったのである。
あのお姉さんも時間や空間を操る力があるなら、もうちょっと都合の良い時間に戻してくれても良かったのに、なんて思ったりもする。
ま、だから真昼間にも関わらずグータラしていられるんだけど。

時々「皆、今何してんのかなぁ」みたいな思考に至ることもある。
ハッピーなのか、ハッピーじゃないのかは分からないけど、きっとそれなりに上手くやってる気はする。
少なくとも私みたいに燻ってはいない筈だ。多分。


「すいません。依頼をしたいのですが」


891 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:27:34 ID:PDoYgmlp
 

892 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:28:09 ID:4hE0kXUO
その時、そんなセンチメタルな感傷を吹き飛ばす声が玄関から響いた。
コンコン、というノックの音が微妙に心地良い。でも不安だ。
まさか直接、事務所にやってくる物好きがいるとは思わなかった。今のうちの評判の悪さを知らないのか。それとも冷やかしだろうか。

私が答えに窮している間もその乾いた木盤を打ち鳴らすような音は絶え間なく続く。
胸の中へ染み込んでいくような空気の振動に心が揺さぶられる。

「う……」

思わずうめき声が漏れた。
困った。どうすればいいのだろう。
視線は蝶になって宙を彷徨う。何か縋りつけるものを探すようにフラフラと舞う。
そして、とある場所でピタリと止まった。


口唇から漏れる長い長いため息。
実は私はこっちに帰って来る前も後も、ずっと似たようなことを考えていた。
――双葉探偵事務所を継がなければならない、と。
「それじゃあ私三代目って呼ばれるのかな」とか考えるだけで微妙に鬱になっていた。

形在るものはいつか滅びる。形のないものは更なり。
それは自然の理であり、摂理だ。
盛者必衰は全ての物事において貫かれた一つの共通観念でもある。

でもそんな、ただ消えていくだけのものに対して、残された人間が出来ることと言えば一つしかない。
いつまでも死んでいった人達のことを忘れないこと。
そして、その人達の分も私が私らしくあること。


いい機会かもしれない。殻に篭ったこの鬱々とした現状から抜け出すチャンスのような気がする。


893 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:28:47 ID:PDoYgmlp
 

894 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:28:54 ID:4hE0kXUO
この先、探偵事務所がどうなるかは正直よく分からない。
だけど私は眼の前の現実から決して眼を背けてはならないんだと思う。
ソレが生き残ったものの義務、責任なのだから。

言葉に出来ない雑多な感情が背中に圧し掛かるけど、とりあえず、私はそれに精一杯向き合っていこうと思う。
この胸のモヤモヤは私が長い時間を掛けて処理していかなければならない問題だ。
ウダウダと膝を抱えて考えていても、そう容易く最適解が導き出せる訳がない。ショートカットなど存在しない。

将来、私が成長して、大人になった時――
胸を張って皆の人生を背負えるような素敵な女性になっていられるのだろうか。

……分からない。まだまだ先の話だ。
でも、今は眼の前に積み重なった厄介事を一つ一つ片付けていくべきだと思う。
ドアの向こうの憂鬱なんて吹き飛ばしてしまえばいい。
そう――これが白鐘沙羅最初の事件だ。



895 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:29:07 ID:LH1jUzw/



896 :今日、この瞬間、この場所から始まる:2008/02/05(火) 22:29:28 ID:4hE0kXUO
太陽がキラリと光る。まだ地平線の彼方へと沈んでしまうには早過ぎる時間帯だ。
差し込む陽光がほのかに室内を照らす。

私はもう一度だけ、その場所を振り返った。
そこには最後に皆で撮った写真と、そして――恋太郎と双樹のカップが置いてある。
カップに描かれた顔はどちらも笑っている。
写真の皆も笑っている。

だから、私も笑った。


「行って来るね、恋太郎、双樹……皆」


鬼が出るか蛇が出るか、これっぽちも未来の予想はつかない。
だけど黙っている訳にはいかない。
突っ立っていることも、ボヤボヤしている訳にもいかない。やらなければならないことは沢山ある。

私は白鐘沙羅。双葉探偵事務所の探偵助手一号。
今は……まだ、その肩書きで十分だ。


【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン――to be continued...】


897 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/05(火) 22:29:33 ID:PDoYgmlp
 

898 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:31:39 ID:Uj1XL5qx
蒼く染まった壁。倉成武の瞳に飛び込んできた最初の光景はそれだった。
何時から此処にいたんだろう。そもそも、ここは元の世界じゃないのだろうか。
頭を振りかぶり、直前までの光景を思い出す。
あの時みんなと別れを告げ、時深の力とやらで不思議な光に包まれたのは覚えている。
だが、そこから先は記憶が無い。外の景色も、現在を刻む時計も、ここにはない。
蒼い壁が広がる十畳程の部屋。出口はおろか繋ぎ目も見当たらない奇妙な場所。

「目が覚めたか?」
「!?」

声の主は、何も無い場所から突然浮かび上がってきた。
いや、もしかしたら最初からいただけで、武が気付かなかっただけかもしれない。
その人物はベルベットの様な光沢を放つ椅子に座り、武に背を向けている。
その状態から微動だにしない所を見ると、こちらを向くつもりは無いようだ。
どういう訳かぼんやりとしているその姿に戸惑いつつも、武は思いついた事を口にしていた。

「なあ、ここは何処なんだ?」
「……」

けれども、その人物は何も答えぬまま、右手に持ったコーヒーカップを無言で口に運び口を塞ぐ。
そして喉を一つ鳴らすと、カップを口から外し小さく息を漏らした。
ちゃぷちゃぷと波打つ音だけが、静寂に満ちた部屋でリズムを刻む。
返答のない相手に対し、武が再び口を開こうとした所で、ようやく相手が口を開く。

「取り戻せるぞ」
「は?」

突拍子も無い言葉に面食らう。この人物はこちらの話を聞いていなかったのだろうか。
仮にさっきのが質問の答えだとしたら、あまりに意味不明過ぎる。
呆れつつある武を無視して、目の前の人物は再び言葉を繰り返す

899 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:34:42 ID:hWx7y0jp
   

900 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:36:12 ID:hWx7y0jp
  

901 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:36:24 ID:GTb9dxD5
 

902 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:37:37 ID:Uj1XL5qx
「失ったものは、取り戻せる……償いたいと思わないか? 最愛の人に」
「なにを――」
「世界って言うのは色んな世界、色んな時間があるってのは、今回の事で気付いたよな」

突然の問いかけに混乱するが、混じっていた言葉に思わず体が反応する。
ここが相手に合わせるべきだと感じた武は、相変わらず背を向けて喋る相手の言葉に無言で頷く。
確かに、生き残った奴も、死んでしまった奴らも、同じ世界ではなかった。
そんな絶対に出会うはずのない人達と、武は命削って生を繋いできたのだ。
無意識のうちに、武は拳をぎゅっと握り締める。
自分がしてしまった事、成し遂げられなかった事。それらが、武の脳裏を過ぎ去っていく。

「これから、お前もみんなと同じように自分の世界に還る」
「……」
「お前とつぐみ、ホクトや沙羅。空やココ。桑古木や優のいた場所に。
  けれど、今挙げた内の何人かはもう居ない。二度と会うことは出来ない」

淡々と告げられる言葉を、武は静かに聞き入れる。それは罪状のような、そんな響き。
けれども、武にはそれを甘んじて受け入れ、償う義務がある。
そんな空気を感じ取ったのか、その人物は一瞬の間を置いてから、ゆっくり言葉を紡ぐ。

「もし全員と再会出来る世界に還せるって言ったら、どうする?」
「ぇ?」

あまりにも突拍子の無い言葉に、武は返す言葉も見当たらない。
脳が追いつかないのだ。心が反応できずにいるのだ。
普段なら冗談だろうと笑い飛ばせる自信がある。なのに、今の武にはそれが出来なかった。
相手から投げかけられた言葉が、ほんの一瞬だけ傾きかけた武の心を離さない。

「聞かせて欲しい……お前の……あの三日間を生き抜いた倉成武の心の声を」

903 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:39:09 ID:2zsW6EbX


904 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:39:16 ID:hWx7y0jp
   

905 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:39:19 ID:Uj1XL5qx
無言で拳を握り締める武に、その人物は畳み掛けるように言葉を重ねる。
嘘や建前で飾らない、心の奥底に眠る本音を聞きだすために。

「もしお前が少しでも心揺らぐのなら、俺がその場所に送り還してやる」

空気の音すらしない部屋の中で、武の心臓だけが強く波を打つ。
まるでタイムリミットが迫るかのように、音はだんだんと加速していく。
武は出来る限り心を落ち着け、答えを模索する。
元の世界に還ったら、これまでの出来事を胸に刻み、償っていくつもりだ。
自分は取り返しの付かない悲劇を招いた。許されない行為を見せた。
その一つ一つを、生ある限り受け入れ続け、乗り越えていこうと決めた。
だがもし……もし「償える相手」がいるのなら。
こんなぼんやりとした未来予想図ではなく、もっと形ある償いが出来るのではないだろうか。
それに、この問答で武は改めて気付かされてしまったのだ。
どれだけ決意しても、どんなに覚悟を決めても、心の奥底にある願望に嘘はつけない。
叶うなら、本当にそんな出鱈目な願いが叶うなら……つぐみの幸せを見たいと。

「……その世界ってやつはさ、つぐみも俺も生きてるって事だよな。この場合、そこにいた俺はどうなっちまうんだ?」

何かを確かめるように、武は腹に力を込めながら低い声で質問する。
覚悟を決めるため、聞いておかなければならない事が幾つかあった。
それが分からなければ、この選択肢は選ぶ事が出来ない。
未だに背中を向け続けるその人物は、ゆっくりとコーヒーを啜りながら答えを吐き出す。

「ああ。難しい事は省くと、そこで生きている倉成武にお前という倉成武を統合するんだ。
  もちろん、整合性をとるため記憶がちょっと変わるけど、大筋は変わらないし元の武も無事だから安心していい」
「要点だけ摘むと、どっちの俺も問題ないって事か」
「そうだな。それにきっと、一緒になってもそのことには気付かないさ」
「じゃあ、もともと居た世界とやらはどうなっちまう? 俺とつぐみの子供達とかは?」
「ああ、もともとの世界は、そっちを選んだ倉成武が引き継いでくれる」

906 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:40:04 ID:GTb9dxD5
 

907 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:40:08 ID:Uj1XL5qx
「そっちを選ぶ?」
「あぁ……要するにもう一人の倉成武が、お前のいた場所に座り、しっかり面倒見てくれるって事だ。
  大丈夫、ホクトも沙羅も絶対不幸な事にはしない。それは俺も、その椅子に座るもう一人の倉成武も保証する」

今の質問で何かを感じたのか、武はただ納得するようにその場で俯く。
そして、絞り出すような声で最後の質問を述べる。

「あの島での出来事とかは忘れちまうとか無いのか?」
「その辺も安心しろ。記憶喪失とかじゃないから、経験した事はちゃんと脳と心に残る」
「そうか」

長い長い沈黙の後、椅子に座るその人物は背を向けたままゆっくりと立ち上がる。

「さあ、これが最後の選択の時だ。お前が還りたいのは、失ってしまった世界か? それとも失ってない世界か?」

突きつけられる二択。
このどちらの道を選ぶかで、これから世界が大きく反転するだろう。
どちらも正解で、またどちらも不正解。
高鳴り続けていた心臓が、ゆっくりとペースを緩めていく。
この胸を刻む音が止まる前に、答えをだす。
覚悟を決めた武は、力強く前に踏み出す。その一歩に揺るぎはない。
決めた。



908 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:40:35 ID:hWx7y0jp
  

909 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:40:46 ID:GTb9dxD5
 

910 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:41:04 ID:Uj1XL5qx
「その世界のつぐみは、その世界の倉成武だけが愛するって決めた嫁さんだ。
  ……俺が出来なかった分まで、そいつらには幸せな家庭、築いてもらうさ」
「いいのか?」
「人の女を横取りってのは性に合わなくてな。それに、子供の面倒はその世界の親である俺が見ないとな」
「……もう、二度と会えないぞ」
「ああ」
「迷いは無いな?」
「ああ!」

椅子にもたれ掛かる相手と、その背を強い意志の篭った瞳で見つめる武。
やがて目の前の人物は大きく天を仰ぐと、決意を確かめるように問いかける。

「その決意。忘れるなよ」
「おう」

この言葉に満足したのか、その人物は視線を真正面まで下ろし、ジッと蒼い壁を見つめる。
相手の顔は分からない。けれど、武には相手から満足そうな感情を感じ取っていた。
コーヒーは飲み干してしまったのか、その人物がカップを口につけることは無い。
その代わり、何かを飲み込む様に沈黙し、数秒後ゆっくりと口を開いた。

「あの島で色んな人と会ったんだな」

武が何かを答える前に、その人物は一人で勝手に頷く。
気のせいか、その輪郭が少しずつハッキリしてきたような気がする。
武が言葉を掛けようとする前に、その人物は言葉を続ける。
まるで独り言のように、その一言一言をゆっくりと。


911 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:41:51 ID:Uj1XL5qx
「絶対一人ではここまで辿り着けなかった」

あの日、あの殺し合いに呼び出されてからの時間が走馬灯のように流れていく。
そのどんな場面でも、武の隣には誰かがいた。
ある時は仲間だったり、またある時は敵だったり。

「あんな数十時間で、何年分の運命の糸が絡まったんだろうな」

もしああすれば。あの場面でこうすれば。未来は変わっていたかもしれない。
けれど、それは過去を振り返る「if」でしかない。
見つめなければならないのは、重ねてきた過去の先にある一歩。

「失ったものと、得たものは両手で抱えきれないほど」

見知らぬ人が、友が、仲間が、戦友が、仇が、最愛の人が、命の灯火を消した。
炎を失った蝋燭は、どんなに火を掲げても二度と灯らない。

「受け継いできた荷物も、ずいぶん大きくなっちまったな」

人の死に立ち会えば、それだけ背負う荷物は多くなる。
重なっていく荷物は自身を苦しめ、やがて歩くのさえ困難になる。
でも、それを途中で捨てたりはしなかった。
捨てようと思えば捨てられたけれど、誰一人それをしなかった。

「そして、全てとの別れ」

糸を紡いできた仲間と……
競い合ってきた仲間と……
駆け抜けてきた仲間と……
今ここで暫しの別れを告げる……けれど。

912 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:42:19 ID:GTb9dxD5
 

913 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:42:42 ID:hWx7y0jp
   

914 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:44:02 ID:GTb9dxD5
 

915 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:44:09 ID:Uj1XL5qx
.





「俺達があの島で繋いできた襷は……俺が死ぬまで絶対に手放さねぇよ」
「それが聞けて満足だ」

手に持った写真を見つめながら、武はゆっくりと光の泡に包まれていく。
この答えを聞いて、背を向けていた人物は初めて振り返る。
武は目の前に立つ人物を確認して納得した。なぜこの人物がこんな質問をしたのか、ようやく理解した。
いや、もしかしたら最初から気付いていたのかもしれない。
こんなやり取りが出来るのは、思いつく限り一人しかいないのだ。
途端にこみ上げて来る感情を必死で押さえつけ、相手の顔をジッと見つめる。
相手も同じなのか、感情を漏らさないよう必死に口を噤む。
やがて光が武の首から下まで包んだ所で、目の前の人物は武の瞳に視線を合わせたまま口を開く。
もう二度と会うことは無いだろう。だから、最後に言ってやりたい言葉があるから。
そしてそれは、武も同じだった。








916 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:44:55 ID:FJ44+qZN
 

917 : ◆Qz0e4gvs0s :2008/02/10(日) 18:44:58 ID:Uj1XL5qx
.




「お疲れ様。いや、ありがとうかな。倉成武……そして、さようならだ」
「ああ。じゃあな……もう一人の倉成武……どこか別の世界の――俺」




部屋一面に広まった光は、音も無く二人を包む。
そして、光が部屋から消え去った後には、一人掛けの椅子と空になったコーヒーカップだけが残されていた。




【Ever17 -the out of infinity-  倉成武 回帰】

918 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:45:00 ID:GTb9dxD5
 

919 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 18:46:25 ID:FJ44+qZN
 

920 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:12:56 ID:FJ44+qZN
あの凄惨な殺し合いを終えてから、約一ヶ月程の時が流れた。
僕――宮小路瑞穂は梨花さんや羽入さんと共に、元の世界へと帰ってきた。
元の世界へ帰るや否や、僕は質問責めにあった。
それも当然の事だろう。

聖應女学院の卒業式が終わった直後、鏑木財閥の跡取りである僕と、厳島財閥の娘である貴子さんが同時に姿を消した。
その衝撃的な事件は新聞の一面を飾り、敵対財閥による工作か、若しくは身代金目当ての誘拐か等と、様々な憶測を呼んでいたらしい。
そこに只一人、僕だけが帰って来たのだ。
注目を集めない筈が無い。
僕は連日マスコミの取材や警察の質問責めに晒された。
しかし問い掛けられた処で、一体どうやって説明しろと云うのか。

『異世界の神に拉致されて、殺し合いを強要されていた』

……如何考えても、現実味の無さ過ぎる話だ。
正直に話しても信じて貰える筈が無いし、要らぬ誤解を招くだけだろう。
だからマスコミや警察に何を聞かれても、知らぬ存ぜぬで押し通した。
結局僕に関しては記憶障害という結論で片付けられ、今は貴子さんの捜索だけが続けられている状態だ。

但し一部の人間にだけは、僕が知り得る限りの事実を話した。
僕は未だ社会に出てすらいない、只の子供に過ぎない。
そんな僕が梨花さんの面倒を見ていくには、周囲の、特に父の協力が必要不可欠だったのだ。

最初に話した時は、父は信じてくれなかった。
異世界で行われた殺し合い――それは、余りにも空想染みた話。
そのような説明では、父を納得させる事など出来なかった。

921 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:14:27 ID:FJ44+qZN
それでもこの先、この世界で生きていく為には、父の理解を得る必要がある。
だから僕は諦めずに、何度も何度も同じ主張を行い続けた。
梨花さんも僕と一緒に、あの殺し合いについて説明してくれた。
恐らくは、そんな僕達の熱意が功を奏したのだろう。
最初はまるで取り合ってくれなかった父も、遂に僕達の話を信じてくれた。
父は僕の肩に手を乗せると、驚く程優しい声で云った――良く頑張ったな、と。

そうして父の理解を得た僕は、梨花さんや羽入さんと共に、鏑木の屋敷で暮らし始めた。
既に僕は受験を終えていた為、四月からは翔陽大学に通い始めている。
父の助力のお陰で、梨花さんも地元の小学校に通えるようになった。

だけど今――僕は、絶体絶命の窮地に晒されている。



    ◇     ◇     ◇     ◇



【2005年4月 某所】

922 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:15:09 ID:hWx7y0jp
     

923 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:15:28 ID:Uj1XL5qx


924 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:15:43 ID:hWx7y0jp
    

925 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:16:14 ID:FJ44+qZN
大勢の人で賑う繁華街の中、三人の女性達が優雅に歩いてゆく。
琥珀色の長髪にシルクのコートという装いをした、気品溢れる美人、宮小路瑞穂。
紫が掛かった髪にカジュアルな服装で、快活な笑顔を湛えている女性、御門まりや。
二人に比べると随分幼い、しかし既に美人の片鱗を見せ始めている少女、古手梨花。

三者三様の華を持ち合わせた美女達が、横並びの状態で闊歩していた。
それは人目を引くのに、十分過ぎる程の光景。
道行く人々は誰もが一瞬歩みを忘れ、瑞穂達の姿に魅入ってしまっている。
やがて瑞穂達は目的の店に辿り着くと、自動ドアの先へと進んでいった。


「ねえまりや、物凄く疑問なんだけど――」

店の中に入った途端、ぼそりと瑞穂が呟いた。
瑞穂はぐるりと周囲一帯を眺め見た後、さも不満気な声で言葉を続けてゆく。

「どうして僕が女装してまで、こんな所に来なきゃいけないの?」

今瑞穂が居るのはランジェリーショップ――所謂、女性物の下着売り場。
当然の如く、店内には女性用の下着が陳列されているし、客も瑞穂を除く全員が女性だった。
そのような環境に晒され、瑞穂はこれ以上無い程に居心地の悪さを感じていた。
そんな瑞穂とは対照的に、楽しそうな笑みを浮かべたまりやが、心底可笑しげに言葉を漏らす。

「仕方無いじゃない。今日は梨花ちゃんの下着を買いに来たんだから。
 男の格好をしたまま店に入るよりは、目立たなくて良いと思うよ?」
「別に、僕だけ外で待ってれば良いんじゃ……」
「却下ね。此処まで来たんだから、とっとと諦めちゃいなさい!」


926 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:17:10 ID:Uj1XL5qx


927 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:17:23 ID:hWx7y0jp
   

928 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:17:48 ID:FJ44+qZN
瑞穂が至極真っ当な不満を口にしたものの、まりやは全く取り合わない。
これは、昔から何度も繰り返されて来た光景。
常日頃よりまりやは、何かと理由を付けては瑞穂を女装させて、楽しんでいるのだ。
瑞穂も抵抗が無駄だと理解しているので、これ以上反論を続けようとはしない。
なるべく下着の類を目に入れないよう、視線を中空へと彷徨わせる。
暫くの間そうしていると、突然誰かが瑞穂の袖を引っ張った。

「梨花さん?」

瑞穂が振り向くと、そこには梨花の姿があった。
梨花は両腕を使って、とある物体を大きく広げている。

「にぱ〜☆ 瑞穂、ボクにこの下着は似合うと思いますか?
 ボクが着てるトコ、想像してみて下さいなのです」
「え……?」

梨花が広げている物は、成人女性用に販売されている派手な下着だった。
黒一色で統一されたT字型の下着は、思わず息を呑む程に艶かしい。
考える必要など皆無。
明らかに、年端も行かぬ少女が着るべき代物では無い。

しかし、ほんの一瞬。
ほんの一瞬だけ瑞穂は、想像力を過敏に働かせてしまった。
途端に瑞穂の心臓がドクンと脈打ち、頬は瞬く間に紅潮してゆく。
その様子を目聡く見て取ったまりやが、弾んだ声で瑞穂へと問い掛ける。

「あれ? 瑞穂ちゃん、顔が赤いよ?」
「な……っ、赤くなってなんか…………!」

瑞穂は必死に反論しようとするが、そんな抵抗も虚しく。
追い討ちを掛けるようなタイミングで、花が咲いたような笑顔で、梨花が言い放った。

929 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:18:42 ID:FJ44+qZN
「ボクに近付くななのです、このロリコン」
「…………」

梨花の言葉を聞くや否や、瑞穂は力無く崩れ落ちて、両手両膝を地面に付いた。
心無しか周囲が暗くなり、瑞穂の身体にだけスポットライトが浴びせられているようにも見える。

「あ、落ち込んだ」
「みー。かわいそかわいそなのです」

倒れ伏す瑞穂の頭を撫でる梨花だったが、その表情は愉悦に満ちている。
そうやって一頻り瑞穂をからかった事で、満足したのか。
梨花とまりやは今度こそ真面目に下着を探すべく、店の奥へと消えて行った。
そして二人と入れ替わる形で、巫女服姿の少女が瑞穂へと歩み寄った。

「あぅあぅ……瑞穂、大丈夫なのですか?」
「――羽入さん」

瑞穂は羽入の姿を視認すると、静かに起き上がった。
そう――確かに瑞穂は、羽入の姿を肉眼で『視認』している。
羽入が実体化している訳では無い。
未だに梨花と瑞穂以外の人間には、羽入を目視する事は叶わない。

何故瑞穂が、羽入の姿を見れるようになったのか。
その理由は瑞穂本人にも分からないが、羽入と一緒にこの世界へ転送された事で、何か超常的な力の影響を受けたのかも知れない。

「梨花が何時も迷惑掛けて、ごめんなさいです。でも……今の梨花、凄く楽しそうなのです」

羽入の眺め見る先では、梨花がまりやと共に買い物に勤しんでいた。
梨花の顔には、年相応の笑顔が浮かんでいる。

930 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:18:54 ID:Uj1XL5qx


931 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:20:14 ID:FJ44+qZN
「そうだね。梨花さんはあの島で、雛見沢の仲間達を失ってしまった……。
 そんな梨花さんがまた笑えるようになって、本当に良かったと思う」

これは、瑞穂達がやっと手に入れた幸せのカタチ。
あの島で次々に仲間を失って、それでも諦めずに抗い続けた結果、何とか勝ち取った日常だ。
しかし瑞穂とて真っ当な青少年であり、女性物の下着屋に入り浸る様な趣味は持ち合わせていない。

「……流石に、この状況は勘弁して欲しいけれど」

瑞穂がそう言葉を続けると、羽入は苦笑いするしかなかった。


やがて梨花達の買い物も終わり、一行はランジェリーショップを後にした。
何時の間にか太陽は西へと沈み、夜闇に包まれた街並は普段と別の顔を見せ始める。
光り輝く人工の星々。
街の至る所で色鮮やかなイルミネーションが煌き、ある種幻想的とも云える光景を醸し出している。

そんな中、瑞穂達は百貨店の屋上で肩を並べながら、眼下に広がる街並を眺めていた。
感極まったと云う風な表情で、梨花が小さな呟きを洩らす。

「本当に……綺麗ね。私が居た時代では、とても考えられなかったくらいに……」
「そっか、梨花ちゃんはこんな景色を見るのは初めてなのね。二十年以上も前の時代から来たんだから」

答える声は、まりやが発したものだ。
瑞穂の父と同様、まりやも全ての事情について説明を受けている。
当然、梨花が過去の時代の人間であるという事実も知っている。

「梨花ちゃんの知り合い――園崎魅音さんと北条沙都子さんが無事か如何かは、やっぱり分からないの?」
「ええ。時深から聞いたのは、私が元の時代の雛見沢に戻りさえしなければ、鷹野による大虐殺が行われないという事だけ。
 魅音達がどうなったかまでは分からない」

932 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:20:44 ID:Uj1XL5qx


933 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:21:41 ID:FJ44+qZN
殺人遊戯の終了後――転送が行われる前。
梨花は自分が転送される世界の雛見沢について、時深に問い詰めた。
十分な情報が無い状態では、雛見沢に戻るべきかどうか判断出来なかったのだ。
質問に応じ、時深が行った説明を纏めると以下のようになる。

@殺し合いに参加させられた雛見沢の人間達は、生存者である梨花を除いて、全ての平行世界から消滅する(存在したという事実自体は残っている)。
A死亡者達が消滅する時期は、ウィツァルネミテアの干渉を受けた時期と一致する。
B時深は大幅に力を消耗している為、梨花が転送される時期の細かい調整は行えない。
 梨花の選び得る道は、鷹野が消滅する前の雛見沢に戻るか、瑞穂と同じ時代に行くかの二つのみ。
C但し雛見沢へと戻った場合、鷹野の『終末作戦』により村人全員殺されてしまう可能性が極めて高い。
 梨花が戻らなかった場合、虐殺は行われない(梨花は『終末作戦』の決行前に失踪した、という扱いになる)。


これらの説明を聞いた梨花は、瑞穂と同じ時代に行く事を選んだ。
僅かな希望に懸けて、雛見沢で鷹野と決戦を行うという道もあったが、敗北した時のリスクが大き過ぎる。
もし自分が敗れてしまえば、死ななくて良い筈の人間達まで犠牲にしてしまう事となるのだ。
そんな道、選べる筈が無かった。


「結局、私は瑞穂と共に生きていく道を選んだ。でも、圭一達が消滅するという事実は変わらない。
 残された魅音と沙都子が、雛見沢症候群を発症しない保障なんて無いわ」

語る梨花の瞳には、暗い影が差している。
圭一達の消滅は、魅音と沙都子に大きな精神的ショックを与える筈だった。
雛見沢症候群を発症してしまったとしても、何ら可笑しくない程の。

934 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:23:33 ID:FJ44+qZN
「けど生きている可能性があるだけ、未だマシよ。圭一達も……潤や風子も、もう絶対に戻って来ないんだから」

梨花がそう言葉を続けると、一同の間に重い沈黙が流れた。
余りにも多くの命が失わてしまった。
あの島では、余りにも多くの血が流され過ぎたのだ。
主催陣営側の人員も含めれば、死亡者の総数は百名を優に超えるだろう。

「……貴子の奴、本当に死んじゃったのね」

呟くまりやの声は、確かな悲しみの籠められたものだった。
まりやと貴子は喧嘩友達と表現すべき間柄だったが、本心では互いの事を認めていた。
そんな相手を唐突に失って、悲しくない筈が無いのだ。

「僕は貴子さんを守れなかった……それは覆しようの無い事実だよ。でも――」

瑞穂はそう答えると、自身の右手首へと視線を移した。
手首には、貴子の形見であるリボンが今も巻かれている。
瑞穂は噛み締めるように、一言一言ゆっくりと言葉を紡いでゆく。

「だからこそ、僕はしっかりと前を向いて、貴子さんの分も生き続けようと思う。
 それだけじゃない……アセリアさんの分も、死んだ皆の分も、僕は頑張らなきゃ駄目なんだ」

己が決意を語る瑞穂の顔は、決して悲観の色に染まってはいない。
その声には、深い後悔と苦渋を乗り越えた者にしか出せない重みがある。
鋼の意思が籠められた宣言に、まりやは何処までも優しい表情で頷いた。

「そうね。きっと貴子も、瑞穂ちゃんには生き続けて欲しいって願ってるわ」

まりやの発した言葉は、静かに夜闇へと吸い込まれていった。
一同は遠い眼差しで、天に大きく広がる星空を見上げる。
もう二度と会えなくなった、愛しい者達の事を想って。

935 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:24:10 ID:Uj1XL5qx


936 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:25:02 ID:FJ44+qZN
    ◇     ◇     ◇     ◇




【2005年5月 雛見沢】

カナカナカナ、とひぐらしの鳴く声がする。
肺を満たすのは、都会のソレとは比べるべくも無い美味な空気。
視線を左右へと動かすと、辺り一面に生い茂った緑色の木々が見て取れる。
梨花はゴールデンウィークの長期休暇を利用して、瑞穂や羽入と共に雛見沢を訪れていた。

「……二ヶ月ぶりなのです、梨花」
「私や羽入にとっては、ね。この村の時間はもう、二十年以上経っているわ」

梨花の言葉は至極真実だろう。
今梨花達が訪れているのは昭和五十八年の雛見沢では無く、二十年以上経過した時代の雛見沢だ。
田舎だけあって、今も村の大部分は緑に覆われているが、所々にコンクリートで舗装された道も見受けられる。
道行く人々の格好も、近代的なものへと変化しつつあった。
羽入はそんな光景を感慨深げに眺めていたが、やがてクスクスと笑い始めた。

「それにしても今の梨花の格好、すっごく可笑しいのです」

羽入が視線を送る先には、不機嫌そうに頬を膨らませる梨花の姿。
梨花は正体を隠すべく、ポニーテールに伊達眼鏡という格好をしていた。

「余りその事に触れないで頂戴。私だって、本当はこんな格好したくないんだから。
 当分の間、甘い物を食べるの止めるわよ?」
「あ……あぅあぅあぅあぅあぅ……!」

937 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:25:33 ID:Uj1XL5qx


938 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:26:39 ID:ysT95gry


939 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:26:42 ID:Uj1XL5qx


940 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:26:43 ID:FJ44+qZN
普段と異なる格好をしているのには、大きな理由がある。
梨花は魅音と沙都子を探す為に、遠路はるばる雛見沢を訪れた。
二十年以上前に失踪した人間が、当時と同じ姿で現われる――それは雛見沢住人にとって、明らかに異常事態。
梨花の正体が発覚してしまえば、確実に警察沙汰となるだろう。
しかし梨花は、自身の身に何が起きたか説明する方法など、全く持ち合わせていない。
異世界に拉致されていたなどという説明が、警察相手に通用する筈も無いのだ。
故に捜索活動を行うには、変装する必要があった。

「それじゃ、どうやって探そうか?」
「まずは、私と沙都子が住んでいた家に行ってみたいわ。もしかしたら、未だ沙都子が住んでいるかも知れないしね」

瑞穂の質問に答えを返すと、梨花は皆を先導する形で歩き始めた。
二十年以上の時間が経過してしまったとは云え、嘗て自分が住んでいた村だ。
道に迷う心配は無い。

「……魅音さんと沙都子さん、無事だと良いね」

気遣うような瑞穂の声に、梨花は無言のまま頷いた。
魅音と沙都子が無事であるか如何か、梨花達は未だ知らない。
鏑木財閥の情報網を使えば調べる事は容易だったが、梨花は敢えてその選択肢を拒否した。
大切な仲間達の安否は自分の目、自分の力で確かめたかったのだ。
程無くして一行は、目的の場所――嘗て梨花が暮らしていたプレハブ小屋へと辿り着いた。

「……此処はもう、空き家みたいね」

小さな声で梨花が呟く。
中に入って確かめるまでも無かった。
プレハブ小屋の壁面は酷く痛んでおり、周囲は雑草に覆い尽くされている。
生活の気配をまるで感じさせないその様子から、もう誰も住んでいない事は明らかだった。

941 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:28:08 ID:ysT95gry



942 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:28:11 ID:FJ44+qZN
ならばと、梨花は次にどうするべきか思案し始めた。
村の住人に質問するのが一番手っ取り早いが、正体を見破られてしまう危険性もある。
面倒事を避ける為にも、出来る限り捜索活動は秘密裏に進めたい所。
やはり此処は、自分達の足を使って探し回るべきだろう。

「そうね――次は魅音の屋敷に行くわよ」

梨花が次に目指そうとしたのは、園崎魅音の屋敷だった。
嘗て雛見沢で強大な権力を誇っていた園崎家の本拠地ならば、今でも空き家になったりはしていない筈。
きっと、何か有力な情報が得られるように思えた。

先程までと同じく梨花が先頭を進み、瑞穂と羽入が遅れて付いて行くという構図が続く。
年端もいかぬ少女が大の男を引き連れる様は、端から見れば少々奇妙なものだったかも知れない。
しかし幸いな事に、道行く人々に不審がられたりはしなかった。
そうやって進んでいくと、やがて梨花は視界にとある建物の姿を捉えた。

「あれは……私が通っていた学校……?」

木造製の大きな建物は、名を雛見沢分校と云う。
恐らくは、今も子供達の教育施設として運用されているのだろう。
休日である所為か生徒達の姿こそ無いものの、校舎は昔と然程変わらぬ姿を保っている。
梨花の脳裏に思い起こされるのは、部活メンバー達と過ごした記憶。


「皆と過ごした……宝物のような日々……」

皆と一緒に居るのが楽しかった。
皆と笑い合っている時間が好きだった。
一緒に部活動をした時間も、一緒に授業を受けた時間も、一緒に下校した時間も。
全部、掛け替えの無い大切な宝物。

943 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:28:43 ID:t4fkM+I6


944 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:29:10 ID:Uj1XL5qx


945 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:29:36 ID:FJ44+qZN
「もう、戻ってこない日々……」

終わりは余りにも理不尽だった。
自分は只、仲間達と幸せに生きたかっただけなのに。
無限とも思える時の輪廻の中で、何度も何度も抗い続けたのに。
ウィツァルネミテアの介入により、宝物はあっさりと砕かれてしまった。

勿論、只失うだけでは無かった。
梨花があの島で得たものは、数え切れない程に多い。
新たな仲間達と巡り合い、新たな居場所、新たな幸せも手に入れた。
だけど――

「会いたい……」

ぼそりと、梨花の喉奥から声が漏れ出た。
それは今の今まで懸命に抑えて来た、感情の奔流だ。

「もう会えないなんて絶対に嫌……。もう一度、会いたい…………!」

一度漏れ出してしまえば、もう抑えようが無かった。
梨花の心の奥底には、百年分の想いが詰め込まれているのだから。
瞳から一筋の涙を流しながら、小さな唇を震わせる。

「魅音に……沙都子に……皆に会いたい…………っ!」

――会いたい。
ささやかな、だけど梨花にとっては大切な願い。
抑え切れぬ想いを口にする少女の姿は、触れば砕けてしまいそうな程に弱々しい。

946 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:30:15 ID:Uj1XL5qx


947 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:30:46 ID:FJ44+qZN
「……梨花さん」

その様子を見かねた瑞穂が、梨花を励ますべく歩み寄ろうとする。
だがそこで、唐突に瑞穂の背後から声が投げ掛けられた。



「――アンタ、見ない顔だねえ。此処で何をしてるんだい?」
「……え?」



振り返った瑞穂は、確かに見た。
緑色の髪に着物という装いをした女性が、近くの路地に屹立してるのを。
高級生地で仕立てられた装束は、均整の取れた肢体を飾るに相応しい華となっている。
一見した限り、瑞穂よりも十歳以上は年上だろう。
女性は勝気な笑顔を浮かべたまま、じっと瑞穂の方を眺め見ている。
瑞穂が呆然と立ち尽くしていると、横から別の足音が聞こえてきた。

「外から来られた方みたいですわね。何かお困りでしたら、話を聞いて差し上げますわよ?」

現れたもう一人の人物は、輝く金髪を湛えた美しい女性だった。
先の女性程の色香は無いが、それを補って余り有る程の気品に満ちている。
瑞穂は面識など一切無かったが、即座に理解する事が出来た。
恐らく、眼前の女性達は――――

948 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:31:51 ID:ysT95gry


949 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:32:41 ID:FJ44+qZN
「……魅音? 沙都子?」


呟く声は、梨花のものだった。
二人の女性達は大きく目を見開いて、梨花へと視線を集中させた。
直ぐに二人の顔が、信じられないといった表情へと変わってゆく。
やがて全く同じタイミングで、女性達は恐る恐る問い掛けた。

「まさか……梨花、ちゃん…………?」
「う……そ……。貴女……梨花ですの?」

その質問に、さしたる意味は無いだろう。
絶対に見間違えたりなどしない。
梨花が行った変装も、二十年以上の月日による加齢も、何ら障害とは成り得ない。
彼女達が培って来た絆よりも強い物など、この世に存在しないのだから。

「魅音っっ!!! 沙都子おぉぉぉっ!!!」

梨花が駆ける。
ようやく巡り合えた、愛しい仲間達の下へ。

「梨花ちゃんっ!!!」
「梨花……っ!!!」

二人の女性――園崎魅音と北条沙都子が駆ける。
遥か昔に居なくなってしまった筈の、大切な仲間の下へ。
魅音と沙都子は各々の両腕を伸ばして、梨花の小さな身体を抱き締めた。

950 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:32:45 ID:Uj1XL5qx


951 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:34:39 ID:FJ44+qZN
「ううっ……魅音……沙都子ぉ……!!」

梨花は感極まった声を上げて、魅音達の腕の中で泣きじゃくる。
瞳から止め処も無く零れ落ちる涙は、先程までとは違い暖かさに満ちている。
梨花も魅音達も、聞きたい事、話したい事は数え切れない程あるだろう。
だけど、暫くは。
暫くの間は、このまま再会の喜びを噛み締めたかった。





「あゆ、見ていますか? これが貴女の守ったモノです」

羽入は優しい眼差しと微笑みを輝かしていた。
直ぐ前方には、歓喜に満ち溢れた表情で抱き合う梨花達の姿がある。

「貴女が居なければ、私はきっと梨花を守り切れなかった。ですから、改めて云わせて下さい」

これは永き旅路の果てに、ようやく辿り着けた世界。
梨花は新たな居場所を手に入れて、魅音や沙都子との再会も果たした。
そして梨花の幸せは、そのまま羽入の幸せでもある。
失ったモノは余りにも多過ぎるけど、決して最善の結果とは云えないけれど、それでも今なら断言出来る。

「――ありがとう。貴女のお陰で、私と梨花は救われた」

百年の苦悩の終わり。
紡がれる言葉には、万感の想いが籠められていた。

952 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/10(日) 23:35:11 ID:Uj1XL5qx


953 : ◆guAWf4RW62 :2008/02/10(日) 23:36:03 ID:FJ44+qZN
「……アルルゥちゃん、茜さん、ことみさん。ようやく今、本当の意味で悪夢が終わったような気がします」

死んでいった者達へと想いを馳せているのは、羽入だけではない。
瑞穂もまた、今は亡き仲間達に向けて語り掛けていた。
その手には、アセリアの形見である永遠神剣第七位『存在』が握られている。

「どうか心配しないで下さい。僕達は笑顔で生きていくから」

瑞穂は静かに瞳を閉じると、慈しむように『存在』を抱き締めた。
ポケットには、あの島で皆と撮った写真。


「アセリアさん、皆さん――きっと、また何時の日か逢いましょう」







【ギャルゲ・ロワイアル ひぐらしのなく頃に祭  】
【ギャルゲ・ロワイアル 乙女はお姉さまに恋してる】


          Fin

954 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:48:26 ID:/p4FzLXj
そしてボクは帰ってきた。
ボクが生きている世界へ。
大切な人達に生かされて戻ってくる事ができた。
大切な人を見つけ、失ったけど大事な事を教えてもらえたから、きっと大丈夫。
大切な人――純一が教えてくれたこと。
「どんな時でも諦めず、そして進み続ける事」
苦しい事もあるけどきっとこれを信じて生きていきる。
そう思うから。

でも逢いたいな。
もう一度。
あの純一に、理想を語ってくれる純一に。
あの優しい言葉でもう一度。
できる事ならあいつが言ってくれた夢。
できるのなら……もう一度。






955 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:49:39 ID:6AKOXIxT


956 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:52:49 ID:pZxC+Rhh
 

957 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:54:12 ID:/p4FzLXj
ボクが連れ去れてから戻ってきたのにかかった時間は一ヶ月ちょっと過ぎだった。
唐突に失踪した竜鳴館の生徒会メンバー7人+鳥。
最初1週間ぐらいは彼らの悪ふざけだろうと世間はそう思っていた。
でも、なごみの証言でそれはありえない事になる。
なぜならなごみが失踪当日、用事で生徒会室出た時には全員揃っていたらしい。
が、忘れ物に気付いて戻った時、ボクらはいなかった。
その時間、約3分。

時間が短すぎる。
その短すぎる時間に何があったか、警察は調べ始めた。
だけど手がかりなど見つかるわけも無く捜査は混迷。

そんな時ボクが帰ってきた、一人で。
唐突に、生徒会室に寝てたらしい。
その後すぐにボクは警察に何があったか取り調べを受けた。
でもボクは「覚えてない、よく分からない」だけしか言わない。
あんなこといえる訳が無い、あんな事言えるもんか。
絶対信じてもらえないし。
変な目で見られて思い出を崩されるよりも大切に一人で憶えていたかった。

今は警察が、何者かが拉致、監禁と決め付け事件を調査を続けている。
でも、ボクは言った、もう他のメンバーは帰ってこないと。
そして事件は拉致、監禁、殺人事件とされた。
でも解決する事は無いだろう。
だって違う世界での話なんだから。

958 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:55:18 ID:J1I5dhWJ



959 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:56:03 ID:pZxC+Rhh
 

960 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:56:22 ID:/p4FzLXj
ボクにとって意外だったのは両親がボクが帰ってきたのを泣きながら喜んでいた事。
本当に予想外だった。
いなくなってそんな家族の思いを知るなんて何て皮肉。
とても滑稽な話だった。


そして、今。
3年の新学期。
ボクが何をしてるかというと……

「ほら……会長……何寝てるんだ。まったく……いつまでも甲殻類は甲殻類だな」
「おお……つーか甲殻類って言うんじゃねーよ! このココナッツ!」
「ふん……変わらないな……さあ新入生に挨拶だ。先にいってるぞ」

なぜか姫のあとをついで生徒会長をしている。
姫がいない後竜鳴館はガタガタ。
元の生徒会の人達が戻ろうとしたけどボクはそれを許したくは無かった。
あの大切な空間を崩したくない。
その一心でボクは立ち上がった。
当初は凄まじい反発。
当然かもしれない。前のボクからはできそうもなかったのだから。

でも諦めるなんて事は無い。
それは純一から教わったから
そしてボクも成長したんだから。
徐々に人望もついていきそして遂には会長に。
副会長ににはココナッツが。
最初は激しく拒絶されたが、諦めずずっと説得していた。
そして遂に折れ就任。


961 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:57:17 ID:/p4FzLXj
あの姫が作った空間は姫を初めとする殆どのメンバーがいないけどしっかり残ってる。
ボクが伝えていく。
それが残されたボクの使命であるかのごとく。

不意にあのまえの生徒会の風景が頭をよぎった。
もう、戻ってこない。
でも、大切な思い出。
レオもスバルもフカヒレもいないけどきっと大丈夫。
しっかりと進んでいけるはず。
そう思って。

だからボクは精一杯仕事をこなす。
それが蟹沢きぬ新生徒会長の責任。
だから行こう。

そして部屋を出る時にふと見えた新聞の記事がすごく目を引きボクの予定を決めるものとなる。

『枯れない桜が咲く初音島。桜のシーズンでも変わらず満開』






962 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:57:53 ID:/p4FzLXj
では残り感想スレで。

963 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:57:54 ID:J1I5dhWJ


964 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/02/11(月) 00:58:40 ID:pZxC+Rhh
 

965 : ◆UcWYhusQhw :2008/02/11(月) 00:59:25 ID:/p4FzLXj
「やっと……ついたか……暖かいなここは」
ボクはフェリーから降り一息つく。
空は快晴。
とても澄んだ空気だった。
ボクが今いるのは初音島。
そう純一が住んでいた所だった。
まさかここにもあるとは思わなかった。
新聞記事を見なきゃ気付かなかったかもしれない。
ボクはゴールデンウィークを使ってここまで来ていた。
理由は単純。
純一の住んでいたところに見てみたかったから。
ばあちゃんに終わった事を告げたいから。

だからここへやってきた。
そして夢で見た桜公園に向かう。
早く逢いたいなー。



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